PART 3
2024年2月26日にXに投稿されたポスト
玉手箱@jhK24qwRy
最近やたらと救急車走ってない?
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2024年2月27日にXに投稿されたポスト
マーボー@jmahboh119
最近救急車を多く見るというのはデマ。いつもと同じでも、人からそう言われるとよく見るように思うだけ
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2024年3月1日にXに投稿されたポスト
ナースのお仕事@miyu9000_lol
救急病棟で働いてるけど、救急車が多く出動してるのは事実だよ。行く時はサイレン鳴らして、患者さんを乗せて帰る時はサイレン鳴らしてない。これはみんな既に死んでるから。若い人が理由なくぽっくり逝くのが増えてる。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-02 23:55
SUZUさんこんにちは。
その後、大丈夫でしょうか……?
「白い男」がもし伝承にある「白痩神」だとしたら、「見る」ことが対処法になり得るかもしれません。
「白痩神」という神様への対策として、古くから伝わってる由緒ある方法みたいです。
実際、ブログに書いた「デューン 砂の惑星PART2」の上映では、僕は「見る」ことでどうにか生き延びることができたようです。
SUZUさんも、万一の場合には目を逸らさず「見る」という対策をとっていただきたいと思います。
この方法を論文に書いておられた三枝さんという人に、現在連絡を取ろうとしてます。より詳しい話が聞けたら、またお知らせします。
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(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-3-3 10:12
MOJIさんこんにちは。ありがとうございます。
あれから映画館には行ってませんが、もしヤバイ!という局面があれば試してみます。
ただ、残念ながら根本的な解決にはならないですね。映画の邪魔になるのは、変わらない訳だから。
MOJIさんのブログを読んで思ったのですが、あの日「デューン」で亡くなった方は、不安に感じながらも、それでもどうしても「デューンPART2」だけは観たかったのかもしれないですね。MOJIさんと同じように。
そんなふうに映画を愛する思いがあんな不幸につながってしまうなんて、本当に許せない。
心から、この呪いを何とかしなくてはならないと思います。
そこでこちらも独自調査を進めていたんですが、実は! 「ファウンド・フッテージ」に出演していた俳優の方を見つけました。
例のヨウコを演じていた人です。クレジットされていた名前とは全然違って、小川悠生さんという方でした。
NOBODY Incでポスターの貼られていた映画をリストアップして、TSUTAYAで借りてきて片っ端から観て、ついに見つけたのです。大森昇監督の「アンダーグラウンド・リチュアル」という映画に出てました。
普通に企業に勤めている人で、プロの俳優ではないみたいですが、何本かの自主制作映画に出演しておられます。
これで少なくとも、「ファウンド・フッテージ」に出ていた人たちは大森監督が言っているように本当に失踪した訳ではない、ということが証明されましたね。
SNSを通じて連絡がとれたので、今度この方にお会いしてくる予定になっています。
結果はまたお知らせします! 楽しみにお待ちください。
※
(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
出演者に会ってきました!の巻 その1
2024-03-05 17:44
テーマ:ホラー映画
みなさんこんにちは! SUZUです。ドキドキ映画ライフは休止中。
例の「ファウンド・フッテージ」ですが、なんと出演していた俳優の方を発見!
先日、名古屋市内の某マクドナルドにて、一時間近くに渡ってインタビューさせていただくことができました。
「ファウンド・フッテージ」において最後まで生き残る「ヨウコ」を演じていた、田沼葉子さん(仮名)。
実際の芸名は違うのですが、ご本人は既に俳優を引退されていて、表に出ることを望まれていないそうなので、本当のお名前や写真など、ご本人につながる情報は伏せさせていただきます。
ですので、皆様もできれば特定など無粋な行為は控えていただければと思います。
葉子さんは1996年生まれ。もともとプロの俳優という訳ではなく、現在は名古屋市内の企業に勤めておられます。
いくつかの自主映画に出演するようになったきっかけは、学生時代にとある演技ワークショップに参加したことだそうです。そのワークショップにはNOBODY Incや、大森昇監督も参加していました。大学在学中の2017年に映画に初出演。卒業、就職後も、時々声がかかるたびに小さな役で自主制作系の映画に出演するようになります。
以下、葉子さんの発言です。
「ファウンド・フッテージの企画に参加したのは2022年の8月ですね。ワークショップの会場でもあった会議室で、関係者の顔合わせが行われたのが最初。と言っても、映画に出ていた6人でほとんど全部です。監督は、映画に北川茂の名前で出ていた北原満さん。他のメンバーもワークショップで顔みしりだった人たちで、私よりも演技経験の少ない人たちばかりでした」
「スタッフは北原さんだけで、あとはカメラマンが一人だけ。ただし、カメラマンは同行しないと言われて。カメラは俳優が扱うからって、みんなで撮影のレクチャーを受けました。助監督は出演者の杉山さんが兼ねてたし、メイクもゆかちゃんが兼ねてました。だから本当に、スタッフもキャストも6人だけです。他はプロデューサーとか言って、大森監督がうろうろしてたかな。彼は撮影現場では一回も見なかったけど」
「撮影は11月半ば、現地に四日間泊まり込んで、一気に進められました。マイクロバスで岐阜の山の中の農村に連れて行かれて、寝泊まりもバスでして。豪雨災害で住む人がいなくなってしまった村なんだって。竹垣村って言ったと思う、確か」
「竹垣村を見つけてきたのは北原さんでした。新聞に廃村の記事が出たのを偶然見たって。災害で多くの村民が亡くなった上に、神社の宮司さんが自殺するという事件まであったのだとか。何だかとても不吉な記事で、これはホラーにぴったりだって言ってました」
「撮影はほとんどがアドリブです。シナリオはなくて、簡単な状況設定だけ説明されて、カメラも持たされて、みんな自分たちで考えて演技をするの。めっちゃ疲れるよ。誰も仕切らないまま映画を撮れって言われるみたいなもんだもの。そんなことできると思う? できる訳ないよ、そんなの」
「現場の雰囲気は悪かった。寒かったし、アドリブだからずっと気が抜けないし、一回一回とんでもない長回しだし。当てずっぽうでやって全部撮って、北原さんが巻き戻して見る。それで、なんか違うなとか言って最初からやり直す。プランなんかないよ。ただやってみて、いいか悪いか後から言うだけ。みんなどんどんイライラして、ホラーっぽい険悪な雰囲気になってました。今考えれば、それも狙いだったのかもしれないけど」
「6人しかいないから、撮影準備も全部キャストの役目。藁人形を吊るしたり、映画に出てきた呪文の落書きも自分たちでせっせと描きました。夜中の足音なんかも、出番のないみんなで走り回って。真っ暗な中を、松明持って山登りしたり。なんだかんだで忙しくて、深夜まで撮影が続くし、みんなとにかく北原さんにムカついてましたね。思いつきで話を変えるんですよね。最初は怪しいカルト集団がいるという設定だったのに、神社を見てから、召喚の儀式で悪霊が呼び出された設定に変えちゃったの。だから、前半と後半で話がちぐはぐになってたでしょう?」
「神社がすごい状況だったんですよね。本殿の飾りとか鏡とかがみんな壊されていて、お札が散らばっていて。泥がぶちまけられて、汚されていたし。そこは、映画のためにやったところじゃないんです。元からそうなっていたの。別に信心深い訳じゃないけど、何だか冒涜っていうか……すごく罰当たりな雰囲気がしてた。本殿の真裏にあった洞窟も、ボロボロになった太いしめ縄が張られてて、あれたぶん本当なら入っちゃいけない場所だよね」
「やっと撮影が終わって、帰り道のバスの中で、北原さんに名前を出さないように頼まれました。俳優が演じた映画じゃなく、本当に行方不明になった学生が撮った映像に見せたいから、なんだって。撮影について口外しないことも約束させられました。みんな釈然としなかったけど、でも最後には納得するしかない感じですね。私はまあ、いいかなと思って。名前が出て嬉しい映画にはならなさそうだったんで」
「ああ、今喋っちゃってますね。いいんですよもう、北原さんは死んだんだから。え? あ、そうですよ。言ってなかったっけ」
「撮影が終わって、それから長いこと何の連絡もなかった。半年くらい経ってワークショップに顔を出した時に、大森監督から映画の公開について話を聞きました。その時に、実は北原さんが亡くなっていたことを知らされました。心臓発作か何かで、突然死だったって。自宅で亡くなって、誰も気づかないまま数日経って、下の階の人が天井の染みで気づいたんだとか。漏れ出していたらしいですよ。血とか体液とか、何か死んだら出ちゃうものが」
長くなったので続きます。続きは翌日のブログで。
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(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-08 02:15
SUZUさんこんにちは! お元気ですか?
続きが更新されないので気になってます。大丈夫でしょうか。
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2022年5月13日付の新聞記事
見捨てられる日本の地方 竹垣村の消滅
都市への一極集中、地方の過疎化という問題は既に昭和後期から日本の都市計画における主要な議題だった。近年の加速度的な少子高齢化を受けて、現在日本の地方は過疎化という域を超えて、「消滅」のシナリオを辿っている。
2020年時点でいわゆる限界集落は二万箇所を超え、過疎地域における集落の30%を占めていた。
近年の災害の頻発が、その傾向を更に加速している。昨年一年間で、豪雨や地震などによる災害によって孤立化し、日常的な暮らしを継続することが困難になった地域は全国で164箇所にも及んでいる。
岐阜県北東部、飛騨山脈の山間に、竹垣村という村落がある。この村は今年四月に最後の住民がいなくなり、完全な無住地帯となった。かねてから過疎化が進行し長く限界集落となっていたが、昨年夏の集中豪雨による土砂災害によって大きな被害を受け、孤立化。住民は村外に避難していたが、帰村を希望する村民がいなくなったことで公的に廃村が決定した。
竹垣村には数百年の歴史を持つ由緒ある竹垣神社があった。村民が避難した後も最後まで村にとどまり神社を守り続けたのが、竹垣神社の八十二代目の宮司とされる服部久仁彦さん(76)だった。本年四月十三日、その服部さんが神社境内の御神木で縊死しているのが発見されたのである。服部さんの残した遺書には、竹垣神社の伝統的な神事が絶えることへの懸念と、村への帰還をバックアップせず、結果的に伝統を絶やすことに加担した行政への憤りの念が残されていた。
服部さんの死と竹垣村の消滅は、現在の地方行政の在り方に疑問を投げかけていると言えるだろう。
※
各地の白痩神信仰と、契約更改としての祭礼
京都大学民俗学部講師 三枝崇顕 2017
多くの祭礼の目的としては先祖供養や五穀豊穣があげられるが、古来より日本の神社が担ってきた重要な役割として、彼岸との契約がある。つまり、我々人間の生活の場としての此岸、その対極である死者の国である彼岸との接点にあって、互いに無用な干渉を避け、衝突を回避するための約束の確認である。神社で行われる季節ごとの祭礼は、いわば彼岸との契約更改の儀式とも言える。
彼岸から此岸に越境する穢れたものの象徴が、白痩神という神である。この神は死者であり、望まぬ死によって此岸を追放された恨みを抱えている。従って、その性格は邪悪であり、生者への嫉みと怨念を基本的性質として持っている。白痩神は隙あらば境界を超えて此岸に侵入し、罪のない生者を彼岸へ連れ去ろうとする。それを前もって防ぐため、彼岸との間に結ぶ古来よりの契約が、祭礼なのである。
今現在、各地の多くの伝統的祭礼が継ぎ手の不足により、存続が危ぶまれる状況になっている。これはもっぱら文化的・学術的な方面から危惧されているのだが、呪術的側面からも大きな問題である。
何百年もの時を超えて持続されてきた祭礼が途絶えるというのは、ただ単に文化的損失というだけの問題ではない。毎年の祭礼によって守られてきた此岸と彼岸の契約が、一方的に履行されなくなるという事態なのである。
それまで長きに渡って抑えられていた白痩神の越境が、抑え切れないという事態が起こってくるだろう。
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2024年3月10日に配信されたネットニュース
「ファウンド・フッテージ」の大森昇監督が急死
「観たら死ぬ」という刺激的なコピーで話題を呼んだ自主制作映画「ファウンド・フッテージ」で監督と編集を勤めた大森昇さんが急死していたことがわかった。42歳だった。
NOBODY Incによると、8日朝、大森さんの知人が自宅を訪ね倒れている大森さんを発見、その後死亡が確認された。警察によると事件性はないとのこと。
大森さんは2008年、映画「地獄のかくれんぼ」でデビュー。「アンダーグラウンド・リチュアル」(2017)など、いくつかの自主制作映画で知られる。最新作「ファウンド・フッテージ」は実際の失踪現場で見つかった映像という触れ込みで話題を呼び、昨年末より限定公開されていた。現在は4月に予定されている再々上映に向けて準備中だった。発見時も、同作品に手を入れている最中だったという。
NOBODY Incによると、「ファウンド・フッテージ」次回上映予定には今のところ変更はないとのこと。
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2024年3月10日に配信されたネットニュース
都市伝説? 映画館で亡くなる人が急増中?
