PART 4
(「MOJIの映画レビュー」より)
竹垣村リポート(その5)
2024-03-30 21:23
テーマ:ファウンド・フッテージ
「ファウンド・フッテージ」騒動の後始末、竹垣村で体験したことをこのブログで書いてきた訳ですが、読者の皆さんの反応はあんまり芳しくはないですね。
嘘つくなとか……小説書くなら他でやれとか……幻滅した映画レビューももう読まないとか……
まあ、信じられないのも無理はないと思うのです。なので、いちいち反論するつもりはありません。
僕はただ、ありのまま今起こったことを話すぜ!ってだけなので。
幸いなことに、この連載も今回で終わりです。興味ある人だけお読みください。
次からは、通常の映画レビューに戻ります。
洞窟の奥で、S先生に言われた通りに祭壇を並べ、祭壇の前に神綱を置きました。
名古屋でS先生がハードディスクの消去を開始します。儀式にある依代を焼くっていうのを、白痩神が入った映画を消去することで代用する訳ですね。
それでいいのか?と思いますが、S先生によれば、呪術というのは見かけではなくて本質が大事であるそうです。
依代が消去されて、神綱を取り除けば封印の儀式は完了する。
神綱のラインを境界に、人間の世界と死後の世界の境目が、再びしっかりと閉じられるということです。
ダダ漏れになっていた神霊や死霊は死後の世界に戻り、竹垣村は人間の世界に戻るはず。
そこで、はっと気づきました。池の中の手に足を掴まれて動けないSUZUさんが、まだ神綱の向こう側にいる!
このまま境界が閉じたら、SUZUさんは黄泉の世界に置き去りです。
慌てて、僕は池の中に飛び込みました。そこから先は、かなりの混乱状態で記憶もはっきりしないので、事実と違うところもあるかもしれません。
池の中に踏み込むと、たくさんの手が下の方から伸びてきて、僕の足を掴んできました。いや、はっきりとそう分かった訳じゃないけど、そんな感触がしたということです。
池自体は浅くて膝が浸かるくらいの深さしかなかったので、下に人がいるなんてことはあり得ないはずなんだけど。
でも、足に感じる感覚としては大勢の人たちが下にいて、這い上がろうと必死にあがいて取り縋ってくる感じでした。
立ち止まると深みへ引き摺り込まれそうなので、そのまま歩いて池を横切りました。SUZUさんは池の向こう岸にいて、下半身が池の中にはまっていました。深さからは、そんなにはまるはずがないのだけれど。
SUZUさんの腕を掴んで、強引に池から引っ張り上げました。スムーズにいったのは、SUZUさんが思った以上に軽かったおかげですね。思えば、SUZUさんに会うのはその時が初めてだった訳ですが。事前に想像していた以上に、小さかったですSUZUさんは。
SUZUさんを引っ張って、またジャボジャボと池を戻っていくと、白痩神がもうそこまで迫ってきていました。既に神綱を踏み越えて、池の中にまで踏み込んできている。ビデオカメラの光の中に、白い不快な死体の顔が浮かんで見えます。ブヨブヨした肌、真っ黒な目、そして肉が腐った最悪な臭気。
あの暗い洞窟の袋小路で、生きて歩く死体と対面している。その事実に、気が狂いそうでした。
暗がりの中を、骨ばった白い手が伸びて来る。僕に触れようとする白痩神の手、それは死のひと触れなのだと、直感的に僕は感じました。触れられたら最後、白痩神の領域、死へと引き摺り込まれるのだろうと。
何も考えないまま、ビデオカメラを前に突き出していました。ほとんど反射のような動きです。カメラのライトに照らされた白痩神が、一瞬動きを止め、わずかに手を引っ込める。でもその後ろから、死人たちがわらわらと出てきました。
