駅には怖くて行けなかった。
出来るだけ人に会いたくなくてタクシーで帰ることにした。
タクシーの運転手も

「こんにちは!」

と大声で挨拶してきたが早く帰りたい一心でなんとか力なく挨拶を返し行先を伝える。
これからどうなるか分からないのに痛い出費だが背に腹はかえられない。
またあの挨拶の大合唱を聞かされたら私の頭までおかしくなってしまう。
信号にひっかかる度ミラー越しにひたすら笑顔で話しかけてくる運転手に相槌を打ちながら何とか自宅マンションに辿り着くことが出来た。
マンション住人に挨拶されるのが怖くて4階の部屋まで階段を駆け上がってきた。
息を切らしながら扉を開け、急いで中に入り鍵を閉める。
とりあえず無事、家に帰って来れた。
ここにはもう挨拶狂人達は居ないが私の住む世界はどう考えてもおかしくなっている。
ゾンビ映画の主人公にでもなったようだ。
藁にもすがる思いで母に電話をかけた。