現在、全国各地の映画館で働くアルバイトスタッフの間で、ある噂が流れている。映画館の座席で、映画上映中に亡くなる人が増えているというのだ。
通常、映画の上映が終わるとスタッフが入場し、掃除と忘れ物のチェックなどを行う。昔と違って現在の映画館は完全入れ替え制なので、残っているお客さんに退出を促すこともスタッフの仕事となる。居眠りをしたままスタッフに起こされるお客さんも多いそうだ。
そんなスタッフが居眠りと思って声をかけてみると、死んでいた……というケースが、最近目立って増えているという。
業界関係者に話を聞くと、映画館で亡くなる人は以前からも「稀であるが、いた」という。
「2019年にタイの映画館で、『アナベル 死霊博物館』を観た高齢の観客が心臓発作で亡くなるということがあったそうです。2016年の『死霊館 エンフィールド事件』でも似たようなケースがあったとか。これらはホラー映画なので宣伝に利用されましたが、普通の映画であれば特に話題になることもないんじゃないでしょうか。病死であれば個人情報ですし、映画館としてもイメージが悪くなるので明るみにはしないでしょう。実際には、知られているより多くの人が映画館で亡くなっているかもしれません」
今回噂になっているのは特定の映画ではなく、ジャンルもホラーに限らず様々だ。なので、特に映画が刺激的すぎたからという訳ではなく病死と思われるのだが、ネット上では最近話題になった映画「ファウンド・フッテージ」と結びつける声も上がっている。
「『観たら死ぬ』というキャッチコピーで売り出していたインディーズ映画です。この映画を観た人が、映画館で亡くなっているという噂です。ただ、亡くなった方がどんな映画を観ていたかは分かりませんし、単なる噂以上のものではないですが……」
本当に映画館で亡くなる人が増えているのかも含めて、噂の範疇を出ない話ではあるようだ。
ともあれ、皆さんも映画館で刺激の強い映画を観る時は、突然死しないよう十分な注意を払っていただきたい。
※
2024年3月10日にXに投稿されたポスト
映画番長@Eiga_Bancho797
このアカウントの母です。
このたび、息子は急逝いたしました。
生前のご厚情に心より感謝申し上げます。
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
アポロ20号@Lingar_apollon
アポロ20号の姉です。アポロ20号は急逝いたしました
本人に変わりまして、生前のご厚誼を深く感謝申し上げます
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
角谷隆史@Sugitani_Takafumi1986
この度、本アカウントの主・角谷隆史が亡くなりましたことをお伝えいたします
あまりにも突然のことで、家族も動揺しております
交流いただいた皆様、誠にありがとうございました
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
MovieLover99@Love_theMovie
怖いよ……死にたくない………
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(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
出演者に会ってきました!の巻 その2
2024-03-11 01:56
テーマ:ホラー映画
みなさんこんにちは! SUZUです。
すみません……体調が悪くなってしまって、寝込んでいました。「続きは明日」と書いたまま沈黙してしまったので、ご心配をおかけしたかと思います。失礼しました。
前回のブログを公開してから、どうも体調が良くないです。体が重くて、何をするにもやる気が起こりません。
単に風邪をひいただけ、だったらいいのですが……。
出演者の葉子さんからお話を聞いて、実質的な監督だった北原満さんが亡くなっていたという話を書いたところで、今度は大森昇監督が急死したというニュースが流れてきて。
かなり動揺しています。
映画館に行きさえしなければ少なくとも死ぬことはない……と思っていたのに、もしかしたら、そうではないのかもしれない。
自宅にいても、危ないのかもしれない。
実は最近、何かが見える気がするんですよ。
目の端に、視界の隅っこの方に、ふっと何かが見えた気がする。
はっきりとは見えない。気配と、焦点の合わない影だけがちらっと見える。
反射的に、目を背けようとしてしまうんだけど。MOJIさんの「見るの力」の話を思い出して、慌てて目を向けるんです。
すると、スッと消えていく。
そんな話はともかくとして。
お約束していた、インタビューの続きをお届けします。
葉子さん「北原さんが亡くなったと聞いて、すごく嫌な気分になりました。あの現場から何か嫌なものを引っ張ってきてしまったような。あの映画にはもう関わりたくないと思ったし、映画ってものに関わるのももううんざりという気分になってました。だから、俳優を辞めることを決めたのもその時。俳優って言っても副業で、ろくに仕事なんてなかったけどね。これからはもう、頼まれても出ないって決めたんです」
「他の四人のうちで撮影後に会ったのは、杉山孝一さん。映画には三浦康二という名前で出ていた人です。助監督も兼ねていました。ギャラを受け取りに行った時に偶然会ったのだけど、すごく雰囲気が変わっていて。撮影の時は明るくて冗談ばっかり言ってる人だったのだけど、その時には暗くて、目の下にくまができていて。眠れないんだと言ってました。何か訳の分からないことをブツブツ言って。あなた方のブログも見てるみたいでしたよ。『関わるのはやめた方がいいって忠告してやってるんだ』って言ってました。『あれは映画ではないからな』って」
「そのほかの人たちがどうしてるかは分からない。その時も確か聞いたと思うけど、大森さんは適当にごまかして教えてくれなかった。ただ何となく、みんなろくなことにはなっていないような雰囲気はありました。自分から映画に関わろうとする人は誰もいないし、俳優を続ける人もいなさそうだったから」
「私自身、ずっと体調不良が続いてます。寝ても起きても、ずーっと一日中体調が悪いの。変な夢も見るし。あの撮影現場に戻ってる夢。あの、誰もいない村ですね。あそこに強制的に戻されてる。なぜかそこに一生住まなければいけないことになっていて、本当に嫌な気分になってる。嫌だ嫌だ帰りたい……と思っていたら、北原さんがやって来て、何か言いたげに私をじーっと見るんです。そんな夢です」
「呪い……かどうかは、分からないけど。でも、呪われても仕方がないかもしれないですね。最後の洞窟の中で、私が祭壇に寝かされてるシーンがあったじゃないですか。あれ、私はセットだと思ってやったのだけど、後から聞いたら元からあそこにあったものらしいんですよ。だから、本当の神様を祀る祭壇ですよね。それをめちゃくちゃにして、その上に乗ってしまってる。北原さんが死んだと聞いた時、あれのせいかなって思いました。ということは、たぶん私もヤバいよね。うん、分かってる」
「北原さんが死んだことを大森さんがネタにしないのは、意外だなって思ってました。それこそ格好の宣伝ネタとして使いそうだもの。でも、本物として売り出してるのを見て、ああとっておきにしてるんだなって。最初は本物のドキュメント映像だって言って売り出して、それが嘘だってバレたら、今度は北原さんの死を持ち出して『呪われた映画』とか言い出すんだろうなって。その前に死んじゃったけど。そういうのが分かるからね、もう関わりたくないんです」
「"白い男"ですか? 私は見てません。現場ではね。そういうものを演じた人はいなかったし、もし映画にあるのだとしたら後から撮影して足したのだと思う。でもどうかな……本当に何か、悪いものなのかもしれないですね。そういうものがついてきても、おかしくないとは感じます。私もずっと、何かに見られてる気がして仕方がないんです」
インタビューは以上です。
葉子さんは映画の中と同様の、長い黒髪の美人でしたが、映画で観たより痩せておられて、やつれてるようにも見えました。
騒がしい店の中で、ずっと落ち着かないご様子で。
目が泳いでるっていうんですか? すごくキョロキョロ、周りが気になって仕方のない様子でした。
何かに怯えていらっしゃるのかな?と思ったのだけど、今これを書いている私も、その時の葉子さんとよく似た感じになっているような気がします。
何かに見られている気がしたら、目を逸らさずに見る方がいいですよ、って伝えたのだけど。葉子さんは笑って、本気にしていないようでした。
どうも疲れやすくなってしまっていて、これだけの文章を書くのも一苦労でした。ものすごく時間がかかってしまった。
ちょっと、ブログはしばらくお休みすることになると思います。すみません。
それではまた、機会がありましたらお会いしましょう。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-11 19:34
SUZUさん お久しぶりです。
大丈夫でしょうか……体調が悪いそうで心配です。
実を言うと、僕もよく似た状況になっています。体が妙に重くて、何度も視線を感じます。目の端に白い男がチラついて、その度にビクビク、キョロキョロしている始末です。もう映画だけじゃなく、街中に白痩神がうろつき出しているようです。
SNSを見ていると、突然死の報告がやたらと目に付きます。白痩神の被害は相当に広がっているんじゃないかと思えます。はっきりとした騒ぎになっていないのは、やはりあまりにも信じ難い話だからでしょうか。
何とか対処法が見つからないかと、必死で調べているのですが。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-12 02:11
MOJIさんこんにちは。ご心配おかけしてごめんなさい。
このままだと、私はいずれ死んでしまうような気がしています。
なんとかしないとと思い、考えた結果、岐阜の竹垣村に行ってみようと思います。小川悠生さん(葉子さん)に教えてもらった、「ファウンド・フッテージ」のロケ地となった廃村です。
行ってどうなるかは、分からないのですが。でも、行かないとどうにもならないという気がして、ものすごく気が焦っています。
小川さんの話によれば、撮影隊は神聖な祭壇を荒らしたようです。そこを元の状態に戻せば、白い男も元の場所に戻るかもしれません。
元の状態がどうなっていたかを知るために、小川さんに一緒に行ってもらいたいとお願いしたのですが、それだけは嫌だと断られました。あの場所に戻るのだけは死んでも嫌だそうです。
元の状態を撮った写真があるはずとのことなので、今探してもらっています。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-12 18:34
SUZUさんちょっと待って! 早まらないでください。
竹垣村に行くべきではないと思います。それは危険すぎます。今の状態のままでは、何の武器も持たずに敵の中に飛び込んでいくようなものだと思います。
三枝先生からの返事を待っているところです。先走りせずに、もう少しだけ待ってください。
※
消えゆく農村と呪術的障壁
京都大学民俗学講師 三枝崇顕 2023
日本各地で、地方の農村が消えていっているという現状がある。国は既に施策として、地方を見捨てる方向に舵を切っている。地方を無住地化することによって資源を都市へと集中させ、より「効率的」な国家運営を目指そうとする傾向は、今後ますます強くなるだろう。
地方の農村の無住地化は、ただ伝統的な里山の風景が失われるという情緒的な問題にとどまらず、いくつもの現実的な問題につながっている。
里山は古来より、人間の領域とそれ以外との緩衝地帯とでも言うべき役割を果たしていた。畑が作られ、林にも人の手が入ることで、土砂崩れなどの危険が防がれていた。また、熊や猪などの野生動物が直接人間の領域に入ってこないようにする防波堤の役割も担っていた。
防いでいたのは、目に見えるものだけではない。古来より、山は神霊の領域であり、死後の世界に通じる場所だった。
人が暮らし、神を祀り、季節ごとの祭礼が欠かさず行われ続けることによって、農村は人間界と霊界を隔てる呪術的障壁の役割を果たしてきたのである。
日本の多くの地方に残る伝統的祭礼は、収穫を祝う村祭りとしての性質と同時に、その本質として怨霊封印・邪霊退散・結界守護などの役目を担ってきた。時代とともに祭礼の形が変わったり縮小されたりといったことがあっても、その核となる呪術的効果は損なわないよう、慎重に言い伝えに従って維持されてきたのである。
天災に伴う突発的な農村の消失は、このような連綿とした営みを暴力的に断ち切ってしまう。なんら「備え」をすることなしにそれまであった呪術的要石が失われるのだから、その及ぼす影響は深刻だ。
2022年の一年間に限っても、長野県作間村、栃木県朔高原町、岐阜県竹垣村などが無住地化しており、当地の神社に伝わる重要な祭礼が途絶している。中でも岐阜県竹垣村は悪名高い白痩神を祀る竹垣神社を擁しており、その祭礼が失われたことによる呪術的影響は計り知れないものがある。
効率化の名のもとに地方を切り捨てる現在の施策の方向性は、そのような呪術的重要性を軽視するものと言わざるを得ない。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-13 23:11
海藤様
白痩神に関して、お問合せをいただきました。京都大学の三枝と申します。
返事が遅くなってすみません。フィールドワークに出かけており、一切の電子機器から遠ざかっておりました。
私は白痩神を始めとする日本の神霊に関して、”実在するもの”という前提に立った上で歴史・文化への影響や関わりを検証する、「実在主義」とでも言うべき立場に立って学問を行なっております。
ただ、私自身が神霊を見たり、聞いたりする能力を持っている訳ではありませんし、ましてや除霊や祓い清めができる訳でもありません。妖怪ハンターではありませんので。
従って、どこまで海藤様のお力になれるかは分かりません。
竹垣村はまさに白痩神の暴走がもっとも懸念される土地となっておりました。
重要な祭祀が中断しているだけではありません。これは公表されていない事実ですが、自殺した竹垣神社の宮司の遺書には、世間の人々への呪詛の念と、白痩神を解放する意図が書かれていました。宮司はその死の前に、白痩神の封印を解く祭式を施したものと思われます。
何らかの厄災が懸念されていましたが、映画を媒体として白痩神が行動するというのは予想外の事態でした。
ただ、神霊は気づかれ、見られることによって顕在化します。見られることは神霊のエネルギーなのです。ですから、映像メディアは神霊との相性がいいのです。
暗闇の中で強制的に見ることに集中させられる映画は、神霊の媒介となるのに特に適していると言えます。映画が白痩神のベクターとなることは十分に考えられることです。
現在、白痩神はウィルスのように、映画を通して多くの人に感染し、活動領域を広めることを目的としていると思われます。
白痩神は死の化身とも言うべき神ですから、映画を通して白痩神に触れられた人は、命を落とす危険が非常に高くなっています。
これを封じるためには、竹垣神社で行われていた祭礼儀式を再現し、本来の領域である黄泉の国にお戻りいただくしかないと思いますが、それにしてもかなりの準備は必要です。
散逸した祭礼の資料を集め直すところから始めないと。多くの識者の方に知恵をお借りしないと、私一人の知識では間違った儀式を行なってしまいかねません。
(当然、間違った儀式を行えば事態はより悪くなることが考えられます。)
いずれにしても、少し時間をいただかなくてはなりません。
それまでは、映画館に行くことは控えていただいて、何らかの気配を感じたらすぐに「見る」ことを習慣化してください。
逆説的ですが、神霊は見られることによって顕在化すると共に、こちらから見ることによってその動きを止めることができます。
あくまでも一時的な対処ですが、気配を感じたらすぐに「見る」ことで、白痩神の接近をしばらくの間止めることができるはずです。海藤さんが度々白い男を目撃していることは、白痩神の接近を遅らせていたのではないかと思います。
むしろ、白い男を目撃していない人の方が、より早く白痩神に近づかれているかもしれません。若い人の不審な突然死のデータを調べてみなければなりません。
くれぐれも、竹垣村に向かうのは絶対に避けてください! あそこは今、限りなく黄泉の国に近い状態にあると思われます。何が起こるか分かりません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-14 01:55
SUZUさん、例の白痩神研究の三枝先生と連絡がつきました。対処に希望が見えるかもしれません。
三枝先生によれば、白痩神に対してはやはり「見る」ことが有効だそうです。見ることで一時的に動きを止めることができるそうです。
遊びの「だるまさんが転んだ」みたいなイメージでしょうか。見ていれば、白痩神をその場に止めておくことができる。見ていないと、白痩神は近づいてくる……。
思ったのですが、例のコロ助さんは何度も白痩神を見ることで、長いことその接近を止めていたのかもしれません。
「ファウンド・フッテージ」を観たけれど白い男に気づかなかった人の方が、知らないうちに白痩神に接近されているのかも。実は、誰にも気づかれないまま死に至っている人が、たくさんいるのかもしれません。
ともかく、怪しいものを見たら、目を背けず見るようにしてください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 06:55
MOJIさんこんにちは。小川悠生さんが死にました。
昨日お会いして祭壇の写真をもらったのです。前と同じマクドナルドで少しお話をしましたが、小川さんはやはり落ち着かない様子で、しきりに後ろを気にしておられました。
「約束があるから」と言うのですぐにお店を出ました。お店の前で向かい合って、あらためてお礼を言ってお別れしました。駅の方へ歩いていく小川さんをしばらく見送りました。そうしたら、ぐん!って何かに引っ張られるように、小川さんの体が道路に飛び出したんです。ちょうどタクシーがスピードを上げて走り抜けようとしたところでした。小川さんの体は跳ね上げられ、くるくる回りながら空中を飛んで、道路に叩きつけられました。私の目の前で、小川さんの体はくしゃくしゃになりました。手足があり得ない方向に曲がり、首もねじれて体はうつぶせなのにほとんど後ろを向いていました。
私のせいです。私が小川さんに思い出させたから、小川さんは白い男に捕まってしまったんです。
ですから、私は今から竹垣村に行ってこようと思います。一晩眠らずに考えたけれど、やはりそれしかないと思いました。
名古屋から岐阜県青樹郡の竹垣村まで、電車とバスを乗り継いで4時間くらいで着くようです。
お昼前には現地に着けるでしょうか。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-14 07:35
SUZUさん落ち着いてください!
