緑を食む


「こんばんは。あなたの『緑』を食べに来ました」
 今晩も私の顔をした旅人は動物たちを連れてやってきた。
 一般的に旅人が連日夢の中にやってくるのはまれなことだと言われている。多いと言われる思春期の子たちでも、月に一度程度だそうだ。
 けれど、私のところにはほぼ毎晩旅人が動物たちを連れて緑を食べにやってくる。それだけストレスがたまっているということだろうか。
 私は夢の中で動物たちが緑を食べるのをぼんやりと眺めている。お腹がいっぱいになった動物から旅人の背後へと消えていく。最後のヤギが消えたところで、旅人は言った。
「ありがとうございました。また明日やってきます」
 その言葉に、私は疑問に思って聞いてみた。
「明日も来ることは確定なの?」
 旅人は頷いた。
「はい。ここにはまだ、こんなにたくさんの緑がありますから」
 それでは、また明日、と旅人はお辞儀をして、遠くのほうへすうっと見えなくなった。
 緑がたくさんあるということは、ストレスがたくさんあるということだろう。自分ではわからないが、私はそんなにストレスがたまっているのだろうか。何がたまっているのだろう。
 そんなことを考えているうちにあたりは暗くなっていく。
 目が覚める。いつものように朝だった。
 疑問はまだ心の中に残っていた。