「霜月、これ先生の机に置いておいてくれるか?」

 手渡されたのは、今日国語の授業で使った、あのプリント。
 昨日と違うのは、この真っ白なプリントに色がついていることだ。

 透き通るような青で塗る人もいれば、二色使ってグラデーションに塗っている人もいる。
 藍ちゃんは暖色系の色を使って、その性格をそのまま表しているようだった。

「はい、国研の方でいいですか?」

「そうだな。助かるよ」

 先生のその言葉をきいてわたしは教室を出る。
 そのときにザッとプリントに目を通すと、あるプリントでプリントをめくる手が止まった。

 これは……。


 ひとつだけ、異様に目立っているプリントがあった。

 色とりどりで目立っているわけじゃない。
 その逆。

 何も書かれていないように見える、真っ白な用紙があったのだ。
 余ったプリントかもしれない、と思ったけど……どうやら白色で塗ってあるらしい。
 よくよく目を凝らせば、確かに塗られた形跡はある。

 名前は書かれていない。
 けど、この紙を見たらわかる。

 広瀬くんだ。確かな手掛かりはない。でも、彼の性格がこの紙から伝わってくる。

 これを書いた人は……広瀬くんは、最初に真っ白なプリントを見てまず何を思ったのだろう。
 どうして“白”を選んだのだろう。

 どんな気持ちで、この真っ白な紙に白色を塗ったのだろう。
 
 まっさらな紙が、ひらりと風に吹かれた。