匡希が火曜日の部活から帰って来て食堂へ行くと、玖太が玲於奈と寮の先輩たちと一緒に夕食を食べていた。
そこのテーブルはいっぱいで、食事を持ってテレビが見える席に移動する。
くだらないバラエティ番組を見ながら食べる青椒肉絲は美味く、しばし無心で食べる。
食べ終わり食事を下げて、部屋に戻り風呂は後回しにした。
今日は1年生三人組が風呂掃除当番だ。最後に入って、そのまま掃除をしよう。
ノックの音がした。
「どーぞ」
「俺」玖太が顔をのぞかせた。
「入れよ。いつ帰って来た?」
「今日の午後三時に退院」
「体調は」
「問題ない。親父は月曜日に入院した。若く見えるけどもう70過ぎてるんだ。一番上のアニキの話では一応手術はするけど死ぬらしい」
「……そうか」
「だからもう大丈夫」
「学費は?」
「母親が死んだときの遺産と保険金があるから、万が一何かあっても高校は出られる。……なあ、あれもう一回やって」
説明されないでもわかった。
両手を広げると玖太が抱きついてきて、抱えたままふざけてくるくると回ると笑い声をあげた。
床に座り、好きなだけ抱きつかせて、背中を撫でる。
「俺さあ、やっとやっとこれで安心して暮らせる。助けてくれてありがとう」
「いつでも抱っこされに来いよ」
「わかった。あと少しこのままでいいか」
玖太はそのまましばらく抱きついたあと、照れ笑いをしながら部屋から出ていった。
その日は風呂に1年生三人で最後まで入り、パンツ一丁で風呂掃除を歌いながらして、先輩にうるさいと怒られた。
風呂上がりにはいつものように食堂で勉強する。
今日は他の寮生もいて、みな黙々とテスト直しや、ある者は再テストのための勉強をしていた。
赤点があると部活動停止になる。
隣に玲於奈が来た。珍しくゆるいタンクトップに短めのハーフパンツだ。
「玲於奈の乳首見えてる」玖太が言った。
「風呂掃除でのぼせた」
玲於奈は玖太の指摘を気にもせず宿題をやり、その後は第二外国語のフランス語の勉強を始めた。
「フランス語を勉強する意味あるか」玖太が玲於奈に絡んだ。
「俺のじいちゃんフランス人だから、じいちゃんと話せるようになる」
「本当の話?」
「嘘」
「なんだよ」
クスクス笑って、先輩に「集中しろ」と注意されて、勉強に戻る。
勉強が終わってから一階へ行き、ストレッチと筋トレをする。
自室に戻り歯ブラシを持って洗面所へ行った。
歯を磨き、先輩たちにおやすみなさいと言って部屋に戻る。
ベッドに入って明かりを消してからノックの音がした。
23:00。
「どーぞ」
「匡希、入っていい」
「いいよ。あかりつけて」
玲於奈は明かりをつけずに部屋に入ってきて、ベッドに潜り込んだ。
「どうした」
「キスしに来た」
「かわいい理由」
抱きしめてキスすると、さっきのゆるいタンクトップを着ているのが感触でわかり、袖ぐちから手を入れた。
キスしながら乳首を探しあててそっとつまむ。もう片方も見つけて2つとも触りながらキスした。
「匡希、ゾクゾクして怖い」
「ここまでにする」
手を胸から離して、短くなった髪を撫でた。
「玲於奈、朝まで一緒に寝る?」
「うん」
「おい、起きろ」バスケ部の先輩に揺すられて起きる。
「ウス……?」
「お前らなんで二人で寝てんだ」
「?……ああ、なんか昨日話してて気がついたら朝…」
「十王寺は部屋に戻れ。イチは朝練行くぞ」
玲於奈はふらふらとよろめきながら自分の部屋に戻り、匡希は慌てて支度して朝ごはんを掻き込み、学校の荷物をひっつかんで体育館へ急いだ。
体育館に着くと他の部員は全員来ていた。
「イチ!外周!」
「ハイ!」遅刻のペナルティで外周行きになる。
朝から一人で外周を走り、一周目を戻ったところでサクラが門のところにいた。
「あと一周だって」
「ウス!」
やけっぱち気味に返事をして、もう一周回るために駆け出した。
2周目を戻って来るとまだサクラがいた。
「3周目?」
「ううん。戻っていいって」
「良かった」呼吸を整える。
「なんで寝坊したの?」
「玲於奈と話して夜更かしした」
「何の話?」
