次の日、昼過ぎまで充分に休み体力を回復した後ショッピングモールへと向かう。すぐさまどこの店にも寄らずに一周隈なく探してみたがやっぱり鳥井は見つからなかった。
むやみに探し回っても体力を消耗するだけなのでフードコードへ行き、ドリンクを一杯だけ注文し、好きだと言っていたパフェ屋の近くの席に居座る事にする。ここで張っていたら鳥井がやってきたら会えるだろう。しかし、もう半ば諦めかけていた。恐らくやってくる事はない。
それでも俺には時間があるし、これを区切りとして諦めると決めたので一日中粘る事にした。
フードコートは平日という事もあり、人はまばらにしか居ない。これならドリンク一杯で一席占領しても誰の迷惑にもならないはずだ。
パフェ屋に注文しにくる人物に注意しながら、俺は小説を読んで時間を潰した。そのまま夕刻まで粘ったものの、結局鳥井が現れる事は無かった。
これだけ粘れば充分だろう。諦めて席を立ち上がって去ろうとした時である。フードコート内に、やけに甲高い声が響いてきたのである。
声の方向を見てみると丁度複数人の女子高生達が楽しそうに会話をしながら入ってくる所だった。声量が大きくかなり目立っている。
その中に鳥井は居なかったけれども、見覚えのある制服にすぐに思い至る。俺の鞄の中にある制服と同じなのである。
もしかしたら、何かしらのヒントが得られるかもしれない。そう思い、すぐに女子高生の集団に近づいた。
「なぁに?ナンパ?」
全員に話しかけたつもりだったが中心にいた一人が、からかうように笑いながら返事を返してきた。どうやらコイツがこの集団のリーダーなのだろう。他の人達は何が起こるか楽しみという感じで見ているだけであった。
何となく嫌な予感がしたけれども、それを無視して続ける。
「聞きたいことがあるんだ」
「だからぁ?なぁに?」
「お前達の高校に鳥井って奴が居ると思うんだけど、何か知っているか?」
無意味に全員がくすくすと笑ったので不快な気分になった。
「鳥井?知ってるよ。同じクラスだもん」
リーダーの奴が陽気に話す。
「不登校になったよね。全然ガッコーに来てないけど」
話し方がむかつくが、必要な情報は手に入った。
「そうか、分かったよ。ありがとう」
学校に戻ってきていないのならば、もう充分だ。ここに居る意味も無くなったので、立ち去ろうとしたのだけれども、リーダーがじっと俺の顔を見つめてくる。
「兄妹っていうわけじゃないよね。似てないし。何?彼氏?」
質問に少し戸惑う。
「いや、違う」
「だよねぇ。鳥井に彼氏なんて似合わないし。でもアイツの事を狙ってるのなら止めた方がいいよ。心、弱いんだもん」
「何?」
「私達がちょーと注意や指導したりしただけで、学校来なくなっちゃうんだから」
そういうと全員がクスクスと笑った。
「何だと!」
「来なくなってから清々したよ。クラスに居なくなってとっても平和。ゴミが居なくなって綺麗になったわ」
今分かった。こいつらか!鳥井を虐めてた奴は。あんな風に追い詰めた奴らは。
リーダーの奴を睨む。それで怯んでいる様子もなく相変わらず楽しそうに笑っていた。
「ちょっと!その言い方は失礼だよ。ゴミに。鳥井とかなんかと比べられて可哀想」
取り巻きが言った。
「あははっ!そうだよね。そうだよね」
薄汚く笑う。笑うのを止めない。ここまで露骨で酷いとは思わなかった。
「お前ら、鳥井がどんな気持ちだったのか知っているのか?」
初めて出会った時のホームでの表情を思い出す。鳥井が、あいつがどんな覚悟でどんな顔をしながら死のうとしていたのか分かっているのか。
「知らないわよそんなの。鈍感だから何も感じてなかったんじゃないの?」
そんなわけないだろ。負の感情を表に出さないようにしていただけだ。何も感じていないように努めていただけだ。
だんだんとむかついて来た。このまま放っておいたら、さらに酷い言葉を楽しそうに言いそうだ。
思わず感情に任せて、リーダーを付き押してしまう。そのまま地面に勢いよく後ろに倒れ、尻もちをつかせてしまった。
はっとなり冷静になる。しまったと思い、声を掛けようとしたが相手が先に言葉を発して遮られてしまった。
「いってーな!私は女だぞ!弱いものイジメか!」
その単語に反応してしまう。虐め?俺が?虐めだって?
