「しも、お昼どーする? 実は今日、有菜(ありな)に誘われてるんだよねえ……。しもも来ていいって言ってくれると思うけど……」

「あ、わたしはいいよ。有菜ちゃんと一緒に食べな?」

「ごめんねえ、しも。明日は一緒に食べよ!」

「うん。あ、有菜ちゃん呼んでるよ」

 藍ちゃんは本当に申し訳なさそうに頭を下げていたけれど、今日のわたしのとっては好都合だった。
 お弁当を持ってきていないことを藍ちゃんに言っていないし、頭も痛かったので、とりあえず一人で休みたかった。

 今日は、夏だと勘違いしそうになるほどの気温で、急な気温の上昇に具合の悪くなっている人も多かった。
 屋上に行ったら暑いだろうな……。けど、ひとりになることはできる。
 
 いつもは弁当を持つ右手が、今日はからっぽ。
 お腹はすいているはずなのに、食欲がない。

 屋上へ行くために、上を目指してゆっくり階段を上っていく。



「い、った……」



 突如、頭をガンガンと鈍器で殴られているような頭痛に見舞われて、わたしは階段を上っていた足を止めた。
 幸か不幸か、ここはお昼休みになると人が少ない。

 階段の真ん中あたりに座りこんで、頭を押さえつける。
 一時的に楽になったと思えば、またズキズキと痛み始める。

 最近しっかり寝れていないのと、まともな食事ができていないこと、練習のやりすぎ、かな……。
 藍ちゃんにも言ったけど、倒れたら大変だ。
 今日はゆっくり休まないと……。

 遠くの方でたくさんの声が聞こえる。その中に、下の方から話しながら階段を上ってくる音がして、わたしは慌てて立ち上がり、さらに上の屋上を目指した。

 まだ開いている無防備の扉を引いて、わたしはかけ込むように屋上へ行った。
 ジリジリと照らす太陽から隠れるように、日陰になっているところを探してそこに座り込んだ。

 お腹がすいている。でも、食べる気にはなれない。
 購買に行けばきっと売っているだろうけど、ここまで来てしまっては購買に行くのも面倒に思ってしまった。

 今はただ、重く痛む頭を押さえながら、ひたすら痛みに耐えることしかできない。

 頭痛が和らぐころ、五時間目始業10分前のチャイムが鳴った。