だが、人生とは予想のつかない出来事の連続だ。
もちろん、急逝した兄が実家を借金まみれにしていたこともだが、それ以上に驚く出来事が、律哉に訪れる。
(……この人は、なにが目的なのだろうか?)
所属する駐屯地の応接室にて。律哉は、見知らぬ男性と対面している。
見るからに金回りのよさそうな男は、律哉を吟味するように見つめてくる。
「桐ケ谷。このお方のご機嫌をくれぐれも損ねないようにな……」
上司は律哉にそう耳打ちして、応接室を出て行った。
その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。が、今ならばわかる。
多分、この男は軍に多大なる援助をしているのだろう。まぁ、いわば支援者だ。
(まぁ、ここ十数年は平和だしな。支援者が減っているのも、真実だ)
そう思いつつ、律哉は男の視線を受け留め続ける。しばらくして、男は「ふむ」と顎を撫でた。その手首には、豪奢な腕時計がはまっている。……やはり、この男は金持ちなのだ。
(だが、どうしてそんな人が俺なんかを……)
言ってはなんだが、律哉にあるのは『伯爵』という地位だけだ。しかも、今にも崩れ落ちそうなほどの、脆い立場。そんな人間に会いたいなど、この男はなにを企んでいるのか――。
「……キミが、桐ケ谷の当主だったな」
低い声で、そう問いかけられる。そのため、律哉は頷いた。
「はい。現在桐ケ谷家の当主を勤めております、律哉と申します」
華族なのだから、堂々としていればいい。それはわかっているが、どう考えても立場はこの男のほうが上だろう。
それに、この三年で律哉の華族としてのプライドなど消えている。そんなもの木っ端みじんに、壊れてしまった。
もちろん、急逝した兄が実家を借金まみれにしていたこともだが、それ以上に驚く出来事が、律哉に訪れる。
(……この人は、なにが目的なのだろうか?)
所属する駐屯地の応接室にて。律哉は、見知らぬ男性と対面している。
見るからに金回りのよさそうな男は、律哉を吟味するように見つめてくる。
「桐ケ谷。このお方のご機嫌をくれぐれも損ねないようにな……」
上司は律哉にそう耳打ちして、応接室を出て行った。
その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。が、今ならばわかる。
多分、この男は軍に多大なる援助をしているのだろう。まぁ、いわば支援者だ。
(まぁ、ここ十数年は平和だしな。支援者が減っているのも、真実だ)
そう思いつつ、律哉は男の視線を受け留め続ける。しばらくして、男は「ふむ」と顎を撫でた。その手首には、豪奢な腕時計がはまっている。……やはり、この男は金持ちなのだ。
(だが、どうしてそんな人が俺なんかを……)
言ってはなんだが、律哉にあるのは『伯爵』という地位だけだ。しかも、今にも崩れ落ちそうなほどの、脆い立場。そんな人間に会いたいなど、この男はなにを企んでいるのか――。
「……キミが、桐ケ谷の当主だったな」
低い声で、そう問いかけられる。そのため、律哉は頷いた。
「はい。現在桐ケ谷家の当主を勤めております、律哉と申します」
華族なのだから、堂々としていればいい。それはわかっているが、どう考えても立場はこの男のほうが上だろう。
それに、この三年で律哉の華族としてのプライドなど消えている。そんなもの木っ端みじんに、壊れてしまった。

