「喜与、そんな風に自分を粗末にするでない」

月読様は落ちた着物を拾って、そっと私に羽織らせる。

「私の体が貧相だからいけないのですか?」

「いや」

「私が伴藤の嫁だからいけないのですか? 何度もあの男に犯された体だから――」

言い終わる前に抱きしめられ、私の頭は月読様の胸に押し付けられた。

「皆まで言わずともよい」

悲痛な声が耳に届く。月読様は私の事情は知っている。私が毎晩のように花に水をやりながら、愚痴をこぼしていたからだ。詳しく話したことはないけれど、察してくれているに違いなかった。

「喜与、この傷や痣は殴られたからか?」

はだけた胸のあたりに大きな痣ができている。殴られすぎて気づかなかった。たぶん、体のあちこちに、小さな傷や痣があるのだろう。もう、どこが痛むのかすらよくわからない。

月読様はそうっと触れたあと、そこに柔らかな口づけをくれた。体の奥が痺れるようにビクンと反応する?

「痛むか?」

「痛くないです。なんだか……、心臓が……壊れそう……」

先ほどからバクンバクンと物凄い音を立てている。急に緊張と羞恥が襲ってきて、はだけた着物の裾をぎゅうっと握った。

「喜与が私を煽ったのだぞ」

「それは、そうなんですけど……でも、あの……私、こんな感覚初めてで……」

「ではやめるのか。一生のお願いとやら」

「や、やだっ、やめないでっ、お願いっ。月読さ――んぅっ」

月読様の手が私の体を這う。優しくゆっくりと、まるで壊れ物でも扱うかのように大切にしてくれる。

甘い吐息と甘ったるい声が出た。
痛いことなど何一つない。

涙が溢れる。
熱を孕んだ月読様の瞳は、まるで星空を映し出しているように綺麗で儚い。

「大丈夫か?」

「はい、嬉しくて泣いているのです。こんなに幸せなことがあるのですね」

「私もとても満たされた気持ちだ」

何度も口づけを交わす。
月読様と一つになれた喜びが、また一筋涙となって流れる。

知らなかった。
これが本当の愛の営みなのだ――