「違う!俺は……いじめてなんていない!」
怯んだ顔を見て倒れた女は笑う。心の弱い場所を知って喜んでいる顔だ。それ程のダメージを受けなかったのがすぐに立ち上がった。
醜く深く笑う。俺はこんな酷い奴と一緒なのか。俺もこんなに醜い顔をしているのか。こんな顔で、鳥井の前に居たというのだろうか。
俺も……そっち側の人間なのか……?
取り巻きの二人が後退りながら会話を始めて、警察という単語が聞こえた為、俺はすぐにその場を走って逃げた。
もう、ここには居られない。
そのままショッピングモールを抜けると、駅の方まで逃げた。
コインロッカーから荷物を取り出すと、すぐにやって来た電車に乗り込む。追ってくる人は居なかった。
ボックス席に座りながら呼吸を整える。結構な騒ぎになってしまった。もうあのショッピングモールに行くことは出来ないだろう。
俺は……俺は鳥井を追う権利があるのだろうか。あいつらと同じような顔をしているならば、近寄らないほうがいいのかもしれない。
助けようと思ったのもどこまでも自分自身の罪滅ぼしの為だ。自己満足に過ぎない。
そんな気持ちでは誰も助けられない。現に鳥井は何処かへと行ってしまい、自殺しようとしても止める手段がないのだから。
もうやめよう。
他に鳥井が行きそうな所なんて思いつかない。これ以上探すのは無理だ。追うのはもう終わりだ。そう思った。
あの女子高生達に声を掛けなければ良かったと後悔した。見覚えのある制服に引かれてしまったのが原因だ。あの制服が無ければ……。
いや、そうだ、制服か。まだ、それが残っていた。
俺は次の駅で降りると個室のトイレの中に入った。その中でキャリーケースにしまってあった鳥井の制服を取り出す。
そのまま隈なく触って固いものが入って無いか探る。絵柄的に変態だったが今は気にしている場合ではない。
上着の内ポケット内にそれはあった。取り出すとやはり、生徒手帳だった。
殆どの折り目が付けられていない綺麗な状態だ。それを開いて中の緊急連絡先の欄を確認する。そこには現在住んでいる住所と親の連絡先、さらに祖母の名前と住所と連絡先が書かれていた。
旅の中で鳥井が祖母の話をしていた事を思い出す。そこに行った可能性はある。行っていなくても何か知っているかも知れない。
手がかりがあるのなら、まだ先に進むべきなのかもしれない。少なくてもここで終わりにしたら後悔だけしか残らないだろう。
俺は鳥井の祖母の元へと向かう事にした。
むやみに探し回っても体力を消耗するだけなのでフードコードへ行き、ドリンクを一杯だけ注文し、好きだと言っていたパフェ屋の近くの席に居座る事にする。ここで張っていたら鳥井がやってきたら会えるだろう。しかし、もう半ば諦めかけていた。恐らくやってくる事はない。
それでも俺には時間があるし、これを区切りとして諦めると決めたので一日中粘る事にした。
フードコートは平日という事もあり、人はまばらにしか居ない。これならドリンク一杯で一席占領しても誰の迷惑にもならないはずだ。
パフェ屋に注文しにくる人物に注意しながら、俺は小説を読んで時間を潰した。そのまま夕刻まで粘ったものの、結局鳥井が現れる事は無かった。
これだけ粘れば充分だろう。諦めて席を立ち上がって去ろうとした時である。フードコート内に、やけに甲高い声が響いてきたのである。
声の方向を見てみると丁度複数人の女子高生達が楽しそうに会話をしながら入ってくる所だった。声量が大きくかなり目立っている。
その中に鳥井は居なかったけれども、見覚えのある制服にすぐに思い至る。俺の鞄の中にある制服と同じなのである。
もしかしたら、何かしらのヒントが得られるかもしれない。そう思い、すぐに女子高生の集団に近づいた。
「なぁに?ナンパ?」
全員に話しかけたつもりだったが中心にいた一人が、からかうように笑いながら返事を返してきた。どうやらコイツがこの集団のリーダーなのだろう。他の人達は何が起こるか楽しみという感じで見ているだけであった。
何となく嫌な予感がしたけれども、それを無視して続ける。
「聞きたいことがあるんだ」
「だからぁ?なぁに?」
「お前達の高校に鳥井って奴が居ると思うんだけど、何か知っているか?」
無意味に全員がくすくすと笑ったので不快な気分になった。
「鳥井?知ってるよ。同じクラスだもん」
リーダーの奴が陽気に話す。
「不登校になったよね。全然ガッコーに来てないけど」
話し方がむかつくが、必要な情報は手に入った。
「そうか、分かったよ。ありがとう」