ショックだったのは分かります。でも、早まるのは良くありません。
三枝先生からも、竹垣村には近づかないように言われています。
SUZUさんがどうしても行くのであれば、僕も行きます!
車で向かいます。たぶん5時間くらいかかると思います。
できれば、最寄りの駅かバス停などで待っていていただきたいです。
近づいたら教えてください。本当に、一人で奥へ行かないようにしてください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 08:14
三枝崇顕先生
ご連絡をありがとうございます。
お返事をお送りする前に、緊急事態になってしまいました。私と同じ症状に悩んでいるSUZUさんという人が、単独で竹垣村に向かってしまいました。
止めるために、とりあえず僕も現地に向かいます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-3-14 8:32
海藤様
そうですか。くれぐれも、竹垣村に入る前にSUZUさんを止めてください。竹垣村は現在人間の領域ではない状態にあると思われます。
間に合わないようであれば引き返してください。海藤さん自身は近づくべきではないと思います。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 08:51
名古屋発の特急に乗っています。一人なのに、ずっと誰かに見られている感覚があります。
リュックにはお米とお酒、塩が入っています。小川さんに送ってもらった写真に写っていた、祭壇に並べるべきお供え物です。慌てて家の中でかき集めてきましたが、家にあった料理酒やら味塩やらではどうにもならなさそうですね。
あと、出てくる時にとっさに思い立って、ビデオカメラを持ってきました。父が旅行の時に愛用しているものです。
竹垣村に行くからには、カメラを持って行って映像を残さねばならないと無意識に思ってしまったみたいです。自分が消えてしまっても、映像は残るように、ですかね。
もし私が村で行方不明になって、このカメラだけが残されたら、今度はこれがファウンド・フッテージってことになる訳ですね。
MOJIさん、もしもの時はカメラの回収お願いしますね。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 09:48
奥鷺沼駅で電車を降りました。竹垣方面行きのバスは30分後です。それまでは駅で待ちますが、バスが来たら乗るつもりです。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 09:54
すみませんまだ高速です。できればバスに乗らずに待ってください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 10:31
迷いましたが、バスに乗ってしまいました。田舎の古めかしいバスです。まるで昭和にタイムスリップしたみたい。おじいさんやおばあさんしか乗っていません。
土砂崩れで道が塞がって、竹垣村が廃村になったので、バスは竹垣村までは行かないようです。近くまでは行くみたいなので、行けるところまで行ってみようと思います。
すっかり春のようないい天気で暖かく、バスの揺れが眠気を誘います。窓の外には桃の花が咲いているのも見えて、いい感じです。でも、眠るとアレが来ても見ることができないので、眠ることはできません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:11
高速を降りました。山道を走っています。土砂崩れ以降、竹垣村にもっとも近いバス停である鳩ヶ谷という場所を目指しています。
そちらが先に着くかもですが、その場合もバス停で待っていてください。どのみち車がないと竹垣村へは行けませんよね。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 11:37
鳩ヶ谷でバスを降りたのですが、バスの中で出会った地元のおじさんが車で送ってくださることになりました。竹垣村自体までは無理ですが、村へ通じる林道の入り口まで送っていただけるそうです。
地図には載っていない道ですが、地元の人が使っている林道があるそうです。それなら、竹垣村まで歩いていける距離まで近づけるのだとか。
バタバタしていて、携帯の充電を忘れていました。もうちょっとでバッテリーが切れそうです。しばらく電源を切って休ませると思います。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:38
ちょっと待ってください動かないで! もうすぐ着きそうです。バス停で待ってください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 11:41
三枝崇顕先生
SUZUさんが竹垣村へ向かっています。このまま村に入ってしまうかもしれません。元の祭壇にあったお供え物の塩や酒など、それにビデオカメラを持っているそうですが心配です。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 11:47
カメラを持っているなら、不審なものを見かけたらすかさずカメラを向けるよう伝えてください。ただ見る以上の効果が期待できると思います。とは言え一時的な対処なので、相手から見つからないに越したことはありませんが。
適当なお供え物では役に立たないでしょう。
あと、音声通話は避けてください。声は白痩神を呼び寄せる危険があります。村での会話は基本メールで。なるべくこまめに連絡をください。できる限りのアドバイスをしますので!
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:48
怪しいものを見たら、カメラを向けるようにしてください。それで足止めできるとのことです。声も出さないよう注意してください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:52
鳩ヶ谷に着きました。竹垣村への林道というのを探しているのだけど分かりません。近くの人に聞いても、今は竹垣村へ行く道はないと言われてしまいます。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:59
SUZUさん返事をください!
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:12
SUZUさんを送ったという軽トラのおじさんに偶然出会うことができました。林道を教えてもらって、通行止めの手前までやって来たところです。ここから歩いて追いかけます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:15
三枝先生
林道を歩いています。さっきまであんなに暖かい春のムードだったのに、ここはやけに寒くて、まだ真冬のようです。木々も葉が落ちて、みんな枯れているように見えます。それに、鳥の声が全然しない。生命の気配というものを感じません。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:17
竹垣村はもともと、我々の世界と死者の世界が接する場所でした。契約が途切れたことで、向こう側の領域が広がってきている。黄泉の国が領域を広げているのだと思います。
死者に出会うかもしれません。注意してください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 12:17
MOJIさん
竹垣村に着きました。いくつかの民家と、崩れたビニールハウスの残骸が見えます。お地蔵さんが全部倒されていて気持ち悪いです。
撮影を開始しますね。
棚田の上の道に、小川悠生さんが立っています。手と首がねじれたままなので変な感じです。ねじれた手を振って、おいでおいでをしているようです。小川さんは死んだはずなのに、どうしてあそこにいるんでしょう。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:18
SUZUさん逃げて!
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 12:19
死んだ人が大勢います。
まっすぐこっちに向かってk
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:20
大丈夫ですか? 応答してください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:21
SUZUさん大丈夫ですか?
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:22
応答してください
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:28
竹垣村に来ました。さっきからSUZUさんの応答がありません。林道を抜けて今、村の入り口らしい四つ辻にいます。荒れた田んぼが広がっていて、四つ辻にはお地蔵さんが倒れています。田んぼの向こうにはいくつか民家が見えています。SUZUさんは見当たりません。道にビデオカメラが落ちていました。SUZUさんのものだと思われます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:29
田んぼの上の辺りに何人かの人が立っています。村人かと思いましたが、そうではないようです。
ぼんやりとして、途方に暮れたように立っています。あれはたぶん……映画を観て、白痩神に触れられて、死んでしまった人たちじゃないでしょうか。
SUZUさんは連れ去られたようです。あの洞窟でしょうか。今すぐに追いかけるべきでしょうか。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:30
すぐに撤退してください 何か見たら、カメラを向けるのを忘れないように 振り返らず、元来た道を戻ってください
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:30
いや、SUZUさんが。このまま帰る訳にはいかないです
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:31
それにしても、そのまま進むのは自殺行為です 準備が必要です 一旦そこを離れて、今からメールで送る神社に向かってください 必要な護符などの用意を頼んでおきます 奥に向かうなら、せめてそれがないとどうにもなりません
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:33
長野県木曽郡王滝村 阿蘇儀許曽神社
竹垣村と同じく、裏祭神として白痩神を祀る神社です フィールドワークでお世話になった宮司がいるので、事情を説明しておきます 身を守るための護符と共に、祭壇の詳細も教えてもらえるはずです
車ならそこから40分程度で着くでしょう
私も京都を出て名古屋に向かいます
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:40
無事に車に戻ってくることができました。
振り向きませんでしたが、背後から強烈な視線を感じました。それに匂いも。腐った肉のような匂いです。それが、村から吹いてくる風に漂っているのです。
最悪な気分。吐き気がします。
一休みしてから、教えてもらった神社に向かいます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:43
阿蘇儀許曽神社の祭礼についての論文をお送りしておきます。
隠された重要祭祀 白痩神祭礼について
京都大学民俗学講師 三枝崇顕 2019
日本の呪術史において、彼岸と此岸の境界を守ることは重要な意味を持っていた。此岸に属する我々が彼岸の神々に対して、決して領域を侵さぬことを約束し、契約を結び直す。年ごとの日本の祭礼は、裏にその意味を持っていたのであり、むしろそれこそが本来の目的であったと言える。
中でももっとも重要なのが白痩神祭礼である。死者の化身であり人々を死の世界へ誘う白痩神はまるで悪霊のようだが、生と並び立つもう一方の属性である「死」を代表する重要な神であった。
白痩神を祀る祭礼はかつては全国各地にあったと見られるが、現在も原型のままの姿を残しているものは限られる。その代表的な例が、岐阜県の竹垣神社と長野県の阿蘇儀許曽神社の祭礼である。
阿蘇儀許曽神社では年に一度、初夏の田植えの時期に行われる祭りの際に白痩神を祀る儀式が同時に行われる。表向きは五穀豊穣を祈る祭礼だが、その中に紛らせるようにして、真に重要な白痩神祭礼を行うのである。その祭式は次のような手順を踏む。
1・献膳
餅米、塩、酒を祭壇に奉り、白痩神をもてなす準備を整える。米は村で前年に獲れたものであり、塩は新潟、酒は山形の献司が決められている。
2・神下ろしの儀
祭壇の前で白拍子が舞を献じ、黄泉の国より白痩神をお招きする。舞は一切の明かりを消し、暗黒の中で行われる。これは白痩神を決して見ないためであると同時に、白痩神から見られないため。祭りで担がれた神輿がここに運び込まれ、白痩神を宿らせる依代となる。
3・神綱引き
白痩神が依代に入ったことを確認した後明かりを灯す。祭壇の前に神綱(前年祭礼の翌日より捻り始められた強い霊力を込めた縄)を引き、彼岸と此岸の境界線を示す。
4・神送りの儀
神綱の手前側(此岸側)で依代を焼き、白痩神を彼岸に送り返す。
5・扉閉め
神綱を回収し、これによって再び黄泉の国への扉を閉ざす。
竹垣神社ではほぼ同じ儀式が秋の祭礼の際に行われるとされている。二つの儀式が対になると思われるが、竹垣神社からは取材の許可が得られておらず、その詳細に関してはいまだ不明の部分が多い。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 14:35
神社に到着し、宮司さんから必要なものをいただきました。
竹垣村に入っていくための護符
献膳(祭壇に祀るための餅米、塩、酒とその容器)
神綱
の3点です。献膳と神綱は、実際に今年の祭礼に使用する予定だったものを貸していただきました。
宮司さんには危険すぎると止められましたが……こうなった以上は、最後までやり遂げないと仕方がありません。SUZUさんを見捨てて逃げ帰ったところで、白痩神が近づいてくるのは変わらない訳ですし。
宮司さんにお祓いをしていただきました。少し勇気が湧いたような気がします。それでは、これから再び竹垣村に向かいます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 14:40
そういえば、名古屋に向かわれると言ってましたよね。岐阜ではなく?
