普通、見知らぬ人間にチャイム押されたら、最初は「誰だお前ら?」と尋ねるものだろう。
なのにそのぼさぼさの黒髪長髪の男は、僕達を見て繰り返すのだ。何で来た?と。
「なんで、って言われても、えっと……」
僕はしどろもどろになる。ビルに入ってからカメラは回し始めている。撮っている以上、ある程度しゃっきり喋らないといけない。もちろん、この男性の顔はあとでモザイクをかけるか、それでもダメならばこの会話シーンはカットすることになるのだが――。
「俺達、オカルト系ユーチューバーやってる『ロボコ』って言うんっす!」
そんな僕に対して、相変わらずテンションアゲアゲなマトマトが言った。
「動画視聴者さんからのリクエストで、この痣春ビルについて調べてるんです。そしたら、このビルが建っている土地自体がなんかやばいっぽいって知って!でもって今、このビルの中で入ってる企業とかもなくって、あなたが一人でここに住んでるって聞きまして。どうしてかなーと。霊能者さんだってのは本当ですか?だったらいろいろ教えてほしいって!」
「…………」
男性の目が、僕からマトマトへ移った。そして、心底不快そうに歪められる。
「邪霊め、帰るがいい」
でもって、いきなりこれ。
「馬鹿に付き合うほど私は暇ではないのだ。ゴミどもがやらかした後始末をせねばならん。どいつもこいつも、地下からマグマが噴き上がっているのに逃げようともしないグズどもめ。この私が必死で抑え込んでやっとこの規模に収まっているのがわからんのか。それなのになぜ忌み地に自ら足を踏み入れようとする?忌々しい、忌々しい、忌々しい、忌々しい……」
なんていうか、見た目通りの人だった。ぶつぶつぶつぶつ、意味不明なことを呟き続けている。とりあえず、罵倒されているらしい、というところまでは理解した。まあそりゃ、歓迎されないのは想像がついていたけれど。僕達がやっていることは不法侵入一歩手前だというのはわかっているのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいって!」
そのままドアを閉めようとするので、僕は慌てて止めた。ここで罵倒だけされて帰られたのではあまりにも割に合わない。
「僕達も、リクエスト者さんのためにそう簡単に帰るわけにはいかないというか!そ、それに……この場所が本当に危ないってなら、みんなにそれを教えて、近寄らないようにしてもらわないといけない、そうでしょう?だから、情報を公開することには意味があると思うんです」
とりあえず、言えることは言ってみよう。
「本当に危ない場所があるっていうなら、そこには踏み込まないようにしますし!ち、地下と屋上がなんか危なそうってのはわかってるんで、どうか何がどう危ないかとか、そういうことだけでも教えてもらえませんか?貴方が本物の霊能者さんなら、知ってることいっぱいあるんでしょう!?」
さっきの呟き。
この男ははっきり『私が必死で抑え込んでいるのに』と言っていた。ということは、この男は怪異に対抗しようとしてここにいるのではないか?そういえば、あの末子さんも言っていたはずだ。
『うちの酒を買いに来たのよ、なら話さないわけにはいかないでしょう?お清めに使えるお酒はない?とか悪霊退治に使えるお酒はない?とか言い出してちょっと気持ち悪かったんだけど』
悪霊退治。
それを行おうとしているというのが本当なら――こいつはイカレているかもしれないが、一応正義感があるということだ。ならば悪人ではない、はずである。多分。
「……そんなことをしても意味は無い」
男はぎょろんとした目で、僕達を睨みつけてくる。
「私も抑えられなくなっている。お前も気づかないうちに浸食されている。霊は暗がりを好む。私がいるこの場所まで闇が浸食してきた。この調子だと私もいずれ撤退しなければならなくなるかもしれない。お前たちのような馬鹿のせいだ。最近急速に増えた。情報を拡散して興味を引けば有象無象は増える、好奇心がまた邪を呼び寄せる。クズめ。どこまでもクズめ。何の力もないくせに安易にこの地に踏み込みおって」
「暗闇って……五階の電気が消えてること、ですか?」
「霊が出る場所は闇に閉ざされる。懐中電灯も携帯電話も消えることが多い。霊障も知らんのか、オカルト系動画配信者を名乗るくせになんとも無知め。奴らは自分が棲み易い環境を作ることに関しては天才的だ、奴らは最初は奴でしかなかったのにどんどん増えて力を増して奴らになった、お前も気づいてない、実に馬鹿だ。馬鹿だ、馬鹿め、忌々しい」
ぶつぶつぶつぶつ、と早口でひらすら攻撃的なことを言われる。正直、非常に不愉快だ。しかも半分くらいは言っていることがわからない。
彼と話す意味は本当にあるのだろうか?目は濁っているし、顔色も悪い。髪の毛も、手入れされていないのかぼさぼさに伸びっぱなしだ。髭がぼうぼうに生えているということはないが、それはただの体質なのかもしれない。青白い顔はお世辞にも健康的には見えず、年齢もまったく不詳。二十代にも、五十代にも見える。いや、あたりが暗いせいでよけい分かりづらいのもあるのだが。
普段なら、絶対関わり合いになりたくないタイプ。申し訳ないが、韮澤という男はそういう印象しかなかった。ただ。
「あなたは、この土地を呪っているものが何なのかわかるんですか?痣春様、ってなんなんですか?」
それでも、怪異の正体を知っているというのなら突きとめたい。狂人の戯れでも情報になる可能性はある。
僕の中ではまだ、恐怖と好奇心が鬩ぎ合っている段階ではあるのだ。隣でマトマトがうんうんと頷いている。
「いひ、ひひひ、ひ」
すると、韮澤はニタニタと笑い始めた。
「ひひひひひひひ、ひひひひひ、ひひひひひひひひひひっ!」
「な、なんですか!?」
「お前みたいなのは色々くだらない妄想空想をするくせに、想像力が肝心なところで欠如している。この国は信仰をほぼ失っている。だからこそ、善神の力は弱まる一方で、善神が抑え込んでいたものが次から次へと地下から溢れだしているのだ。否、その存在を知る者は邪馬台国の時代からいたのだろうさ、それでも当時の者どもはコントロールするだけの術を知り、力を持っていた。今のお前らはどうだ、余計な妄想はするくせに危機感がまったく足らない。そのせいで余計なものを呼び寄せた挙句増長させる、ひひひひひ、ひひひひひひひひ、ひひひひひ……あまりにも愉快、不愉快、きひひひ、ひいっひひひひひひひひ……!!」
やがてその笑いが、ぴたりと止まる。
「あざはるさまは」
ゆっくりとその指が、地下を指さした。
「かつてある土地の馬鹿どもが地下深くに埋まっていたそれを掘り起こし、蘇らせた。自らの私利私欲のために。その結果村は繁栄した。ただし生贄を捧げ続けないとすぐ祟る類いの神だった。馬鹿どもはそれでも良かった。要らない人間を、神への生贄という形で処分できるのは都合が良かったからだ。そしてその力に目を付けたさらなる馬鹿どもがいた」
「『痣春新教』の奴らのこと、ですか?」
「天災は人にはどうしようもない。恐ろしくとも悲しくともそれが天の意思と受け入れる他ない。だが一部の馬鹿どもは、己に降りかかったそれを部不相応にも自分達だけ回避しようと躍起になった。自分達だけは元の平穏を、富を取り返したいと願った。関東大震災だ、あれの被害から無理やり自らの地位を蘇らせたくて、馬鹿どもはその村が滅びかけた時に無理やりご神体を奪ってこの土地に宿すことを決めたのだ」
この人が言っていることが、どこまで正しいかはわからない。ただ、僕はなんだか理解できてしまったのだ。
関東大震災。
1923年(大正12年)9月1日に起きた、未曾有の大災害だ。死者・行方不明者の数は十万人をゆうに超えると言われている。今の日本より遥かに脆い建物が多く、防災対策なんて一切できていなかったはずだ。誰にも防ぎようがなかった天災の中で――正体不明の邪神だろうとなんだろうと、縋ってしまいたくなった人間がいても、なんらおかしくないだろう。
なるほど、それが痣春新教の始まりだというのなら――悔しいが納得できてしまう話だ。
もう二度とあんな目に遭いたくない。同時に、かつての生活を一秒でも早く取り戻したい。そういう人間が、とにかくオカルト的な力を求めて神様を見つけてしまった。恐らくそれなりに資金力がある者達だったということだろう。
「この神は生贄を定期的に求める。生贄を差し出さないと自分で生贄を引き寄せる。その手段は選ばない。結局人は死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ。出来るのはその被害を可能な限り軽減する努力をすることだけだが、今の奴らは危機感の欠片もない、本当にまずいこともわかっていない。神社の神官でさえ本当に魔を抑えられる人間がどれだけいるかも怪しい、あんなものお祓いなんかで抑え込めるものか。くそが、くそが、くそが、くそが。あの塾の馬鹿どもが変なことしなければもう少しマシだったのにくそが!」
塾。
千谷学習塾の面々のことだ、と理解した。ということは、やっぱり。
「千谷学習塾……八年前に消えた塾の人達は、やっぱり何かをしたんですね。それで神隠しされてしまった?一体、何を?」
「はなえとかいう、あざはるさまの生贄になったガキの一人に呼ばれた。あのゴミどもは……うっ!」
「!?」
唐突に、韮澤は胸を押さえて蹲った。青い顔で、ぶつぶつと呪詛のようなものを吐き続けている。
「に、韮澤さん!?どうしました!?」
「や、やべ、撮ってる場合じゃねえかんじ!?」
僕の後ろでマトマトが慌てている。僕が駆け寄って手を差し伸べようとすると、韮澤は僕の手を振り払ってばっと顔を上げた。そして。
「確認」
ぽつり、とそう言うと、ふらつきながら玄関の外へ出てきたのだ。履いているのは安い便所サンダルのような靴だ。くすんだ灰色のジャージを着ていて、何やらすえた臭いがした。あまり洗濯もしていないのかもしれない。
彼はぶつぶつと呟きながら、エレベーターの前まで出てきた。そしてエレベーターを見て舌打ちをする。
「くそが」
「ちょ、ちょっと!何処行くんですか!?」
そしてそのまま、階段を登り始めたのである。僕達は、慌てて彼を追いかけたのだった。
めっちゃくちゃ記事が長くなってしまったが許してほしい。もう少し話は続いているのだ。
――ど、どこに行くんだ?
