今日は快晴。最近は雨が降っていないなあとふと思う。
 最近の雨と言えば、広瀬くんと一番最初に会ったときだろうか。あの時から雨は降っていないような気がする。

 そんな中、今日は学校全体がいつも以上の盛り上がりを見せていた。

「しも、絶対勝とうね!」

「うん!」

 本当は不安でしかない。けどきっとそれを言ったら気を遣わせてしまうに違いない。
 わたしは笑顔を浮かべて藍ちゃんに微笑みかけた。

 わたしたちのクラスは運動ができる人がとても多いので、他のクラスからしたらかなり強敵なんだとか。
 でもそこに運動音痴のわたしもいるんだから、プラマイゼロな気が……。

 実際、目の前でやる気をみなぎらせている藍ちゃんも、「できる人」なんだから、なんだか裏切られたような気分だ。

 いつもはハーフアップにしている髪型を高いところでひとつに結って、藍ちゃんは勝つ気満々。
 一方わたしは心の奥にうずまく不安を抑え込んでいた。

 あんなに練習した。それなのにこの不安は何だろう。
 拭っても拭いきれない複雑な感情は、試合前となっても消えなくて。

 わたしが出る試合が三回あるうち、その一回目がスタートした。

 チームメンバーは、みんな明るくてポジティブな、藍ちゃんの友達。
 ミスをしても励ましてくれる雰囲気がすごくありがたくて、申し訳なかった。
 過去のような罵声はないけれど、温かい言葉もつらかった。


 最初は練習のように全く上手くいかなかった。でも落ち込む暇もなくボールが飛んでくるから、必死にできることをやるしかなかった。

「ナイス~」

 藍ちゃんが得点を決めて、みんながハイタッチをする。
 わたしとも手を合わせようとした藍ちゃんに、少し躊躇してしまった。

 何もチームに貢献できていないわたしが、手を合わせてもいいのだろうか。
 控えめに手を顔の前に出すと、藍ちゃんが少し怒ったような顔をしてわたしに言ってきた。

「しもは十分頑張ってるよ。しもがしっかりボールを追いかけてるの、みんな見てるよ。しもが一番声かけてくれるじゃん。チームの一員としてしっかり頑張れてるじゃん」

 そこで「はじめますよー」と声をかけられてしまって、わたしと藍ちゃんは手を合わせることなく試合が再開したのだった。

 結果は大団円の勝ちで終わった。
 両手で数えられるぐらいだけど、かなりの数ボールに触ることができて、自分でも満足だった。

 三十分ほどの休憩に入り、体育館を出て涼しい風の当たる場所で水を飲んでいた。

 そういえばもう一つの体育館で、男子がバスケをやっているんだったっけ。
 バスケと言えば広瀬くんだ。
 小学校からやっていたとかで、かなり上手いらしい。
 
 少し気になったけれど一人で見に行く勇気はなかったからあきらめた。
 
 午前中にはあと一試合。午後には最後の一試合が残っている。
 一試合目はなんとかいけたけれど、これで何も活躍できなかったら。
 
 何か言われていたらどうしよう。役立たずになってしまう。