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 14:45
「ファウンド・フッテージ」の会社であるNOBODY Incに向かっています。現在の白痩神の依代は映画なので、依代を焼くことをお願いしようと思っています。たぶんそれがないと、儀式は完成しません。
準備が不十分なので、成功の保証はありません。失敗した場合はより強い呪いが返ってくるでしょう。海藤さんにも、私にも。その覚悟だけは、しておいてください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 15:38
SUZUさん、応答できませんか。
生きているなら、何とか応答して欲しいです。
一旦必要なものを取りに行きましたが、今また竹垣村に戻ってきました。
通行止めの前に車を停めて、必要なものを入れたリュックを担いで車を降りました。この場所でもう既に、嫌な匂いを感じます。
周りの雑木林も嫌な感じです。木が全部死んでいるようです。あらためて気づいたのだけど、鳥も虫も全然見当たらない。音もしない。ここはまるで、死の世界です。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 15:46
三枝先生
竹垣村に入りました。
倒れたお地蔵さんの四つ辻を過ぎて、田んぼに沿った坂道を登っていくところです。
何人かの死人たちがいて、ぼんやりと突っ立っています。とりあえず敵意はないようですが、通り過ぎるとのろのろと後ろをついて来ます。
村全体に漂う、嫌な匂いがすごいです。これはもしかして、死臭ということになるのでしょうか。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 15:58
SUZUさん
民家の間の細い道を歩いています。どっちに行けばいいのか分からないですが、竹垣神社や洞窟は山の上にあるとのことなので、坂を登る方向へと向かっています。
三枝先生に教えてもらった神社でもらった護符を持っています。というか、おでこに貼っています。そうするように言われたので。
まるでキョンシーみたいで馬鹿馬鹿しい見た目なのですが、ここでは誰も突っ込む人はいません。
SUZUさんが突っ込んでくれればいいのですが。
……って、何を書いてるんだ。気を紛らわせてるだけです。気にしないで。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:07
死人の数が増えてきました。民家の庭先や路地の奥など、あちこちにいます。年寄りの死人たちは、村の住人だった人たちでしょうか。掃除とか道具の手入れとか、何かの作業をやってるように見えるけど、やってるふりをしているだけのようです。庭を掃いてる格好をしつつ、ほうきを持っていなかったりします。
生きてる時の習慣で動いてるのでしょうか。だとしたら、映画を観て死んだ人たちは、ここで何もすることがない訳ですね。
振り返ると、まだぞろぞろとついて来ています。だんだん増えてきているようです。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:14
SUZUさんからも、三枝先生からも返事がこない。一人で喋ってるのはバカみたいだ。
というか、これは送れてるのか? 電波がないのか。もういい。独り言を続けることにする。
さっきから、声が聞こえてくる。苦しそうに、うめくような声だ。
ついて来ている死人たちの声か。死が苦痛で、耐えられないのか。
前からも後ろからも聞こえる。もう、すっかり囲まれてしまっているようだ。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:17
はくそうしん
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:28
白痩神を見ました。全身真っ白な死体のような生き物が、踊るようにゆらゆらと揺れながら村の通りを歩いています。明るい光の中で見ると、皮膚があちこち腐って変色しているのが見てとれます。あれは死体ですね。映画の中と違って、ここでは普通に生き物のように存在しているようです。
キョロキョロと周りを見回しているのは、僕を探しているのに違いありません。
とっさに空き家の納屋に隠れました。埃を被った精米機の後ろに隠れて、あいつが立ち去るのを待っていますが、家の前の道を行ったり来たりして、なかなかどいてくれません。僕がここにいるのに気づいているのか。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:40
いつまで経っても動けない。光が西日になってきた気がする。グズグズして日が暮れたらヤバいのに動けない。
反対側の出入り口から、農家の家の方に回ってみます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:49
今、いくつかのメールをまとめて受け取りました。電波状況が悪いようです。
護符がある限り、白痩神からは見られないはずです。注意すべきはむしろ死人たちでしょう。護符は死人には効きませんから。
そこは今、境界線が失われて、死者の領域になっています。黄泉の国です。ですから白痩神に殺された死霊たちは皆そこにいるはずですし、そこでは死霊も実体を伴って行動できるはずです。霊でありながら、物理的な干渉が可能。つまり、あなたに危害を加えることが可能だということです。
護符の効力を信じて、白痩神を回避して先に進んでください。死人どもに気をつけてください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:49
家の方に行くと、撮影クルーがいました。いかにも映画を撮っているようなふりをしているのだけど、カメラも何も持っていなくて、何だかごっこ遊びをしているようです。というか、生きていない。死人です。外にいる白痩神と同じような、ブヨブヨした白い肌をしています。皮膚の一部が腐って骨が見えていたり、髪が抜け落ちたりしています。
あれはたぶん、小川悠生さんと北原満さん、それに確か杉山という人ですね。「ファウンド・フッテージ」の映画に出ていた人たち。小川さんと北原さんは死んでいるし、杉山さんという人もSUZUさんのインタビューに出てきてました。その時点では生きてる風だったけど、死んだんですね。
後ろの方で所在なくうろうろしている死人もいました。あれはたぶん大森監督でしょうね。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:51
カメラを向けたのだけど、そいつらには効きませんでした。一斉に襲いかかってきたので、必死で抵抗しました。冷たい体を突き飛ばして逃げて、外に飛び出して。白痩神にも見つかったようです。
今は、別の家に逃げ込んでこれを書いています。とりあえずは隠れていますが、白痩神と死人たちが外を探し回っています。奴らにもみくちゃにされて、臭い汁を浴びてしまいました。最悪です。
今気づきましたが、護符がありません。死人たちに揉まれた時に、護符を取られたようです。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:51
護符を取られたなら危険すぎます。すぐに撤退してください!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:52
すっかり西日になってきました。もう日が暮れそうです。
じっとしていても埒があかないので、思い切って、神社と洞窟まで走ろうと思います。
相変わらず電波が弱くて、ずっと一人ごと状態です。これも届いてないかと思いますが。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:54
このメールも届いていない? 届いているなら、撤退して欲しいですが。
こちらはNOBODY Incでの交渉を終えました。海藤さんのメールも見てもらって、今何が起こっているかある程度理解してもらえたようです。
映画「ファウンド・フッテージ」を放棄することにも、同意してもらえました。彼らとしても、関係者の多くが死亡して戸惑っていたようです。大森監督は結局、NOBODYの代表だったようですね。
一般の方から、家族の突然死と映画の関係を問いただす声もかなり多く届いているようで、私の提案は渡りに船だった気配もあります。早く厄介払いしたいムードを感じました。
ただ、私はフィルムを燃やすようなイメージを持っていたのですが、今どきの映画はデジタルなんですね。映画はDCPと呼ばれるハードディスクの中に入っているそうです。
通常の消去だと復元可能だということなので、磁気を使ってデータを完全に消去する業者を呼びました。その到着を待っているところです。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:01
SUZUです
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:02
SUZUです。MOJIさんもしかして近くにいますか?
村に入ったところで死人たちに取り囲まれて、気を失っている間に運ばれたようです。目を覚ましたら、真っ暗な場所にいます。
スマホの明かりで、かろうじて周りが少しだけ見えます。映画で見覚えのある祭壇らしきものがあるので、ここは洞窟のいちばん奥だと思います。
足もとには池があって、下半身は茶色い水の中に浸かっています。ここから逃げようと思うのだけど、足が水の中で何かに挟まれていて、動きません。
というか、誰かに足をぎゅっと掴まれているような感じです。
池の底から、うめくような声が聞こえてきます。地獄に繋がってるのかもしれません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:07
SUZUさん生きていてよかった!
今近くに来ています。神社へ登っているところなので、もう少しだけ我慢してください。希望を捨てないで!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:14
今、メールがまとめて来ました。電波が途切れ途切れになっているようです。
SUZUさんからもメールがありました。洞窟の奥に捕まっているようです。
裏通りを走って、今のところは白痩神と死人たちを振り切ることができています。でも、追いかけてきています。
村のいちばん高台のあたりに登ってきました。見下ろすと棚田が広がっています。夕日が射していて、棚田が赤く染まっています。場違いですが、きれいな景色です。
田んぼの畦道に死人が一人立っています。遠いのではっきり見えませんが、あれは昨年亡くなった僕の祖母ではないかという気がしています。僕を見る目に、悪意がないように感じるからです。
死者も、すべてが邪悪な死霊ではない。そんな気がします。
ここから先は山で、古い鳥居をくぐって階段が続いています。あれを登れば竹垣神社に、そしてその奥の洞窟に着くはずです。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:21
竹垣神社への階段を登っています。滑りやすい斜面に石が穿たれた急な階段です。滑りやすくてなかなか速度が上がらないのだけど、後ろから追って来る気配が強烈です。白痩神と、大勢の死人たち。異様な声と、気配と、それに嫌な匂いが下の方から上がってきます。逃げ場のないところへ追い立てられてるような気にもなります。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:26
竹垣神社にやって来ました。この場所は、村のどこよりも禍々しさが強いです。何か、空気が歪んでいる気がします。
周囲は背の高い竹藪に囲まれています。風が吹いて、竹藪が揺れて擦れて、バキバキと嫌な音を立てています。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:29
神社の建物の中は、どこもひどく荒れ果てています。村の民家よりもずっとひどい。わざと荒らしてめちゃくちゃにしたように見えるのは、実際に自殺した宮司がやったんでしょう。
たくさんのお札が落ちていて、踏みつけにされて足跡がついています。バラバラになった神具らしき木材も散らばっています。
本殿の中央、本当だったら御神体が祀られていたような場所が、泥の山で埋め尽くされています。カラカラに乾いているので定かではないですが、泥じゃなくて堆肥かもしれません。とにかく、神聖な場所を汚してやろうという悪意が満ちているのを感じます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:32
死人たちの声が、もうすぐそこまで近づいています。
奥へ進んで、本殿の裏庭に当たる場所にやって来ました。柵が壊されていて、ここは本来は入れない場所なのだと思います。砂利敷きの庭の中央に大きな木があって、その前に神主の格好をした男が立っています。あれもどうやら死人です。
洞窟の入り口は、その向こう側の崖にあります。しめ縄が張られていたようですが、ボロボロになって朽ち落ちています。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:34
それは自殺した宮司の服部氏でしょう。人間への呪詛の念を持って、自ら白痩神を解き放った男です。とても強い悪意を持っていると思われます。気をつけてください!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:35
宮司の顔がうぞうぞと蠢いています。よく見ると、無数の蛆が顔にたかっているようです。蛆が宮司の顔の肉を食い破り穴を開け、肉や蛆がボトボトと足もとに落ちています。
あれは完全に腐っています。腐ったまま動いている。それが苦痛であるようで、さっきから苦しそうな唸り声をあげています。
夕日が落ちて、影が差してきました。竹藪の影が異様に長く、長く伸びています。夜になりそうです。
白痩神と死人たちが境内を近づいてきます。砂利を踏む、ガチャガチャという音が聞こえます。どうやらもう、逃げ場はなさそうです。
宮司をどうにかすり抜けて、これから洞窟に入ります。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:36
データ消去業者が到着しました。
現在、データ消去の準備中です。
海藤さんの儀式とタイミングを合わせて、最終的な消去を行う予定です。
なんとか頑張ってください!
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:37
だんだん、足を引っ張る力が強くなってきたかもしれない
池の中に引き込まれそう
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:38
洞窟に入りました!
宮司の死霊が近づいて来ましたが、ギリギリですり抜けて飛び込みました。でも追いかけて来ています。
カメラのライトで照らしながら進んでいます。光が見えるかもですが、声は出さないよう注意してください。白痩神が近づいて来ています。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:39
ライトの光が見えました!
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:39
SUZUさんの明かりも見えます。声は出さないで!
池で隔てられていて、これ以上近づけないようです。三枝先生に教えてもらった儀式をやります。上手くいけば白痩神を封じられるはずです。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:41
祭壇の場所まで来ました。
洞窟が少し広くなっていて、濁った水が浅く溜まった池があります。SUZUさんは池の向こう岸にいるようです。池の手前に、白木のテーブルのような祭壇があります。地面には、以前に供えてあったと思われる容器が割れて散らばっています。
池の向こう側で洞窟は終わっていると思うのだけど、暗闇が濃くて、何も見えません。ライトを向けてもまるで何も見えない。まるで深い穴が開いているようにも見えます。どこか異世界にに繋がっているようです。
これから「献膳」をやります。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:42
分かりました 左から米、塩、酒の順序を間違えないようにしてください
今は既に白痩神が此岸に招かれている状況なので、「神下ろしの儀」は不要です
神綱を祭壇の前に置いたら、連絡を入れてください。依代を破壊します
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:43
祭壇に米、塩、酒を並べ、祭壇の前に神綱を置きました。
白痩神と死人たちの声と足音が、洞窟の中で反響しています。
洞窟の壁に、白痩神の影が伸びているのが見えました。もうやって来そうです
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:43
データの磁気消去を開始します。消去が終わったら神綱を取ってください。それで結界が閉じ、神綱のこちら側は人間の、向こう側は黄泉の領域に戻ります。黄泉は白痩神と共に封印されるはずです
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:44
待って! 待ってください
SUZUさんが神綱の向こう側にいます。このまま閉じたらSUZUさんが戻れない
30秒だけ待ってください 池に入ってSUZUさんをこっちに引っ張ります
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:44
磁気消去はスタートしています。今止めると再起動に10分かかるそうです。消去にも1分程度かかるそうなので、このまま続けます。1分以内にSUZUさんを助けてください!
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:45
磁気消去が終わりました。神綱を取ってください
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:46
無事ならば応答願います。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:47
応答願います
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:50
失敗でしょうか……
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:55
海藤さん、連絡してください
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:00
映画は消去しましたが、残念ながら封印は失敗したようです。
海藤さん、お力になれずにすみません。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:01
生きてます
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:02
SUZUさんを連れて、洞窟を出ました。山を降りて、村まで戻って来ています。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:02
海藤さん! よかった!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:04
ギリギリで何とか、封印はできたようです。SUZUさんを連れ出し、神綱も回収しました。
必死で逃げて来たのではっきりとは分かりませんが、白痩神は消えたようです。死人たちも見当たりません。
すっかり夜ですが、村の空気はさっきまでとずいぶん変わっています。嫌な匂いがなくなっています。心地よい、春の風が吹いているのを感じます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:05
封印は成功したようです。本当に良かった。
念の為、こちらではハードディスクを物理的に破壊して、絶対に復元できないようにしておきます。
大森氏のパソコンに残っていたデータも、すべて磁気消去を行った後廃棄します。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:08
三枝先生のおかげです。ありがとうございました。
今気づいたのですが、洞窟の中でビデオカメラを落としたようです。
ちょっと気になりますが、取りに戻るのはさすがに嫌なので……そのままでもいいですよね。
これから名古屋に向かいます。SUZUさんを家まで送り届けてから、NOBODY Incへ向かおうと思います。
もしよかったら、ビールでも一杯飲みましょう。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:09
よろこんで。お待ちしております。

2024年2月26日にXに投稿されたポスト
玉手箱@jhK24qwRy
最近やたらと救急車走ってない?
