ヒュ、ヒュと、短い呼吸が自分の喉から鳴っている。
PCの電源はもうコンセントから引き抜いて消した。スマートフォンだってたった今液晶を壊して粉々にしたばかりだ。
なぜあんなものが僕の動画にコメントされていたのか、意味が分からないし腹が立つ。
「ォエッ…アッ…ゲホッ」
僕は床をのたうち回っていた。酷く醜い姿だ。体が思うように言うことをきかず、いやそれよりかは、何か強い力で両手、両足が引っ張られて押さえつけられるような感覚だ。
「うるさい!うるさい!!騒ぐなって言っでるっ…だろ…!!!」
僕は耳元でうるさく泣きわめく”その子”に怒鳴りつけたが、だらしなく涙と鼻水で汚れた口からは、情けない声しか出なかった。勢いに任せて唾に血液が混じる。苦しくてたまらない。内臓が破裂でもしたかのように、僕が咽る度赤黒い血が口から吐き出された。
「なん…なんで」
混乱と怒りで思考がまとまらずパニックに陥っていた。ただひたすらに怖かった。1Kの狭いアパートに、僕以外の誰かがいる。いや、誰なのかはわかっている。僕のコレクション、僕だけのコレクションが、どうしてここにいるんだ。
何とかもがき、手に掴んだのはベッドにあった布団だと思う。僕はそれで汗と涙と、それから血を拭って、なんとか目が慣れるまでまぶたを開き続け辺りを執拗に見渡した。
「なんでいるの…!なんでいるんだよ!!」
俺は”気配”に向かってそう怒鳴った。お前のことはしっかりと壊して殺したはずだ。その証拠にあのYellow BOXがあって、俺は自分のコンテンツにお前を並べた。俺の唯一のコレクションだ。お前が叫ぶことも助けを呼ぶこともできないくらい泣かせて、喉を締め上げて、そして逃げ出せないように何度も何度もぺちゃんこに潰した四肢を、身体を隅々まで記録して、そしてアップロードした!誰にもバレてない。バレなかった。バレなかったんだ!
僕の宝物であり最大級の快楽を与えてくれる思い出だ。お前はもう、死んだはずなのに。
「あぐ、あ、あ、」
身体が痛い。中から内臓が圧迫されるような苦痛だ。俺が情けない声を上げる度に口から、多分他の場所からも血が出てる。いや、暗いからわからない。だけど体中ドロドロで、痛くて不快でたまらなかった。腹を内側から殴られる感覚がして耐えきれず床に倒れ伏す。体の中で何かが暴れている。もはや苦悶の声も出ないほど、次々に中を破壊されているような気がした。
拷問だ、そう思った。
「サナ、カちゃ…」
声になっていたかわからない。必死に気配に呼びかけた。
「逝って、逝って、もうこないで、やめて」
視界が霞む。暗い部屋に黒い靄がかかり、見えなくなっていく。ただ俺の目の前に、片足が素足でもう一方の足には子供用の靴を履いた女の子の脚が見えていた。僕の目の前に、その子が立っていた。
「誰に、ここまで来させられたの、お葬儀、して、もらったでしょ」
その子は答えない。佇んでいる。
「あ、ヒュッ…」
息を吸い込んだがまるで水に溺れているかのような音が鳴って、うまく吸えなかった。血液で窒息する。そう思った。パニックがさらに加速する。思いっきりせき込み、その拍子にまた体中が苦痛に支配される。
「あ、あ、あ、あのさ」
血を呑み込んだ。
「ああああああのさ!!!!今更なんだよ!!!!あんなもの見せてさ!!!呪いのビデオでも気取ってるの!?!?誰がつくったんだよ!!!誰が何で俺を知ってるんだよ!!!俺とサナカちゃんだけの秘密でしょ!!!!俺にぃっ…俺にこんなことしてえぇ!!!!なにになるってんだよぉ!!!ッガ…痛いだろうがよお…いだ…いだい、いだっ」
内臓が暴れる度、自分の体が大きく飛び跳ねた。自分の悲鳴と、吐き出される血しぶきと、のたうち回る身体。もう目の前は見えない。
「だってサナカちゃん、気持ちよかったでしょ」