先頭にいたのはあの宮司。顔にいっぱいの蛆虫がうぞうぞと蠢いている宮司です。続いて、首のねじれた小川さんや北原さんなどの死人たち。その後ろからも大勢が続いて来て。一斉に掴まれて、手からカメラをもぎ取られました。カメラのライトが消えて、完全な暗闇が降りました。
大勢の死人たちの冷たい手が、僕の体に絡みつき締めつけて、そして前へと送り出そうとしています。暗闇の中で待ち受けている白痩神に、貢ぎ物として僕を差し出そうとするように。何も見えない真っ暗闇の中に、白痩神のじっと見つめる視線を感じ、その手が伸びてくる空気の動きを感じました。
「SUZUさん、地面の綱を取って!」僕は叫びました。
僕らが生き延びることができたのは、そこでSUZUさんが何の疑問も感じず、すぐさま言われた通りに行動してくれたからでしょうね。そうでなかったら、数秒後には触れられていたと思います。
SUZUさんはすばしこく身を屈めて死人たちの足元を走り抜け、地面にあった神綱を掴んで引き寄せました。
同時に、何か怒号のような声が、頭の中に響いてきました。実際の声じゃない。頭の中で響く声です。強い怒りをはらんだ、恨みに満ちた咆哮。人間を、生きたものを、心底憎み罵るような。
それが白痩神のものだったのか、あるいは宮司の声だったのかは分かりません。
不意に、僕を掴んでいた死人たちの力が緩みました。暗闇の中で僕はどうにかSUZUさんの手を掴み、出口と思われる方向へ向けて走りました。
闇の中を走って走って、やがて洞窟から飛び出して。
竹垣神社の裏庭に立つと、もうすっかり日は落ちて、夜になっていました。
とは言え、洞窟の中の暗闇と比べれば、夜はずっと明るくて。月明かりが差していて、神社の様子ははっきりと見ることができました。
その時に僕とSUZUさんは、封印が成功したことを知ったのです。
空気が、さっきまでと全然違っていました。奇妙な空気の歪みはなく、腐ったような不快な匂いもない。竹藪も静か。禍々しさは消えていて、ただ夜の神社の厳かな静けさがありました。
死人たちも見当たらない。さっきまでその場を覆っていた濃く重い死の気配は消えて、竹垣神社は人間の世界に戻っていました。
ぽっかり開いた洞窟の出口を見ても、怖さは感じませんでした。あそこから白痩神が出てくることはない、と信じることができました。そこはもう、理屈じゃないですね。
「死ななかった」と、SUZUさんが震える声で言いました。「何だか嘘みたいです。絶対に死ぬと思ってました」
「そうですね。死ぬかと思いました」と僕も言いました。僕の声も震えていました。
見ると、二人ともひどい有り様です。SUZUさんは泥水にまみれていたし、僕も死人たちの臭い体液を全身に浴びていました。髪の毛に絡みついた蛆虫を、SUZUさんが取ってくれました。
顔を見合わせて、何だか笑ってしまったのでした。
SUZUさんととりとめもない話をしながら、山を降りていきます。
もう怖い話はお互いにこりごりだったのでね。話題はずっと、映画の話でしたよ。
※
(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
竹垣村とMOJIさんのことの巻
2024-04-01 19:20
テーマ:ブログ
みなさんこんにちは! SUZUです。ドキドキ映画ライフ、楽しんでいますか?
一時はどうなることかと思いましたが、私もどうにか、ドキドキ映画ライフを取り戻しました! よかった!
最近はすっかり映画ばっかり観ています。怖いことを心配せず、安心して映画館で映画が観られるって、本当にいいことですね!
