玲於奈は起き上がると振り返りもせず匡希の部屋から出ていった。
翌朝、朝練があるバスケ部は他の寮生よりも先に朝食を食べて寮から出て、玲於奈とはクラスも別でその日一日姿を見なかった。
放課後の部活に昨日のマネージャー志願の女子二人がきていた。
「あれ、十王寺は?」
「玲於奈は水泳部の見学」
髪の短いほうの子がニコッと笑って教えてくれた。
「イチ!ナンパしてんな!」チームメイトがふざけて大声で呼んだ。
「してねーから!」走って皆のいるところまで戻る。
バスケ部は部員が50人ほどいて、それなりの大所帯だ。
今年の1年生で寮生は匡希だけで、他の同級生はスポーツ推薦のものも自宅から通って来ていた。
部活が終わり、着替える時には先輩たちは帰った後で、部室は1年生12人だけだった。
「新しいマネージャーかわいいよね?」1年で一番背の低い佐久間が言った。
「わかる。二人とも1年2組。イチは同じクラス?」
「俺は3組。バスケ部に2組いないだろ。1組と2組は頭いい」
「え?そういう分け方?」
「そうだよ。お前知らなかったの」
みんなでがやがやと話しながら部室から出る。
「寮ってデート出来ないよな。お前彼女は?」
「高校に入る前に別れた」
「そうか。バスケに人生賭けてるんだ」
「じゃなかったら新潟からわざわざ東京まで来ない」
学校の敷地内にある寮まで歩いて行く。昭和の終わりに建てられた古い建物で、元々は教職員のための寮だったらしい。
「匡希おかえり」廊下で斎藤とすれ違った。
「ただいま」
「食堂が閉まるから急げ」
部屋に荷物を置き、食堂へ行く。
玲於奈がバスケ部の先輩に囲まれて食べているのを横目に、テレビの近くで一人食べ始めた。
おそらく、先輩たちは新マネージャー(仮)の情報収集をしているのだろう。
夕食をきっちり食べ終えて、トレーを下げ風呂へ向かう。
頭と体を念入りに洗って、湯船に入る。
入浴剤の蛍光緑とでもいいたい奇妙な色の湯に浸かり、足を揉んだ。
たぶん深夜に筋肉痛が来る。
毎日ハードな練習をしていようが、筋肉痛は来る時は来るのだ。
風呂から上がり、ジャージにタンクトップで宿題を持って食堂へ行った。
もう誰も食事をしているものはいなかった。
一心不乱に問題を解いている斎藤の隣に座る。
斎藤は1組で、いわゆる数学の天才らしかった。
「おつかれ」
匡希の目の前に玲於奈が座った。
白いパーカーに髪はまだ少ししっとりして軽くカールしている。
「十王寺って天パ?」
「そう。ドライヤーかけないと…。3組は数学どこやってる?」
宿題のわからない所を教えてもらい、なんとか今日の宿題を無事に終えた。
部屋に戻り、歯ブラシを取って洗面所へ歯を磨きに行く。
先輩がドライヤーをかけたり、コンタクトレンズを外したりしている中で、でかい体を縮めて隅っこでフロスをして磨きゆすいで、顔も洗った。
「イチ!おやすみ」声をかけてきたのはバスケ部の先輩だ。
「おやすみなさい」
おやすみーと洗面所にいた先輩たちが口々に言った。
ここはスポーツ推薦のための寮ではなく、上下関係も寮生の仕事も簡単な掃除や個室の管理など以外、基本的に無い。
部屋に戻ると、ベッドに玲於奈が腰掛けてスマホを見ていた。
「どうだった、水泳部」
「ん。楽しかった。匡希、鍵閉めて」
個室の鍵をかけてベッドに戻ると、今日は玲於奈から抱きついてきて、また昨日と同じようにキスをした。
「十王寺、どこまでならやり過ぎじゃない?」
昨日は唇を食みながらお腹を触ったら『やり過ぎ』と言われた。
腰やもっと下をさわったり、ディープキスをしたらアウトだろう。
「普通のキスとハグまで」触れるだけのキスでもそれなりに楽しい、と思う。
「それ以上を十王寺にしたくなったら?」
「付き合ってる人としかしない」
「付き合って」
「ウワァ、体目当て?」
何度かキスして、手をつないだ。
「体“も”」
「匡希ってかっこいいのに僕?マネージャーは?」
「マネージャーってお前の友達の?」
「うん。匡希の事かっこいいって言ってた」
「へぇ。十王寺、黙って」
パーカーを脱がせ、触っても大丈夫そうな肩をTシャツの袖口から手を入れて撫でた。
「もう寝る時間」
「一緒に寝よう」
「匡希って最低。隣の部屋に戻る」玲於奈は笑った。
「あと少し」
抱きしめてベッドに横になって目を見つめると、玲於奈のガードが外れるのを感じた。たぶん、いける。
「匡希」
「なに」