※
2024年2月27日にXに投稿されたポスト
マーボー@jmahboh119
最近救急車を多く見るというのはデマ。いつもと同じでも、人からそう言われるとよく見るように思うだけ
※
2024年3月1日にXに投稿されたポスト
ナースのお仕事@miyu9000_lol
救急病棟で働いてるけど、救急車が多く出動してるのは事実だよ。行く時はサイレン鳴らして、患者さんを乗せて帰る時はサイレン鳴らしてない。これはみんな既に死んでるから。若い人が理由なくぽっくり逝くのが増えてる。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-02 23:55
SUZUさんこんにちは。
その後、大丈夫でしょうか……?
「白い男」がもし伝承にある「白痩神」だとしたら、「見る」ことが対処法になり得るかもしれません。
「白痩神」という神様への対策として、古くから伝わってる由緒ある方法みたいです。
実際、ブログに書いた「デューン 砂の惑星PART2」の上映では、僕は「見る」ことでどうにか生き延びることができたようです。
SUZUさんも、万一の場合には目を逸らさず「見る」という対策をとっていただきたいと思います。
この方法を論文に書いておられた三枝さんという人に、現在連絡を取ろうとしてます。より詳しい話が聞けたら、またお知らせします。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-3-3 10:12
MOJIさんこんにちは。ありがとうございます。
あれから映画館には行ってませんが、もしヤバイ!という局面があれば試してみます。
ただ、残念ながら根本的な解決にはならないですね。映画の邪魔になるのは、変わらない訳だから。
MOJIさんのブログを読んで思ったのですが、あの日「デューン」で亡くなった方は、不安に感じながらも、それでもどうしても「デューンPART2」だけは観たかったのかもしれないですね。MOJIさんと同じように。
そんなふうに映画を愛する思いがあんな不幸につながってしまうなんて、本当に許せない。
心から、この呪いを何とかしなくてはならないと思います。
そこでこちらも独自調査を進めていたんですが、実は! 「ファウンド・フッテージ」に出演していた俳優の方を見つけました。
例のヨウコを演じていた人です。クレジットされていた名前とは全然違って、小川悠生さんという方でした。
NOBODY Incでポスターの貼られていた映画をリストアップして、TSUTAYAで借りてきて片っ端から観て、ついに見つけたのです。大森昇監督の「アンダーグラウンド・リチュアル」という映画に出てました。
普通に企業に勤めている人で、プロの俳優ではないみたいですが、何本かの自主制作映画に出演しておられます。
これで少なくとも、「ファウンド・フッテージ」に出ていた人たちは大森監督が言っているように本当に失踪した訳ではない、ということが証明されましたね。
SNSを通じて連絡がとれたので、今度この方にお会いしてくる予定になっています。
結果はまたお知らせします! 楽しみにお待ちください。
※
(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
出演者に会ってきました!の巻 その1
2024-03-05 17:44
テーマ:ホラー映画
みなさんこんにちは! SUZUです。ドキドキ映画ライフは休止中。
例の「ファウンド・フッテージ」ですが、なんと出演していた俳優の方を発見!
先日、名古屋市内の某マクドナルドにて、一時間近くに渡ってインタビューさせていただくことができました。
「ファウンド・フッテージ」において最後まで生き残る「ヨウコ」を演じていた、田沼葉子さん(仮名)。
実際の芸名は違うのですが、ご本人は既に俳優を引退されていて、表に出ることを望まれていないそうなので、本当のお名前や写真など、ご本人につながる情報は伏せさせていただきます。
ですので、皆様もできれば特定など無粋な行為は控えていただければと思います。
葉子さんは1996年生まれ。もともとプロの俳優という訳ではなく、現在は名古屋市内の企業に勤めておられます。
いくつかの自主映画に出演するようになったきっかけは、学生時代にとある演技ワークショップに参加したことだそうです。そのワークショップにはNOBODY Incや、大森昇監督も参加していました。大学在学中の2017年に映画に初出演。卒業、就職後も、時々声がかかるたびに小さな役で自主制作系の映画に出演するようになります。
以下、葉子さんの発言です。
「ファウンド・フッテージの企画に参加したのは2022年の8月ですね。ワークショップの会場でもあった会議室で、関係者の顔合わせが行われたのが最初。と言っても、映画に出ていた6人でほとんど全部です。監督は、映画に北川茂の名前で出ていた北原満さん。他のメンバーもワークショップで顔みしりだった人たちで、私よりも演技経験の少ない人たちばかりでした」
「スタッフは北原さんだけで、あとはカメラマンが一人だけ。ただし、カメラマンは同行しないと言われて。カメラは俳優が扱うからって、みんなで撮影のレクチャーを受けました。助監督は出演者の杉山さんが兼ねてたし、メイクもゆかちゃんが兼ねてました。だから本当に、スタッフもキャストも6人だけです。他はプロデューサーとか言って、大森監督がうろうろしてたかな。彼は撮影現場では一回も見なかったけど」
「撮影は11月半ば、現地に四日間泊まり込んで、一気に進められました。マイクロバスで岐阜の山の中の農村に連れて行かれて、寝泊まりもバスでして。豪雨災害で住む人がいなくなってしまった村なんだって。竹垣村って言ったと思う、確か」
「竹垣村を見つけてきたのは北原さんでした。新聞に廃村の記事が出たのを偶然見たって。災害で多くの村民が亡くなった上に、神社の宮司さんが自殺するという事件まであったのだとか。何だかとても不吉な記事で、これはホラーにぴったりだって言ってました」
「撮影はほとんどがアドリブです。シナリオはなくて、簡単な状況設定だけ説明されて、カメラも持たされて、みんな自分たちで考えて演技をするの。めっちゃ疲れるよ。誰も仕切らないまま映画を撮れって言われるみたいなもんだもの。そんなことできると思う? できる訳ないよ、そんなの」
「現場の雰囲気は悪かった。寒かったし、アドリブだからずっと気が抜けないし、一回一回とんでもない長回しだし。当てずっぽうでやって全部撮って、北原さんが巻き戻して見る。それで、なんか違うなとか言って最初からやり直す。プランなんかないよ。ただやってみて、いいか悪いか後から言うだけ。みんなどんどんイライラして、ホラーっぽい険悪な雰囲気になってました。今考えれば、それも狙いだったのかもしれないけど」
「6人しかいないから、撮影準備も全部キャストの役目。藁人形を吊るしたり、映画に出てきた呪文の落書きも自分たちでせっせと描きました。夜中の足音なんかも、出番のないみんなで走り回って。真っ暗な中を、松明持って山登りしたり。なんだかんだで忙しくて、深夜まで撮影が続くし、みんなとにかく北原さんにムカついてましたね。思いつきで話を変えるんですよね。最初は怪しいカルト集団がいるという設定だったのに、神社を見てから、召喚の儀式で悪霊が呼び出された設定に変えちゃったの。だから、前半と後半で話がちぐはぐになってたでしょう?」
「神社がすごい状況だったんですよね。本殿の飾りとか鏡とかがみんな壊されていて、お札が散らばっていて。泥がぶちまけられて、汚されていたし。そこは、映画のためにやったところじゃないんです。元からそうなっていたの。別に信心深い訳じゃないけど、何だか冒涜っていうか……すごく罰当たりな雰囲気がしてた。本殿の真裏にあった洞窟も、ボロボロになった太いしめ縄が張られてて、あれたぶん本当なら入っちゃいけない場所だよね」
「やっと撮影が終わって、帰り道のバスの中で、北原さんに名前を出さないように頼まれました。俳優が演じた映画じゃなく、本当に行方不明になった学生が撮った映像に見せたいから、なんだって。撮影について口外しないことも約束させられました。みんな釈然としなかったけど、でも最後には納得するしかない感じですね。私はまあ、いいかなと思って。名前が出て嬉しい映画にはならなさそうだったんで」
「ああ、今喋っちゃってますね。いいんですよもう、北原さんは死んだんだから。え? あ、そうですよ。言ってなかったっけ」
「撮影が終わって、それから長いこと何の連絡もなかった。半年くらい経ってワークショップに顔を出した時に、大森監督から映画の公開について話を聞きました。その時に、実は北原さんが亡くなっていたことを知らされました。心臓発作か何かで、突然死だったって。自宅で亡くなって、誰も気づかないまま数日経って、下の階の人が天井の染みで気づいたんだとか。漏れ出していたらしいですよ。血とか体液とか、何か死んだら出ちゃうものが」
長くなったので続きます。続きは翌日のブログで。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-08 02:15
SUZUさんこんにちは! お元気ですか?
続きが更新されないので気になってます。大丈夫でしょうか。
※
2022年5月13日付の新聞記事
見捨てられる日本の地方 竹垣村の消滅
都市への一極集中、地方の過疎化という問題は既に昭和後期から日本の都市計画における主要な議題だった。近年の加速度的な少子高齢化を受けて、現在日本の地方は過疎化という域を超えて、「消滅」のシナリオを辿っている。
2020年時点でいわゆる限界集落は二万箇所を超え、過疎地域における集落の30%を占めていた。
近年の災害の頻発が、その傾向を更に加速している。昨年一年間で、豪雨や地震などによる災害によって孤立化し、日常的な暮らしを継続することが困難になった地域は全国で164箇所にも及んでいる。
岐阜県北東部、飛騨山脈の山間に、竹垣村という村落がある。この村は今年四月に最後の住民がいなくなり、完全な無住地帯となった。かねてから過疎化が進行し長く限界集落となっていたが、昨年夏の集中豪雨による土砂災害によって大きな被害を受け、孤立化。住民は村外に避難していたが、帰村を希望する村民がいなくなったことで公的に廃村が決定した。
竹垣村には数百年の歴史を持つ由緒ある竹垣神社があった。村民が避難した後も最後まで村にとどまり神社を守り続けたのが、竹垣神社の八十二代目の宮司とされる服部久仁彦さん(76)だった。本年四月十三日、その服部さんが神社境内の御神木で縊死しているのが発見されたのである。服部さんの残した遺書には、竹垣神社の伝統的な神事が絶えることへの懸念と、村への帰還をバックアップせず、結果的に伝統を絶やすことに加担した行政への憤りの念が残されていた。
服部さんの死と竹垣村の消滅は、現在の地方行政の在り方に疑問を投げかけていると言えるだろう。
※
各地の白痩神信仰と、契約更改としての祭礼
京都大学民俗学部講師 三枝崇顕 2017
多くの祭礼の目的としては先祖供養や五穀豊穣があげられるが、古来より日本の神社が担ってきた重要な役割として、彼岸との契約がある。つまり、我々人間の生活の場としての此岸、その対極である死者の国である彼岸との接点にあって、互いに無用な干渉を避け、衝突を回避するための約束の確認である。神社で行われる季節ごとの祭礼は、いわば彼岸との契約更改の儀式とも言える。
彼岸から此岸に越境する穢れたものの象徴が、白痩神という神である。この神は死者であり、望まぬ死によって此岸を追放された恨みを抱えている。従って、その性格は邪悪であり、生者への嫉みと怨念を基本的性質として持っている。白痩神は隙あらば境界を超えて此岸に侵入し、罪のない生者を彼岸へ連れ去ろうとする。それを前もって防ぐため、彼岸との間に結ぶ古来よりの契約が、祭礼なのである。
今現在、各地の多くの伝統的祭礼が継ぎ手の不足により、存続が危ぶまれる状況になっている。これはもっぱら文化的・学術的な方面から危惧されているのだが、呪術的側面からも大きな問題である。
何百年もの時を超えて持続されてきた祭礼が途絶えるというのは、ただ単に文化的損失というだけの問題ではない。毎年の祭礼によって守られてきた此岸と彼岸の契約が、一方的に履行されなくなるという事態なのである。
それまで長きに渡って抑えられていた白痩神の越境が、抑え切れないという事態が起こってくるだろう。
※
2024年3月10日に配信されたネットニュース
「ファウンド・フッテージ」の大森昇監督が急死
「観たら死ぬ」という刺激的なコピーで話題を呼んだ自主制作映画「ファウンド・フッテージ」で監督と編集を勤めた大森昇さんが急死していたことがわかった。42歳だった。
NOBODY Incによると、8日朝、大森さんの知人が自宅を訪ね倒れている大森さんを発見、その後死亡が確認された。警察によると事件性はないとのこと。
大森さんは2008年、映画「地獄のかくれんぼ」でデビュー。「アンダーグラウンド・リチュアル」(2017)など、いくつかの自主制作映画で知られる。最新作「ファウンド・フッテージ」は実際の失踪現場で見つかった映像という触れ込みで話題を呼び、昨年末より限定公開されていた。現在は4月に予定されている再々上映に向けて準備中だった。発見時も、同作品に手を入れている最中だったという。
NOBODY Incによると、「ファウンド・フッテージ」次回上映予定には今のところ変更はないとのこと。
※
2024年3月10日に配信されたネットニュース
都市伝説? 映画館で亡くなる人が急増中?
