夜、勉強を終わらせてからの唯一の自由時間に、バレーボールの練習方法や、上達するためのコツなどを調べてみる。
 藍ちゃんに「教えて」って言ったら教えてくれそうではあるけど、藍ちゃんの時間を取っちゃってもうしわけない。
 だからといって頼れる人もいないし、自分で何とかするしかないのだ。

「うー……難しそう……」

 簡単そうにやっていても、いざとなると全くできないのがわたしである。
 みんな最初なんかできないよというけれど、わたしはそれ以下なのだ。

 家にボールがあるわけでもないので、とにかく読み込んで頭に入れる。
 それを明日の朝、早く学校に行って練習するのだ。

 はあ、とため息をつくと、今インプットしたコツとかがすべて出ていってしまうような気がした。
 
 明日早く起きれるようにと、今日は早めに寝ることにした。



 

「ん……眠い……」

 となりの部屋からの物音でわたしはすぐに目を覚ました。
 お姉ちゃんだ。ドアの隙間からよく聞く音楽も聞こえてきて、もうそんな時間か、と布団から出た。

 今日は朝ご飯は軽く済ませるつもりだ。
 すぐに家を出て、少しでも練習する時間を取らなければ。

 冷蔵庫からヨーグルトを取り出すと、スプーンですくって無心に口に入れていく。
 
 ちょうど食べ終えるころ、お母さんが下に降りてきて、ヨーグルトを食べるわたしに目を向ける。

「おはよう、昴。朝ご飯はしっかり食べなさいよ。ヨーグルトだけじゃ健康に悪いわ」
「もう行かなきゃいけないからいいや」

 何か言われる前に、とわたしはごみを捨てて、すぐさま自分の部屋に戻った。
 お母さんの視線が背中に突き刺さっている気がした。

「行ってきます」

 返事も聞かずに、家を飛び出す。
 忘れ物がありそうだな。
 あ、お昼を持ってきてないんだ。今日は昼抜きでもいいかな。

 きっと今頃、お弁当を持っていないわたしに気づいてお母さんが慌てているだろう。
 けど今更戻る気力もなく、わたしはそのまま学校へ向かった。