「試合開始ッ!」

 ピイィッ!、と笛が鳴って、第二戦がスタートした。
 
 最初からわたしに向かってパスされたボールに、少し慌てる。
 しっかりボールを目で追って、あとは練習通り……!

 思っていた場所と少しちがう場所に飛んでしまったけれど、上手くフォローしてくれて向こうのコートに入った。
 
 ボールが返ってきて、わたしは藍ちゃんからのパスを受けた。
 三回目……! これで返さないと……!

 高いボールを上げて、藍ちゃんが「しも、いけるよ!」と声をかけてくれる。

 打点をとらえて、真下に振り下ろす……!


 けど、少しタイミングがずれてしまったのか、かすっただけで終わってしまった。
 パン、と足元でバウンドするボールを拾う人はいない。

「ご、ごめ、」
「しもちゃんドンマイ! ナイス挑戦だよ!」
「今の惜しかったあー! 次頑張ろ!」

 わたしの謝罪を最後まで言わせず、途中で遮るようにわたしに声をかけてきてくれたみんな。
 もちろんその中には藍ちゃんもいて、「よく挑戦した!」とこれでもかというほど褒めてくれた。

 気を取り直して始めたゲームは、残念ながら負けてしまった。
 けどなんでだろう。さっきよりも、さっき勝ったときよりも……楽しい。

「しも、お疲れぇ~。惜しかったねえ……」

「うん、藍ちゃんもお疲れ」

 体育館の横にあるベンチに座ってまた30分の休憩タイム。

「いやあ、今回はあたしがミスっちゃったからなあ。あたしのミスがなければ結構いい試合になったかもしれないのに~」

「そ、そんなことないよ! 藍ちゃんがいてくれてすごく頼りになったよ!」

 珍しくネガティブな藍ちゃんに、わたしはすぐに声をかけた。

 藍ちゃんひとりが責任を背負う必要はないのに……!
 わたしだって今回、思うようにできなかった。わたしにだって責任はある。サポートできなかったチームの責任だ。
 
「……ねぇ、しも」


 となりに座る藍ちゃんの瞳は、鋭く光ってわたしを捕らえていた。
 ドキリ、とわたしの心臓がはねる。

「そういうことだよ。今何を考えてた?」

 ひとりで責任を負う必要はない。チームの責任だ。

 そんなわたしの考えを見透かすように、ぽつりと藍ちゃんが言った。
 
「しももひとりで責任を負う必要はないよ。きっとみんながそう思ってる」

 にこり、といつものように優しく微笑むと、「最後は勝とうね!」とわたしの背中をポンと押してイスから立ちあがった。