「秘密」
昨日腕の中で玲於奈が眠った時の事を考えて、顔がにやけそうになるのを堪える。
暗がりで見る寝顔が可愛くて、ずっと見ていたかったが、気がついたら朝だった。
「好きな人の話?」
「さあな」
「匡希は好きな人いるの」
「いるよ。片思い中」
体育館に戻り、朝からガッツリしごかれて、大急ぎで浴びたシャワーで髪が濡れたまま登校する。
髪が濡れている事を先生に注意されて、短く切らなければと思う。
放課後の部活、体育館はもう夏の暑さで、窓も出入り口も全開だ。そろそろ空調の出番だった。
今日も体力強化組は外周からだった。
最後は試合形式の練習もあり、部活が終わってモップをかける頃にはそれぞれが体力の限界だった。
夕食の時間ギリギリで、寮まで走って戻る。
寝るまでの時間はあっという間だ。
部屋をノックされて、玲於奈かと思ったが玖太だった。
「どうした」
「いや、なんでもねえけど…」
「来いよ」
呼ぶと部屋に入って抱きついて来た。
「嫌だろ」
「全然。冗談抜きで嫌じゃない」
ぎゅと抱きしめて頭から背中までなでる。10分ほどくっついた後に、玖太は部屋から出ていった。
翌朝アラームで起きると玲於奈が同じベッドで寝ていた。
「玲於奈、おはよう」
「ん…」キスして、シャツの中に手を入れて胸を触り、我慢できず、シャツをめくり玲於奈の乳首を少しだけ舐めた。
「朝練行く。玲於奈は部屋に戻れ」
半分寝ている玲於奈を部屋に戻して、部活へ行く。
今日は一番乗りだった。
ストレッチをしていると1年生マネージャー2人が来た。
「おはよー」
「おはよう、サクラ、外周付き合ってもらっていいか」
マネージャーと2人、校門へ向かう。
「匡希の片思い中の好きな人って誰?」
「言わねー」
「告白した?」
「した」
「振られたってこと?」
「保留。サクラは?」
「告白はされた」
「バスケ部?」
「言わない。断ったよ」
「バスケ部だろ。サクラもありすもすげーかわいいから、バスケ部には高嶺の花」
青羽学院では剣道部と柔道部が強く、バスケ部はまだまだだった。
「匡希ってそういう事言うんだ」
「そういう事?」
「女の子に“かわいい”」
「二人ともかわいいだろ」
「匡希の好きな人もかわいい?」
「俺には世界一かわいい。片思いがうまくいくように祈って」
外周を走り、朝練が終わって昇降口から校舎に入る。髪は昨日と同じように濡れていて、頭にタオルを引っ掛けてあった。
「一位おはよう。朝練?」
「おはよう。死ぬほど走ってきた」
昇降口をあがったところに人だかりがあった。
「何あれ」
「中間の順位だろ。うちのクラスは関係ない」
人だかりがすごくて掲示板までたどり着けない。
高身長のおかげで上位は見えた。
『全教科 総合1位 1年2組 十王寺玲於奈』
『英数国 総合1位 1年2組 十王寺玲於奈』
その後も延々と細かい科目ごとに玲於奈の名前が1位で続き、数学は1位が2人いてもう一人は玖太だった。
予鈴がなり人だかりが減る。
遅刻してでも見たかった。
匡希は全教科総合を目をこらして3回見たが、名前は無かった。
始業のベルが鳴り、走って教室へ向かう。
もうクラス担任が来ていて、昨日注意された濡れ髪をまた言われないようにタオルをとっさに後ろ手に隠した。
「一位、遅刻」
「ハイ」遅刻は反省文だ。
「中間テストの結果を配る。出席番号順に取りに来て」
担任がB5サイズの紙を手に持っている。出席番号は2番だからすぐに行かねばならない。
「一位、お前また髪濡れてるぞ」
「すみません」
テスト結果を受け取り、席に戻る。
「あ」思わず声がもれた。
「どうした、一位」
「いや、なんでもないです」
「一位は現代文が4位、生物が25位、地理が12位で成績優秀者として廊下に貼り出されてる。よく頑張った」
クラスが軽くざわついた。
『総合 32位』
紙の一番下の数字が浮かび上がるように目に入る。
あと僅か、及ばなかった。
先生が近づいてきて、黄色い紙を手渡される。
「何もらった?」
前の席の小久保が振り返ってのぞく。
「遅刻の反省文原稿用紙」
