「私は伴藤の嫁です。それなのに、月読様を愛しておりますので……」

月読様は押し黙った。月読様もわかっているのだ。この関係が好ましくないことなど。けれど、こうなったのはすべて私のわがまま。月読様は受け入れてくれただけだ。

「こういうのを、不貞と言うのですよね?」

「道徳観念上、褒められたものではないな」

「ではやはり、罰が当たりますか?」

「もし罰があるのなら、私がすべて受けようぞ。喜与はもう十分に伴藤からひどい仕打ちを受けたであろう。これ以上、受ける必要はない」

「……はい」

ぎゅうっと月読様にしがみつく。甘い白檀の香りが私を包み込み、もやもやした心をすうっと落ち着かせてくれた。ずっとこうしていたい――

「下まで送っていこう」

「ありがとうございます」

月読様は私を抱える。離れたくないと、私は月読様の首に手を回した。柔らかな風が舞い、体が宙に浮き上がる。

手を伸ばせば届きそうな夜空の星が、キラキラと瞬く。幻想的な光景に酔いしれながら、私は月読様の頬に口づけを落とした。

空を舞いながら、月読様と視線が交わる。柔らかく目を細めた月読様は「可愛らしいことをするでない」とほほ笑みながら、甘い口づけをくれた。

幸せで幸せで、胸が張り裂けそうで、私は今日のこの夜空を忘れないだろうなと思った。