《ニンゲンさん目撃情報まとめ》
このブログでは、
■■市内に出没するニンゲンさんの目撃情報をまとめています。
まだ情報不足なところもあると思いますので、
何か知っている方がいましたら、ご連絡ください。
・
・【ニンゲンさん初期】
・
6月■■日
最初にニンゲンさんという不審者が市に報告された日。
ランドセルを背負った小学生に、
「会話をするよ、ニンゲンだから」
と話し掛けたという事案が発生。
小学生はすぐに通報アラームを鳴らすと、
「大きな音は苦手だよ、ニンゲンだから」
と言って去っていった。
6月■■日
その次の日、市内の別の学区内にニンゲンさんが出没。
またしてもランドセルを背負った小学生に、
「会話をするよ、ニンゲンだから」
と話し掛けると、その小学生は、
「僕も人間だよ!」
と元気に答えると、ニンゲンさんは笑いながら、
「君とは階級が違うけどね、差別意識はあるよ、ニンゲンだから」
と答えたところで小学生が逃げ出す。
6月■■日
雨の日にニンゲンさんが傘を差しながら、
傘をしていない男性にスッと近付き、同じ傘に入れようとする事案が発生。
その傘をしていない男性はとっさに逃げようとすると、
「傘差したほうがいいよ、ニンゲンだから」
と呼びかけた。
6月■■日
■■駅前で雨に打たれているニンゲンさんが発見された。
年寄りのおばあさんがニンゲンさんへ、
「バスを待っているなら屋根の下にいたほうがいいですよ」
と話し掛けたところ、ニンゲンさんは、
「悲しいことがあった日は、ニンゲンだから」
と会釈して、そのまま公園のほうへ行った。
・
・【ニンゲンさんイライラ期】
・
7月■■日
男性が突然ニンゲンさんに後ろから蹴られて、前のめりに倒れる。
すぐに男性が振り返ると、ニンゲンさんが、
「イライラする時もあります、ニンゲンだから」
と言って走ってその場を去る。
男性とニンゲンさんに面識は無かった。
7月■■日
「理性はあります、ニンゲンだから」
と、ぶつぶつ言いながら歩いているニンゲンさん。
歩行者の赤信号で一緒に止まっていた、
自転車に乗った女子高生が、
青信号と同時にニンゲンさんに、
横から蹴られて、倒される。
ニンゲンさんは見下すように女子高生を見ながら、
「加害性はあります、ニンゲンだから」
と言い残して走って去る。
7月■■日
鳴いている蝉に、
「蝉がうるさいと思います、ニンゲンだから」
と言っていた。
・
・【ニンゲンさん反省期】
・
10月■■日
最近出没していなかったニンゲンさんがまたしても現れた。
あのとき自転車に乗っていた女子高生の家に押しかけて、
「やっぱり謝罪します、ニンゲンだから」
と言うと、女子高生が急いでドアを閉めた。
10月■■日
女子高生の家のポストに手紙を入れる。
「貴方も許しますよね? ニンゲンだから」
と書いていた。
10月■■日
女子高生がコンビニへ出掛けた時に、
ニンゲンさんが後ろから話し掛けた。
「私のこと気になっていますよね? ニンゲンだから」
女子高生は急いで近くにあった
個人商店の中へ入っていったので、
ニンゲンさんはイラつきながら、
その個人商店の扉を蹴って、
「恋愛していますよ! ニンゲンだから!」
と怒鳴った。
・
・【ニンゲンさんニンゲン恋愛期】
・
11月■■日
ニンゲンさんが女子小学生に話し掛ける。
「彼女の好きなモノを選んでほしいので一緒に買い物してほしい。ニンゲンだから」
女子小学生はすぐに通報アラームを鳴らすと、
「女は面倒だと思います。ニンゲンだから」
と言って走り去る。
11月■■日
ニンゲンさんがレンタルDVD屋の、成人向けのコーナーの前でうろうろしている。
ぶつぶつと、
「ニンゲンだから。ニンゲンだから。ニンゲンだから」
と呟いていたところを女性に見られると、
