「……しも」
そこまで考えたとき、藍ちゃんが後ろから声をかけてきた。
わたしはそっと振り返って、でも目を合わせられずにいた。
「しもはさあ、なんでもかんでも一人で背負い込みすぎてんの。わかるね?」
「そんなことないよ」
「そんなことある! さっきだってハイタッチしてくれなかったじゃん。ひとりの責任じゃないんだよ⁉ 今日だけじゃない。いつもいつも一人で全部こなそうとして! もっと自分を大事にしてよ。いつか壊れちゃうよ……⁉ しんどかったらしっかりあたしに言う」
藍ちゃんがこんなに言うのはめずらしい。藍ちゃんと友達になって初めてのことだった。
すぐには言葉が出てこなくて、わたしはうなずくことしかできなかった。
「よし、じゃあ切り替えてくぞー!」
大きく手を叩いた藍ちゃんは、「先に行ってるね」と来た方向へ戻ったのだった。
残されたわたしは、特にすることもないので風の当たる水飲み場付近へと向かった。
となりにある体育館からは人が次々と出てきて、その中には男子バスケのメンバーもいた。
試合はちょうど終わったみたいで、各々休憩に入っているようだ。
試合、やっぱり見てみたかったなあ……。
男子バスケとなったら迫力もあるだろうし、わたしたちのクラスの男子バスケは、今年の優勝候補になっている。
全クラス総当たり戦なので、先輩とも戦うわけになるんだけど、先輩をも打ち破って優勝するとうわさされているのだ。
「お? なんでここにいんの?」
「休憩」
水を飲みに来たらしい広瀬くんがわたしに声をかけてきて、わたしは短く答えた。
「霜月も試合終わったんだ? ど?」
「ふつう……」
「普通じゃあ わっかんねーよ。勝てた?」
「うん……」
よかったじゃん、とわたしの肩を軽くたたいて水道の蛇口をひねった。