私はもう本当に死の世界に引っ張り込まれる一歩手前まで行っちゃったので、今もこうして生きていられるのはMOJIさんとS先生のおかげです。
中でもMOJIさんは、本当に命をかけて助けに来てくれたので。深く深く感謝しないといけないと思ってます。
あと、私は助かった訳だけど、残念ながら犠牲になってしまった小川悠生さんやコロ助さん、映画館で亡くなった人や、他の人たちも。
映画を愛する人たちが、たくさん犠牲になってしまいました。
心から、ご冥福をお祈りしたいと思います。
最後に……MOJIさんとは竹垣村の洞窟のいちばん奥の、切羽詰まった場所で初めて顔を合わせた訳だけど。
私を見て、MOJIさんが意外そうな顔をしていたのを印象深く覚えてます。MOJIさんは私のことを、ちょっと違うふうにイメージしていたみたいですね。
MOJIさんとはブログやメールの文章で話をするだけだったので。私のことを、もっと年上だと思っていたみたいです。
ブログだとついつい背伸びして、大人ぶった書き方しちゃうので。一人称も大人っぽく「私」にしていたし。
それと、私はブログの中で一度も、自分が女性であるような書き方をしたことはないと思うのですが。MOJIさんは私を女性だと思っていたみたい。
まさか14歳の男子中学生だったとは……白痩神をめぐる何よりも、いちばんびっくりしたって言ってました。
もしかして、大人の女性だと思っていたから、命懸けで助けに来てくれた……って、まさかそんなことはないと思いますけどね!
それはともかく、今回のことがきっかけで、MOJIさんとはすっかりいい映画友達になれました!
年は離れてますけど、映画の話をするとお互いに止まらなくなります。今度、一緒に「オーメン・ザ・ファースト」を観に行く予定です!
※
株式会社キャメルライド オフィシャルサイト告知ページより(2025年1月10日更新)
映画「ファウンド・フッテージ2」公開決定!
2023年、誰にも知られずひっそりと限定公開。その後「観ると呪われる」「観ると死ぬ」と社会現象を巻き起こし、「観てはいけない映画」として封印された曰くつきの作品「ファウンド・フッテージ」。
そのロケ地となった山奥の廃村で、人知れず撮影されたビデオ映像が存在した……!
虚構と現実が交錯する、スーパーリアル・ドキュメンタリー・ホラーがいよいよ登場。
STORY
「その映像には、観てはいけない恐怖が映っている……!」
今や都市伝説となった映画「ファウンド・フッテージ」の実像に迫るため、関係者を訪ね歩く杉野(平井優馬)をリーダーとする調査チーム。しかし関係者の口は一様に固く、なかなか真実に辿り着けない。業を煮やした杉野は「ファウンド・フッテージ」のロケ地だった山奥の廃村を訪れ、そこに放置されていたビデオカメラを発見する。そこには、想像を絶する恐怖の映像が記録されていた……!
コメント 監督 小堀宏和
本作は、フィクションとドキュメンタリーの間を縫うような作りになっています。平井優馬くんに演じてもらった杉野の役柄はフィクションですが、登場する「関係者」の多くは本物の当事者の人たちです(本人の希望があった場合はモザイクをかけさせてもらっています)。そして何より、後半に登場する「ビデオ映像」は、実際にロケ地となった無人の廃村で回収したカメラに残されていた映像です。正真正銘、本物の迫力をぜひご覧ください! ……ただ、その結果呪われても当方は責任は負いかねますのであしからず。
コメント 主演・杉野役 平井優馬
調査チームのリーダーとなる杉野を演じました、平井優馬です。本作の撮影ではほとんど台本というものがなく、戸惑うことも多かったですが、かなり怖い作品に仕上がってるんじゃないかと思います。例の村に行った時から、僕自身もなんだか調子がおかしくて。肩に何か乗ってるような気がします。
見どころは……僕は出てないところなんですが……やっぱり「ビデオ映像」ですね。これは映画史上初の、本物の心霊現象を捉えた映像だと思います。
普段のアイドル活動とはまったく違うお仕事でしたが、とてもいい体験でした。映画館でお会いしましょう!
ティザービジュアル&画面写真は公式HPで公開中。
本物だけが持っている迫力を体感できる、新次元ホラー映画! 2025年春、全国の映画館で公開です!
※
ブログ「アサヤンの映画三昧」より
「ファウンド・フッテージ2」を観ました!
2025-01-21 22:47
テーマ:ホラー映画
皆さんこんにちは〜アサヤンです。マイナーなインディーズ映画を中心に、レビューを書いていくブログです。よろしくお願いします。
今回は話題のホラー映画「ファウンド・フッテージ2」です!