「だりー」小久保に笑われて、匡希も思わず笑った。
そこのテーブルはいっぱいで、食事を持ってテレビが見える席に移動する。
くだらないバラエティ番組を見ながら食べる青椒肉絲は美味く、しばし無心で食べる。
食べ終わり食事を下げて、部屋に戻り風呂は後回しにした。
今日は1年生三人組が風呂掃除当番だ。最後に入って、そのまま掃除をしよう。
ノックの音がした。
「どーぞ」
「俺」玖太が顔をのぞかせた。
「入れよ。いつ帰って来た?」
「今日の午後三時に退院」
「体調は」
「問題ない。親父は月曜日に入院した。若く見えるけどもう70過ぎてるんだ。一番上のアニキの話では一応手術はするけど死ぬらしい」
「……そうか」
「だからもう大丈夫」
「学費は?」
「母親が死んだときの遺産と保険金があるから、万が一何かあっても高校は出られる。……なあ、あれもう一回やって」
説明されないでもわかった。
両手を広げると玖太が抱きついてきて、抱えたままふざけてくるくると回ると笑い声をあげた。
床に座り、好きなだけ抱きつかせて、背中を撫でる。
「俺さあ、やっとやっとこれで安心して暮らせる。助けてくれてありがとう」
「いつでも抱っこされに来いよ」
「わかった。あと少しこのままでいいか」
玖太はそのまましばらく抱きついたあと、照れ笑いをしながら部屋から出ていった。
その日は風呂に1年生三人で最後まで入り、パンツ一丁で風呂掃除を歌いながらして、先輩にうるさいと怒られた。
風呂上がりにはいつものように食堂で勉強する。
今日は他の寮生もいて、みな黙々とテスト直しや、ある者は再テストのための勉強をしていた。
赤点があると部活動停止になる。
隣に玲於奈が来た。珍しくゆるいタンクトップに短めのハーフパンツだ。
「玲於奈の乳首見えてる」玖太が言った。
「風呂掃除でのぼせた」
玲於奈は玖太の指摘を気にもせず宿題をやり、その後は第二外国語のフランス語の勉強を始めた。
「フランス語を勉強する意味あるか」玖太が玲於奈に絡んだ。
「俺のじいちゃんフランス人だから、じいちゃんと話せるようになる」
「本当の話?」
「嘘」
「なんだよ」
クスクス笑って、先輩に「集中しろ」と注意されて、勉強に戻る。
勉強が終わってから一階へ行き、ストレッチと筋トレをする。
自室に戻り歯ブラシを持って洗面所へ行った。
歯を磨き、先輩たちにおやすみなさいと言って部屋に戻る。
ベッドに入って明かりを消してからノックの音がした。
23:00。
「どーぞ」
「匡希、入っていい」
「いいよ。あかりつけて」
玲於奈は明かりをつけずに部屋に入ってきて、ベッドに潜り込んだ。
「どうした」
「キスしに来た」
「かわいい理由」
抱きしめてキスすると、さっきのゆるいタンクトップを着ているのが感触でわかり、袖ぐちから手を入れた。
キスしながら乳首を探しあててそっとつまむ。もう片方も見つけて2つとも触りながらキスした。
「匡希、ゾクゾクして怖い」
「ここまでにする」
手を胸から離して、短くなった髪を撫でた。
「玲於奈、朝まで一緒に寝る?」
「うん」
「おい、起きろ」バスケ部の先輩に揺すられて起きる。
「ウス……?」
「お前らなんで二人で寝てんだ」
「?……ああ、なんか昨日話してて気がついたら朝…」
「十王寺は部屋に戻れ。イチは朝練行くぞ」
玲於奈はふらふらとよろめきながら自分の部屋に戻り、匡希は慌てて支度して朝ごはんを掻き込み、学校の荷物をひっつかんで体育館へ急いだ。
体育館に着くと他の部員は全員来ていた。
「イチ!外周!」
「ハイ!」遅刻のペナルティで外周行きになる。
朝から一人で外周を走り、一周目を戻ったところでサクラが門のところにいた。
「あと一周だって」
「ウス!」
やけっぱち気味に返事をして、もう一周回るために駆け出した。
2周目を戻って来るとまだサクラがいた。
「3周目?」
「ううん。戻っていいって」
「良かった」呼吸を整える。
「なんで寝坊したの?」
「玲於奈と話して夜更かしした」
「何の話?」
「秘密」
昨日腕の中で玲於奈が眠った時の事を考えて、顔がにやけそうになるのを堪える。
