『私の前のクラス、言いにくいんですが、いじめ、というか、引っ込み思案で馴染めなかった子がいたんです。気の強い子のグループにからかわれたり、パシリにされてたり。それが一ヶ月くらい続いた後、学校を数日間続けて休んじゃったんですよね。
 その子が休んだ日、ある後輩がクラスを尋ねてきたんです。その子のこと。私、出入り口に近い席だったので声をかけられて。いや、特に顔を知ってる子ではなかったんですけど、その時点では特に変な雰囲気はありませんでしたよ。単に委員会か部活か、そういうのの関係かな、みたいな。今日は休んでるよって答えたら、それは知ってますって。そのまま間髪入れずに、
「そろそろ死にました?」
って。テンション一切変わらないんですよ。けろっとしてて。声を顰めもしなかったからみんな静まり返っちゃって。私も固まっちゃいました。ホントに予想外のこと言われると、脳ってフリーズするんだなって。
 たまたまその時、クラスメイトの一人が「登校前に家の前でちょっとだけ話した」らしくて。だから、少なくとも今朝の段階では特に何かは起きてないと思う、何なら今連絡しようか? みたいなことを恐る恐る提案しました。単にその子が、休んでる先輩を心配して訪ねてきただけの可能性を信じて、だと思います。
 でもその後輩、それを聞いたら、あからさまに興味をなくしたようでそのまま帰っちゃんたんです。
「死んでないならもういいです」
って言い捨てて。
 あまりに不気味で、虫の知らせだったらどうしようって不安になったクラスメイトは私を含めて多かったみたいです。家を尋ねたり連絡したりする人が増えて、数日のうちに彼女は学校に来るようになりました。いじめてたグループも気味悪がってその子に関わらなくなって、まぁ結果オーライという感じです。
 ただ、例の後輩と彼女は一切面識が無かったそうです。後になって、法事で休んだり入院したり、そういう不幸があった直後にあの後輩に話しかけれた、って噂が出回って。触れちゃいけない感じになりました。その後あの事件があったから、やっぱりおかしくなってたんだね、ってちょっとだけ話題になりましたよ。それこそ不謹慎な話ですけどね。』