彼は霊能者ではなかったんだろうか?韮澤を追いかけながら僕は思った。彼はサンダルにジャージ姿のまま、よたよたと六階への階段を登っていく。
今は九月。まだ暑い日も多い。それなのに、上に行けば行くほどどこか肌寒いような気がするのは何故だろう。
六階のフロアは真っ暗闇で、電気は相変わらずついていない。ぼんやりと光る消火栓の赤い光がどこまでも不気味でしかない。さらに六階を通り過ぎ、屋上へ続く階段を登る。踊り場の窓は相変わらずベニヤ板で塞がれている。
「ま、待ってくださいって、韮澤さん!」
「階段疲れるうー」
僕とマトマトがぶつぶつ言いながらついていく。足元がおぼつかないように見えるのに、思ったよりも足が速い。男は階段を二段飛ばしにしてどんどん登っていってしまう。
そして――僕達は再び、屋上のドアの前に辿り着くわけだが。
「え」
そこで、驚くことになるのだ。
ちょっとややこしいので改めて書いておくと、僕達が一番最初にこのビルに来たのは2024/09/02火曜日である。そして、今は2024/09/06土曜日だ。この記事を投稿したのは翌日の2024/09/07日曜日なのでちょっとややこしくて申し訳ない。まあつまり、僕達はこの土曜日の出来事から、無事に家に帰ったということでもあるのだが。
まあようするに。この段階で、まだ最初にビルに来て四日しかしか過ぎていないのだ。その間、韮澤氏以外にビルの中で誰かと遭遇することなんてなかった――初日に見かけた、黒い人影を覗いては。
で、屋上のドアの様子は、初日に説明した通り。大量のベニヤ板が打ち付けられていて、ドアそのものが封印されている状態。あのドアの向こうに行くには、外すための専用の工具を用意しないといけないなーとマトマトと話したのは覚えている(でもって、この日は持ってくるのをすっかり忘れた)。
そのドアにはさらに、白い画用紙がべたべたと貼りつけられていて、真っ赤なクレヨンで同じ文字が書き連ねられていたわけだ。あけるな、あけるな、あけるな――ってな。それがかなり不気味な光景だったわけだが。
「剥がれてる……」
紙の数枚が剥がれ落ちて、床の上でひらひらと踊っているではないか。いや、それだけならばセロテープがとれちゃったんだろう、なんてお気楽に思ったかもしれない。
問題は、それだけ、ではなかったこと。
ベニヤ板も数枚外れているのだ。――あんながっしり、釘で打ち付けられていたのに。
錆びた釘のいくつかが足元でバラバラと散らばっている。僕は唖然とした。こんなもの、簡単に引き抜けるはずがない。相当力と手間が必要だったはずなのに、一体いつの間に、誰がこんなことをしたというのか。
「封印していた」
ぽつり、とドアの前で韮澤氏が言った。
「元々下にあったものを、馬鹿どもが引き上げて屋上にも媒介を置いてしまった。これで点が二つとなり、線が引かれ、強固な領域を獲得してしまった。実に愚かしい、愚かしい、愚かしい。私とて地下にある神を直接封じる手段などない、せめてそこに人が入らないようにするしか方法がない。だからいろいろ手を回してエレベーターの出口を埋めたり、このようにドアを封じたりいろいろ手を講じたというのに、それは結局時間稼ぎにしかならなかった。お前らのせいだ。本当にお前ら馬鹿のせいだ、どうしてくれる」
「ま、待ってください!これ、やったの貴方だったんですか!?」
僕がそう尋ねると、韮澤はぎろりとした目で僕を睨みつけてきた。
「くだらないと思うか。貴様ら凡人にはそうとしか思えんだろう。しかし、結局人間はどれほど何かが見えたところで神や悪魔を直接討ち滅ぼすことなんかできんのだ。できるのはそいつらの領域に追い返すことのみ。メディアに出てくる常識離れした悪魔祓い師、霊能者のなんと非現実的なことであるか。地下深くからやってきた旧神、古くからこの地に染みこんできた数多の邪霊、意思の混合物、神話生物を一体どうして人間なんぞで抑え込める?できるのは、それをそうだと知らしめ、愚か者が踏み込めないように結界を敷くことだけではないか、そうだろう?」
言っていることは、相変わらずよくわからない。
ただこの男はどうやら、神や悪魔はそもそも殺せるものではない、と考えているらしい。同時に、人間が近寄らないためにベニヤ板で打ち付けるような真似をしていた、と。
「ひ、人が近づかなければ解決するんですか?」
結局、僕の疑問はそれだ。
人が来ないようにするたけならもっと他に方法があるのではなかろうか。大体、ビルの入口ごと封鎖してしまうとか、警察とか神官とか、もっと専門職の人を頼るという手もあるのではないかと。
しかし、韮澤は。
「馬鹿め」
相変わらず、そう吐き捨てるばかりなのだ。
「引き寄せると言っただろう。土地そのものが呪いの温床なのだ、建物を封じて解決するものか。建物を壊して燃やしたところで何も変わらない、呪いはその場に残る。むしろ建物がなくなって安全と誤解する馬鹿が出る方が問題なのだ、余計なものがすみつくではないか」
「事故物件ではなくなるから、ですか?」
「お前たち愚図で阿呆な連中はみんなそうだ、建物で人が死ぬ、呪いを受けるということがなくなっても建物を変えればそれで安全だと思い込む。信じたがり、楽観視する。そのせいで余計に阿呆を呼び込んで愚行を繰り返し祟りを助長させると何故わからんのか。結局のところ先延ばしにするしか手の打ちようはないのに、其の先延ばしできる期限そのものをお前たちが自ら縮めようとする。此れだってそうだ、人が来てしまえば生贄が増えてますます呪いが増す、ただでさえ塾の馬鹿どものせいで呪いの力が爆増して人が死ぬようになったのに、何でそういうこともわからない?だから私は防ごうと、防ごうと、防いでやろうと……!」
またしても、ぶつぶつと呟き始めてしまう韮澤氏。嫌本当に、これをほとんどちゃんと読み取って文字に起こしている僕は結構凄いのではないか。なんだか、斜め上の感嘆をしてしまった。