「観たら死ぬ」と話題の映画の続編らしいのですが、僕は前作は観ていません。
なんでも「スーパーリアル・ドキュメンタリー・ホラー」とのことで、フィクションでなく実録である!というのが売りになっています。
……というのは、まあ正直言って嘘くさいですね!
前作も、僕は観てないですが、「観たら死ぬ」というのは都市伝説だと思います。映画観ただけで死んじゃうなら、もっと大きな社会問題になってるんじゃないですかね。
去年の初め頃、ネットで少し話題になってたのを何となく覚えてますが。どうせ映画会社の話題作りだろうと思ってるうちに、話題にもならなくなっていました。
そんな嘘くさい映画の続編なので、本作もかなり怪しげです。
「関係者」とか言って、前作の映画会社の人とか、前作に出演していた端役の人とかが出てくるのですが、まあみんな俳優でしょうね。通販番組でよくある、「効果抜群!」とかってインタビューするCMを連想しました。
その中に大学教授という人がいて、かなり熱く「呪いは本物だ、ビデオの映像を観てはいけない」って語っていたけど。言葉だけでは、どうにも信用できないですね。
前半はそんな感じで、インタビューばっかりなので退屈です。
中盤、「ファウンド・フッテージ」のロケ地だったという山奥の村に出かけていって、何だか怖そうな雰囲気に見せようとするのだけど、風景はすごくのどかなのでね。
畦道には花が咲いてるし、小鳥が鳴いてるし。あまりホラーなムードは感じられませんでした。
でも、山の上の神社のシーンは少し不気味な感じがあったかな。特に何が起こるという訳でもないのだけど、荒れ果てた神社の雰囲気が不穏。
その奥にあった洞窟で、落ちていたビデオカメラを見つけます。後半はそこに残されていたという「本物の」映像。ほんまかいな、としか思いませんが。
で、肝心のこの映像ですが、何が何だか分からない!
冬の閑散とした村の中を撮影しながらうろうろする映像なんだけど、手持ちなのでブレまくるんですよね。観づらい!
田んぼや民家の間を歩いて行って、いかにも何か見えた!って感じでカメラをそっちに向けるのだけど、何もいない。ただその単調な繰り返し。撮影してる人は映らないのだけど、ただハッハッという息の音だけが入っていて。
確かに、緊張感はあります。一種異様な、不気味な感覚が募っていって、だんだん気持ち悪いような、息苦しいような気分になってくる。
……って、それは単に揺れる画面に酔ってるだけかもしれないですが。
最後の方は洞窟の中で真っ暗なので、ますます何が何だか分からない。リアリティの前に、ストレスばかりが募ります。
この暗闇のシーンで一瞬だけ、こっちに向かってくる全身真っ白な男が映ります。これが悪霊の正体ということか……。
それにしても、一瞬なのでほとんど見過ごしそうなくらいです。どうせフェイクなら、もうちょっとはっきり見せればいいのにね。
という訳で、肝心の「本物映像」も何だか拍子抜け。あまり見どころのない、盛り上がりに欠けるB級ホラー映画でした。
いちばん怖かったのは映画が終わった帰り道、ですね。レイトショーで、結構遅い終わりだったのだけど。
夜道を歩いていたら、何だか急にぞわっとして。ぞくぞくっと背中に寒気が走って。
後ろから何かに見られてる。何かがついてくる! という感覚で、めちゃくちゃ怖くなってしまいました。
振り返ったら、あの白い男がひゅっと、物陰に引っ込むように見えました。
まあ、気のせいだと思うんですが。
それからどうも、調子が悪くて。B級映画だと思った割には、変に影響を受けてしまったみたいです。
街を歩いていても、時々視線を感じる。
慌てて振り返ると、あの白い男がぱっと隠れる……ような気がする。
