本日、訳あり軍人の彼と結婚します~ド貧乏な軍人伯爵さまと結婚したら、何故か甘く愛されています~

 でも、なにも、彼がここまで張り切る必要は――。

(……いや、これは一種の商売なのか)

 多分だが、彼にとってこれは商売なのだ。桐ケ谷は貧乏ではあるものの、持っている人脈は素晴らしいものだ。

 そんな桐ケ谷の当主の結婚相手に娘が選ばれた。彼はそれを存分に知らしめ、利用するつもりなのだろう。

 ……まったく、油断も隙も無いとはこのことだ。

「なんだか、大変なことになってしまったな……」

 花里が出て行った後。律哉は小さくそう呟く。すると、部屋の扉がノックされ、返事も聞かずに上司が顔を出す。

「桐ケ谷! お前、あのお方となにをお話したんだ……?」

 上司は律哉に詰め寄ってくる。その額には汗がにじんでおり、相当心配だったらしい。

 今、彼に軍への援助を打ち切られれば。いろいろと問題なのだろう。それくらい、律哉にだってわかっている。

「……上官」
「……あぁ」

 真剣な眼差しで、上司のことを呼ぶ。そうすれば、彼も律哉の雰囲気からただ事ではないと悟ったらしい。真剣な表情を浮かべる。

「この度、俺は花里の娘さんと結婚することになりました」
「……は?」

 上司がぽかんと口を開けた。そりゃそうだ。律哉だって、予想していなかったのだから。

「というわけで、今後なにかと休みを取ることが増えてしまいそうです」
「あ、あぁ、それは、構わないが……」

 式の準備は大変だ。……特に、彼があそこまで張り切っている以上、律哉もある程度動かねばならないだろう。

(せめて、大金に見合うだけの価値を、差し出さねば……)

 結局、律哉は何処までも真面目なのだ。そうじゃないと、こんなこと思わないだろうから。