ようは、呪いというのは、建物が変わっても意味がないらしい。
事故物件という言い方が良くないのかもしれない。物件なんて呼ぶから、建物を建て直せばもう人が死んだ事実は消える、と思い込んでしまうのかもしれない。とはいえ、その土地そのものを問題視するようになると、この世の中人が死んでいない土地なんてあるっけ?というレベルの話になってしまうのだが ――。
「そ、その、えっと」
とりあえず、僕はこう尋ねる。
「それで、僕達は……どうすれば?」
答えは決まっているようなものだった。韮澤は唾を吐きながらこう言ったのだ。
「帰れ。迷惑だ、帰れ」
「そ、その、結局、この上にいるのは……」
「帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!」
「ちょ、ちょっと、まっ」
ぐいぐい押されて、無理矢理階段の下へと引っ張られてしまう僕。その様子を、なんだかんだカメラに撮影し続けているマトマトは大物なのではないだろうか。
結局五階まで辿り着いたところで、韮澤氏はさっさと自分の部屋に引っ込んで、そのまま鍵をかけてしまった。
「なんなんだよ、もう」
僕はため息をつきつつ、カメラを回し続けているマトマトを振り返った。
「お前、この映像まだアップできないからな?」
「え、なんでだよタカ!?」
「ばっかやろう、韮澤さんに許可取ってないだろ!顔出しNGなら顔映ってるとこ全部カットしなきゃなんねーし、モザイクでOKかどうかも訊かなきゃダメだからな!?」
「えええええ」
正直、それを尋ねるタイミングがなかったといえばそう。とりあえず、この後韮澤氏にもう一度接触できたなら、その時映像を出していいのかどうか確認しようと思っている。
もしこの時撮影した映像が動画にならなかったら、まあそういうことだと思ってほしい。
「霊能者つーから、もっとこう、テレビで見るような占い師みたいな人を想像してたんだけどな。なんかやばい人だったな」
ドアの向こうから気配は消えている。なのでついつい小さくぼやいてしまう僕である。するとマトマトが、どうなんだろうなあ、と能天気に言った。
「元々普通の人だったかもしんねえぜ?でもさ……お前、クトゥルフ神話TRPGわかる?」
「なんだよ、藪から棒に。やったことあるけど……それが?」
「あれ、SANチェックってのがあるじゃん?ニャル様とか見るとさ、ダイス振って、その目によってSAN値が削れて発狂したりすんじゃん?……霊能者って常にSAN値削れるようなものばっか見てる人達だと思うんだよな。でもって、このビルなんてまさに呪いの温床っぽくね?そういうところにずーっといたら、SAN値削られまくっておかしくなるのも仕方ないんじゃないかなーとか思って」
こいつにしては、随分鋭いことを言う。同時に、納得もできてしまったのは確かだ。
彼は、まともに仕事ができるような状態には見えなかった。ひょっとしたら生活保護とかだったのかもしれない。風呂にもあまり入っていないようだったし、言動がとにかく攻撃的だった(乱暴な物言いを覗けば、僕達にアドバイスをしているとも受け取れなくはなかったが)。SAN値とやらが消し飛んだせいでおかしくなってしまった、というのは筋が通っている気がする。
霊能力がある人間はそうなってしまうこともあるのだとしたら――なかなか難儀なスキルだとしか言いようがない。ひょっとしてそれで冷静さを欠いているから、お寺や神社に頼むということをしないのだろうか?
「やっぱやばいと思うんだけど、ここ」
僕は苦々しい気持ちでマトマトに言った。
「とりあえず、今日はもう……」
帰った方がいいんじゃ、と言いかけた時だった。
バタン。
ドアが閉まるような音がしたのである。僕はぎょっとして顔を上げた。
音が聞こえたのは、僕が今背にしている502号室――韮澤氏のドア、ではない。正面の、501号室のドアだ。
「おいおい……」
僕は知っている。501号室、そこはかつてこのビルの大家さんをしていた男性が住んでいた部屋だ、ということを。
501号室に住んでた大家兼管理人のおじいさんはもう亡くなってる。調べた情報でも、人から聞いた話でもそうだった。だから、そこに人がいる可能性なんてないのだが。
「……今」
僕はひっくり返った声で、マトマトに尋ねた。
「確かに、そこのドアが閉まる音、したよね?」
「……したなあ」
マトマトもさすがにちょっと顔を青くしている。そして、そのままカメラを501号室へと向けた。
流石に二人とも聞いている以上、気のせいということはないだろう。僕はそろりそろりとドアの前に近づいていく。
もう人が亡くなって久しいからか、501号室には名前のプレートも何もかかっていなかった。遺族が処分したのか、それとも元々かけていなかったのか。ゆっくりとドアスコープをこちらから覗き込んでみる。が――いかんせん、こっちの部屋も暗いし、向こうの部屋も暗いのか何も見える気配はない。
そもそもドアスコープというのは、反対側からはそう簡単に中が覗けないようになっていることが多いはずだ。仮に人がいても見えない可能性は十分にあったが。
「ど、ドア開けてみようぜ」
マトマトが余計なことを言いだす。
「鍵かかる音しなかったじゃねえか!ならまだ鍵は開いてる、かもしんねえ!」
「いや、普通閉めるし、鍵かける音を僕等が聞き逃しただけじゃないの……」
「そうかもしれないけどそうじゃないかもしれない!ていうわけでタカ、ゴーゴーゴーのゴー!」
お前、なんでそんなこと言いながら僕に開けさせようとしてんねん、しばいたろか。
などと何故か心の中ではエセ関西弁でツッコミをいれつつ、僕は渋々501号室のドアノブを握ったのだった。なんだか、やけにひんやりしている。九月なのに、どうしてこんなにも氷のようにドアノブが冷たいんだろうか?
