「モキュメンタリ―ホラー小説コンテストに応募しようと思う」
見せたいものがあるから来て欲しい。
そう言われて良平の家に集まった俺と学は、先述の手紙を見せられた後で唐突にそう告げられた。
「ど、どういうこと」
学が困惑気味に言うのにかぶせるように俺も問う。
「ていうかモキュメンタリホラー小説コンテストって何?」
「モキュメンタリー、つまり架空のドキュメンタリーホラー小説のコンテストがあるんだよ。ほら、これ。ネットで。要するにこの手紙ってさ、カナから犯人への警告文だろ?それをコンテストに応募することで情報を募る」
良平は真面目な顔で答えた。
「は、犯人って」
「『今考えてることは、やめた方がいいと思います』ってあるだろ。カナは人の感情に人一倍敏感なところがあったし、物騒なことを考えている犯人に私に何かするのをやめてくれって伝えたかったんじゃないか」
手紙の差出人であるカナというのは、行方不明になってしまった良平の妹だ。
悠太というのは学の話ぶりからして学とカナの同級生だろう。
「ちょっと待って」
俺は手紙が置いてある白いテーブルに身を乗り出して、対面に座っている良平の話を制止する。
「もう少し説明をしてくれよ。犯人がどうとか、コンテストとかって…それってカナちゃんが行方不明になった原因が、この悠太って子のせいだって話か?なんで警察じゃなくてコンテストなんだよ」
「ある程度の年齢を超えた子供の行方不明なんて、家出人みたいな扱いでそこまで本腰入れてくれないってネットで見たから。こういうコンテストに応募した方が話題になるだろ?それにホラー好きな人が見たら考察してくれそうだし、案外いろんな知恵を持った人が集まるネットのほうが、すぐに真相に辿り着くかもしれない」
決して冗談ではなさそうな顔で良太は俺をまっすぐ見て言った。
「だとしても、この手紙だけをコンテストに出してもどうにもならないんじゃないか?そもそもなんで俺と学に伝える必要が?」
色々とついていけない頭で、良平が言い出すと聞かないところがあるという事だけは理解している。
とにかく、俺と学を呼んだ経緯を聞く。
応募したいだけなら俺と学の許可などいらない、黙って応募したらいいだけの話だ。
「実はほかにも見つかったものがある」
良平はそう言って狭いテーブルにベッドの下から出してきたクッキー缶を置いた。
「お前、文章書くのうちの学年では上手いほうだろ。話をまとめて小説風にしあげて欲しい」
録音しながら聞いてもいいよ。
そう言ってICレコーダーを手渡される。
「待って、今までの事軽くまとめさせて」
俺は良平から許可を取りスマホを取り出し、時間をもらって先までの事をこうして文章をまとめている。
※このへんからの文章手直し必要!!※
「学はカナと学年が一緒だから。この悠太って子とカナに何があったか知ってる限り教えてほしい」
「ゆ、悠太くんがカナちゃんを殺したってことなのかな」
学のさらりとした言葉に俺は、ア、と声にならない声をあげた。
「まだ死んでるって決まってない」
意外にも落ち着いた声で良平が答えた。
学は小さな声でごめんと答え、視線を膝に落とし縮こまる。