現在、全国各地の映画館で働くアルバイトスタッフの間で、ある噂が流れている。映画館の座席で、映画上映中に亡くなる人が増えているというのだ。
通常、映画の上映が終わるとスタッフが入場し、掃除と忘れ物のチェックなどを行う。昔と違って現在の映画館は完全入れ替え制なので、残っているお客さんに退出を促すこともスタッフの仕事となる。居眠りをしたままスタッフに起こされるお客さんも多いそうだ。
そんなスタッフが居眠りと思って声をかけてみると、死んでいた……というケースが、最近目立って増えているという。
業界関係者に話を聞くと、映画館で亡くなる人は以前からも「稀であるが、いた」という。
「2019年にタイの映画館で、『アナベル 死霊博物館』を観た高齢の観客が心臓発作で亡くなるということがあったそうです。2016年の『死霊館 エンフィールド事件』でも似たようなケースがあったとか。これらはホラー映画なので宣伝に利用されましたが、普通の映画であれば特に話題になることもないんじゃないでしょうか。病死であれば個人情報ですし、映画館としてもイメージが悪くなるので明るみにはしないでしょう。実際には、知られているより多くの人が映画館で亡くなっているかもしれません」
今回噂になっているのは特定の映画ではなく、ジャンルもホラーに限らず様々だ。なので、特に映画が刺激的すぎたからという訳ではなく病死と思われるのだが、ネット上では最近話題になった映画「ファウンド・フッテージ」と結びつける声も上がっている。
「『観たら死ぬ』というキャッチコピーで売り出していたインディーズ映画です。この映画を観た人が、映画館で亡くなっているという噂です。ただ、亡くなった方がどんな映画を観ていたかは分かりませんし、単なる噂以上のものではないですが……」
本当に映画館で亡くなる人が増えているのかも含めて、噂の範疇を出ない話ではあるようだ。
ともあれ、皆さんも映画館で刺激の強い映画を観る時は、突然死しないよう十分な注意を払っていただきたい。
※
2024年3月10日にXに投稿されたポスト
映画番長@Eiga_Bancho797
このアカウントの母です。
このたび、息子は急逝いたしました。
生前のご厚情に心より感謝申し上げます。
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
アポロ20号@Lingar_apollon
アポロ20号の姉です。アポロ20号は急逝いたしました
本人に変わりまして、生前のご厚誼を深く感謝申し上げます
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
角谷隆史@Sugitani_Takafumi1986
この度、本アカウントの主・角谷隆史が亡くなりましたことをお伝えいたします
あまりにも突然のことで、家族も動揺しております
交流いただいた皆様、誠にありがとうございました
※
2024年3月11日にXに投稿されたポスト
MovieLover99@Love_theMovie
怖いよ……死にたくない………
※
(ブログ「SUZUの映画館に行こう!」より)
出演者に会ってきました!の巻 その2
2024-03-11 01:56
テーマ:ホラー映画
みなさんこんにちは! SUZUです。
すみません……体調が悪くなってしまって、寝込んでいました。「続きは明日」と書いたまま沈黙してしまったので、ご心配をおかけしたかと思います。失礼しました。
前回のブログを公開してから、どうも体調が良くないです。体が重くて、何をするにもやる気が起こりません。
単に風邪をひいただけ、だったらいいのですが……。
出演者の葉子さんからお話を聞いて、実質的な監督だった北原満さんが亡くなっていたという話を書いたところで、今度は大森昇監督が急死したというニュースが流れてきて。
かなり動揺しています。
映画館に行きさえしなければ少なくとも死ぬことはない……と思っていたのに、もしかしたら、そうではないのかもしれない。
自宅にいても、危ないのかもしれない。
実は最近、何かが見える気がするんですよ。
目の端に、視界の隅っこの方に、ふっと何かが見えた気がする。
はっきりとは見えない。気配と、焦点の合わない影だけがちらっと見える。
反射的に、目を背けようとしてしまうんだけど。MOJIさんの「見るの力」の話を思い出して、慌てて目を向けるんです。
すると、スッと消えていく。
そんな話はともかくとして。
お約束していた、インタビューの続きをお届けします。
葉子さん「北原さんが亡くなったと聞いて、すごく嫌な気分になりました。あの現場から何か嫌なものを引っ張ってきてしまったような。あの映画にはもう関わりたくないと思ったし、映画ってものに関わるのももううんざりという気分になってました。だから、俳優を辞めることを決めたのもその時。俳優って言っても副業で、ろくに仕事なんてなかったけどね。これからはもう、頼まれても出ないって決めたんです」
「他の四人のうちで撮影後に会ったのは、杉山孝一さん。映画には三浦康二という名前で出ていた人です。助監督も兼ねていました。ギャラを受け取りに行った時に偶然会ったのだけど、すごく雰囲気が変わっていて。撮影の時は明るくて冗談ばっかり言ってる人だったのだけど、その時には暗くて、目の下にくまができていて。眠れないんだと言ってました。何か訳の分からないことをブツブツ言って。あなた方のブログも見てるみたいでしたよ。『関わるのはやめた方がいいって忠告してやってるんだ』って言ってました。『あれは映画ではないからな』って」
「そのほかの人たちがどうしてるかは分からない。その時も確か聞いたと思うけど、大森さんは適当にごまかして教えてくれなかった。ただ何となく、みんなろくなことにはなっていないような雰囲気はありました。自分から映画に関わろうとする人は誰もいないし、俳優を続ける人もいなさそうだったから」
「私自身、ずっと体調不良が続いてます。寝ても起きても、ずーっと一日中体調が悪いの。変な夢も見るし。あの撮影現場に戻ってる夢。あの、誰もいない村ですね。あそこに強制的に戻されてる。なぜかそこに一生住まなければいけないことになっていて、本当に嫌な気分になってる。嫌だ嫌だ帰りたい……と思っていたら、北原さんがやって来て、何か言いたげに私をじーっと見るんです。そんな夢です」
「呪い……かどうかは、分からないけど。でも、呪われても仕方がないかもしれないですね。最後の洞窟の中で、私が祭壇に寝かされてるシーンがあったじゃないですか。あれ、私はセットだと思ってやったのだけど、後から聞いたら元からあそこにあったものらしいんですよ。だから、本当の神様を祀る祭壇ですよね。それをめちゃくちゃにして、その上に乗ってしまってる。北原さんが死んだと聞いた時、あれのせいかなって思いました。ということは、たぶん私もヤバいよね。うん、分かってる」
「北原さんが死んだことを大森さんがネタにしないのは、意外だなって思ってました。それこそ格好の宣伝ネタとして使いそうだもの。でも、本物として売り出してるのを見て、ああとっておきにしてるんだなって。最初は本物のドキュメント映像だって言って売り出して、それが嘘だってバレたら、今度は北原さんの死を持ち出して『呪われた映画』とか言い出すんだろうなって。その前に死んじゃったけど。そういうのが分かるからね、もう関わりたくないんです」
「"白い男"ですか? 私は見てません。現場ではね。そういうものを演じた人はいなかったし、もし映画にあるのだとしたら後から撮影して足したのだと思う。でもどうかな……本当に何か、悪いものなのかもしれないですね。そういうものがついてきても、おかしくないとは感じます。私もずっと、何かに見られてる気がして仕方がないんです」
インタビューは以上です。
葉子さんは映画の中と同様の、長い黒髪の美人でしたが、映画で観たより痩せておられて、やつれてるようにも見えました。
騒がしい店の中で、ずっと落ち着かないご様子で。
目が泳いでるっていうんですか? すごくキョロキョロ、周りが気になって仕方のない様子でした。
何かに怯えていらっしゃるのかな?と思ったのだけど、今これを書いている私も、その時の葉子さんとよく似た感じになっているような気がします。
何かに見られている気がしたら、目を逸らさずに見る方がいいですよ、って伝えたのだけど。葉子さんは笑って、本気にしていないようでした。
どうも疲れやすくなってしまっていて、これだけの文章を書くのも一苦労でした。ものすごく時間がかかってしまった。
ちょっと、ブログはしばらくお休みすることになると思います。すみません。
それではまた、機会がありましたらお会いしましょう。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-11 19:34
SUZUさん お久しぶりです。
大丈夫でしょうか……体調が悪いそうで心配です。
実を言うと、僕もよく似た状況になっています。体が妙に重くて、何度も視線を感じます。目の端に白い男がチラついて、その度にビクビク、キョロキョロしている始末です。もう映画だけじゃなく、街中に白痩神がうろつき出しているようです。
SNSを見ていると、突然死の報告がやたらと目に付きます。白痩神の被害は相当に広がっているんじゃないかと思えます。はっきりとした騒ぎになっていないのは、やはりあまりにも信じ難い話だからでしょうか。
何とか対処法が見つからないかと、必死で調べているのですが。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-12 02:11
MOJIさんこんにちは。ご心配おかけしてごめんなさい。
このままだと、私はいずれ死んでしまうような気がしています。
なんとかしないとと思い、考えた結果、岐阜の竹垣村に行ってみようと思います。小川悠生さん(葉子さん)に教えてもらった、「ファウンド・フッテージ」のロケ地となった廃村です。
行ってどうなるかは、分からないのですが。でも、行かないとどうにもならないという気がして、ものすごく気が焦っています。
小川さんの話によれば、撮影隊は神聖な祭壇を荒らしたようです。そこを元の状態に戻せば、白い男も元の場所に戻るかもしれません。
元の状態がどうなっていたかを知るために、小川さんに一緒に行ってもらいたいとお願いしたのですが、それだけは嫌だと断られました。あの場所に戻るのだけは死んでも嫌だそうです。
元の状態を撮った写真があるはずとのことなので、今探してもらっています。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-12 18:34
SUZUさんちょっと待って! 早まらないでください。
竹垣村に行くべきではないと思います。それは危険すぎます。今の状態のままでは、何の武器も持たずに敵の中に飛び込んでいくようなものだと思います。
三枝先生からの返事を待っているところです。先走りせずに、もう少しだけ待ってください。
※
消えゆく農村と呪術的障壁
京都大学民俗学講師 三枝崇顕 2023
日本各地で、地方の農村が消えていっているという現状がある。国は既に施策として、地方を見捨てる方向に舵を切っている。地方を無住地化することによって資源を都市へと集中させ、より「効率的」な国家運営を目指そうとする傾向は、今後ますます強くなるだろう。
地方の農村の無住地化は、ただ伝統的な里山の風景が失われるという情緒的な問題にとどまらず、いくつもの現実的な問題につながっている。
里山は古来より、人間の領域とそれ以外との緩衝地帯とでも言うべき役割を果たしていた。畑が作られ、林にも人の手が入ることで、土砂崩れなどの危険が防がれていた。また、熊や猪などの野生動物が直接人間の領域に入ってこないようにする防波堤の役割も担っていた。
防いでいたのは、目に見えるものだけではない。古来より、山は神霊の領域であり、死後の世界に通じる場所だった。
人が暮らし、神を祀り、季節ごとの祭礼が欠かさず行われ続けることによって、農村は人間界と霊界を隔てる呪術的障壁の役割を果たしてきたのである。
日本の多くの地方に残る伝統的祭礼は、収穫を祝う村祭りとしての性質と同時に、その本質として怨霊封印・邪霊退散・結界守護などの役目を担ってきた。時代とともに祭礼の形が変わったり縮小されたりといったことがあっても、その核となる呪術的効果は損なわないよう、慎重に言い伝えに従って維持されてきたのである。
天災に伴う突発的な農村の消失は、このような連綿とした営みを暴力的に断ち切ってしまう。なんら「備え」をすることなしにそれまであった呪術的要石が失われるのだから、その及ぼす影響は深刻だ。
2022年の一年間に限っても、長野県作間村、栃木県朔高原町、岐阜県竹垣村などが無住地化しており、当地の神社に伝わる重要な祭礼が途絶している。中でも岐阜県竹垣村は悪名高い白痩神を祀る竹垣神社を擁しており、その祭礼が失われたことによる呪術的影響は計り知れないものがある。
効率化の名のもとに地方を切り捨てる現在の施策の方向性は、そのような呪術的重要性を軽視するものと言わざるを得ない。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-13 23:11
海藤様
白痩神に関して、お問合せをいただきました。京都大学の三枝と申します。
返事が遅くなってすみません。フィールドワークに出かけており、一切の電子機器から遠ざかっておりました。
私は白痩神を始めとする日本の神霊に関して、”実在するもの”という前提に立った上で歴史・文化への影響や関わりを検証する、「実在主義」とでも言うべき立場に立って学問を行なっております。
ただ、私自身が神霊を見たり、聞いたりする能力を持っている訳ではありませんし、ましてや除霊や祓い清めができる訳でもありません。妖怪ハンターではありませんので。
従って、どこまで海藤様のお力になれるかは分かりません。
竹垣村はまさに白痩神の暴走がもっとも懸念される土地となっておりました。
重要な祭祀が中断しているだけではありません。これは公表されていない事実ですが、自殺した竹垣神社の宮司の遺書には、世間の人々への呪詛の念と、白痩神を解放する意図が書かれていました。宮司はその死の前に、白痩神の封印を解く祭式を施したものと思われます。
何らかの厄災が懸念されていましたが、映画を媒体として白痩神が行動するというのは予想外の事態でした。
ただ、神霊は気づかれ、見られることによって顕在化します。見られることは神霊のエネルギーなのです。ですから、映像メディアは神霊との相性がいいのです。
暗闇の中で強制的に見ることに集中させられる映画は、神霊の媒介となるのに特に適していると言えます。映画が白痩神のベクターとなることは十分に考えられることです。
現在、白痩神はウィルスのように、映画を通して多くの人に感染し、活動領域を広めることを目的としていると思われます。
白痩神は死の化身とも言うべき神ですから、映画を通して白痩神に触れられた人は、命を落とす危険が非常に高くなっています。
これを封じるためには、竹垣神社で行われていた祭礼儀式を再現し、本来の領域である黄泉の国にお戻りいただくしかないと思いますが、それにしてもかなりの準備は必要です。
散逸した祭礼の資料を集め直すところから始めないと。多くの識者の方に知恵をお借りしないと、私一人の知識では間違った儀式を行なってしまいかねません。
(当然、間違った儀式を行えば事態はより悪くなることが考えられます。)
いずれにしても、少し時間をいただかなくてはなりません。
それまでは、映画館に行くことは控えていただいて、何らかの気配を感じたらすぐに「見る」ことを習慣化してください。
逆説的ですが、神霊は見られることによって顕在化すると共に、こちらから見ることによってその動きを止めることができます。
あくまでも一時的な対処ですが、気配を感じたらすぐに「見る」ことで、白痩神の接近をしばらくの間止めることができるはずです。海藤さんが度々白い男を目撃していることは、白痩神の接近を遅らせていたのではないかと思います。
むしろ、白い男を目撃していない人の方が、より早く白痩神に近づかれているかもしれません。若い人の不審な突然死のデータを調べてみなければなりません。
くれぐれも、竹垣村に向かうのは絶対に避けてください! あそこは今、限りなく黄泉の国に近い状態にあると思われます。何が起こるか分かりません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-14 01:55
SUZUさん、例の白痩神研究の三枝先生と連絡がつきました。対処に希望が見えるかもしれません。
三枝先生によれば、白痩神に対してはやはり「見る」ことが有効だそうです。見ることで一時的に動きを止めることができるそうです。
遊びの「だるまさんが転んだ」みたいなイメージでしょうか。見ていれば、白痩神をその場に止めておくことができる。見ていないと、白痩神は近づいてくる……。
思ったのですが、例のコロ助さんは何度も白痩神を見ることで、長いことその接近を止めていたのかもしれません。
「ファウンド・フッテージ」を観たけれど白い男に気づかなかった人の方が、知らないうちに白痩神に接近されているのかも。実は、誰にも気づかれないまま死に至っている人が、たくさんいるのかもしれません。
ともかく、怪しいものを見たら、目を背けず見るようにしてください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 06:55
MOJIさんこんにちは。小川悠生さんが死にました。
昨日お会いして祭壇の写真をもらったのです。前と同じマクドナルドで少しお話をしましたが、小川さんはやはり落ち着かない様子で、しきりに後ろを気にしておられました。
「約束があるから」と言うのですぐにお店を出ました。お店の前で向かい合って、あらためてお礼を言ってお別れしました。駅の方へ歩いていく小川さんをしばらく見送りました。そうしたら、ぐん!って何かに引っ張られるように、小川さんの体が道路に飛び出したんです。ちょうどタクシーがスピードを上げて走り抜けようとしたところでした。小川さんの体は跳ね上げられ、くるくる回りながら空中を飛んで、道路に叩きつけられました。私の目の前で、小川さんの体はくしゃくしゃになりました。手足があり得ない方向に曲がり、首もねじれて体はうつぶせなのにほとんど後ろを向いていました。
私のせいです。私が小川さんに思い出させたから、小川さんは白い男に捕まってしまったんです。
ですから、私は今から竹垣村に行ってこようと思います。一晩眠らずに考えたけれど、やはりそれしかないと思いました。
名古屋から岐阜県青樹郡の竹垣村まで、電車とバスを乗り継いで4時間くらいで着くようです。
お昼前には現地に着けるでしょうか。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→ SUZU)
2024-03-14 07:35
SUZUさん落ち着いてください!
