「カナの声だよな?」
クッキー缶から出てきた安っぽいレコーダーの録音を止めて、良平が顔をあげた。
「カ、カナちゃんだね…」
「カナちゃんだと思う」
一瞬、静寂が訪れる。
これがカナちゃんの行方不明と関係あるのか、そもそもに何のための録音なのかが全く分からない。
だから黙って、良平が再び喋り出すのを待つ。
「これは、一種のおまじないだと思う。カナは悠太が好きなのに意地悪をされる。意地悪の種類が一種歪んだ愛なのは気付いていて、だから悠太に『ちゃんと』愛されたくて好かれたくて、すがったんじゃないか」
興が乗ってきたのか、良平は腕組みをして渋面になり話し続ける。
「カナはこのナバラ様という神様をどこからか知り、願い事をした。しかし願いも祈りも、一種の呪いだ。おまじないもお呪いと書ける。これを悠太に勘づかれて、悠太はカナに呪い返しをしようとした。呪い返しに気付いたカナが悠太に手紙を書いた。しかし、手渡す前に悠太はこのナバラ様の呪いにかかる。カナの思っていたのとは違う『ちゃんと愛される』、これが誘拐に繋がる」
「りょ、良平くん」
「飛躍してるし不謹慎だって言いたいんだろ。でも、実際にカナの音声もあるわけじゃん。事実はもう少し違うかもしれない、でも多少の脚色を加えてこれが世間に伝わればあるいは」
「りょ、良平くん!」
学が大きな声をあげた。
あっけに取られて良平の話を聞いていた俺と、当人の良平がビクリとして学の方を見る。
「ゆ、悠太くんは、そ、そんな子じゃない」
カナちゃんも、と付け加えてまた下を向いた。
「…そうだ、学。カナと悠太って学の目から見てどうだったんだ?教えてくれ」
学の言葉を半ば無視するかのように、良平が問いかけた。鋭い目だった。
「ゆ、悠太くんは…カナちゃんに優しかった」
「ほお。カナは誰にでも優しかったからな。それでやっぱり、独り占めしたくて意地悪して最終的には呪いで歪んだ愛が爆発して」
「わからないっ!」
わあ、と学が頭を抱えて泣き出した。
「ちょっと。やりすぎだって良平。さすがにこれは遊びじゃない?子供の遊びだって。そもそもこの悠太って子が誘拐したとして、子供が子供を誘拐して数日内に見つかりもしないままなんて無理がある」
さすがに見かねた俺が声をかけると
「じゃあ殺したんだろ」と、良平が鋭い目つきのまま言葉を放った。
乾いた声だった。
「学、お前悠太の住所とか電話番号わかんない?本人に聞いてきてよ、電話廊下にあるから。お前もついていってあげて」
「分かった、でもここまでの事メモ取らせて
(プロット原文まま。長くなるので2分割してます。)
クッキー缶から出てきた安っぽいレコーダーの録音を止めて、良平が顔をあげた。
「カ、カナちゃんだね…」
「カナちゃんだと思う」
一瞬、静寂が訪れる。
これがカナちゃんの行方不明と関係あるのか、そもそもに何のための録音なのかが全く分からない。
だから黙って、良平が再び喋り出すのを待つ。
「これは、一種のおまじないだと思う。カナは悠太が好きなのに意地悪をされる。意地悪の種類が一種歪んだ愛なのは気付いていて、だから悠太に『ちゃんと』愛されたくて好かれたくて、すがったんじゃないか」
興が乗ってきたのか、良平は腕組みをして渋面になり話し続ける。
「カナはこのナバラ様という神様をどこからか知り、願い事をした。しかし願いも祈りも、一種の呪いだ。おまじないもお呪いと書ける。これを悠太に勘づかれて、悠太はカナに呪い返しをしようとした。呪い返しに気付いたカナが悠太に手紙を書いた。しかし、手渡す前に悠太はこのナバラ様の呪いにかかる。カナの思っていたのとは違う『ちゃんと愛される』、これが誘拐に繋がる」
「りょ、良平くん」
「飛躍してるし不謹慎だって言いたいんだろ。でも、実際にカナの音声もあるわけじゃん。事実はもう少し違うかもしれない、でも多少の脚色を加えてこれが世間に伝わればあるいは」
「りょ、良平くん!」
学が大きな声をあげた。
あっけに取られて良平の話を聞いていた俺と、当人の良平がビクリとして学の方を見る。
「ゆ、悠太くんは、そ、そんな子じゃない」
カナちゃんも、と付け加えてまた下を向いた。
「…そうだ、学。カナと悠太って学の目から見てどうだったんだ?教えてくれ」
学の言葉を半ば無視するかのように、良平が問いかけた。鋭い目だった。
「ゆ、悠太くんは…カナちゃんに優しかった」
「ほお。カナは誰にでも優しかったからな。それでやっぱり、独り占めしたくて意地悪して最終的には呪いで歪んだ愛が爆発して」
「わからないっ!」
わあ、と学が頭を抱えて泣き出した。
「ちょっと。やりすぎだって良平。さすがにこれは遊びじゃない?子供の遊びだって。そもそもこの悠太って子が誘拐したとして、子供が子供を誘拐して数日内に見つかりもしないままなんて無理がある」
さすがに見かねた俺が声をかけると
「じゃあ殺したんだろ」と、良平が鋭い目つきのまま言葉を放った。
乾いた声だった。
「学、お前悠太の住所とか電話番号わかんない?本人に聞いてきてよ、電話廊下にあるから。お前もついていってあげて」
「分かった、でもここまでの事メモ取らせて
(プロット原文まま。長くなるので2分割してます。)