「ニンゲンだから!」
と言いながら、意を決して入っていった。
11月■■日
あのときの女子高生を待ち伏せして、
不意打ちで後ろから抱き着いたニンゲンさんは、耳元で囁くように、
「スパダリ。ニンゲンだから」
と言うが、女子高生に騒がれて、ニンゲンさんは逃走し、去り際に、
「諦めないよ。ニンゲンだから」
と言い残す。
・
・【ぼく】
・
ぼくのこのブログに情報提供がしたいというご連絡が入った。
ぼくは即座に逢いたいと思って、待ち合わせ場所と日時を決めた。
場所は喫茶店■■、日時は日曜日の午後■■時だった。
ぼくはいつもより良い服を着て、行くと、そこには大学生くらいの男性がいた。
その男性はちょっと不良な目つきで、こちらを睨むように、
「どうも」
と言ってきて、どうにも印象が悪いなぁ、と思った。
そこから情報提供をしてくれるわけだけども、何か違和感を抱いて。
ぼくが思っているニンゲンさん像とかけ離れているというか。
ハッキリ言ってしまえば、嘘を言っているように感じた。
段々ぼくはイライラしてしまい、大きな声を出してしまうと、その男性はこう言った。
「やっぱりオマエがニンゲンさんだな」
ぼくはうんと頷きながら、
「僕は人間ですよ、貴方と同じ人間ですよ」
「そういうことじゃない。オマエが俺の妹を鬱にさせたニンゲンさんだ」
妹。
よく見ると、この男性の口元と鼻があの女子高生に似ているような。
なるほど、つまり、
「ぼくを騙したんですね? ニンゲンだから」
「化けの皮が剥がれたな、ニンゲンだからって言ってるぞ」
「言いますよ。ニンゲンだから」
「オマエはもう包囲されている。この喫茶店の中は全員警察官だ」
と言ったところで、ぼくはニンゲンだからいつも携帯している薬を飲んだ。
ぼくの挙動ですぐに気付いたようだけども、もう終わり終わり。
「自殺しますよ。ニンゲンだから」
(了)
このブログでは、
■■市内に出没するニンゲンさんの目撃情報をまとめています。
まだ情報不足なところもあると思いますので、
何か知っている方がいましたら、ご連絡ください。
・
・【ニンゲンさん初期】
・
6月■■日
最初にニンゲンさんという不審者が市に報告された日。
ランドセルを背負った小学生に、
「会話をするよ、ニンゲンだから」
と話し掛けたという事案が発生。
小学生はすぐに通報アラームを鳴らすと、
「大きな音は苦手だよ、ニンゲンだから」
と言って去っていった。
6月■■日
その次の日、市内の別の学区内にニンゲンさんが出没。
またしてもランドセルを背負った小学生に、
「会話をするよ、ニンゲンだから」
と話し掛けると、その小学生は、
「僕も人間だよ!」
と元気に答えると、ニンゲンさんは笑いながら、
「君とは階級が違うけどね、差別意識はあるよ、ニンゲンだから」
と答えたところで小学生が逃げ出す。
6月■■日
雨の日にニンゲンさんが傘を差しながら、
傘をしていない男性にスッと近付き、同じ傘に入れようとする事案が発生。
その傘をしていない男性はとっさに逃げようとすると、
「傘差したほうがいいよ、ニンゲンだから」
と呼びかけた。
6月■■日
■■駅前で雨に打たれているニンゲンさんが発見された。
年寄りのおばあさんがニンゲンさんへ、
「バスを待っているなら屋根の下にいたほうがいいですよ」
と話し掛けたところ、ニンゲンさんは、
「悲しいことがあった日は、ニンゲンだから」
と会釈して、そのまま公園のほうへ行った。
・
・【ニンゲンさんイライラ期】
・
7月■■日
男性が突然ニンゲンさんに後ろから蹴られて、前のめりに倒れる。
すぐに男性が振り返ると、ニンゲンさんが、
「イライラする時もあります、ニンゲンだから」
と言って走ってその場を去る。
男性とニンゲンさんに面識は無かった。
