その日の放課後のこと。


 ポーン、とボールを高く上げてみる。
 両手を前で組んで、手首でそれを受け止める。

 ひざを曲げて、優しく……。

 バーン、とわたしの手首に当たることはなく、そのまま床に落下した。
 
 放課後の体育館は、朝よりも暖かで、日がよく当たっている。

「また上手くいかなかった……」

 距離感がつかめない。落下してくる位置が読めなくて、毎回こうなってしまう。

 わたしの方とは真反対に転がっていくボールを掴むと、わたしは何度目かのため息をついた。

 やっぱりわたしには無理なのかな……。
 これで練習して何日も経つけれど、この練習の成果が上がっているとは思えない。

 本番まで、時間もない。
 だったら少しでも上手くなって本番活躍できるようにしないと。

 ここでまた、あの時のように役立たずになっちゃったら……。

 そう思ったら、震えが止まらなくて、頭が真っ白になるようだった。


 その瞬間、不意にくらり、とめまいがした。

 それと同時にだんだん吐き気もして、わたしはその場で座り込む。


 どうして、こんな急に。

 今日はそんなに体調も悪くなかったはず。
 
 この時間は、ひたすら耐えることしかできなくて……いつの間にか、温まった体は氷のように冷たくなっていた。