まるで街中に白い男がうろつき回っているような、そんな気がしてならないのです。
皆さんも、鑑賞の際はどうぞ自己責任でお願いします。
(了)
(「MOJIの映画レビュー」より)
竹垣村リポート(その5)
2024-03-30 21:23
テーマ:ファウンド・フッテージ
「ファウンド・フッテージ」騒動の後始末、竹垣村で体験したことをこのブログで書いてきた訳ですが、読者の皆さんの反応はあんまり芳しくはないですね。
嘘つくなとか……小説書くなら他でやれとか……幻滅した映画レビューももう読まないとか……
まあ、信じられないのも無理はないと思うのです。なので、いちいち反論するつもりはありません。
僕はただ、ありのまま今起こったことを話すぜ!ってだけなので。
幸いなことに、この連載も今回で終わりです。興味ある人だけお読みください。
次からは、通常の映画レビューに戻ります。
洞窟の奥で、S先生に言われた通りに祭壇を並べ、祭壇の前に神綱を置きました。
名古屋でS先生がハードディスクの消去を開始します。儀式にある依代を焼くっていうのを、白痩神が入った映画を消去することで代用する訳ですね。
それでいいのか?と思いますが、S先生によれば、呪術というのは見かけではなくて本質が大事であるそうです。
依代が消去されて、神綱を取り除けば封印の儀式は完了する。
神綱のラインを境界に、人間の世界と死後の世界の境目が、再びしっかりと閉じられるということです。
ダダ漏れになっていた神霊や死霊は死後の世界に戻り、竹垣村は人間の世界に戻るはず。
そこで、はっと気づきました。池の中の手に足を掴まれて動けないSUZUさんが、まだ神綱の向こう側にいる!
このまま境界が閉じたら、SUZUさんは黄泉の世界に置き去りです。
慌てて、僕は池の中に飛び込みました。そこから先は、かなりの混乱状態で記憶もはっきりしないので、事実と違うところもあるかもしれません。
池の中に踏み込むと、たくさんの手が下の方から伸びてきて、僕の足を掴んできました。いや、はっきりとそう分かった訳じゃないけど、そんな感触がしたということです。
池自体は浅くて膝が浸かるくらいの深さしかなかったので、下に人がいるなんてことはあり得ないはずなんだけど。
でも、足に感じる感覚としては大勢の人たちが下にいて、這い上がろうと必死にあがいて取り縋ってくる感じでした。
立ち止まると深みへ引き摺り込まれそうなので、そのまま歩いて池を横切りました。SUZUさんは池の向こう岸にいて、下半身が池の中にはまっていました。深さからは、そんなにはまるはずがないのだけれど。
SUZUさんの腕を掴んで、強引に池から引っ張り上げました。スムーズにいったのは、SUZUさんが思った以上に軽かったおかげですね。思えば、SUZUさんに会うのはその時が初めてだった訳ですが。事前に想像していた以上に、小さかったですSUZUさんは。
SUZUさんを引っ張って、またジャボジャボと池を戻っていくと、白痩神がもうそこまで迫ってきていました。既に神綱を踏み越えて、池の中にまで踏み込んできている。ビデオカメラの光の中に、白い不快な死体の顔が浮かんで見えます。ブヨブヨした肌、真っ黒な目、そして肉が腐った最悪な臭気。
あの暗い洞窟の袋小路で、生きて歩く死体と対面している。その事実に、気が狂いそうでした。
暗がりの中を、骨ばった白い手が伸びて来る。僕に触れようとする白痩神の手、それは死のひと触れなのだと、直感的に僕は感じました。触れられたら最後、白痩神の領域、死へと引き摺り込まれるのだろうと。
何も考えないまま、ビデオカメラを前に突き出していました。ほとんど反射のような動きです。カメラのライトに照らされた白痩神が、一瞬動きを止め、わずかに手を引っ込める。でもその後ろから、死人たちがわらわらと出てきました。
