次にわたしはそれぞれの建物が立っていた土地の歴史を調べることにした。
その結果わかったのはふたつのことだった。
YアパートおよびS施設が立っていた場所にはかつて、寺とその寺が所有する墓地があったということ。そしてN家があった場所にはかつて井戸があったということだ。
その寺は江戸時代頃に建てられたが、第二次世界大戦中、空襲によって焼失してしまったらしい。それから何度か家が建ったり壊されたりしたのちに、一九五〇年代にYアパートが建ち、一九八〇年代にはS施設が建てられた。
穴を掘る夢や何かを引きずる影に関しては、「もともと墓場だった場所だからこのような怪異が現れた」と説明されても納得はいく。しかし壁や天井から滴る水に関してはどうだろう。わたしには墓場と水のイメージはいまひとつ結びつかない。
これはN家でもそうだ。
井戸があったから奇妙な留守電がかかってきた、というのは納得できるが、蛾が大量発生する理由や何かを引きずる影が現れる理由はわからない。
このように、この一連の怪異には筋が通っている部分とそうでない部分がある。考えれば考えるほど、怪異を構成するパズルのピースがまだすべて出そろっていないのではないか、という気になってくる。
わたしはS施設とN家周辺でなおも取材を続けてみたが、芳しい成果は挙げられなかった。
この時点でわたしは調査を一旦打ち切ることにした。
調査が行き詰まってしまったということもあるが、いちばんの理由は体調を崩したことだった。肺炎をこじらせたことで肺水腫を引き起こしてしまったのだ。
またその時期頃からスマートフォンに無音の留守電が残されていたり、飼い犬が何もない空間に向かって唸り声をあげたりと、おかしなことが起こりはじめてもいた。
すぐに祟りだ呪いだと言って騒ぐのは好きではないが、ここまでくるとさすがに気味が悪い。もしかするとこの話は触れてはいけないものだったのではないか、とも思った。
わたしは一連の怪異だけでなく怪談そのものからも距離を置いた。自身が運営していたサイトの更新も止まった。
その結果わかったのはふたつのことだった。
YアパートおよびS施設が立っていた場所にはかつて、寺とその寺が所有する墓地があったということ。そしてN家があった場所にはかつて井戸があったということだ。
その寺は江戸時代頃に建てられたが、第二次世界大戦中、空襲によって焼失してしまったらしい。それから何度か家が建ったり壊されたりしたのちに、一九五〇年代にYアパートが建ち、一九八〇年代にはS施設が建てられた。
穴を掘る夢や何かを引きずる影に関しては、「もともと墓場だった場所だからこのような怪異が現れた」と説明されても納得はいく。しかし壁や天井から滴る水に関してはどうだろう。わたしには墓場と水のイメージはいまひとつ結びつかない。
これはN家でもそうだ。
井戸があったから奇妙な留守電がかかってきた、というのは納得できるが、蛾が大量発生する理由や何かを引きずる影が現れる理由はわからない。
このように、この一連の怪異には筋が通っている部分とそうでない部分がある。考えれば考えるほど、怪異を構成するパズルのピースがまだすべて出そろっていないのではないか、という気になってくる。
わたしはS施設とN家周辺でなおも取材を続けてみたが、芳しい成果は挙げられなかった。
この時点でわたしは調査を一旦打ち切ることにした。
調査が行き詰まってしまったということもあるが、いちばんの理由は体調を崩したことだった。肺炎をこじらせたことで肺水腫を引き起こしてしまったのだ。
またその時期頃からスマートフォンに無音の留守電が残されていたり、飼い犬が何もない空間に向かって唸り声をあげたりと、おかしなことが起こりはじめてもいた。
すぐに祟りだ呪いだと言って騒ぐのは好きではないが、ここまでくるとさすがに気味が悪い。もしかするとこの話は触れてはいけないものだったのではないか、とも思った。
わたしは一連の怪異だけでなく怪談そのものからも距離を置いた。自身が運営していたサイトの更新も止まった。