7月■■日
「理性はあります、ニンゲンだから」
と、ぶつぶつ言いながら歩いているニンゲンさん。
歩行者の赤信号で一緒に止まっていた、
自転車に乗った女子高生が、
青信号と同時にニンゲンさんに、
横から蹴られて、倒される。
ニンゲンさんは見下すように女子高生を見ながら、
「加害性はあります、ニンゲンだから」
と言い残して走って去る。
7月■■日
鳴いている蝉に、
「蝉がうるさいと思います、ニンゲンだから」
と言っていた。
・
・【ニンゲンさん反省期】
・
10月■■日
最近出没していなかったニンゲンさんがまたしても現れた。
あのとき自転車に乗っていた女子高生の家に押しかけて、
「やっぱり謝罪します、ニンゲンだから」
と言うと、女子高生が急いでドアを閉めた。
10月■■日
女子高生の家のポストに手紙を入れる。
「貴方も許しますよね? ニンゲンだから」
と書いていた。
10月■■日
女子高生がコンビニへ出掛けた時に、
ニンゲンさんが後ろから話し掛けた。
「私のこと気になっていますよね? ニンゲンだから」
女子高生は急いで近くにあった
個人商店の中へ入っていったので、
ニンゲンさんはイラつきながら、
その個人商店の扉を蹴って、
「恋愛していますよ! ニンゲンだから!」
と怒鳴った。
・
・【ニンゲンさんニンゲン恋愛期】
・
11月■■日
ニンゲンさんが女子小学生に話し掛ける。
「彼女の好きなモノを選んでほしいので一緒に買い物してほしい。ニンゲンだから」
女子小学生はすぐに通報アラームを鳴らすと、
「女は面倒だと思います。ニンゲンだから」
と言って走り去る。
11月■■日
ニンゲンさんがレンタルDVD屋の、成人向けのコーナーの前でうろうろしている。
ぶつぶつと、
「ニンゲンだから。ニンゲンだから。ニンゲンだから」
と呟いていたところを女性に見られると、
「ニンゲンだから!」
と言いながら、意を決して入っていった。
11月■■日
あのときの女子高生を待ち伏せして、
不意打ちで後ろから抱き着いたニンゲンさんは、耳元で囁くように、
「スパダリ。ニンゲンだから」
と言うが、女子高生に騒がれて、ニンゲンさんは逃走し、去り際に、
「諦めないよ。ニンゲンだから」
と言い残す。
・
・【ぼく】
・
ぼくのこのブログに情報提供がしたいというご連絡が入った。
ぼくは即座に逢いたいと思って、待ち合わせ場所と日時を決めた。
場所は喫茶店■■、日時は日曜日の午後■■時だった。
ぼくはいつもより良い服を着て、行くと、そこには大学生くらいの男性がいた。
その男性はちょっと不良な目つきで、こちらを睨むように、
「どうも」
と言ってきて、どうにも印象が悪いなぁ、と思った。
そこから情報提供をしてくれるわけだけども、何か違和感を抱いて。
ぼくが思っているニンゲンさん像とかけ離れているというか。
ハッキリ言ってしまえば、嘘を言っているように感じた。
段々ぼくはイライラしてしまい、大きな声を出してしまうと、その男性はこう言った。
「やっぱりオマエがニンゲンさんだな」
ぼくはうんと頷きながら、
「僕は人間ですよ、貴方と同じ人間ですよ」
「そういうことじゃない。オマエが俺の妹を鬱にさせたニンゲンさんだ」
妹。
よく見ると、この男性の口元と鼻があの女子高生に似ているような。
なるほど、つまり、
「ぼくを騙したんですね? ニンゲンだから」
「化けの皮が剥がれたな、ニンゲンだからって言ってるぞ」
「言いますよ。ニンゲンだから」
「オマエはもう包囲されている。この喫茶店の中は全員警察官だ」
と言ったところで、ぼくはニンゲンだからいつも携帯している薬を飲んだ。
ぼくの挙動ですぐに気付いたようだけども、もう終わり終わり。
「自殺しますよ。ニンゲンだから」
(了)