ショックだったのは分かります。でも、早まるのは良くありません。
三枝先生からも、竹垣村には近づかないように言われています。
SUZUさんがどうしても行くのであれば、僕も行きます!
車で向かいます。たぶん5時間くらいかかると思います。
できれば、最寄りの駅かバス停などで待っていていただきたいです。
近づいたら教えてください。本当に、一人で奥へ行かないようにしてください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 08:14
三枝崇顕先生
ご連絡をありがとうございます。
お返事をお送りする前に、緊急事態になってしまいました。私と同じ症状に悩んでいるSUZUさんという人が、単独で竹垣村に向かってしまいました。
止めるために、とりあえず僕も現地に向かいます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-3-14 8:32
海藤様
そうですか。くれぐれも、竹垣村に入る前にSUZUさんを止めてください。竹垣村は現在人間の領域ではない状態にあると思われます。
間に合わないようであれば引き返してください。海藤さん自身は近づくべきではないと思います。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 08:51
名古屋発の特急に乗っています。一人なのに、ずっと誰かに見られている感覚があります。
リュックにはお米とお酒、塩が入っています。小川さんに送ってもらった写真に写っていた、祭壇に並べるべきお供え物です。慌てて家の中でかき集めてきましたが、家にあった料理酒やら味塩やらではどうにもならなさそうですね。
あと、出てくる時にとっさに思い立って、ビデオカメラを持ってきました。父が旅行の時に愛用しているものです。
竹垣村に行くからには、カメラを持って行って映像を残さねばならないと無意識に思ってしまったみたいです。自分が消えてしまっても、映像は残るように、ですかね。
もし私が村で行方不明になって、このカメラだけが残されたら、今度はこれがファウンド・フッテージってことになる訳ですね。
MOJIさん、もしもの時はカメラの回収お願いしますね。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 09:48
奥鷺沼駅で電車を降りました。竹垣方面行きのバスは30分後です。それまでは駅で待ちますが、バスが来たら乗るつもりです。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 09:54
すみませんまだ高速です。できればバスに乗らずに待ってください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 10:31
迷いましたが、バスに乗ってしまいました。田舎の古めかしいバスです。まるで昭和にタイムスリップしたみたい。おじいさんやおばあさんしか乗っていません。
土砂崩れで道が塞がって、竹垣村が廃村になったので、バスは竹垣村までは行かないようです。近くまでは行くみたいなので、行けるところまで行ってみようと思います。
すっかり春のようないい天気で暖かく、バスの揺れが眠気を誘います。窓の外には桃の花が咲いているのも見えて、いい感じです。でも、眠るとアレが来ても見ることができないので、眠ることはできません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:11
高速を降りました。山道を走っています。土砂崩れ以降、竹垣村にもっとも近いバス停である鳩ヶ谷という場所を目指しています。
そちらが先に着くかもですが、その場合もバス停で待っていてください。どのみち車がないと竹垣村へは行けませんよね。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 11:37
鳩ヶ谷でバスを降りたのですが、バスの中で出会った地元のおじさんが車で送ってくださることになりました。竹垣村自体までは無理ですが、村へ通じる林道の入り口まで送っていただけるそうです。
地図には載っていない道ですが、地元の人が使っている林道があるそうです。それなら、竹垣村まで歩いていける距離まで近づけるのだとか。
バタバタしていて、携帯の充電を忘れていました。もうちょっとでバッテリーが切れそうです。しばらく電源を切って休ませると思います。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:38
ちょっと待ってください動かないで! もうすぐ着きそうです。バス停で待ってください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 11:41
三枝崇顕先生
SUZUさんが竹垣村へ向かっています。このまま村に入ってしまうかもしれません。元の祭壇にあったお供え物の塩や酒など、それにビデオカメラを持っているそうですが心配です。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 11:47
カメラを持っているなら、不審なものを見かけたらすかさずカメラを向けるよう伝えてください。ただ見る以上の効果が期待できると思います。とは言え一時的な対処なので、相手から見つからないに越したことはありませんが。
適当なお供え物では役に立たないでしょう。
あと、音声通話は避けてください。声は白痩神を呼び寄せる危険があります。村での会話は基本メールで。なるべくこまめに連絡をください。できる限りのアドバイスをしますので!
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:48
怪しいものを見たら、カメラを向けるようにしてください。それで足止めできるとのことです。声も出さないよう注意してください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:52
鳩ヶ谷に着きました。竹垣村への林道というのを探しているのだけど分かりません。近くの人に聞いても、今は竹垣村へ行く道はないと言われてしまいます。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 11:59
SUZUさん返事をください!
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:12
SUZUさんを送ったという軽トラのおじさんに偶然出会うことができました。林道を教えてもらって、通行止めの手前までやって来たところです。ここから歩いて追いかけます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:15
三枝先生
林道を歩いています。さっきまであんなに暖かい春のムードだったのに、ここはやけに寒くて、まだ真冬のようです。木々も葉が落ちて、みんな枯れているように見えます。それに、鳥の声が全然しない。生命の気配というものを感じません。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:17
竹垣村はもともと、我々の世界と死者の世界が接する場所でした。契約が途切れたことで、向こう側の領域が広がってきている。黄泉の国が領域を広げているのだと思います。
死者に出会うかもしれません。注意してください。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 12:17
MOJIさん
竹垣村に着きました。いくつかの民家と、崩れたビニールハウスの残骸が見えます。お地蔵さんが全部倒されていて気持ち悪いです。
撮影を開始しますね。
棚田の上の道に、小川悠生さんが立っています。手と首がねじれたままなので変な感じです。ねじれた手を振って、おいでおいでをしているようです。小川さんは死んだはずなのに、どうしてあそこにいるんでしょう。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:18
SUZUさん逃げて!
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 12:19
死んだ人が大勢います。
まっすぐこっちに向かってk
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:20
大丈夫ですか? 応答してください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:21
SUZUさん大丈夫ですか?
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 12:22
応答してください
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:28
竹垣村に来ました。さっきからSUZUさんの応答がありません。林道を抜けて今、村の入り口らしい四つ辻にいます。荒れた田んぼが広がっていて、四つ辻にはお地蔵さんが倒れています。田んぼの向こうにはいくつか民家が見えています。SUZUさんは見当たりません。道にビデオカメラが落ちていました。SUZUさんのものだと思われます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:29
田んぼの上の辺りに何人かの人が立っています。村人かと思いましたが、そうではないようです。
ぼんやりとして、途方に暮れたように立っています。あれはたぶん……映画を観て、白痩神に触れられて、死んでしまった人たちじゃないでしょうか。
SUZUさんは連れ去られたようです。あの洞窟でしょうか。今すぐに追いかけるべきでしょうか。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:30
すぐに撤退してください 何か見たら、カメラを向けるのを忘れないように 振り返らず、元来た道を戻ってください
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:30
いや、SUZUさんが。このまま帰る訳にはいかないです
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:31
それにしても、そのまま進むのは自殺行為です 準備が必要です 一旦そこを離れて、今からメールで送る神社に向かってください 必要な護符などの用意を頼んでおきます 奥に向かうなら、せめてそれがないとどうにもなりません
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:33
長野県木曽郡王滝村 阿蘇儀許曽神社
竹垣村と同じく、裏祭神として白痩神を祀る神社です フィールドワークでお世話になった宮司がいるので、事情を説明しておきます 身を守るための護符と共に、祭壇の詳細も教えてもらえるはずです
車ならそこから40分程度で着くでしょう
私も京都を出て名古屋に向かいます
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 12:40
無事に車に戻ってくることができました。
振り向きませんでしたが、背後から強烈な視線を感じました。それに匂いも。腐った肉のような匂いです。それが、村から吹いてくる風に漂っているのです。
最悪な気分。吐き気がします。
一休みしてから、教えてもらった神社に向かいます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 12:43
阿蘇儀許曽神社の祭礼についての論文をお送りしておきます。
隠された重要祭祀 白痩神祭礼について
京都大学民俗学講師 三枝崇顕 2019
日本の呪術史において、彼岸と此岸の境界を守ることは重要な意味を持っていた。此岸に属する我々が彼岸の神々に対して、決して領域を侵さぬことを約束し、契約を結び直す。年ごとの日本の祭礼は、裏にその意味を持っていたのであり、むしろそれこそが本来の目的であったと言える。
中でももっとも重要なのが白痩神祭礼である。死者の化身であり人々を死の世界へ誘う白痩神はまるで悪霊のようだが、生と並び立つもう一方の属性である「死」を代表する重要な神であった。
白痩神を祀る祭礼はかつては全国各地にあったと見られるが、現在も原型のままの姿を残しているものは限られる。その代表的な例が、岐阜県の竹垣神社と長野県の阿蘇儀許曽神社の祭礼である。
阿蘇儀許曽神社では年に一度、初夏の田植えの時期に行われる祭りの際に白痩神を祀る儀式が同時に行われる。表向きは五穀豊穣を祈る祭礼だが、その中に紛らせるようにして、真に重要な白痩神祭礼を行うのである。その祭式は次のような手順を踏む。
1・献膳
餅米、塩、酒を祭壇に奉り、白痩神をもてなす準備を整える。米は村で前年に獲れたものであり、塩は新潟、酒は山形の献司が決められている。
2・神下ろしの儀
祭壇の前で白拍子が舞を献じ、黄泉の国より白痩神をお招きする。舞は一切の明かりを消し、暗黒の中で行われる。これは白痩神を決して見ないためであると同時に、白痩神から見られないため。祭りで担がれた神輿がここに運び込まれ、白痩神を宿らせる依代となる。
3・神綱引き
白痩神が依代に入ったことを確認した後明かりを灯す。祭壇の前に神綱(前年祭礼の翌日より捻り始められた強い霊力を込めた縄)を引き、彼岸と此岸の境界線を示す。
4・神送りの儀
神綱の手前側(此岸側)で依代を焼き、白痩神を彼岸に送り返す。
5・扉閉め
神綱を回収し、これによって再び黄泉の国への扉を閉ざす。
竹垣神社ではほぼ同じ儀式が秋の祭礼の際に行われるとされている。二つの儀式が対になると思われるが、竹垣神社からは取材の許可が得られておらず、その詳細に関してはいまだ不明の部分が多い。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 14:35
神社に到着し、宮司さんから必要なものをいただきました。
竹垣村に入っていくための護符
献膳(祭壇に祀るための餅米、塩、酒とその容器)
神綱
の3点です。献膳と神綱は、実際に今年の祭礼に使用する予定だったものを貸していただきました。
宮司さんには危険すぎると止められましたが……こうなった以上は、最後までやり遂げないと仕方がありません。SUZUさんを見捨てて逃げ帰ったところで、白痩神が近づいてくるのは変わらない訳ですし。
宮司さんにお祓いをしていただきました。少し勇気が湧いたような気がします。それでは、これから再び竹垣村に向かいます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 14:40
そういえば、名古屋に向かわれると言ってましたよね。岐阜ではなく?