先頭にいたのはあの宮司。顔にいっぱいの蛆虫がうぞうぞと蠢いている宮司です。続いて、首のねじれた小川さんや北原さんなどの死人たち。その後ろからも大勢が続いて来て。一斉に掴まれて、手からカメラをもぎ取られました。カメラのライトが消えて、完全な暗闇が降りました。
大勢の死人たちの冷たい手が、僕の体に絡みつき締めつけて、そして前へと送り出そうとしています。暗闇の中で待ち受けている白痩神に、貢ぎ物として僕を差し出そうとするように。何も見えない真っ暗闇の中に、白痩神のじっと見つめる視線を感じ、その手が伸びてくる空気の動きを感じました。
「SUZUさん、地面の綱を取って!」僕は叫びました。
僕らが生き延びることができたのは、そこでSUZUさんが何の疑問も感じず、すぐさま言われた通りに行動してくれたからでしょうね。そうでなかったら、数秒後には触れられていたと思います。
SUZUさんはすばしこく身を屈めて死人たちの足元を走り抜け、地面にあった神綱を掴んで引き寄せました。
同時に、何か怒号のような声が、頭の中に響いてきました。実際の声じゃない。頭の中で響く声です。強い怒りをはらんだ、恨みに満ちた咆哮。人間を、生きたものを、心底憎み罵るような。
それが白痩神のものだったのか、あるいは宮司の声だったのかは分かりません。
不意に、僕を掴んでいた死人たちの力が緩みました。暗闇の中で僕はどうにかSUZUさんの手を掴み、出口と思われる方向へ向けて走りました。
闇の中を走って走って、やがて洞窟から飛び出して。
竹垣神社の裏庭に立つと、もうすっかり日は落ちて、夜になっていました。
とは言え、洞窟の中の暗闇と比べれば、夜はずっと明るくて。月明かりが差していて、神社の様子ははっきりと見ることができました。
その時に僕とSUZUさんは、封印が成功したことを知ったのです。
空気が、さっきまでと全然違っていました。奇妙な空気の歪みはなく、腐ったような不快な匂いもない。竹藪も静か。禍々しさは消えていて、ただ夜の神社の厳かな静けさがありました。
死人たちも見当たらない。さっきまでその場を覆っていた濃く重い死の気配は消えて、竹垣神社は人間の世界に戻っていました。
ぽっかり開いた洞窟の出口を見ても、怖さは感じませんでした。あそこから白痩神が出てくることはない、と信じることができました。そこはもう、理屈じゃないですね。
「死ななかった」と、SUZUさんが震える声で言いました。「何だか嘘みたいです。絶対に死ぬと思ってました」
「そうですね。死ぬかと思いました」と僕も言いました。僕の声も震えていました。
見ると、二人ともひどい有り様です。SUZUさんは泥水にまみれていたし、僕も死人たちの臭い体液を全身に浴びていました。髪の毛に絡みついた蛆虫を、SUZUさんが取ってくれました。
顔を見合わせて、何だか笑ってしまったのでした。
SUZUさんととりとめもない話をしながら、山を降りていきます。
もう怖い話はお互いにこりごりだったのでね。話題はずっと、映画の話でしたよ。
※
(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
竹垣村とMOJIさんのことの巻
2024-04-01 19:20
テーマ:ブログ
みなさんこんにちは! SUZUです。ドキドキ映画ライフ、楽しんでいますか?
一時はどうなることかと思いましたが、私もどうにか、ドキドキ映画ライフを取り戻しました! よかった!
最近はすっかり映画ばっかり観ています。怖いことを心配せず、安心して映画館で映画が観られるって、本当にいいことですね!