「僕と付き合いたいなら学年30位以内に入って」
翌朝、朝練があるバスケ部は他の寮生よりも先に朝食を食べて寮から出て、玲於奈とはクラスも別でその日一日姿を見なかった。
放課後の部活に昨日のマネージャー志願の女子二人がきていた。
「あれ、十王寺は?」
「玲於奈は水泳部の見学」
髪の短いほうの子がニコッと笑って教えてくれた。
「イチ!ナンパしてんな!」チームメイトがふざけて大声で呼んだ。
「してねーから!」走って皆のいるところまで戻る。
バスケ部は部員が50人ほどいて、それなりの大所帯だ。
今年の1年生で寮生は匡希だけで、他の同級生はスポーツ推薦のものも自宅から通って来ていた。
部活が終わり、着替える時には先輩たちは帰った後で、部室は1年生12人だけだった。
「新しいマネージャーかわいいよね?」1年で一番背の低い佐久間が言った。
「わかる。二人とも1年2組。イチは同じクラス?」
「俺は3組。バスケ部に2組いないだろ。1組と2組は頭いい」
「え?そういう分け方?」
「そうだよ。お前知らなかったの」
みんなでがやがやと話しながら部室から出る。
「寮ってデート出来ないよな。お前彼女は?」
「高校に入る前に別れた」
「そうか。バスケに人生賭けてるんだ」
「じゃなかったら新潟からわざわざ東京まで来ない」
学校の敷地内にある寮まで歩いて行く。昭和の終わりに建てられた古い建物で、元々は教職員のための寮だったらしい。
「匡希おかえり」廊下で斎藤とすれ違った。
「ただいま」
「食堂が閉まるから急げ」
部屋に荷物を置き、食堂へ行く。
玲於奈がバスケ部の先輩に囲まれて食べているのを横目に、テレビの近くで一人食べ始めた。
おそらく、先輩たちは新マネージャー(仮)の情報収集をしているのだろう。
夕食をきっちり食べ終えて、トレーを下げ風呂へ向かう。
頭と体を念入りに洗って、湯船に入る。
入浴剤の蛍光緑とでもいいたい奇妙な色の湯に浸かり、足を揉んだ。
たぶん深夜に筋肉痛が来る。
毎日ハードな練習をしていようが、筋肉痛は来る時は来るのだ。
風呂から上がり、ジャージにタンクトップで宿題を持って食堂へ行った。
もう誰も食事をしているものはいなかった。
一心不乱に問題を解いている斎藤の隣に座る。
斎藤は1組で、いわゆる数学の天才らしかった。
「おつかれ」
匡希の目の前に玲於奈が座った。
白いパーカーに髪はまだ少ししっとりして軽くカールしている。
「十王寺って天パ?」
「そう。ドライヤーかけないと…。3組は数学どこやってる?」
宿題のわからない所を教えてもらい、なんとか今日の宿題を無事に終えた。
部屋に戻り、歯ブラシを取って洗面所へ歯を磨きに行く。
先輩がドライヤーをかけたり、コンタクトレンズを外したりしている中で、でかい体を縮めて隅っこでフロスをして磨きゆすいで、顔も洗った。
「イチ!おやすみ」声をかけてきたのはバスケ部の先輩だ。
「おやすみなさい」
おやすみーと洗面所にいた先輩たちが口々に言った。
ここはスポーツ推薦のための寮ではなく、上下関係も寮生の仕事も簡単な掃除や個室の管理など以外、基本的に無い。
部屋に戻ると、ベッドに玲於奈が腰掛けてスマホを見ていた。
「どうだった、水泳部」
「ん。楽しかった。匡希、鍵閉めて」
個室の鍵をかけてベッドに戻ると、今日は玲於奈から抱きついてきて、また昨日と同じようにキスをした。
「十王寺、どこまでならやり過ぎじゃない?」
昨日は唇を食みながらお腹を触ったら『やり過ぎ』と言われた。
腰やもっと下をさわったり、ディープキスをしたらアウトだろう。
「普通のキスとハグまで」触れるだけのキスでもそれなりに楽しい、と思う。
「それ以上を十王寺にしたくなったら?」
「付き合ってる人としかしない」
「付き合って」
「ウワァ、体目当て?」
何度かキスして、手をつないだ。
「体“も”」
「匡希ってかっこいいのに僕?マネージャーは?」
「マネージャーってお前の友達の?」
「うん。匡希の事かっこいいって言ってた」
「へぇ。十王寺、黙って」
パーカーを脱がせ、触っても大丈夫そうな肩をTシャツの袖口から手を入れて撫でた。
「もう寝る時間」
「一緒に寝よう」
「匡希って最低。隣の部屋に戻る」玲於奈は笑った。
「あと少し」
抱きしめてベッドに横になって目を見つめると、玲於奈のガードが外れるのを感じた。たぶん、いける。
「匡希」
「なに」
「僕と付き合いたいなら学年30位以内に入って」


