河原田は、次に高梨悠太の家族に取材を申し込んだ。
母親は初め、息子の失踪に関する話を避けようとしていたが、「あの写真が問題なのよ」という言葉とともに、数枚の印刷された写真を差し出した。
そこには、高梨がSNSに投稿したものと同じ写真があった。
ただし、微妙に異なっている。高梨が撮影した写真の背景に、人影のようなものが写り込んでいるのだ。
「これは……誰かいますね?」
河原田の問いに、母親は顔を青ざめながらうなずいた。
「警察には話しました。でも、ただの影だと言われて……でも、違うんです。悠太が行方不明になる前日、誰もいない家の中でこの影と同じものを見たんです」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍る思いがした。
調査を進めるたびに、不自然な点が次々と浮かび上がってくる。
河原田はこれを単なる失踪事件と見なすことをやめ、都市伝説として語られる「地図に載らない村」の存在を本気で探ることを決意した。
彼は掲示板の投稿者たちに連絡を取り、一人の協力者に出会った。
その人物は「村の噂を追っている」自称探偵の阿久津翔太だった。
阿久津はこれまでに集めた情報を共有し、廃村の可能性が高い場所を示した地図を見せた。
だが、その地図は奇妙な点がいくつもあった。
「この地図さ、俺が何度修正しても変わるんだよ」
阿久津の話によれば、地図に書き込んだ廃村の位置がいつの間にか消えたり、別の場所にずれていたりするというのだ。
さらに、何かを象徴するように地図上に現れる不気味な記号
――それはどこかで見たことがある形状だった。
「あの石碑だ……」
河原田の頭に浮かんだのは、高梨が投稿した写真に写る石碑だった。
それは、人間の顔のようにも見える奇妙な彫刻が施されたもので、何かを訴えかけているかのようだった。
