緑を食む


「あれ?」
 北風が冷たくなってきた頃のことだ。私は夢の中をきょろきょろと見回した。
 いない。
 毎晩やってきていた旅人と動物たちが、どこを見てもいなかった。
 自分の足下を見る。すると、今まで緑に隠れて見えなかった茶色い地面が所々見え始めていた。食べる緑がないからもう来なくなってしまったのだろうか。緑がなくなったのは冬だから、ではないだろう。それは、ストレスがなくなったということだろうか。
 私には思い当たる節があった。ストレスがなくなったのだとしたら、きっとあれのおかげだ。
 今井くんがうらやましくなった私は、少しずつ言いたいことを言い、やりたいことをやるようにしてみた。本当に少しずつ、ではあるが。その少しずつの積み重ねが、きっとストレスを軽減していったのだろう。
 良かった。
 私は晴れ晴れとした気持ちで夢の中の夜空を見上げた。北風に煽られて星がぴかぴかと瞬いた。とてもきれいだ。きれいなのだが。
 落ち着かない。あの動物たちが緑を食べてくれないと、心がすうすうとする。
 私はそわそわとし始めた。早く夢から覚めたい。
 そう思う時に限って、夢の中の時間が過ぎるのは遅かった。