暗がりで見る寝顔が可愛くて、ずっと見ていたかったが、気がついたら朝だった。
「好きな人の話?」
「さあな」
「匡希は好きな人いるの」
「いるよ。片思い中」
体育館に戻り、朝からガッツリしごかれて、大急ぎで浴びたシャワーで髪が濡れたまま登校する。
髪が濡れている事を先生に注意されて、短く切らなければと思う。
放課後の部活、体育館はもう夏の暑さで、窓も出入り口も全開だ。そろそろ空調の出番だった。
今日も体力強化組は外周からだった。
最後は試合形式の練習もあり、部活が終わってモップをかける頃にはそれぞれが体力の限界だった。
夕食の時間ギリギリで、寮まで走って戻る。
寝るまでの時間はあっという間だ。
部屋をノックされて、玲於奈かと思ったが玖太だった。
「どうした」
「いや、なんでもねえけど…」
「来いよ」
呼ぶと部屋に入って抱きついて来た。
「嫌だろ」
「全然。冗談抜きで嫌じゃない」
ぎゅと抱きしめて頭から背中までなでる。10分ほどくっついた後に、玖太は部屋から出ていった。
翌朝アラームで起きると玲於奈が同じベッドで寝ていた。
「玲於奈、おはよう」
「ん…」キスして、シャツの中に手を入れて胸を触り、我慢できず、シャツをめくり玲於奈の乳首を少しだけ舐めた。
「朝練行く。玲於奈は部屋に戻れ」
半分寝ている玲於奈を部屋に戻して、部活へ行く。
今日は一番乗りだった。
ストレッチをしていると1年生マネージャー2人が来た。
「おはよー」
「おはよう、サクラ、外周付き合ってもらっていいか」
マネージャーと2人、校門へ向かう。
「匡希の片思い中の好きな人って誰?」
「言わねー」
「告白した?」
「した」
「振られたってこと?」
「保留。サクラは?」
「告白はされた」
「バスケ部?」
「言わない。断ったよ」
「バスケ部だろ。サクラもありすもすげーかわいいから、バスケ部には高嶺の花」
青羽学院では剣道部と柔道部が強く、バスケ部はまだまだだった。
「匡希ってそういう事言うんだ」
「そういう事?」
「女の子に“かわいい”」
「二人ともかわいいだろ」
「匡希の好きな人もかわいい?」
「俺には世界一かわいい。片思いがうまくいくように祈って」
外周を走り、朝練が終わって昇降口から校舎に入る。髪は昨日と同じように濡れていて、頭にタオルを引っ掛けてあった。
「一位おはよう。朝練?」
「おはよう。死ぬほど走ってきた」
昇降口をあがったところに人だかりがあった。
「何あれ」
「中間の順位だろ。うちのクラスは関係ない」
人だかりがすごくて掲示板までたどり着けない。
高身長のおかげで上位は見えた。
『全教科 総合1位 1年2組 十王寺玲於奈』
『英数国 総合1位 1年2組 十王寺玲於奈』
その後も延々と細かい科目ごとに玲於奈の名前が1位で続き、数学は1位が2人いてもう一人は玖太だった。
予鈴がなり人だかりが減る。
遅刻してでも見たかった。
匡希は全教科総合を目をこらして3回見たが、名前は無かった。
始業のベルが鳴り、走って教室へ向かう。
もうクラス担任が来ていて、昨日注意された濡れ髪をまた言われないようにタオルをとっさに後ろ手に隠した。
「一位、遅刻」
「ハイ」遅刻は反省文だ。
「中間テストの結果を配る。出席番号順に取りに来て」
担任がB5サイズの紙を手に持っている。出席番号は2番だからすぐに行かねばならない。
「一位、お前また髪濡れてるぞ」
「すみません」
テスト結果を受け取り、席に戻る。
「あ」思わず声がもれた。
「どうした、一位」
「いや、なんでもないです」
「一位は現代文が4位、生物が25位、地理が12位で成績優秀者として廊下に貼り出されてる。よく頑張った」
クラスが軽くざわついた。
『総合 32位』
紙の一番下の数字が浮かび上がるように目に入る。
あと僅か、及ばなかった。
先生が近づいてきて、黄色い紙を手渡される。
「何もらった?」
前の席の小久保が振り返ってのぞく。
「遅刻の反省文原稿用紙」
「だりー」小久保に笑われて、匡希も思わず笑った。


