『心霊アパートの思い出』をサイトに掲載してからほどなくして、わたしのSNSアカウントにメッセージが送られてきた。サイトのプロフィール欄にはわたしのSNSの情報を記載していたので、送り主はそのリンクからわたしのSNSに飛んできたのだろう。
 送り主のアカウント名は『あ』。投稿は一件もない。どうやらメッセージを送るためだけにつくられたもののようだ。
 メッセージの冒頭には次のように書かれていた。

 “はじめまして。
 ××町に関する怪異についての記事、たいへん興味深く拝読させていただきました。とくに□□さんのおばあ様の家での話を読んだときは、背筋が凍るような思いでした。”

 わたしは驚きのあまりスマートフォンを取り落としそうになった。
 ××町というのはT町の正式名称、□□さんというのは春江さんの旧姓である。
 サイトに掲載した一連の記事に登場する人物の名前はすべて仮名、もしくはイニシャルにしてある。しかも方言によって地方を特定されないよう、口調もすべて標準語に直している。
 それなのにこの人物はT町を特定しただけでなく、春江さんの旧姓まで言い当てたのだ。
 もしやT町の事情に詳しい人なのかとも思ったが、春江さんの旧姓を知っているのはおかしい。
 送られてきたメッセージに目を通したわたしは、すぐに送り主に連絡を取ったが、返信はなかった。しばらくするとアカウントも消されてしまったので、彼(もしくは彼女)と連絡を取る手段は途絶えてしまった。
 メッセージには一連の怪異の真相と思われる内容が記されていた。
 これ以上、わたしが長々と説明する必要はないだろう。
 よってメッセージの内容をここに記載することで、この話を締めくくりたいと思う。