S施設とYアパートの怪談に関連性を見出したわたしは、T町内で取材をすることにした。Yアパートが取り壊されたあともS施設で水に関する怪現象が起こっていたことから、これは土地にまつわる怪異ではないかと考えたからだ。
 S施設の周辺で取材をしていると、誠くんという青年に話を聞くことができた。


 S施設から北に七、八百メートルほど進んだ場所に、小さな一軒家が立ち並ぶ一画がある。ここでは昔ながらの木造家屋が肩を寄せ合うようにして立っているのだが、長いこと更地になっている場所が一か所だけある。
 ここにはかつて一軒の家が建っており、N一家が住んでいた。
 これから記す話は、誠くんが小学四年のときにN家で体験した話である。