わたしには、カナミがいなくなった理由はわからない。(※1)
 しかし、原因に心当たりがある。(※2)

 ここまで自分の意思と事件性の二つの可能性に言及してきたが、それはわたしが導き出した結論が一般的にはまともではないと受け取られるからだ。(※3)真っ当な可能性を否定しておきたかったのである。(※4)だが否定の論拠がすべて「わたしのすぐ目の前にカナミがいる」点に帰結してしまう。(※5)自分の意志にしろ事件事故に巻き込まれたにしろ、カナミがカナミとして生き、そして死んでいたならばわたしも現実を直視していただろう。(※6)警察とて失踪したとされる対象人物がわたしの隣にいるのを見て、取り合うわけがないのだ。(※7)
 
 多くの人間がわたしの頭の心配をするだろう。(※8)わたしとてそのようなことを言いだす人間がいれば心配し、しかるべき病院に行くよう助言したはずだ。(※9)わたしの考えがまともではないことを、わたしも自覚している。(※10)自覚的であるだけに、家族は心配している。(※11)
 
 だが、わたしはこう考えている。(※12)

 カナミは、この世界ではない異世界の駅に行ってしまったのではないだろうか。(※13)

 次の章では「異世界の駅に行った」論拠を示していきたい。(※14)

 
 
 ※1 いなくなってないもの。
 ※2 原因も何もない。
 ※3 まともじゃない。
 ※4 まともじゃない。
 ※5 まともじゃない。
 ※6 まともじゃない。
 ※7 まともじゃない。
 ※8 まともじゃない。
 ※9 だから病院に連れていかれたんだ。
 ※10 家に閉じ込められて。
 ※11 母もおかしくなった。父もおかしくなった。
 ※12 おかしいよ。
 ※13 どうして。
 ※14 でもおつかれさま。