私はもう本当に死の世界に引っ張り込まれる一歩手前まで行っちゃったので、今もこうして生きていられるのはMOJIさんとS先生のおかげです。
中でもMOJIさんは、本当に命をかけて助けに来てくれたので。深く深く感謝しないといけないと思ってます。
あと、私は助かった訳だけど、残念ながら犠牲になってしまった小川悠生さんやコロ助さん、映画館で亡くなった人や、他の人たちも。
映画を愛する人たちが、たくさん犠牲になってしまいました。
心から、ご冥福をお祈りしたいと思います。
最後に……MOJIさんとは竹垣村の洞窟のいちばん奥の、切羽詰まった場所で初めて顔を合わせた訳だけど。
私を見て、MOJIさんが意外そうな顔をしていたのを印象深く覚えてます。MOJIさんは私のことを、ちょっと違うふうにイメージしていたみたいですね。
MOJIさんとはブログやメールの文章で話をするだけだったので。私のことを、もっと年上だと思っていたみたいです。
ブログだとついつい背伸びして、大人ぶった書き方しちゃうので。一人称も大人っぽく「私」にしていたし。
それと、私はブログの中で一度も、自分が女性であるような書き方をしたことはないと思うのですが。MOJIさんは私を女性だと思っていたみたい。
まさか14歳の男子中学生だったとは……白痩神をめぐる何よりも、いちばんびっくりしたって言ってました。
もしかして、大人の女性だと思っていたから、命懸けで助けに来てくれた……って、まさかそんなことはないと思いますけどね!
それはともかく、今回のことがきっかけで、MOJIさんとはすっかりいい映画友達になれました!
年は離れてますけど、映画の話をするとお互いに止まらなくなります。今度、一緒に「オーメン・ザ・ファースト」を観に行く予定です!
※
株式会社キャメルライド オフィシャルサイト告知ページより(2025年1月10日更新)
映画「ファウンド・フッテージ2」公開決定!
2023年、誰にも知られずひっそりと限定公開。その後「観ると呪われる」「観ると死ぬ」と社会現象を巻き起こし、「観てはいけない映画」として封印された曰くつきの作品「ファウンド・フッテージ」。
そのロケ地となった山奥の廃村で、人知れず撮影されたビデオ映像が存在した……!
虚構と現実が交錯する、スーパーリアル・ドキュメンタリー・ホラーがいよいよ登場。
STORY
「その映像には、観てはいけない恐怖が映っている……!」
今や都市伝説となった映画「ファウンド・フッテージ」の実像に迫るため、関係者を訪ね歩く杉野(平井優馬)をリーダーとする調査チーム。しかし関係者の口は一様に固く、なかなか真実に辿り着けない。業を煮やした杉野は「ファウンド・フッテージ」のロケ地だった山奥の廃村を訪れ、そこに放置されていたビデオカメラを発見する。そこには、想像を絶する恐怖の映像が記録されていた……!
コメント 監督 小堀宏和
本作は、フィクションとドキュメンタリーの間を縫うような作りになっています。平井優馬くんに演じてもらった杉野の役柄はフィクションですが、登場する「関係者」の多くは本物の当事者の人たちです(本人の希望があった場合はモザイクをかけさせてもらっています)。そして何より、後半に登場する「ビデオ映像」は、実際にロケ地となった無人の廃村で回収したカメラに残されていた映像です。正真正銘、本物の迫力をぜひご覧ください! ……ただ、その結果呪われても当方は責任は負いかねますのであしからず。
コメント 主演・杉野役 平井優馬
調査チームのリーダーとなる杉野を演じました、平井優馬です。本作の撮影ではほとんど台本というものがなく、戸惑うことも多かったですが、かなり怖い作品に仕上がってるんじゃないかと思います。例の村に行った時から、僕自身もなんだか調子がおかしくて。肩に何か乗ってるような気がします。
見どころは……僕は出てないところなんですが……やっぱり「ビデオ映像」ですね。これは映画史上初の、本物の心霊現象を捉えた映像だと思います。
普段のアイドル活動とはまったく違うお仕事でしたが、とてもいい体験でした。映画館でお会いしましょう!
ティザービジュアル&画面写真は公式HPで公開中。
本物だけが持っている迫力を体感できる、新次元ホラー映画! 2025年春、全国の映画館で公開です!
※
ブログ「アサヤンの映画三昧」より
「ファウンド・フッテージ2」を観ました!
2025-01-21 22:47
テーマ:ホラー映画
皆さんこんにちは〜アサヤンです。マイナーなインディーズ映画を中心に、レビューを書いていくブログです。よろしくお願いします。
今回は話題のホラー映画「ファウンド・フッテージ2」です!
