「わぁ、綺麗」

「こんなものしか見せてやれぬ」

月読様は申し訳なさそうに眉を下げた。

「すごく嬉しいです」

「そうか」

思えば月読様と二人っきりでこうして夜を過ごすことは、久しぶりだ。普段は満月のお世話でいっぱいいっぱい。斉賀家からもたくさんの仕事を貰っているため、忙しい。伴藤家にいた頃みたいに強要されることは一切ないけれど、できるだけ恩に報いたいとせわしなく過ごしているのだ。

ふと、月読様の指が私の頬に触れた。
優しく撫でてくれる、その瞳はどこか悲しげに揺れる。

「……痕が残ってしまったな」

「でもお医者様はこんなに綺麗に治るのは見たことがないって仰っていました」

「元通り、綺麗に治してやりたかった」

「そんな、十分ですよ。でも、……私の顔、醜いですか?」

あんなに酷い大火傷をしたのに、痕が残っただけで他に支障はない。前と同じように動かすことだってできる。だからあまり気にしていなかったのだけど。言われてみれば顔の半分、体の半分が斑になって、あまり良い見た目ではない。だから月読様もそう感じているのかなと思ったのだけど……。

「醜いわけあるものか。喜与は綺麗だよ」

慈しむように頬を撫でてくれる、その手がとても気持ちがいい。触れてもらえる喜びが、体の奥からわき上がってくる。

「月読様……」

絡み合う視線が近くなり、やがてそうっと唇が重なった。月読様の唇が火傷の痕をなぞる。頬に目元に耳たぶに、そして首筋に。

「あっ」

ぶるりと体が震え、どこか奥の方が熱くなる。無意識に息が荒くなり、思わず月読様の装束の袖を握りしめていた。

「こら、そんな顔をして私を煽るでない」

「つ、月読様が、いけないのです。私のせいじゃありません」

「ふふっ、喜与が可愛くて堪らぬよ」

「満月にも同じことを言っていましたよ」

照れ隠しにぷくっと頬を膨らませ、ぷいっと目を逸らした。緊張で心臓がドッドッと音を立てる。

「なんだ、妬いているのか?」

「そんなんじゃ――」