どうせ開くはずもない――そう思っていても、僕はノブを握る手に力をこめていた。この時、チャイムを押すとか、ノックをするというのを一切考えられなかったのは多分、頭の中で「いるとしたら人間じゃない何かだろう」って考えがあったからだろう。
「うっ」
ノブは――回ってしまった。鍵がかかっていない。これはマジで開いてしまうのか、と思った時だった。
「ぐっ……なんだこれ」
少し開けただけで、魚でも腐ったような嫌な臭いがした。吐き気を堪えて、思わず反対の手で口を押える。これ、本当に中を確認しなきゃダメなやつ?と思う僕。いやだって、絶対これ、中はろくなことになっていないパターンだ。オバケも嫌だが、ゴミ屋敷も同じくらい嫌なのだから。ベクトルが違うと言えばそうだけども。
ただし。
「あら」
ガタン!と大きな音がして、少しだけ開いたドアが止まってしまった。見ればチェーンがかかっている。なんとこの中にいる人物、鍵は閉めたのにチェーンロックだけかけていたということらしい。
鍵をかけるだけなら、外部からでもできる。しかし、外側からチェーンロックをかけるのは本来相当難しいことであるはずだ。ということは、これは本当に中に誰かがいる、ということではなかろうか。
少し冷静になると同時に、僕は慌てた。みんなが把握していないだけで、普通に別人が住んでいる可能性もまったくゼロではなかったではないか。今、自分達はめちゃくちゃ失礼なことをしているような。
「なあ、マトマト、これマジで今別の人が住んでるんじゃ」
「え、まじ?」
「す、すみませんドア勝手に開けて!お邪魔しま……」
お邪魔しました、と言おうとしたその時だった。
ぬっ、と。
白い手が、闇の中から伸びてきたのである。
「ひっ!?」
腐臭が強くなった。僕がノブから手を離すより先に、ぐいっと内側から強く引っ張られた。勢いよくドアが閉められる。僕は思わずつんのめって倒れそうになってしまった。
「な、ななななな、な」
今のなに、と言おうとしたのに声が出ない。思わず腰を抜かす僕の目の前で、がちゃん、と鍵がしまる音がする。そして、のし、のし、のし、と誰かが歩き去る音が聞こえた。間違いない、中に誰かがいたのだ。
問題はそれが、人間か、生きているのかいないのかがまったくわからなかったということだが。
「すげえ」
掠れた声でマトマトが告げた。
「すげえよ……めっちゃいい図、撮れた」
「や、やばいな。本当に人、住んでた、のか」
「ああ、住んでたんだ。でもって、生きた人間じゃねえんだぜ、きっと。そうに違いねえ。絶対そうだ、うん」
そうだ、やっぱりそうだ、と彼は興奮したように繰り返す。自分がノブを握っていなかったからって、なんと能天気なんだろう。そして、どうしてそう言いきれるのだろう。
「え。マジ気づかなかったわけ、タカ?……お前見てなかったのかよ。ドアの向こうの景色」
恐怖と好奇心で、ちょっと彼はおかしくなっていたのかもしれない。引きつったような笑みを浮かべている。
「真っ暗だった、マジで」
そして、僕が見る余裕がなかった、ドアの隙間の向こうの景色を語った。
「本当に暗ぇの。真っ黒、真っ黒、まっくら、まっくら!まるで塗りつぶしたように不自然な闇だった。おかしいだろ、今、夜じゃないんだぜ?いや、夜だったとしても……こっち側の消火栓の光とかはあるだろ?それに多少は中が照らされてもおかしくないはずだろ?なのに、マジで真っ暗なんだ。塗りつぶしたみたいな黒なんだ。……あれが人間が住んでる部屋なわけあるか」
「ま、マジ、なのか」
「マジもマジ。これ、帰ったら急いで編集しねえと。絶対再生回数アゲアゲだって!」
この期に及んでまだ再生回数の方を気にすることができるマトマトは大物なのかもしれない。いや、実際自分もまだ少し、今回の取材の動画に期待している気持ちはゼロではないが。そもそも、リクエストを無視してイモ引いて帰ることで、評判が落ちることを気にしているのも事実だが。
「お前、ここに来てから妙に肝据わってるよな。僕には真似できいないや……」
と、そこまで言った時だった。
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ!
「ひい!?」
ああ、こんな声ばっか上げてたらビビリと思われてしまうかもしれない。でも、仕方ないではないか。
だっていきなり階段を駆け下りる音が聞こえたのだ。僕達の、すぐ背後からである。
「な、なんだっ!?」
その人物は、六階から降りてきて、自分達の後ろを通り過ぎて下へ降りていったようだった。振り返った時、ちらっと黒い影が見えた。薄暗かった上、本当にギリギリのタイミングだったので男か女かもわからなかったが。
「すげえ!今絶対誰かいたぜ!こっちも幽霊かも!!」
マトマトが嬉しそうに声を上げる。
「追いかけてみよう、タカ!今日はいい日だ、情報特盛ィ!」
「お、おいマトマト!マトマトー!!」
こいつ、こんな向こう見ずなキャラクターだっただろうか。カメラを持ったまま影を追いかけて走り出すマトマト。こうなっては、僕も追いかけるしかない。
正直、段々と逃げたい気持ちが好奇心を上回ってきている。あの影は上から来た。六階から現れたとしても、屋上からだったとしても、多分ろくなものじゃない。生きた人間なら、自分達に声をかけないのもおかしい。接触したらろくなことにならない可能性が高いというのに。
「いけいけいけいっけー!どんどんどんどん!」
「マジで待ってってば!やばいって!!」
どっかの忍術学園のキャラクターでも乗り移ったんだろうか?ハイテンションで、黒い影を追いかけて下へと降りていってしまう。
正直気が進まなかったが、エレベーターに乗るのも怖い以上、どっちみちいずれは階段を降りるしかないのも確かだった。だから途中までは仕方ないし、どうせ見失うだろうと思っていたのだけれど。
「待て、待てって、マトマト!」
なんと彼は一階を通り過ぎて――さらに、地下への階段を降りてしまった。
確かに、一度地下は確認したい気持ちもあったのは事実だ。だが、あの韮澤氏の証言などもあるし、元々やばい何か――あざはるさま、とやらは地下に埋まっていた可能性が高い。今も地下に、その温床となる呪物が存在する可能性が極めて高いのだ。だから手間暇かけて、あの男はエレベーターの出口を塞いだと言っていたのだから。
そして、あの黒い影も明らかに地下一階へと降りていった。どう見ても、嫌な予感しかしないではないか。
ところが。
「うえ?」
マトマトの足が急に止まり、僕は彼の背中にぶつかりそうになった。なんだなんだと見て見れば、彼の目の前にはシャッターが降りているではないか。鉄柵の隙間は狭く、とてもじゃないが人が通れるような代物ではない。
シャッターの向こうは完全な真っ暗闇で、ほとんど何も見えなかった。
「あれ?おかしいな……あいつ、こっちに逃げて来たはずなのに、通れないぞ?どこ行った?」
「いい加減にしろって、お前!」
僕はマトマトの腕を掴む。
「もういいだろ!?人が通れないようなシャッターあるのに消えたってことは、明らかに人間じゃないんだって!これ以上はさすがにやばい、戻るぞ!絶対何か……」
ずずずずずずず。
何か。
重たいものが動くような、嫌な音がした。それはRPGのゲームとかで、石像を引きずってギミックを動かす音に似ている、と思う。同時に僕はここでようやく、さっき501号室のドアを開けた時に嗅いだのと同じ、魚が腐ったような臭いをかぎ取ることになるのだ。
「何かいる」
マトマトがそう言って、カメラを持っていない手でスマホを取り出した。そして、ライトモードにして、目の前に光を照射する。
そして。
「ひいいいっ!?」
僕は倒れそうになってしまった。シャッターの真正面。ああ、すまない、写真を撮る余裕がなかったのでそういうのを載せることはできないけど、でも信じてほしい。
シャッターのすぐ前に、それ、がいたのだ。灰色の猿ような、謎の石像。その石像は両手を前に差し出したようなポーズをしていて――その手には、長方形の皿のようなものを持っているのだ。
その皿の上、びくんびくんびくん、と痙攣しているのは、血塗れの、死にかけた魚。臭いの元はこれだとすぐに気づいた。
「や、やべえ」
自分は、その景色をはっきり見ていない。それでもわかる。さっき、明らかに石像が動く音がしていたのだ。
ということはライトを照射する直前、石像はシャッターの前に移動してきたのではないか。そう、僕達の方向へ――。
「逃げろおおおおおおお!」
やばい。これはもう、完全にやばい何かだ。本能が激しく警鐘を鳴らしていた。
僕は絶叫し、マトマトの腕を強引に引っ張って――上の階へと引き返したのだった。
2024/09/08 月曜日
昨日アップした動画は、結構みんなに楽しんで貰えたようで良かったと思う。映像はそんなに多くなかったけど、情報量はそれなりだったんじゃないだろうか。
はっきり言って、土曜日に無事に帰ってこられたのは奇跡のようなものだったと思う。少しでも動画の内容を濃くしたかったのと、やっぱりいい映像を撮りたいとか面白そうって気持ちがあったのとでちょっと無茶をしすぎた気がする。
それに、マトマトとも話してたけど、ぶっちゃけ野心もあったのは事実。
本物の幽霊を撮影できたら動画の再生回数も跳ね上がるし、今までよりずっと有名になれるみたいな気持ちもあったのは確かだ。そこは反省しないといけない。どんなに人気者になれても人に迷惑をかけていいわけじゃないし、何より命あっての物種なのは間違いない。
僕はもう流石に、あのビルが本物の幽霊スポットだってことを疑っていないんだ。
あのビルがどういう場所なのか、どういう呪いがあるのかはおおよそわかった。
リクエストしてくれた人の中には『最終的にあざはる様がなんだったのかがわからないから、そこまで調べてほしい』って声もあったし、『千谷学習塾のメンバーがどこに消えたのか調べてほしい』とか『結局屋上にも地下にもちゃんと入れていないからちゃんと入ってほしい』とか、あと『千谷学習塾の人達がエレベーターでやった儀式を試してほしい』なんて声もあった。
そういうの、みんな見たいよな。わかっている。動画配信者として、出来る限りみんなの期待に応えたい気持ちもあるのだ。
でも申し訳ないけれど――チキンと思われても仕方ないけど、勘弁してほしい。本能的に、これ以上はやばいって自分でも感じるのだ。多分既に、踏み込んではいけないところまで踏み込んでしまっている。
途中までは漠然と嫌な予感がしただけだった。
でも地下で、シャッターの前に立っている謎の石像を見て、やっぱり直感は間違っていなかったと悟ったんだ。もし僕達があのシャッターを突破してあれに直接触っていたら――多分生きて帰って、このブログを書くこともできなかったと思われる。
かつては、あのビルがあった空き地で遊んだだけで子供が呪われたこともあった、という。
その呪いの頻度や深度が人によって安定しないのは何故だろうとは思うが――ひょっとしたら子供ほど祟りに遭いやすいなんてこともあったのかもしれない。後にアパートで異臭騒動に遭って死にかけた人達なんかはみんな高齢者で、子供ではなかった。だからあれでも少し呪いの影響がマシだった、なんてことはないだろうか?
