念のため、懐中電灯を持っていく。今はあまり暗くはないけれど、もう30分もすれば暗くなるだろう。
 
 近くのスーパーと言っても、歩いて20分はかかる。
 わたしはため息をついて、黙々と道のりに沿って歩いていた。

 スーパーの方へ向かうにつれて、だんだん周りが明るくなってくる。
 街の明かりが足元を照らして、暗さの心配はいらなかった。
 
 帰宅ラッシュでたくさんの車が交差している。
 駅の近くだからか、たくさんの人が道を埋め尽くしていた。

 人ごみをかき分け、やっとの思いでスーパーにつくと、かごを持ってすぐに目的の片栗粉の売っているコーナーに行く。
 いつも買っている片栗粉を一袋手にとって、かごに入れる。

 ずしり、とかごを持つ手に重みが加わった。

「あとは……」

 キャベツに、しめじ。ウインナーもリストに入っている。
 あと、お姉ちゃんが大好きなチョコレート菓子もこっそり書かれていた。
 きっと追加したんだろうな。お姉ちゃんらしい。

 全てをかごに入れたときには、かなりの重さになっていた。
 いつもお母さんに任せていたばっかりだったから、こんなに重いものを持っていてくれたお母さんはすごいと思う。
 
 カートを持ってくればよかったかな、とわたしは少し前の自分の行動を悔やんだ。
 今からじゃ遅い。仕方ない、もうあとはお会計だけだし……。

 さっとお会計を済ませて、そのときに残っているお姉ちゃんからもらった1,000円札を思い出した。
 どうしよう、このまま返そうかな……。

 次の待っていたお客さんに急かされて、わたしは慌ててその場を離れた。
 結局、1,000円札はお財布の中に残っていた。