教室に着くと、クラスメイト達の騒がしい声が頭に響き、おさまったはずの頭痛はぶり返してきた。
 席に着こうとしたとき、困ったような顔をしたクラスメイトがわたしに小走りで寄ってきた。

「ねえ、委員長さん、お願いっ! ちょっと一緒に手伝ってくれないかなっ。今日一人なんだよね……」

「そっか、今日はもう一人休みだっけ? いいよ、手伝うね」

 本当は自分の机で少しでも休んでいたかったけど、クラスメイトが困っているのだ。お願いされてしまっては断ることもできない。
 一瞬、少し前に広瀬くんに言われた言葉を思い出した。
 
 あの時の彼の言葉は、あまりにも的を射ていて、それが余計に複雑だった。
 数秒固まってしまったわたしの前で、クラスメイトが心配そうな顔をした。

 わたしは急いで口を開いて笑って見せた。

「ごめん、ぼーっとてた。急がないとだよね……ごめん」

 彼女はホッとしたようにため息をついて、可愛らしい笑顔を浮かべた。
 華奢な腕がこのクラスのノートを持った。
 
 わたしの方が少なかったのか、そんなに重たくなかったので、彼女の分を少し分けてもらうことにした。
 
「ごめんねえ、ありがと! 何かお礼するよ。本当に助かった……!」

 そんなことを言ってきたけれど、わたしは見返りを求めてこれを手伝ったわけじゃない。
 わたしは首を横に振って、「気持ちだけ受け取っておくね」と微笑んだ。