学校に戻ってきていないのならば、もう充分だ。ここに居る意味も無くなったので、立ち去ろうとしたのだけれども、リーダーがじっと俺の顔を見つめてくる。
「兄妹っていうわけじゃないよね。似てないし。何?彼氏?」
質問に少し戸惑う。
「いや、違う」
「だよねぇ。鳥井に彼氏なんて似合わないし。でもアイツの事を狙ってるのなら止めた方がいいよ。心、弱いんだもん」
「何?」
「私達がちょーと注意や指導したりしただけで、学校来なくなっちゃうんだから」
そういうと全員がクスクスと笑った。
「何だと!」
「来なくなってから清々したよ。クラスに居なくなってとっても平和。ゴミが居なくなって綺麗になったわ」
今分かった。こいつらか!鳥井を虐めてた奴は。あんな風に追い詰めた奴らは。
リーダーの奴を睨む。それで怯んでいる様子もなく相変わらず楽しそうに笑っていた。
「ちょっと!その言い方は失礼だよ。ゴミに。鳥井とかなんかと比べられて可哀想」
取り巻きが言った。
「あははっ!そうだよね。そうだよね」
薄汚く笑う。笑うのを止めない。ここまで露骨で酷いとは思わなかった。
「お前ら、鳥井がどんな気持ちだったのか知っているのか?」
初めて出会った時のホームでの表情を思い出す。鳥井が、あいつがどんな覚悟でどんな顔をしながら死のうとしていたのか分かっているのか。
「知らないわよそんなの。鈍感だから何も感じてなかったんじゃないの?」
そんなわけないだろ。負の感情を表に出さないようにしていただけだ。何も感じていないように努めていただけだ。
だんだんとむかついて来た。このまま放っておいたら、さらに酷い言葉を楽しそうに言いそうだ。
思わず感情に任せて、リーダーを付き押してしまう。そのまま地面に勢いよく後ろに倒れ、尻もちをつかせてしまった。
はっとなり冷静になる。しまったと思い、声を掛けようとしたが相手が先に言葉を発して遮られてしまった。
「いってーな!私は女だぞ!弱いものイジメか!」
その単語に反応してしまう。虐め?俺が?虐めだって?
「違う!俺は……いじめてなんていない!」
怯んだ顔を見て倒れた女は笑う。心の弱い場所を知って喜んでいる顔だ。それ程のダメージを受けなかったのがすぐに立ち上がった。
醜く深く笑う。俺はこんな酷い奴と一緒なのか。俺もこんなに醜い顔をしているのか。こんな顔で、鳥井の前に居たというのだろうか。
俺も……そっち側の人間なのか……?
取り巻きの二人が後退りながら会話を始めて、警察という単語が聞こえた為、俺はすぐにその場を走って逃げた。
もう、ここには居られない。
そのままショッピングモールを抜けると、駅の方まで逃げた。
コインロッカーから荷物を取り出すと、すぐにやって来た電車に乗り込む。追ってくる人は居なかった。
ボックス席に座りながら呼吸を整える。結構な騒ぎになってしまった。もうあのショッピングモールに行くことは出来ないだろう。
俺は……俺は鳥井を追う権利があるのだろうか。あいつらと同じような顔をしているならば、近寄らないほうがいいのかもしれない。
助けようと思ったのもどこまでも自分自身の罪滅ぼしの為だ。自己満足に過ぎない。
そんな気持ちでは誰も助けられない。現に鳥井は何処かへと行ってしまい、自殺しようとしても止める手段がないのだから。
もうやめよう。
他に鳥井が行きそうな所なんて思いつかない。これ以上探すのは無理だ。追うのはもう終わりだ。そう思った。
あの女子高生達に声を掛けなければ良かったと後悔した。見覚えのある制服に引かれてしまったのが原因だ。あの制服が無ければ……。
いや、そうだ、制服か。まだ、それが残っていた。
俺は次の駅で降りると個室のトイレの中に入った。その中でキャリーケースにしまってあった鳥井の制服を取り出す。
そのまま隈なく触って固いものが入って無いか探る。絵柄的に変態だったが今は気にしている場合ではない。
上着の内ポケット内にそれはあった。取り出すとやはり、生徒手帳だった。
殆どの折り目が付けられていない綺麗な状態だ。それを開いて中の緊急連絡先の欄を確認する。そこには現在住んでいる住所と親の連絡先、さらに祖母の名前と住所と連絡先が書かれていた。
旅の中で鳥井が祖母の話をしていた事を思い出す。そこに行った可能性はある。行っていなくても何か知っているかも知れない。
手がかりがあるのなら、まだ先に進むべきなのかもしれない。少なくてもここで終わりにしたら後悔だけしか残らないだろう。
俺は鳥井の祖母の元へと向かう事にした。

