宰相は困っていた。
　彼が仕えている君主に世継ぎが生まれないことが悩みの種なのだ。
　後継者となる世継ぎが生まれないと、帝室が断続してしまう。
　その結果、後継者を巡る争いが起きる……それを心配しているのである。
「何とかならないものだろうか？」
　宰相は自問自答した。できる限りの対策は講じている。後室には国中の美女を集めた。病弱で精力が足りない君主のために最高の医薬品を用意した。神仏へ頼るため加持祈祷の類も欠かさない。それでも後継者は生まれないのである。
　そんな中、宰相に提案する者が現れた。
「私の生まれ故郷に動物の種付け名人がおります。副業で人の種付けの相談もやっており、子供に恵まれない夫婦が訪れて指南を受け、子宝に授かっていると聞きます。それを後室へ招いては如何でしょう」
　本業は動物の種付けと聞いて宰相は複雑な表情を見せたが、選り好みをしている場合ではなかった。
「分かった。その種付け名人を呼べ」