第二に考えられる可能性は、事件や事故に巻き込まれたことである。たとえば誘拐、監禁、事故に遭ったなど、第三者による失踪だ。すべて刑法に触れる犯罪である。

 カナミが自らの意思でいなくなったのではないと考えれば、事件に巻き込まれたことが想定される。営利目的の誘拐は否定できる。自宅に金銭を求める連絡は一度もなかった。少なくともわたしたちの家は富裕層とはいえない一般家庭だ。営利目的の誘拐は最も考えにくいことである。

 上記した中で可能性が高いとすれば、事件ではなく事故である。考えたくない可能性だが、例えば交通事故に遭ったのちその身体を隠されることも現実にはあり得ることだろう。不慮の事故を起こした側が、その事実を隠すための行動としては自然である。
 
 わたしはこれら事件性を考慮し、その日のうちに警察に相談した。当初は警察も真剣に取り合ってくれていたが、その対応はすぐに杜撰なものに変わった。わたしがあまりに感情的になったことが悪影響を及ぼしたのであろう。わたしの話に信憑性がないと判断されたのも致し方ないことだと考えられる(※1)

 カナミが五体満足でそこにいるからだ。(※2)(※3)(※4)(※5)

 
 
 ※1 警察も当惑しただろう。姉の探す相手が真横にいたのだから。
 ※2 疑うなんてひどい。
 ※3 失礼だと思わないの。
 ※4 何が不満なの。
 ※5 いないほうがいいってことなの。