1週間後のある日の放課後。

 わたしはひとり、体育館へ向かっていた。
 放課後の喧騒に包まれる中、孤立したように静かな体育館。
 
 いつもはあんなに人がいて狭く感じるくらいの体育館が、すごく広く感じた。

 

 球技大会。それが来週に迫っている。
 わたしは藍ちゃんと同じバレーを選択したのだけれど、球技全般が苦手なわたしにとっては地獄のようだった。

 体育館倉庫から、バレーボールをひとつもってきて、両手で固さを確かめる。
 
 ……これが当たったら痛そうだな……。
 
 小学校のとき、友達にバスケットボールを思いっきりぶつけてしまったことがあって、ボールが怖くなってしまった。
 また、顔にドッヂボールのボールが勢いよく当たってしまったことも、わたしが球技を苦手とする原因の一つだ。

 そのときのことが蘇り、ボールを持つ手が少し震えてくる。
 そんな自分を叱咤して、バレーボールをついてみる。
 
 パン、と軽やかな音がして、高く跳ねた。

 ころころと転がっていくバレーボールをどうすることもできずに、わたしはしゃがんで拾い上げた。
 
 ……どうしよう、本当にできない。
 できるできないの前に、怖い。

 やっぱり無理だよ。
 
 少し頑張ってみようと思ってここへ来たけど、手が、凍ったように動かない。
 
 夕日が照らす体育館の中で、わたしはぽつんと動けずにいた。