文化祭当日。一年生は舞台発表がないからか、iのアイドルバレによる変な雰囲気は起こっていない。
ペットボトルキャップアートも堂々完成し展示しているが、特に達成感は無い。oは自身が担当した箇所こそ把握しているものの、この学年の一人に過ぎないのだなと感じた。
土曜だがiも参加している。iと過ごす土曜日が実現するも、クラスも違えば中学の文化祭で見て回る範囲はたかが知れているので、集団を垣間見た程度である。
アイドルのiも、ここでは制服により統一された一人に過ぎないのだ。
来年も学年制作なので、文化祭らしさは三年生までお預けだ。
平日の部活でiに会う日常に戻る、と思いきや今度は祝日明けの金曜日にiの姿がない。cによると学校も休んだらしい。
eが「仕事だってさ」と話していたので、ちゃんと学校に連絡を入れ、友人や先輩にも伝えて休んだようである。
家のパソコンでアイドルグループの活動を確認してみる。iの公式ブログには、来週に行われる《生誕祭》の告知がある。
この日程をoは把握していたが、改めて本人による告知を見てしまうと、好きな子改め推しの子の誕生日がやってくる焦燥感に駆られる。
週明け、二人きりになるタイミングが訪れる。「アイドルの仕事はどう?」oは聞いてみる。
「忙しくなってまいりました」何故か敬語になるi。
「そういえば生誕祭あるよね」「そうそう、誕プレよろしく」「まじで?」「oは誕生日いつ?」。
十月某日だと伝える。「この前じゃん!言ってよ」今年から家族でケーキを食べる日に変わったばかりで、人に言えたものではなかった。
「じゃー誕プレ交換しよ!」「まじで?」「よろしくー」思わぬ重責を担う。
iの誕生日は今週金曜で、生誕祭前日だ。プレゼントを用意出来ないまま、まずは誕生日を迎える。部員たちに紛れて「おめでとう」と言うのが精一杯だった。
日曜日。前日夜と午前中に、生誕祭のあれこれやプレゼントは何が良いかを検索してから、oは一人ショッピングモールへ繰り出してみる。
めぼしい物はあるが、決め手に欠ける。女子に何を上げれば良いかよりも、iが何を欲しいかが分からない。
意外と『Vヴァンガード』にある物でも良さそうだが、今日はデートの下見だったと思うことにしたoは、本屋を二周くらいして、雑誌を立ち読みする。
一階のスーパーで気になっていた『Wタンサン』を買って帰る。約二十円分の甘味が足りない、oにはまだ早い炭酸水。
背伸びしてプレゼントを買わなかったのは正解かもしれない、そう考えながら飲み切った。
平日、二人きりになる機会が訪れる。oはプレゼントを買えていないことを謝る。
「実は私もまだ買ってない」と言うiは、迷っていたoとは違い、目当ての物を来週には購入するという。
「私が代わりに買ってくるから待ってて」プレゼント交換から代理購入に話が変わっている気がする。千円以内だと良いな。
次の月曜日。iはすれ違いざまにoの耳元で「プレゼント、ロッカーにぶち込んでおくからね」とささやく。アイドルがぶち込んでおくなんて言うんじゃありません。
男子部員が共用するロッカーは外にある。成る程、二人きりになるタイミングよりもチャンスがあるのだろう。少しいけない領域に踏み込んでいるiのことが心配になるo。
その日の帰りまでにプレゼントが入っているであろう袋を確認。自然に鞄の中へ移動させる。何かの取引ですか。
うきうきで家に帰り、世界的人気キャラクターが描かれているラッピング袋の中から、オレンジ色のキャラのぬいぐるみが現れる。
『P R・S』の炎タイプの御三家A。oがやり込んでいた『D・P』の一つ前の世代だ。
iとはPシリーズの話はしていない。このiのチョイスから見えてくるのは、iも男子に何を上げれば良いのか分からなかったのだろうということと、オレンジ色の物であるということだ。
iのメンバーカラーはオレンジ。oは早速学習机に飾る。
翌日の部活。iが近くに居ることを確認しPシリーズの話をする。この話題は男子の間ではすでにしており、最新の『B・W』をやっている方が多かった。
oも小学六年最後の年末年始はやり込んでいたし、ここに居るbやここに居ないaとの共通言語でもあった。
oは部活が始まったタイミングで一旦Pシリーズから離れているが、aは続けているに違いない。