このビルのテナントもそうなんだ。
千谷学習塾は、当たり前だけど子供がたくさん来ていた。だから影響を受けやすくて、生徒の誰かがあざはる様に取り込まれた生贄の女の子――はなえちゃんの声を聴いてしまったとか、そういうことではないだろうか。
それで、地下にある力が本物だと先生に話して、確信して、儀式を試すに至ったのではないか?
僕たちは成人しているから、現時点ではちょっと気分が悪くなるだけで済んでいるのかもしれない。
でも多分、これ以上余計なことしたら、僕とマトマトもただでは済まない。
だから申し訳ない。
ここらへんで、調査は打ち切りにしたいと思う。
どうか、ご容赦願いたい。でもって、できれば君達が自分で調べるのもおすすめできない。
***
2024/09/09 火曜日
短いけど、急遽お知らせ。
すみません、今日の動画はお休みさせていただきます。
完全に風邪ひいてしまった。アルバイトもおやすみ。編集担当が僕だから、いくらマトマトが動画撮ってくれたやつあっても作業進まないとアップできない。
全然編集進んでなくてどうしようもないので、ちょっとだけ時間くれると嬉しい。熱が38℃まで上がってしまって、これ書くために起きてるのもしんどい。
インフルとかコロナでないことを切に祈ってる模様。ついてない。
***
2024/09/11 木曜日
うっかり昨日はブログ更新も飛ばしてしまって申し訳ないです。心配のコメントくれた人達本当にありがとう。まだ熱はあるけど、だいぶ良くなってきたと思う。
マトマトは元気らしくて、バイトにも普通に行ってるっぽい。ただ、まだ痣春ビルの調査を諦めきれていないようで、しつこく「体治ったら続き行こう」とか言ってる。僕よりコワガリだと思っていたのに、ガッツがあるのかないのかどっちなんだろう。
僕はもうやめた方がいいと言っているんだけど、このままだと自分一人で行ってしまいそうな空気。なんとか止められるといいんだけども。
とりあえず二人で撮った動画の残りの編集始めます。うまくいけば明日にでもアップできるんじゃないかなと。
……よく考えたら、韮澤さんの撮影許可を取るのをすっかり忘れていた。さすがにまずいので、韮澤さんの姿が少しでも移ってる部分はカットするか、音声のみにして出させて貰おうと思います。もういっそ、紙芝居形式にしちゃうのもありか……。
撮影許可を貰うためにはもう一度痣春ビルに言って直接尋ねないといけないんだけど、どうしても気が重い。はあ。
***
2024/09/12 金曜日
まだきづいてないの?
どうしてまだきづいてないの?おかしいね、ふしぎだね。
はなえちゃんはともだちがほしい。いっぱいいっぱいほしい。だって、ともだちをたくさんつれてこれば、あざはるさまがよろこんでくれるっていってたから。あざはるさまがよろこんでくれたら、いたいのとか、かなしいのとか、ぜんぶなくなるっていってたから。
はなえちゃんは、パパとママにきらわれちゃった。
きらわれちゃって、むらのひとにもきらわれちゃって、だからえらばれちゃった。
あざはるさまのともだちになるために、あざはるさまのつちのいちぶになるために、あなをほったなかにおとされて
いっぱい、いっぱい、いっぱい、いしのトンカチでたたかれた。とってもいたかった。
あたまも、うでも、あしも、むねも、おなかも、おまたも、おしりも、めも、みんなみんなみんなつぶれて、すごくいたくて。
でもまだいきてるのに、うめられちゃって、そのままじめんのいちぶになって、あざはるさまのともだちになった。
しんでからも、はなえちゃんはとってもいたくて、だからいたいきもちをわかってほしくて、どうしたらいいのかなってあざはるさまにきいたら
ともだちをつれてきて、おなじようにいたいおもいをしてもらえれば、わかってもらえるよって
だからいっぱいつれていくんだって
はなえちゃんがつれていったひと、みんな、しんでからいたくなるから
いたくなって、はなえちゃんのきもちはわかるようになるから。それでおともだちになれるから
いたいけどこわくないよ、ひとりじゃないもの
ちたにせんせいも、みんなも、いっしょにいてくれる
だからあなたもこわくないよ
こわくないから、もう、にげなくていいし
にげられないよ
***
2024/09/12 金曜日
昨日の夜悪夢を見た。
一人の女の子が裸にされて、縄で縛られて、穴の中に落とされる夢だ。周りには村人みたいな人がたくさんいて、あざはるさまの友達を連れてきました、友達を連れてきました、だから我々に富と名誉をお与えください――とかなんとか言ってるんだ。
女の子は泣き叫んでる。助けて、助けて、って何度も言ってる。でも大人の人達は全然女の子の言葉を聞かない。はなえちゃんごめんね、って言ってる。そうだ、はなえちゃんって、確かにそう言っていたんだ。
彼女は穴の中で拷問された。
石のトンカチで、体中を殴られたんだ。まず手足の指を全部トンカチでぐしゃぐしゃに砕かれて、その次は手の甲や足の甲、手首や足首で。そうやって、段々体の中心に行くまで、トンカチでひたすら女の子の体を殴って骨を粉みじんにしていく。
頭蓋骨以外、体中の骨をほとんど全部砕かないといけないとか言ってた。細かくなればなるほど土に帰れる、死ぬ時の苦痛が大きいほど痣春様の友達になれる、とかなんとか。
最終的には彼女は耳も目も潰されて、肩も、胸も、首も、背骨も、股間の骨まで殴られて潰されて、苦しいとか痛いとかも言えなくなった。ぶくぶくと血の泡をふいて、白目を剥いて、おしっこを漏らしながら体中を痙攣させていた。
それでもまだ、生きていた。
生きているのに大人の人達は自分達だけ外に出て、彼女のうえに土をかぶせて生き埋めにしてしまったんだ。そして、彼女を埋めた穴の上に、石像を置いていた。あの石像だ。僕とマトマトが地下で見た石像。猿みたいな石像で、皿を持っているやつ。
最後に設置した石造の皿の上、大人の人達は死にかけの魚を置いていた。あれが供物だってことなんだろう。なら、あの石像が地下一階のフロアにあったのは?死にかけた魚が置かれていたのは?だってあの地下一階、シャッター降りてて階段で行けないし、エレベーターに関しては言わずもがな。それなのに、一体誰がどうやって、あんなものを設置したというのか?
あくまで今のは、僕が熱にうなされながら見た夢だ。
ただの夢かもしれない。でも、やっぱりどうしても気になる。
僕はあのビルに入ってから、熱とは違う寒気を感じている。ずっと誰かに見られているような嫌な予感がしている。それは、もう既に僕が祟られてしまっているからではないのだろうか?やっぱりもう一度、リスクを犯してでも、あのビルに言って、韮澤さんに土下座してでも対策を教えてもらうべきではないか?
