「あの……。奥様は、神様を信じていらっしゃいますか?」

「え?」

「あ、いえ、すみません。名月神社を管理されているのに、不躾でした。なんでもありません」

私は慌てて頭を下げる。なんて馬鹿な質問をしてしまったのだろう。それを聞いて私はどうするつもりなんだ。気持ち悪いことを言うやつだと思われたかもしれない。けれど奥様は黙ったまま、しばらく静かに時が流れた。

「喜与さんは、どう思ってるの? 神様はいると思う?」

「……」

「別にどう答えようが、それに対して責めたりしないから、あなたの考えを教えてちょうだい」

「私は……いる……と思います」

「そう……」

奥様はまた黙り込む。部屋をぐるりと見回してから、ゆっくりと私に視線が戻ってくる。

「私ね、名月神社に行くと、たまに温かい気配を感じていたの。それが何かはわからなくて、神様だったらいいなって思ってた。その気配は神社でしか感じることができなかったんだけど……。喜与さんが斉賀の家に来てから、ここでもそれを感じるようになった。神様が喜与さんを助けてくれたんじゃないかって、本気で思ってるわ」

「ほ、本当に……?」

「ええ。私の感覚でしかないけれど――って、何泣いてるの!」

「すみません、嬉しくて……ぐすっ……」

自然と涙が溢れ出てくる。神様が見えなくとも、気配を感じられる人がいたんだと思うと、胸が熱く張り裂けそうだ。

「なるほど気配を感じられるとな。喜与や、この者にボクの存在を伝えてくれ。そして食物をもらうのだ。ボクはおなかがすいた!」

うさぎが私と奥様のまわりをぴょんぴょん飛び跳ねる。うさぎは神使だから神様じゃないと思うんだけど、お腹がすいたと主張が激しい。