cが「BWやってたよー」と会話に入ってくる。そういえば小学校の頃も、cとは稀にPシリーズの話をしていたな、と思い起こす。
「私はただのP好きです」とiも参戦。
iの言うPは『D・P』の水タイプの御三家である。今もダイパ世代女子から、絶大な人気を誇っているキャラだ。
dが「私も好き!」と珍しく前のめりになったところで休憩時間終了。この間のeの合いの手は割愛する。
週末のアイドルiのブログには、Pシリーズのオフィシャルショップ『Pセンター』に行った話とともに、水色のキャラPへの愛が語られていた。
写真に映るそのぬいぐるみの隣には、oが貰ったオレンジ色のキャラAのぬいぐるみが並んでいる。
i自身のイメージカラーとしか解釈出来ないが、そのオレンジ色のキャラのぬいぐるみは今、oの目の前にある。
まあiなら買い直して、またお揃いにしそうではあるが。
期末テストの勉強の合間、誕プレ交換にも、代理購入にもなっていないことを気にするo。
iにはプレゼントを渡すべきである。
oはやっとプレゼント候補が思い浮かび、ひとまず勉強に集中する。オレンジ色のぬいぐるみがモチベーションになる。
oがプレゼントを調達する日。弓具店の移動販売車が学校に来る日だ。
試合会場でもよく見掛けていて、そのときは「意外と高いな」と見送っていた、矢のキーホルダーを二つ購入する。
オレンジ色と水色。問題はiにどうやって渡すかである。
iと二人きりになりそうなタイミングでロッカーからプレゼントを取り出し渡す。この間数十秒。
今までの偶発的に二人きりになるタイミングとは違う。実現するのに一週間ほど掛かった。
iから「早めのクリスマスプレゼントありがとう」と言われ、どきっとする。十二月中旬。
一ヶ月遅れでお互いの誕生日プレゼント交換を果たしたつもりが、思わぬ副産物となった。
終業式を終え、iのアイドルグループのクリスマスイベントを穏やかな気持ちで迎える。
iが矢のキーホルダーは「ぬいぐるみに抱き抱えさせる」と言っていたので、oも真似てみる。
実際にやってみると立て掛けるような形になるが、水色の矢のキーホルダーが、オレンジ色のぬいぐるみに映える。
iの部屋には今、その逆の配色で、水色のぬいぐるみが留守番をしているのだろう。
ペットボトルキャップアートも堂々完成し展示しているが、特に達成感は無い。oは自身が担当した箇所こそ把握しているものの、この学年の一人に過ぎないのだなと感じた。
土曜だがiも参加している。iと過ごす土曜日が実現するも、クラスも違えば中学の文化祭で見て回る範囲はたかが知れているので、集団を垣間見た程度である。
アイドルのiも、ここでは制服により統一された一人に過ぎないのだ。
来年も学年制作なので、文化祭らしさは三年生までお預けだ。
平日の部活でiに会う日常に戻る、と思いきや今度は祝日明けの金曜日にiの姿がない。cによると学校も休んだらしい。
eが「仕事だってさ」と話していたので、ちゃんと学校に連絡を入れ、友人や先輩にも伝えて休んだようである。
家のパソコンでアイドルグループの活動を確認してみる。iの公式ブログには、来週に行われる《生誕祭》の告知がある。
この日程をoは把握していたが、改めて本人による告知を見てしまうと、好きな子改め推しの子の誕生日がやってくる焦燥感に駆られる。
週明け、二人きりになるタイミングが訪れる。「アイドルの仕事はどう?」oは聞いてみる。
「忙しくなってまいりました」何故か敬語になるi。
「そういえば生誕祭あるよね」「そうそう、誕プレよろしく」「まじで?」「oは誕生日いつ?」。
十月某日だと伝える。「この前じゃん!言ってよ」今年から家族でケーキを食べる日に変わったばかりで、人に言えたものではなかった。
「じゃー誕プレ交換しよ!」「まじで?」「よろしくー」思わぬ重責を担う。
iの誕生日は今週金曜で、生誕祭前日だ。プレゼントを用意出来ないまま、まずは誕生日を迎える。部員たちに紛れて「おめでとう」と言うのが精一杯だった。
日曜日。前日夜と午前中に、生誕祭のあれこれやプレゼントは何が良いかを検索してから、oは一人ショッピングモールへ繰り出してみる。
めぼしい物はあるが、決め手に欠ける。女子に何を上げれば良いかよりも、iが何を欲しいかが分からない。
意外と『Vヴァンガード』にある物でも良さそうだが、今日はデートの下見だったと思うことにしたoは、本屋を二周くらいして、雑誌を立ち読みする。
