「…あれ?」
次の瞬間、私は知らない場所にいた。暖かい風が私の前髪を揺らす。
「風が、吹いてる」
目の前には大きな樹木が聳え立っている。試しに表面を手で触ってみる。
「感触が、ちゃんとある…」
間違いない。生前の感覚が戻ってきてる!生きるってことが、こんなにも幸せだったなんて…
「あれ、私泣いてる?」
視界がぼやける。生きていることに感動して無意識に涙が出てしまった。ありがとう、死者の案内人さん。私、幸せ!
「ここから一年間…頑張って生きてみるよ」
新緑芽吹く季節の暖かな日差しが、私の新たな人生の始まりを告げた。