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 14:45
「ファウンド・フッテージ」の会社であるNOBODY Incに向かっています。現在の白痩神の依代は映画なので、依代を焼くことをお願いしようと思っています。たぶんそれがないと、儀式は完成しません。
準備が不十分なので、成功の保証はありません。失敗した場合はより強い呪いが返ってくるでしょう。海藤さんにも、私にも。その覚悟だけは、しておいてください。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 15:38
SUZUさん、応答できませんか。
生きているなら、何とか応答して欲しいです。
一旦必要なものを取りに行きましたが、今また竹垣村に戻ってきました。
通行止めの前に車を停めて、必要なものを入れたリュックを担いで車を降りました。この場所でもう既に、嫌な匂いを感じます。
周りの雑木林も嫌な感じです。木が全部死んでいるようです。あらためて気づいたのだけど、鳥も虫も全然見当たらない。音もしない。ここはまるで、死の世界です。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 15:46
三枝先生
竹垣村に入りました。
倒れたお地蔵さんの四つ辻を過ぎて、田んぼに沿った坂道を登っていくところです。
何人かの死人たちがいて、ぼんやりと突っ立っています。とりあえず敵意はないようですが、通り過ぎるとのろのろと後ろをついて来ます。
村全体に漂う、嫌な匂いがすごいです。これはもしかして、死臭ということになるのでしょうか。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 15:58
SUZUさん
民家の間の細い道を歩いています。どっちに行けばいいのか分からないですが、竹垣神社や洞窟は山の上にあるとのことなので、坂を登る方向へと向かっています。
三枝先生に教えてもらった神社でもらった護符を持っています。というか、おでこに貼っています。そうするように言われたので。
まるでキョンシーみたいで馬鹿馬鹿しい見た目なのですが、ここでは誰も突っ込む人はいません。
SUZUさんが突っ込んでくれればいいのですが。
……って、何を書いてるんだ。気を紛らわせてるだけです。気にしないで。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:07
死人の数が増えてきました。民家の庭先や路地の奥など、あちこちにいます。年寄りの死人たちは、村の住人だった人たちでしょうか。掃除とか道具の手入れとか、何かの作業をやってるように見えるけど、やってるふりをしているだけのようです。庭を掃いてる格好をしつつ、ほうきを持っていなかったりします。
生きてる時の習慣で動いてるのでしょうか。だとしたら、映画を観て死んだ人たちは、ここで何もすることがない訳ですね。
振り返ると、まだぞろぞろとついて来ています。だんだん増えてきているようです。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:14
SUZUさんからも、三枝先生からも返事がこない。一人で喋ってるのはバカみたいだ。
というか、これは送れてるのか? 電波がないのか。もういい。独り言を続けることにする。
さっきから、声が聞こえてくる。苦しそうに、うめくような声だ。
ついて来ている死人たちの声か。死が苦痛で、耐えられないのか。
前からも後ろからも聞こえる。もう、すっかり囲まれてしまっているようだ。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:17
はくそうしん
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:28
白痩神を見ました。全身真っ白な死体のような生き物が、踊るようにゆらゆらと揺れながら村の通りを歩いています。明るい光の中で見ると、皮膚があちこち腐って変色しているのが見てとれます。あれは死体ですね。映画の中と違って、ここでは普通に生き物のように存在しているようです。
キョロキョロと周りを見回しているのは、僕を探しているのに違いありません。
とっさに空き家の納屋に隠れました。埃を被った精米機の後ろに隠れて、あいつが立ち去るのを待っていますが、家の前の道を行ったり来たりして、なかなかどいてくれません。僕がここにいるのに気づいているのか。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:40
いつまで経っても動けない。光が西日になってきた気がする。グズグズして日が暮れたらヤバいのに動けない。
反対側の出入り口から、農家の家の方に回ってみます。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:49
今、いくつかのメールをまとめて受け取りました。電波状況が悪いようです。
護符がある限り、白痩神からは見られないはずです。注意すべきはむしろ死人たちでしょう。護符は死人には効きませんから。
そこは今、境界線が失われて、死者の領域になっています。黄泉の国です。ですから白痩神に殺された死霊たちは皆そこにいるはずですし、そこでは死霊も実体を伴って行動できるはずです。霊でありながら、物理的な干渉が可能。つまり、あなたに危害を加えることが可能だということです。
護符の効力を信じて、白痩神を回避して先に進んでください。死人どもに気をつけてください。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:49
家の方に行くと、撮影クルーがいました。いかにも映画を撮っているようなふりをしているのだけど、カメラも何も持っていなくて、何だかごっこ遊びをしているようです。というか、生きていない。死人です。外にいる白痩神と同じような、ブヨブヨした白い肌をしています。皮膚の一部が腐って骨が見えていたり、髪が抜け落ちたりしています。
あれはたぶん、小川悠生さんと北原満さん、それに確か杉山という人ですね。「ファウンド・フッテージ」の映画に出ていた人たち。小川さんと北原さんは死んでいるし、杉山さんという人もSUZUさんのインタビューに出てきてました。その時点では生きてる風だったけど、死んだんですね。
後ろの方で所在なくうろうろしている死人もいました。あれはたぶん大森監督でしょうね。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:51
カメラを向けたのだけど、そいつらには効きませんでした。一斉に襲いかかってきたので、必死で抵抗しました。冷たい体を突き飛ばして逃げて、外に飛び出して。白痩神にも見つかったようです。
今は、別の家に逃げ込んでこれを書いています。とりあえずは隠れていますが、白痩神と死人たちが外を探し回っています。奴らにもみくちゃにされて、臭い汁を浴びてしまいました。最悪です。
今気づきましたが、護符がありません。死人たちに揉まれた時に、護符を取られたようです。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:51
護符を取られたなら危険すぎます。すぐに撤退してください!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 16:52
すっかり西日になってきました。もう日が暮れそうです。
じっとしていても埒があかないので、思い切って、神社と洞窟まで走ろうと思います。
相変わらず電波が弱くて、ずっと一人ごと状態です。これも届いてないかと思いますが。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 16:54
このメールも届いていない? 届いているなら、撤退して欲しいですが。
こちらはNOBODY Incでの交渉を終えました。海藤さんのメールも見てもらって、今何が起こっているかある程度理解してもらえたようです。
映画「ファウンド・フッテージ」を放棄することにも、同意してもらえました。彼らとしても、関係者の多くが死亡して戸惑っていたようです。大森監督は結局、NOBODYの代表だったようですね。
一般の方から、家族の突然死と映画の関係を問いただす声もかなり多く届いているようで、私の提案は渡りに船だった気配もあります。早く厄介払いしたいムードを感じました。
ただ、私はフィルムを燃やすようなイメージを持っていたのですが、今どきの映画はデジタルなんですね。映画はDCPと呼ばれるハードディスクの中に入っているそうです。
通常の消去だと復元可能だということなので、磁気を使ってデータを完全に消去する業者を呼びました。その到着を待っているところです。
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:01
SUZUです
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:02
SUZUです。MOJIさんもしかして近くにいますか?
村に入ったところで死人たちに取り囲まれて、気を失っている間に運ばれたようです。目を覚ましたら、真っ暗な場所にいます。
スマホの明かりで、かろうじて周りが少しだけ見えます。映画で見覚えのある祭壇らしきものがあるので、ここは洞窟のいちばん奥だと思います。
足もとには池があって、下半身は茶色い水の中に浸かっています。ここから逃げようと思うのだけど、足が水の中で何かに挟まれていて、動きません。
というか、誰かに足をぎゅっと掴まれているような感じです。
池の底から、うめくような声が聞こえてきます。地獄に繋がってるのかもしれません。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:07
SUZUさん生きていてよかった!
今近くに来ています。神社へ登っているところなので、もう少しだけ我慢してください。希望を捨てないで!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:14
今、メールがまとめて来ました。電波が途切れ途切れになっているようです。
SUZUさんからもメールがありました。洞窟の奥に捕まっているようです。
裏通りを走って、今のところは白痩神と死人たちを振り切ることができています。でも、追いかけてきています。
村のいちばん高台のあたりに登ってきました。見下ろすと棚田が広がっています。夕日が射していて、棚田が赤く染まっています。場違いですが、きれいな景色です。
田んぼの畦道に死人が一人立っています。遠いのではっきり見えませんが、あれは昨年亡くなった僕の祖母ではないかという気がしています。僕を見る目に、悪意がないように感じるからです。
死者も、すべてが邪悪な死霊ではない。そんな気がします。
ここから先は山で、古い鳥居をくぐって階段が続いています。あれを登れば竹垣神社に、そしてその奥の洞窟に着くはずです。
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:21
竹垣神社への階段を登っています。滑りやすい斜面に石が穿たれた急な階段です。滑りやすくてなかなか速度が上がらないのだけど、後ろから追って来る気配が強烈です。白痩神と、大勢の死人たち。異様な声と、気配と、それに嫌な匂いが下の方から上がってきます。逃げ場のないところへ追い立てられてるような気にもなります。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:26
竹垣神社にやって来ました。この場所は、村のどこよりも禍々しさが強いです。何か、空気が歪んでいる気がします。
周囲は背の高い竹藪に囲まれています。風が吹いて、竹藪が揺れて擦れて、バキバキと嫌な音を立てています。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:29
神社の建物の中は、どこもひどく荒れ果てています。村の民家よりもずっとひどい。わざと荒らしてめちゃくちゃにしたように見えるのは、実際に自殺した宮司がやったんでしょう。
たくさんのお札が落ちていて、踏みつけにされて足跡がついています。バラバラになった神具らしき木材も散らばっています。
本殿の中央、本当だったら御神体が祀られていたような場所が、泥の山で埋め尽くされています。カラカラに乾いているので定かではないですが、泥じゃなくて堆肥かもしれません。とにかく、神聖な場所を汚してやろうという悪意が満ちているのを感じます。
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:32
死人たちの声が、もうすぐそこまで近づいています。
奥へ進んで、本殿の裏庭に当たる場所にやって来ました。柵が壊されていて、ここは本来は入れない場所なのだと思います。砂利敷きの庭の中央に大きな木があって、その前に神主の格好をした男が立っています。あれもどうやら死人です。
洞窟の入り口は、その向こう側の崖にあります。しめ縄が張られていたようですが、ボロボロになって朽ち落ちています。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:34
それは自殺した宮司の服部氏でしょう。人間への呪詛の念を持って、自ら白痩神を解き放った男です。とても強い悪意を持っていると思われます。気をつけてください!
※
(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:35
宮司の顔がうぞうぞと蠢いています。よく見ると、無数の蛆が顔にたかっているようです。蛆が宮司の顔の肉を食い破り穴を開け、肉や蛆がボトボトと足もとに落ちています。
あれは完全に腐っています。腐ったまま動いている。それが苦痛であるようで、さっきから苦しそうな唸り声をあげています。
夕日が落ちて、影が差してきました。竹藪の影が異様に長く、長く伸びています。夜になりそうです。
白痩神と死人たちが境内を近づいてきます。砂利を踏む、ガチャガチャという音が聞こえます。どうやらもう、逃げ場はなさそうです。
宮司をどうにかすり抜けて、これから洞窟に入ります。
※
(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:36
データ消去業者が到着しました。
現在、データ消去の準備中です。
海藤さんの儀式とタイミングを合わせて、最終的な消去を行う予定です。
なんとか頑張ってください!
※
(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:37
だんだん、足を引っ張る力が強くなってきたかもしれない
池の中に引き込まれそう
※
(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:38
洞窟に入りました!
宮司の死霊が近づいて来ましたが、ギリギリですり抜けて飛び込みました。でも追いかけて来ています。
カメラのライトで照らしながら進んでいます。光が見えるかもですが、声は出さないよう注意してください。白痩神が近づいて来ています。
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(ダイレクトメッセージ:SUZU→MOJI)
2024-03-14 17:39
ライトの光が見えました!
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(ダイレクトメッセージ:MOJI→SUZU)
2024-03-14 17:39
SUZUさんの明かりも見えます。声は出さないで!
池で隔てられていて、これ以上近づけないようです。三枝先生に教えてもらった儀式をやります。上手くいけば白痩神を封じられるはずです。
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:41
祭壇の場所まで来ました。
洞窟が少し広くなっていて、濁った水が浅く溜まった池があります。SUZUさんは池の向こう岸にいるようです。池の手前に、白木のテーブルのような祭壇があります。地面には、以前に供えてあったと思われる容器が割れて散らばっています。
池の向こう側で洞窟は終わっていると思うのだけど、暗闇が濃くて、何も見えません。ライトを向けてもまるで何も見えない。まるで深い穴が開いているようにも見えます。どこか異世界にに繋がっているようです。
これから「献膳」をやります。
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:42
分かりました 左から米、塩、酒の順序を間違えないようにしてください
今は既に白痩神が此岸に招かれている状況なので、「神下ろしの儀」は不要です
神綱を祭壇の前に置いたら、連絡を入れてください。依代を破壊します
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:43
祭壇に米、塩、酒を並べ、祭壇の前に神綱を置きました。
白痩神と死人たちの声と足音が、洞窟の中で反響しています。
洞窟の壁に、白痩神の影が伸びているのが見えました。もうやって来そうです
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:43
データの磁気消去を開始します。消去が終わったら神綱を取ってください。それで結界が閉じ、神綱のこちら側は人間の、向こう側は黄泉の領域に戻ります。黄泉は白痩神と共に封印されるはずです
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 17:44
待って! 待ってください
SUZUさんが神綱の向こう側にいます。このまま閉じたらSUZUさんが戻れない
30秒だけ待ってください 池に入ってSUZUさんをこっちに引っ張ります
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:44
磁気消去はスタートしています。今止めると再起動に10分かかるそうです。消去にも1分程度かかるそうなので、このまま続けます。1分以内にSUZUさんを助けてください!
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:45
磁気消去が終わりました。神綱を取ってください
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:46
無事ならば応答願います。
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:47
応答願います
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:50
失敗でしょうか……
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 17:55
海藤さん、連絡してください
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:00
映画は消去しましたが、残念ながら封印は失敗したようです。
海藤さん、お力になれずにすみません。
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:01
生きてます
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:02
SUZUさんを連れて、洞窟を出ました。山を降りて、村まで戻って来ています。
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:02
海藤さん! よかった!
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:04
ギリギリで何とか、封印はできたようです。SUZUさんを連れ出し、神綱も回収しました。
必死で逃げて来たのではっきりとは分かりませんが、白痩神は消えたようです。死人たちも見当たりません。
すっかり夜ですが、村の空気はさっきまでとずいぶん変わっています。嫌な匂いがなくなっています。心地よい、春の風が吹いているのを感じます。
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:05
封印は成功したようです。本当に良かった。
念の為、こちらではハードディスクを物理的に破壊して、絶対に復元できないようにしておきます。
大森氏のパソコンに残っていたデータも、すべて磁気消去を行った後廃棄します。
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(メール:MOJI 海藤文字→三枝崇顕)
2024-03-14 18:08
三枝先生のおかげです。ありがとうございました。
今気づいたのですが、洞窟の中でビデオカメラを落としたようです。
ちょっと気になりますが、取りに戻るのはさすがに嫌なので……そのままでもいいですよね。
これから名古屋に向かいます。SUZUさんを家まで送り届けてから、NOBODY Incへ向かおうと思います。
もしよかったら、ビールでも一杯飲みましょう。
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(メール:三枝崇顕→MOJI 海藤文字)
2024-03-14 18:09
よろこんで。お待ちしております。