一階のスーパーで気になっていた『Wタンサン』を買って帰る。約二十円分の甘味が足りない、oにはまだ早い炭酸水。
背伸びしてプレゼントを買わなかったのは正解かもしれない、そう考えながら飲み切った。
平日、二人きりになる機会が訪れる。oはプレゼントを買えていないことを謝る。
「実は私もまだ買ってない」と言うiは、迷っていたoとは違い、目当ての物を来週には購入するという。
「私が代わりに買ってくるから待ってて」プレゼント交換から代理購入に話が変わっている気がする。千円以内だと良いな。
次の月曜日。iはすれ違いざまにoの耳元で「プレゼント、ロッカーにぶち込んでおくからね」とささやく。アイドルがぶち込んでおくなんて言うんじゃありません。
男子部員が共用するロッカーは外にある。成る程、二人きりになるタイミングよりもチャンスがあるのだろう。少しいけない領域に踏み込んでいるiのことが心配になるo。
その日の帰りまでにプレゼントが入っているであろう袋を確認。自然に鞄の中へ移動させる。何かの取引ですか。
うきうきで家に帰り、世界的人気キャラクターが描かれているラッピング袋の中から、オレンジ色のキャラのぬいぐるみが現れる。
『P R・S』の炎タイプの御三家A。oがやり込んでいた『D・P』の一つ前の世代だ。
iとはPシリーズの話はしていない。このiのチョイスから見えてくるのは、iも男子に何を上げれば良いのか分からなかったのだろうということと、オレンジ色の物であるということだ。
iのメンバーカラーはオレンジ。oは早速学習机に飾る。
翌日の部活。iが近くに居ることを確認しPシリーズの話をする。この話題は男子の間ではすでにしており、最新の『B・W』をやっている方が多かった。
oも小学六年最後の年末年始はやり込んでいたし、ここに居るbやここに居ないaとの共通言語でもあった。
oは部活が始まったタイミングで一旦Pシリーズから離れているが、aは続けているに違いない。
cが「BWやってたよー」と会話に入ってくる。そういえば小学校の頃も、cとは稀にPシリーズの話をしていたな、と思い起こす。
「私はただのP好きです」とiも参戦。
iの言うPは『D・P』の水タイプの御三家である。今もダイパ世代女子から、絶大な人気を誇っているキャラだ。
dが「私も好き!」と珍しく前のめりになったところで休憩時間終了。この間のeの合いの手は割愛する。
週末のアイドルiのブログには、Pシリーズのオフィシャルショップ『Pセンター』に行った話とともに、水色のキャラPへの愛が語られていた。
写真に映るそのぬいぐるみの隣には、oが貰ったオレンジ色のキャラAのぬいぐるみが並んでいる。
i自身のイメージカラーとしか解釈出来ないが、そのオレンジ色のキャラのぬいぐるみは今、oの目の前にある。
まあiなら買い直して、またお揃いにしそうではあるが。
期末テストの勉強の合間、誕プレ交換にも、代理購入にもなっていないことを気にするo。
iにはプレゼントを渡すべきである。
oはやっとプレゼント候補が思い浮かび、ひとまず勉強に集中する。オレンジ色のぬいぐるみがモチベーションになる。
oがプレゼントを調達する日。弓具店の移動販売車が学校に来る日だ。
試合会場でもよく見掛けていて、そのときは「意外と高いな」と見送っていた、矢のキーホルダーを二つ購入する。
オレンジ色と水色。問題はiにどうやって渡すかである。
iと二人きりになりそうなタイミングでロッカーからプレゼントを取り出し渡す。この間数十秒。
今までの偶発的に二人きりになるタイミングとは違う。実現するのに一週間ほど掛かった。
iから「早めのクリスマスプレゼントありがとう」と言われ、どきっとする。十二月中旬。
一ヶ月遅れでお互いの誕生日プレゼント交換を果たしたつもりが、思わぬ副産物となった。
終業式を終え、iのアイドルグループのクリスマスイベントを穏やかな気持ちで迎える。
iが矢のキーホルダーは「ぬいぐるみに抱き抱えさせる」と言っていたので、oも真似てみる。
実際にやってみると立て掛けるような形になるが、水色の矢のキーホルダーが、オレンジ色のぬいぐるみに映える。
iの部屋には今、その逆の配色で、水色のぬいぐるみが留守番をしているのだろう。