僕の最期の一息を、そのひとことで終わらせた。
PCの電源はもうコンセントから引き抜いて消した。スマートフォンだってたった今液晶を壊して粉々にしたばかりだ。
なぜあんなものが僕の動画にコメントされていたのか、意味が分からないし腹が立つ。
「ォエッ…アッ…ゲホッ」
僕は床をのたうち回っていた。酷く醜い姿だ。体が思うように言うことをきかず、いやそれよりかは、何か強い力で両手、両足が引っ張られて押さえつけられるような感覚だ。
「うるさい!うるさい!!騒ぐなって言っでるっ…だろ…!!!」
僕は耳元でうるさく泣きわめく”その子”に怒鳴りつけたが、だらしなく涙と鼻水で汚れた口からは、情けない声しか出なかった。勢いに任せて唾に血液が混じる。苦しくてたまらない。内臓が破裂でもしたかのように、僕が咽る度赤黒い血が口から吐き出された。
「なん…なんで」
混乱と怒りで思考がまとまらずパニックに陥っていた。ただひたすらに怖かった。1Kの狭いアパートに、僕以外の誰かがいる。いや、誰なのかはわかっている。僕のコレクション、僕だけのコレクションが、どうしてここにいるんだ。
何とかもがき、手に掴んだのはベッドにあった布団だと思う。僕はそれで汗と涙と、それから血を拭って、なんとか目が慣れるまでまぶたを開き続け辺りを執拗に見渡した。
「なんでいるの…!なんでいるんだよ!!」
俺は”気配”に向かってそう怒鳴った。お前のことはしっかりと壊して殺したはずだ。その証拠にあのYellow BOXがあって、俺は自分のコンテンツにお前を並べた。俺の唯一のコレクションだ。お前が叫ぶことも助けを呼ぶこともできないくらい泣かせて、喉を締め上げて、そして逃げ出せないように何度も何度もぺちゃんこに潰した四肢を、身体を隅々まで記録して、そしてアップロードした!誰にもバレてない。バレなかった。バレなかったんだ!
僕の宝物であり最大級の快楽を与えてくれる思い出だ。お前はもう、死んだはずなのに。
「あぐ、あ、あ、」
身体が痛い。中から内臓が圧迫されるような苦痛だ。俺が情けない声を上げる度に口から、多分他の場所からも血が出てる。いや、暗いからわからない。だけど体中ドロドロで、痛くて不快でたまらなかった。腹を内側から殴られる感覚がして耐えきれず床に倒れ伏す。体の中で何かが暴れている。もはや苦悶の声も出ないほど、次々に中を破壊されているような気がした。
拷問だ、そう思った。
「サナ、カちゃ…」
声になっていたかわからない。必死に気配に呼びかけた。
「逝って、逝って、もうこないで、やめて」
視界が霞む。暗い部屋に黒い靄がかかり、見えなくなっていく。ただ俺の目の前に、片足が素足でもう一方の足には子供用の靴を履いた女の子の脚が見えていた。僕の目の前に、その子が立っていた。
「誰に、ここまで来させられたの、お葬儀、して、もらったでしょ」
その子は答えない。佇んでいる。
「あ、ヒュッ…」
息を吸い込んだがまるで水に溺れているかのような音が鳴って、うまく吸えなかった。血液で窒息する。そう思った。パニックがさらに加速する。思いっきりせき込み、その拍子にまた体中が苦痛に支配される。
「あ、あ、あ、あのさ」
血を呑み込んだ。
「ああああああのさ!!!!今更なんだよ!!!!あんなもの見せてさ!!!呪いのビデオでも気取ってるの!?!?誰がつくったんだよ!!!誰が何で俺を知ってるんだよ!!!俺とサナカちゃんだけの秘密でしょ!!!!俺にぃっ…俺にこんなことしてえぇ!!!!なにになるってんだよぉ!!!ッガ…痛いだろうがよお…いだ…いだい、いだっ」
内臓が暴れる度、自分の体が大きく飛び跳ねた。自分の悲鳴と、吐き出される血しぶきと、のたうち回る身体。もう目の前は見えない。
「だってサナカちゃん、気持ちよかったでしょ」
僕の最期の一息を、そのひとことで終わらせた。