春、君と出会ったあの日から

翌日、曇り。雨が降りそうな暗さだ。
今日も学校へ登校をする。こんな暗い日は気分が下がるなぁとでも言わんばかりに、足取りが重い。

「はぁ〜」

駅に着いたやいなやため息が出る。遅延の看板が目に入る。仕方ないことなのかもしれないが、これで遅れて扉を開ける時に目立ってしまうことが脳裏によぎり、さらに嫌になる。
さらにもし、電車で〇〇と出会ってしまえば一緒に登校して…ってなってしま…
って僕はなんでこんなこと考えているんだろう。
僕は我に返り、次の電車を待つ。アナウンスが流れ、急行電車が目の前を通り過ぎる。

「おーはよう!」

急行電車が通り過ぎてすぐ、あの彼女の高い声が耳に届く。暗いのになんで逆に彼女は元気なんだ?
え?〇〇の声?と振り返ると目に映ったのはその声の通り〇〇だった。

「一緒だね〜じゃあ行こっか!」

僕に告げてくる。なんとも運が悪い。遅延にさらに急に異性と登校だとは。ましてや目立つ転校生。

「おはよう…てかどうしてここに?」
「え?なんでかって…私最寄り駅ここだよ?」
「…まじ」 
「まじまじ!」  
 
と彼女はくすっと悪戯のような笑いで真似してくる。僕は驚きがいきすぎたのか声に出てしまった。 昨日少しニヤッとしていたのはこう言うことだったのか、と気づく。

「これからは一緒に登校しようね〜」
とるんるん気分で話しかけてくる〇〇。聞き間違いじゃなければ''一緒に登校''と聞こえていて、とても困惑している。
「ちょっ、一緒に登校って…急すぎる…しなんで僕と?」
「え?だって…もう''お友達''でしょ?」
「友達…確かに。」
「昨日話してた時全然こっち側に住んでいる同じクラスの人いなかったから…だめかな?」

確かにこっち側に住んでいる同じ学校の人は少ない。だからと言って…異性と登校なんて緊張でしかない。彼女でもない異性と…と思う。でもそのまま伝えるわけにはいかないからなんて言ったらいいのだろうか

「嫌だったら全然大丈夫だよ」
「全然嫌ではないよ…ダメってわけでもない…」
「じゃあこれからよろしくね!時間は今日くらいの時間に集合ね!」

僕は、言葉を発することなくその勢いに押され、彼女に押し切られわかったと了承してしまった。
全然嫌じゃないが、異性と登校なんて何話せばいいのかもわからないし、色々不安なことが来てしまう。
でもその中には〇〇となら大丈夫だろうという考えもある。了承してしまったからにはこれから続く。なんで返答してしまったんだと後悔もするが、きっとどうにかなると今は信じるしかなかった。

「曇りの時はやっぱ暗いね〜」
「でも雨はもっと暗いよ?」
「確かにね。雨で暗いって言えば気分が下がっちゃうって感じがあるけどなんでだろうね?」
「うーん…外が暗いからそれに比例するかのように気分も暗くなる、とか」
「確かにね!」

うんうん、と〇〇は少し納得したかのようは顔で頷く。

「暗くなるのに比例してって面白いね。頭いいかも」

と、〇〇は僕のことを褒めてくる。なぜか僕は、顔が少し熱くなる感覚がした。

「何で顔そらしてんの?」

彼女の一言でさっきまで〇〇の方を向いていた顔が反対になっていることがわかる。

「外が気になった…からさあ。」
「外?いつも通ってる場所なのに?」

必死な言い訳を探すが痛いところを突かれているせいかなかなか見つからない。

「雷が光った気がしてさ」
(苦し紛れすぎて流石に…?)
「えー!じゃあ雨降っちゃうじゃん。じめじめするの嫌なんだよね〜」

なんとかなったらしい。彼女は馬鹿なのではないのかと一瞬思う。流石に僕ですら気づくことではあるんだけどなと思いながらも、駅への到着を待つのだった。

「やっぱ電車は長いな〜!でもようやく学校に着く!」
「学校に着いちゃうのか」
「あれれ?もしや学校、そんなに好きではない?」
「まぁそこまで…」
「えー!友達と話したりとか〜!遊んだりとか〜!他にも他にも…」

楽しいのになぁ〜と語る。〇〇とは違って仲良い友達がそこまでいない僕は、それがわからない。

「なんで楽しくないの〜?」
「まぁ、特に何もないしクラスに馴染んだわけでもないし」
「え〜じゃあお友達は?」
「そんないないよ。クラスが一年から同じの男子くらい?」

そうなのかあ。と彼女は顔を顰める。少し珍しく彼女は口を閉じる。

「なら私がこれから楽しい毎日にしてみせるね!」

突然と彼女の言葉が耳に入り込んでくる。

「楽しみに…するの?〇〇が?」
「うん!学校生活を楽しくさせるの!」

学校が、たった一人の存在で楽しくなるのかという疑問しか浮かばない。僕は少なくとも見たことがないから。

「まあまあ〜!任せてって!」

下を向いて黙り込む僕に彼女は笑顔を向け、スマホを取り出す。

「まず最初にさ、連絡先交換しよ?」
「え」
「え?って何。嫌なんですか?」
「嫌じゃないけど…」
「じゃあ〜スマホ出して?」

従うように僕の手はすでに彼女にスマホを渡していた。

「よし!これでどこでも会話ができるね!」

友達の連絡先がスマホに入っていることがほとんどなかったために少し新鮮味がある。でもどのくらい連絡が来るのかとか、何が来るのかはそこそこ想像がついてしまうためにめんどくさいような気持ちが膨れ上がる。
その横でどこかるんるんな気持ちのような〇〇と並んで歩いた。