あるいは、神社や寺に行くべきなのか。本当はそれが正当な解決方法なんだけど、何故だろう、それをやったら僕は死んでしまうような気がしている。
とりあえず、一つ教えてくれ。
なあ、今日の明け方、また僕のブログに意味不明な記事が投稿されていたな。
パスワード変えたのに、どうやってやった?そして前とは文章が違う。それは、僕へのメッセージなのか?なあ、そうなんだろう?
だとしたら――だとしたら教えてくれ。君は千谷学習塾のメンバーなのか?何故僕たちを呪うんだ。あのビルに入っただけで、何がそんなに気に食わないんだ。
僕達を殺す気なのか?
昨日の夜からマトマトから返事がない。
頼むからそれは、ただの偶然だって言ってくれ。
2024/09/13 土曜日
てんとせんをむすぶの。
てんとせんをたどるの。
あざはるさまは、じめんのなかから、とちのなかから、みんなをすべるもの。
うめられたおともだちが、あたらしいあざはるさまのちからになる。
あざはるさまはさみしがりや。
だからおともだちがほしい。
でもじめんがかぎられていて、じめんにうまっていて、それいじょうにねをはることができなかった。
でもね、おしえてもらったの、おまじない。
はなえちゃんとちからをあわせるおまじない。
てんとせんをむすぶの。
てんとせんをたどるの。
たどって、したにいるあざはるさまを、うえにもちあげて、のぼるの。
そうするとせんが、はしらになるの。はしらのひかりは、もっとたかくまで、とおくまでとどくの。
そのうち、もっとひろいところまでねをのばして、いまのばしょだけじゃないところまで、おともだちをさがしにいけるようになるんだよ。
エレベーターが、はしらになった。
できればもっともっと、つよいはしらにしたいな。
だからみんなにきてほしいから、あなたもおいで。
あなたのおともだちも、まってるんだよ。
***
2024/09/13 土曜日
やっぱり、あんたはこのブログを見ているんだな?
どうやってここを見つけたのかは知らない。どうやって僕のブログに、勝手に記事を投稿しているのかも。もう人間じゃないはずの存在に、どうしてそういうことができるのかも。
もう少し調べたことがある。千谷学習塾にいた、一人の女の子のことだ。
本当は子供の名前を晒すべきではないとは思うんだけれど、多分今そんなことを言っている場合じゃない。恐らく、君なんだろう?痣春様の一部になった『はなえちゃん』という女の子に引っ張られて、僕のブログに書き込んでいる人物は。
その子の名前は小学校一年生、中村紬ちゃんという。漢字が得意ではなかったけれど、お喋りが大好きな子だった。恐らく、ブログに書いてある文字がほぼ平仮名ばっかりなのもその名残なのではないだろうか。
酒屋の末子さんが、彼女のことを覚えていた。千谷学習塾に通っていた子供達の何人かは、店の軒先を掃除していた末子さんとお話する機会があったというのだ。その中に一人、一番小さくて、一番不思議なお話をする女の子がいた。その子の名前が、中村紬ちゃん。彼女は幽霊の声が聞こえると言っていた。特に、自分と年の近い子供の声をよく聞くことがある、と。
霊感と一言で言っても、その能力は様々だと聞いたことがある。
オバケが見えるといっても、それがキツネの姿に見える人もいるし、空間のゆがみとして近くできる人もいる。そして、実際見ることも聞くこともできないけれど、ただ直感的にヤバイ感じがして幽霊の有無を探知できるなんて人もいるようなのだ。
紬ちゃんの場合は、幽霊の声だけ聞こえるタイプだったらしい。
この痣春ビルに来てから、子供の声と足音をよく聞いていたようだ。特に足元からそれが聞こえてくるので、不思議に思っていたらしい。――元々、このビルの地下一階は倉庫として使われている場所だった。オバケとか関係なしに、一般人は立ち入り禁止となっていたようだ。にも拘らず、地面の下から声が聞こえてくる。勝手に子供がしのびこんでいるかも?と末子さんに言っていたらしい。
ここから先は推測だが。
紬ちゃん――あるいは紬ちゃんと先生は、地下にその声の主を確認しにいってしまった、のではないだろうか。
そして、あの石像を見てしまった。あるいは、触れてしまった。そして、痣春様に捧げられたお友達という名の生贄の一人、はなえちゃんとやらに取り憑かれたのではなかろうか。
僕が見た夢が真実ならば、はなえちゃんはあざはる様がこの土地に移るより前、辺境の村で神様として崇められていた頃に捧げられた生贄の一人だ。
そのやり方は凄惨なもの。年端もいかない女の子を穴の中に落として、その全身の骨を石のトンカチで砕いて潰していくんだから。どれだけ痛い、痛いと泣き叫んでも終わらない。半死半生になったところで生き埋めにして、その上にあざはる様の依り代となる石像を乗せる。最後に、貢ぎ物として死にかけの魚をお供えする――そういう儀式だったんだろう。
ひょっとしたら元のあざはる様も、そうやって生贄にされて殺された子供だったのかもしれない。
何にせよ、そんな恨みこもった儀式が積み重なって、あざはる様のところにはたくさんの屍が集い、力を増していったと思われる。その状態でこの土地に移されて――最悪なことに、そのご神体も信者も何もかもが空襲で焼けてしまった。そのせいで、生贄の有無も関係なく、この土地に踏み込んだ人を祟る存在になってしまったのではかろうか。
このブログを見ている、紬ちゃん。
君はもう自分が死んでいることがわかっているよな?君の話を総括するに、地下にあったあざはる様と屋上という〝点〟をエレベーターによって結ぶことで、呪いを振りまく柱を作ってしまったということなんだろう。今までは、地下という〝点〟だけだから、この土地に近づく人間を呪うだけで済んでいた。勿論それでも充分危ないことだけど、土地に『近づきさえしなければ』ある程度安全は担保されていたということではないんだろうか。例え、生贄が枯渇すると、どこからともなく土地に人を呼び寄せるような特性があったとしても、だ。
でも八年前、儀式によって柱が完成してしまった。
いや、まだ未完成なのかもしれない。でもその後も、痣春ビルに関わった人が死んでいる。それまでは、呪いを受けても後遺症が残るレベルがほとんどだったのに。恐らく――呪いが人を容易く殺せるレベルになり、そしてどんどん生贄を吸収して範囲も広くなっていっている、ってことではなかろうか。
柱がもし完全に完成してしまったらどうなるのか、考えるだけで恐ろしい。
今までは安全だった隣のビル、向かいの建物、前の通り――あらゆる場所が、痣春ビルがある場所と同じように忌み地になってしまうかもしれないのだ。
なあ、紬ちゃん、本当にそれでいいのか?
千谷学習塾がなくなってしまうのは、君と先生にとっては悲劇だったかもしれない。でも、君の言葉が正しいのなら、君達が今いる世界だって幸せじゃないんだろう?恐らく、はなえちゃんと同じ痛い思いを君達もさせられてるんじゃないのか?そんな苦しい思いをさせられてまで、その苦しい世界に閉じ込められて、君は本当に満足なのか?
これからも苦しい思いをする人を増やすつもりなのか?
それで本当にみんなが友達になれると思っているのか?
君は漢字は苦手だと言っていたけど、多分僕のブログは読めているよね。だから書き込んでいるんだろう?だったら、僕の気持ちをどうか最後まで読んで、受け取ってほしい。
マトマトと連絡が取れない。
何度メールしても、LINEしても、電話しても通じない。マトマトの知り合いの人や職場の人にもかけてみたけど、行方不明のままだ。
「あなたのおともだちもまってるんだよ」
これは、マトマトのことじゃないのか?君が、マトマトを預かっているんだろう?
