「…あの、どうしたんですか？もしかして迷子とか…」
　いきなりこっちの世界に放り出された私に声をかけてくる人がいた。
　心配そうにこちらを向く少年と目が合った。生きる喜びに感動して泣いていたせいで、「迷子？」なんて見当違いな心配をされた。でもある意味迷子なのかもしれないけど。
「え？あっ…迷子とかではないんですけど、ちょっと動揺していて…」
「えっと、大丈夫…ですか？」
　私は、大丈夫なのか？正直言って、分からない。
「本当にこんなことってあるんだ…」
　思わず呟いてしまった。何も知らない彼からしたら意味が分からないだろう。
「あ、いや何でもないです！ちょっと人と話すのが久しぶりで、緊張してるみたいです…」
　我ながら苦しい嘘を並べる。
「そ、そうなんだ？」
「あ、あの、私最近引っ越して来た者なんです。ここで出会えたのも何かの縁なので、名前聞いても良いですか？」
　こうなったら、無理やり話題を変えるしかない！そう思ってまずは名前を聞いてみることにした。
「俺は磯崎隼人。高校2年、よろしく！」
　すごい！現世に戻ったら同い年の男子から声をかけられるなんて、そんなの奇跡じゃないか。
「同い年だね！私、滝野花怜って言います。よろしくね磯崎くん！」