「観たら死ぬ」と話題の映画の続編らしいのですが、僕は前作は観ていません。
なんでも「スーパーリアル・ドキュメンタリー・ホラー」とのことで、フィクションでなく実録である!というのが売りになっています。
……というのは、まあ正直言って嘘くさいですね!
前作も、僕は観てないですが、「観たら死ぬ」というのは都市伝説だと思います。映画観ただけで死んじゃうなら、もっと大きな社会問題になってるんじゃないですかね。
去年の初め頃、ネットで少し話題になってたのを何となく覚えてますが。どうせ映画会社の話題作りだろうと思ってるうちに、話題にもならなくなっていました。
そんな嘘くさい映画の続編なので、本作もかなり怪しげです。
「関係者」とか言って、前作の映画会社の人とか、前作に出演していた端役の人とかが出てくるのですが、まあみんな俳優でしょうね。通販番組でよくある、「効果抜群!」とかってインタビューするCMを連想しました。
その中に大学教授という人がいて、かなり熱く「呪いは本物だ、ビデオの映像を観てはいけない」って語っていたけど。言葉だけでは、どうにも信用できないですね。
前半はそんな感じで、インタビューばっかりなので退屈です。
中盤、「ファウンド・フッテージ」のロケ地だったという山奥の村に出かけていって、何だか怖そうな雰囲気に見せようとするのだけど、風景はすごくのどかなのでね。
畦道には花が咲いてるし、小鳥が鳴いてるし。あまりホラーなムードは感じられませんでした。
でも、山の上の神社のシーンは少し不気味な感じがあったかな。特に何が起こるという訳でもないのだけど、荒れ果てた神社の雰囲気が不穏。
その奥にあった洞窟で、落ちていたビデオカメラを見つけます。後半はそこに残されていたという「本物の」映像。ほんまかいな、としか思いませんが。
で、肝心のこの映像ですが、何が何だか分からない!
冬の閑散とした村の中を撮影しながらうろうろする映像なんだけど、手持ちなのでブレまくるんですよね。観づらい!
田んぼや民家の間を歩いて行って、いかにも何か見えた!って感じでカメラをそっちに向けるのだけど、何もいない。ただその単調な繰り返し。撮影してる人は映らないのだけど、ただハッハッという息の音だけが入っていて。
確かに、緊張感はあります。一種異様な、不気味な感覚が募っていって、だんだん気持ち悪いような、息苦しいような気分になってくる。
……って、それは単に揺れる画面に酔ってるだけかもしれないですが。
最後の方は洞窟の中で真っ暗なので、ますます何が何だか分からない。リアリティの前に、ストレスばかりが募ります。
この暗闇のシーンで一瞬だけ、こっちに向かってくる全身真っ白な男が映ります。これが悪霊の正体ということか……。
それにしても、一瞬なのでほとんど見過ごしそうなくらいです。どうせフェイクなら、もうちょっとはっきり見せればいいのにね。
という訳で、肝心の「本物映像」も何だか拍子抜け。あまり見どころのない、盛り上がりに欠けるB級ホラー映画でした。
いちばん怖かったのは映画が終わった帰り道、ですね。レイトショーで、結構遅い終わりだったのだけど。
夜道を歩いていたら、何だか急にぞわっとして。ぞくぞくっと背中に寒気が走って。
後ろから何かに見られてる。何かがついてくる! という感覚で、めちゃくちゃ怖くなってしまいました。
振り返ったら、あの白い男がひゅっと、物陰に引っ込むように見えました。
まあ、気のせいだと思うんですが。
それからどうも、調子が悪くて。B級映画だと思った割には、変に影響を受けてしまったみたいです。
街を歩いていても、時々視線を感じる。
慌てて振り返ると、あの白い男がぱっと隠れる……ような気がする。
まるで街中に白い男がうろつき回っているような、そんな気がしてならないのです。
皆さんも、鑑賞の際はどうぞ自己責任でお願いします。
(了)