頼むから、返してくれ。大事な友達なんだ。そして、これ以上恐ろしい領域を広げるのも、生贄を増やすのもやめてくれ。
ここは、生きている者達の世界なんだ。
みんな一生懸命、明日へ向かって生きているんだ。どんなに泥臭くても、みっともなくても、不憫でも。
だから。
***
縺ゅ↓繧?l/繧ょュ?荵鈴ヲャ ●曜日
あざはるさまはすごいかみさま
どこからきたのか、どこにいくのか、かみさまももうおぼえていない
ただあかい、あかい、あかいところにいる。わたしたちもあかい、あかい、あかいところにいる。
ざぶざぶざぶざぶ、うみがひろがっていて、ぼちゃぼちゃぼちゃぼちゃ、にくがおちる。そのうみに、わたしたちみんなおっこちだ。でも、おぼれなかった。うみはとってもあさかった。たってあるけた。でも。
うみにはいったら、あしがいたくなった。あしのゆびがつぶれて、あしくびがつぶれて、ふくらはぎがつぶれて、ひざがつぶれて、ふとももがつぶれた。ぐしゃぐしゃのあしで、いたいいたいっていってあるいてたら、こんどはうでがとってもいたくなった。
すごくいたくて、くるしくて、かなしかったけど、わかったの。はなえちゃんがおなじようにうみのなかにいて、ぐしゃぐしゃのてあしで、はってたから。
おともだちになるってそういうことなんだって、わかったの。おともだちになるためには、はなえちゃんや、みんなとおなじ、このせかいでぐしゃぐしゃにならないといけないの。
すごくいたくて、いやだったけど、りかいしたの。このせかいでは、そうじゃなきゃいけないってこと。そして、ときどきみえるまどから、そとのせかいをみて、よびかけるのがだいじだってこと。
よびかけて、みんなでよびかけて、あたらしいおともだちをよぶの。
そうすれば、あざはるさまがさみしくなくなって、ほめてくれる。
いたいけど、わたしも、ちたにせんせいも、みんなも、ずっとずっとずっといっしょにいられる。だれも、わたしたちにでていけっていわないの。こわくないの。
だから、いうとおりにするの。
そういう、おしごとなの。
ときどき、おとなのひとがじゃまをするけど、わたしたちはもうあざはるさまといっしょのそんざいだから、おとなのひとになんかまけたりしないんだよ。
マトマトさんがまってる。
あたらしいはしらをつくりにいこう。
あなたがくるまで、まってるからね。
***
2024/09/14 日曜日
僕達は間違っていたんだろう。
ひょっとしたら、あのリクスト自体、近所の人とかじゃなくて――痣春様とやらが僕達を引き寄せるために書いたもの、だったのかもしれない。
ブログにアクセスできるんだから、YouTubeのコメント欄にアクセスできたってなんらおかしくはないはずだ。
でもって、どれだけ誘われたんだとしても、引き返すポイントはいくつもあった。
少なくとも初日の段階でオバケを見てしまっているんだから、そこでやばいと思ってちゃんとやめれば良かったはずなんだ。
いや、それよりも前。やっぱり人が住んでいるかもしれないビルに勝手に入って取材なんて、それ自体が悪いことだったに違いない。本当に馬鹿だと思う。このブログを読んでいる人には、僕達を非難したい人もきっといるだろう。
でも、やってしまったことはもう取り返しがつかない。
だから今、まだ病み上がりで頭はくらくらするけど――僕は電車の中で、このブログを書いている。
ビルに入ったあとも、ギリギリまで書いて、可能な限り投稿するつもりだ。場合によっては、Twitterの投稿に切り替えるかもしれない。
書き込みが一切なくなったら、その時僕の身に何かがあったと思ってほしい。
きっとこの呪いは、僕達みたいな素人では止められないんだろう。だから、この後ちゃんと、しかるべきところに相談しようと思う。
でもまずは。
マトマトを助けるところからだ。
大事な友達だけは、なんとしても僕の手で助け出さなきゃ。きっと痣春ビルで、マトマトは待ってる。
縺ゅ↓繧?l/繧ょュ?荵鈴ヲャ ●曜日
はしらをもっともっとつよくしないと。
みんなもきて、もっともっとこっちにきて。はしらをもっともっとつよくしようよ。あざはるさまは、ともだちをよんでるよ。みんなもっとこっちにきてよ。
はしらができたら、ビルがなくなってもだいじょうぶ。
いちからつくるひつようはないよね。
だいじょうぶだよ、こわくないよ、すこしいたいけど、みんなみんなずっとずっと、なかよしのひととずっといっしょにいられる。それはきっと、とってもすてきなことだから。
はなえちゃんもよろこんでくれてる。
ちたにせんせいもよろこんでくれてる。
さくらちゃんも、ゆきちゃんも、まことくんも、たいがくんも、りゅうせいくんも、あきなちゃんも、たかやくんも、つみきくんも、みんな、みんな、みんな、みんな。
はなえちゃんがいたむらで、はなえちゃんとおなじようにおともだちになったひともいっぱいいるよ。
たくまささん、あゆこさん、みえこさん、げんじさん、しょうざぶろうさん、るりこさん、さちえさん、はなこさん、みつさん、こうたさん、ゆきひこさん、それから、それから、それから、それから。
つらいことはぜんぶわすれられる。
いたいから、ほかのいやなことなんて、かんがえなくてすむ。
だからみんなきてね。
こっちにきてね。
あざはるさまといっしょに、エレベーターにのれば、すぐ。
***
2024/09/14 日曜日
ビルのところについた。
スマホで画面あんまり見ないで打ってるから、誤字脱字とかひどいかもしれないけど勘弁してほしい。
ビル全体が、なんだか重苦しい雰囲気がする。入口から見上げていると、なんだか大きな大きな卒塔婆が建っているような、地獄に続く門が目の前にあるような、すごく嫌なかんじがする。
多分僕は、ここで引き返せば助かるんだろう。呪いは受けているだろうけど、だからってすぐ死ぬってことは多分ない。まあ、具合を悪くして数年後に死ぬとか、そういうことはあるかもしれないけれど。
でも、ここで逃げるってことは、マトマトを見捨てるってことなんだ。
みんなにはもう話したと思うけど、僕にとってマトマトはとても大切な友達だ。大学時代、人付き合いが下手で、いつもぽつんと席に座っていた僕に声をかけてくれた。あいつ経由で友達になった奴が何人いたことか。陽キャってキャラなのに、全然僕のことを馬鹿にしないで、仲間にいれてくれた。あいつがいたから学生時代は楽しかったし、ユーチューバーに誘って貰ったのもすごく良かったと思っている。
その恩返しが、全然できてない。怖いけど、このままあいつを見捨てて逃げたら、それはもう人として終わってしまう気がするんだ。
だから、とにかくあいつだけでも助ける。きっと、このビルのどこかに捕まっているんだ。お祓いとかなんとかはそのあとですればいい。あいつを助けようとすることで僕も酷い目に遭うかもしれないけど、もうそれでもいい。僕だって意地がある。たった一人の友達も助けられなくて何が男だ。
体が震えてきた。
とりあえず、最後の動画はアップしたのでみんな見てほしい。前に撮った動画の一部と、それからさっきスマホで撮影したほんの一部の動画だけだから、情報は少ないけど。
それ以降動画が投稿されなくなったら、つまりそういうことだと思ってほしい。
そして、できればこのビルに一般の人は近づかないでほしい。逆に神職だとか、悪霊祓いのスキルが要る人の伝手があるなら手を貸してくれると嬉しい。僕やマトマトが助からなくても、他の人がこれ以上被害に遭わなくていいなら意味があることのはずだ。
今まで、犯罪は犯さないようにしてきた。それでも、ちょっとギリギリな場所にこっそり入ったことはあったし、僕達の動画が有名になったことでそのつもりはなくても迷惑がかかった人もいたことだろう。
それは、本当に申し訳なかったと思っている。許さなくてもいい。でも、反省している。
できればどうか、他のユーチューバーになりたい人も、そうでない人も、僕達と同じ過ちを犯さないでくれると嬉しい。
では、行ってきます。
以降は、Twitterにつぶやき形式でだけ、その都度状況報告を乗せます。
もし無事に帰ってこられたら、ちゃんとまとめてお知らせ出します。そうなりますように。
***
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
ビルに入った。
九月なのに滅茶苦茶寒い。夜だからってこんな冷えるわけあるか
あと、前に来た時は一階から四階まで電気ついてたのに、今日は一階まで電気消えてる
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
うそだろ
マトマトいる エレベーター乗
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
マトマトとエレベーターに乗ってしまった
呆れるほど速度が遅い。マトマトのやつ、元気そうだけど、相変わらず能天気すぎる
何日もいなくなってたくせに、平然とカメラ構えやがって。
とりあえず屋上に行くとか行ってる。今六階に向かってる。
他の階のボタン押したのになんか止まってくれそうにない
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
六階に来てしまった
マトマト追いかけて階段上る、あいつあしはやい
とめられない
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
おいまて、それぎしき
あけてって三回いうのは
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
やばい
またエレベーターに乗ってる。マトマトに腕掴まれて引きずり込まれた。いい画が取れるはずだから絶対儀式を完遂させるんだとか抜かしてやがる
あいつ、千谷学習塾の先生がやった儀式試す気なんだ。屋上のドアの前で三回、開けてっていいやがった。
そもそも屋上のドアのべニア板ほとんど外れてた、なんでだ
三回で降りたらそのあとどうするんだったか
まずい、やり方覚えてないけど、多分手順通り進んでる
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
そうだ、三階
ここで一分待つんだった。そのあとエレベーターが来るんだって
乗ったらだめなのに、マトマトにひっぱられて、くそが
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
これはにげなきゃだめなやつだ
エレベーターきた
ちかいっかいむかってる やだやだやだやだあそこにはいきたくない
なんでコンクリートない?
