「体調に変わりはないか?」

「はい、大丈夫です。初期のような悪阻も貧血も、嘘のようになくなりました。月読様が何かしてくださったのですか? お腹を触ってもらってから調子がいいような……」

「喜与を苦しませないでくれと願っただけだ」

「神様っぽい……」

「神だからな」

「ふふっ、そうでした」

笑い合う時間がとても尊い。毎回思う。このまま夜が明けなければいいのに、と。月読様と星を眺め、草花を愛でる。なんて贅沢な時間だろうか。

「そろそろ帰らねば、体に差し支えるぞ」

「はい。わかっております。ただ、名残惜しいのです。次はいつ来れるかわからないので」

「無理をせずとも良い」

「本当は無理をしてでも来たいです」

「喜与」

月読様はそっと私を引き寄せて抱きしめた。ふわりと香る白檀の匂い。月読様の胸の中は心地いい。

「いつもお主にばかり苦労をかけてすまぬ」

「苦労だなんて思っておりません。それに、月読様は神社の(もり)があるのですよね」

「それはそうだが……。神は特定の誰かに干渉してはならぬ」

「もう干渉していますよね」

「……」

「すみません。意地悪を申しました。とても感謝しております。ここで会えるだけで私は嬉しい。辛いことや苦しいことがあっても、頑張れるのです」

月読様は黙って頭を撫でてくれた。

月読様は多くは語ってくれない。けれど、私のことを大切にしてくれていることはわかる。言葉や行動ひとつひとつが、どれも柔らかくて優しい。

「月読様……」

「なんだ?」

「私は(バチ)が当たるでしょうか?」

「なぜ?」

私は言い淀む。
本当は考えないようにしていたけれど、どうしても考えてしまう。私と月読様の関係のことを。