ある日突然、友人から「村」の写真が送られてきた場合

私とササキさんは、車の中から外を確認した。
スマホに映し出されているたにむぅの動画の場所と現在地が同じであることを確認する。
辺りは昼間でありながらも、木で覆われており薄暗い。
雑草をかき分けながら、私たちは廃村に急いだ。
廃村はたにむぅが訪れたまま変わっていなかった。
祠の前に転がっている箱もそのままだ。
あたりには、箱からこぼれ落ちたと思われる虫の死骸やよく分からない湿った赤黒い塊が散らばっている。
それらの物体を箱の中に戻し入れている途中だった。
どこか遠くから赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
ササキさんは怯えて辺りを見回している。
「高瀬さん、聞こえますよね」
「ええ、聞こえます。近づいてきていますね。急ぎましょう」
私たちは再び蓋を閉めた。
「……おぎゃあ」
蓋が割れた部分は、ホームセンターで購入した板で補強した。
「…おぎゃあ」
もう近くまで泣き声は聞こえていた。
泣き声に混じって、何かがこちらへ向かってくる足音も聞こえる。
「振り返らないで」
私はササキさんに声をかけた。
そして、封をするように、ヨシイさんから言われた神社でもらったお札を貼り付け、祠に戻す。
「おぎゃ…」
祠に戻したと同時に、赤ちゃんの泣き声が止む。
先程まで背後にいた何者かの存在感も消えた。

こっくりを封印することに成功したのだ。
私たちは安堵に包まれ、その場に座り込んだ。
「とりあえず、サトルさんに報告しないと」
「ですね。もしよかったら、その後なにか食べに行きませんか?安心したらお腹が空いちゃって」
「僕もです。お酒も飲みたい気分です」

行方不明になった者たちは帰ってくるだろうか。
ヨシイさんの言う通りならそれはもう難しいかもしれない。
けれど私たちは生きている。
それだけは確かだ。