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
あのせきぞうさわりたくな
マトマトなんでおまえへいきでもって
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
どうしようどうしようどうしようどうしようだれかたすけてまたエレベーターのなかだ
マトマトはとりつかれてる、全然僕の言うこときいてくれない
六階までいって屋上いったらもうぎしきがおわりだ、ぼくたちも連れていかれる
六階についてしまう、なんとかしなくちゃmなんとk
●タカ@ロボコのツッコミ担当です @taka_roboko_tukkomi
ろっかい
にらさわさん?なんで
●繧ソ繧ォ??繝ュ繝懊さ縺ョ繝?ャ繧ウ繝滓球蠖薙〒縺 @taka_roboko_tukkomi
今、ようやくわかった。
そういえば韮澤さんは言ってたじゃないか。何で気づかなかったんだ。最初から、もう取り返しがつかないって教えてくれていたのに、僕は馬鹿だ
あたりが暗い。もうここは、きっとこの世とは違うところなんだ
屋上のドアが開く、空が赤い。いっぱい。いっぱい何かが
韮澤さんがなにかいってる、でも、ああ、にらさわさんまで、ごめんなさい
いたいいたいいたい
***
【都市伝説】怖い話好きな人間が集まるスレ part25【オカルト】
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241:オカルティックな名無しと群れ
マジでそのまま、ロボコって動画投稿やめちゃったわけ?ブログも更新されてないの?
242:オカルティックな名無しと群れ
ggrks
243:オカルティックな名無しと群れ
もう一か月以上マジで音沙汰ないよ
ブログも動画も止まってる。つーか、先週『朗読怪奇バナシ』のイベントに出演予定だったのに、無断欠席したって話
マジで事前連絡とかなかったんだと
244:オカルティックな名無しと群れ
ていうかネットニュースになってたみたいだけど知らん?二人とも自宅アパートから消えてるって
245:オカルティックな名無しと群れ
じゃあ本当に、Xのあの呟きで最後なんか……
246:オカルティックな名無しと群れ
結局どうなったんだ?なんか最後の方のつぶやき不明瞭でよくわからないんだけども?
247:オカルティックな名無しと群れ
恐らくだけど、ロボコのうち、マトマトの方が先に神隠しされた。
で、マトマトがいなくなると同時に、ロボコのブログに平仮名まみれの妙な記事が投稿されるようになった。
悪霊の女の子?が乗っ取って記事投稿していたってことらしい。
それを見て、タカはマトマトがさらわれて、痣春ビルで捕まってると思って助けに行ったんだろう。
つーか素人が突っ込んでもうどうしようもねえのに、何で一人で行くんだろうなこういうやつ。マジで馬鹿じゃねえの?
で、マトマトを助けようとしたら、マトマトが千谷学習塾のひとたち?がやってた儀式を実行していた。
それはどうやらエレベーターを使って、地下にいる邪神を上に引き上げて柱を作る?みたいな儀式らしい。
それが繰り返されると柱が盤石になって、邪神の影響力が増す的な?タカはマトマトを止めようとしたけど一緒に儀式に巻き込まれる。
で、最後六階?に辿り着いたところで、ビルに住んでる韮澤っていうやばそうな霊能者と遭遇したのかな?
最後の方の書き込みがよくわからねえ
248:オカルティックな名無しと群れ
その韮澤って人も一緒にいなくなってそうだよなあ……。
249:オカルティックな名無しと群れ
>>248
いなくなってる
ネットニュースに載ってた
250:オカルティックな名無しと群れ
うわ、マジか。本当に迷惑なことしてんじゃん、ロボコ。
邪神をなんとかしようとしてた霊能者さん巻き込んじゃった形だろ
251:オカルティックな名無しと群れ
最後、みんなして屋上に連れていかれたわけか
つか、マトマトはもう取り憑かれてたんかな
252:オカルティックな名無しと群れ
ごめん、ちょっといいか?俺やべえことに気づいちゃったかもしれない。
タカのブログを読み返してたんだけどさ。
韮澤って人と最初にロボコが会ったシーン……2024/09/07日曜日の記事な。
韮澤って人さ、マトマトだけ見て『邪霊』って呼んでないか?これ。
でもって……よく考えたら初日の調査の時、ロボコの二人って六階で悪霊に遭遇してるだろ?気づいたら公園にいたっていうだろ?
……その時マジで、生きたまま戻ってこられてたの、タカの方だけだったってことはねえ?
253:オカルティックな名無しと群れ
え
254:オカルティックな名無しと群れ
……まじ?
255:オカルティックな名無しと群れ
ちょ、え
じゃあ、もう初日の段階で、マトマトは死んでたってこと……!?え!?
256:オカルティックな名無しと群れ
うわ、確かにそう言われると筋通るかも……マトマト、コワガリのはずなのに妙に積極的で、ちょっと様子おかしかったわ……!
257:オカルティックな名無しと群れ
うわ、すげえ面白そう。俺も痣春ビル行ってみようかな
258:オカルティックな名無しと群れ
ガチなホラースポットじゃん、おもしろそ
259:オカルティックな名無しと群れ
もう一つ自分からも考察落とす。
タカだけ帰されたの、多分、ブログとか動画編集担当してたからだわ
文章と映像で、みんなに痣春ビルのことを知らせて、興味を持たせるための役割があったからじゃないか?だって、マトマトの方はブログもエックスもやってなかったんだぞ?
実際、恐らくリクエスト者そのものが人外だったぽい空気だろこれ
なんでリクエストがあったかといえば、オカルトユーチューバー界でそれなりに影響力のあるロボコ引き込んで、みんなに痣春ビルのことを教える目的だったと思われるわけで
じゃあ、その周知が終わるまでは、発信者は生かすよな?
260:オカルティックな名無しと群れ
うわうわうわうわ
261:オカルティックな名無しと群れ
行ってみよう!
262:オカルティックな名無しと群れ
そういうことかあ……ああ、つか、じゃあ、タカも知らないうちに取り憑かれてた可能性大なんじゃあ
263:オカルティックな名無しと群れ
だろ、絶対。
初日でオバケ見てるのに危機感なさすぎるし、結局調査続けてるし
マトマトを助けに行く時だって、本職に依頼しないの何でだよ?
絶対そういう心理誘導されてんだろこれ。取り憑かれてて、自分は正常なつもりが正常な判断できなくなってたパターンだろ
264:オカルティックな名無しと群れ
ビルに入っただけで、そうなる可能性があるのか、みんな
265:オカルティックな名無しと群れ
今から行ってみるわ、悪霊退治に
266:オカルティックな名無しと群れ
おいばかやめろって!
267:オカルティックな名無しと群れ
Xとかインスタとかでも、痣春ビルのことで盛り上がってる。
神隠しが起きてるっぽいのに、行ってみるとか行ってる馬鹿たくさんいる
このスレにもだ
引き寄せる力が強くなったんだと思う
これもう、止められないだろ、誰にも
268:オカルティックな名無しと群れ
そりゃそうでしょう
元より、相手はカミサマなんだからさ