朝、学校へ向かうべく電車に乗っていた。朝の通勤時間なのに座れるくらいには人が少ない。電車で30分ほど揺られて。
うっすらと白くかかる雲に、青い空。けれども自分の後ろから見える空は、灰色が全体を覆っている。
鳥がたくさん飛んでいくのを見て、「今日は雨だなぁ」と独り言をこぼす。
僕はいつも通り小説を書く。
(雨ってなんでこんな憂鬱になっちゃうんだろう)
(外が暗いからじゃない?外が暗いからそれに比例するかのように気分も暗くなる、とか)
(確かに!頭がいいね!)
そうして妄想を膨らませていると、電車は学校の最寄駅に着いた。
「おーい〇〇」
駅に着いて歩けば、去年、そして今年も同じクラスの〇〇〇〇が、蝉のように話しかけてくる。まだ夏じゃないのに。
「今日どっかいこーぜー!この前さぁ〜〜」
と、脈絡もなくどんどん話を続ける。これがいわゆるコミュ力というものなのかと痛感させられる。
「そういえば、今日転校生が来るらしいぞ〜さらに女子」
転校生?と僕はその言葉に反応してしまう。
「お、お前さっきまでめちゃくちゃ相槌だけだったのに食いついてくるじゃないか!もしかして興味あんのか!お前も男子だなぁ」
少し腹が立つ。日常的にこういった話を
「でも転校生って始業式とかにくるのが普通じゃない?」
「まぁなー確かに始業式からちょっとだけ経ってくるってなかなかないよな」
そうして話して教室まで行くと、〇〇の友達が〇〇のことを呼ぶ。
「じゃ、俺あっちいくから!また後で」
いつもいるグループに行ってしまった。大体席で小説を書いたり、読んだりしている僕は特にグループといったものに入っていないため、結局一人だ。友達の前では顔を''作れる''が、一人になるとどうしても暗くなってしまう。
中でも長くいるはずの母親の前でも、結局顔を作ってしまうから、もう仕方がないんだと思う。
先生の座れ朝のホームルーム始めるぞという声で、動物園みたいな教室はシンっと静まり返る。
「転校生って、誰だろうな、どんなやつだと思う?」
「うーん。分からないなぁ」
「朝は食いついてきてたのにな。面白くないなぁ」
怪訝そうな顔で〇〇は戻る。
誰がきたって変わらないんだって、思っていた。そう思っていたのに、その転校生を見た瞬間僕は目を大きく開いてしまった。
転校生として入ってきたその子は、昨日公園で見た後ろ姿が彼女にとても酷似していた。
確証はなく、後ろ姿だけでわかるものかと言えばそうだが、ただあの印象に残るショートヘア、綺麗な容姿。わからないこともない。
「転校してきた、〇〇〇〇です。よろしくお願いします」
お辞儀をし、高く可愛らしい、綺麗な声で発する。
その瞬間僕は確信した。公園で話した彼女だと。
先生のじゃあ席〇〇の隣なという声で、視線が一気に集まる
いいな〜という目やなんであいつが?といった冷たい視線など、さまざまな視線がこっちに刺さり、温度がはっきりとしない。
〇〇は、席につくと「よろしくお願いします」と話しかけてくる
それに僕はオウム返しをする。
少し彼女の顔が少しニコッとした気がした。
ホームルームが終わり、クラスの人がいつものグループに分かれる。
「改めてよろしくお願いします!」
彼女は話しかけてくる。とても明るい。
「よろしくお願いします。」
「あ、私の名前は…」
「さっきの自己紹介で聞いたよ。〇〇〇〇さん」
「あ、はい!君はー。」
彼女が言おうとした瞬間、授業開始のチャイムがなり挨拶が始まる。なんともタイミングが悪い。
けれどもきっとそんな初対面で喋ることに拘ることはないんだろう、とも思った。
*
授業が全て終わり、終わりのホームルームが終わることにより、転校生の周りをクラスの人たちが囲み、きゃーわーとたくさんの鳥が鳴くように会話が積まれていく。
ブロックゲームのように、会話が積まれては消え、また別の会話が積まれていく。
それに淡々と笑顔を見せ消していく様はプロプレイヤーのよう。
「お前ら何話してんだ!ずりーぞ!!」
と、前から〇〇が割り込んでくる。〇〇も会話に乗っかることで、さらにスピードが増す。
僕は身支度をし、学校を出て駅に向かう。
帰る前に、〇〇に「今日家でやることがあって…遊びに行けないごめん!」と断りを入れたためきっと朝の返答はこれで大丈夫だと思いたい。
「はぁ〜」と、ため息が出る。なんとなく目の前にある椅子に座り込む。何かとぼーっとして駅に止まる電車を見つめる。
転校生なんて、大体どこかに飲まれてグループに所属する。隣だから話すことはあるんだろうなと、一人駅のベンチで考える。それを、奥を通過する電車に言葉を乗せていってもらう。僕もあんな感じにどこかに行かせてくれないかとも考えるが、それはうまく行かない。
なんでこんなことを考えているんだと少し疑問が浮かぶ。
少し時間が経つと、掃除が終わったであろう生徒が止まっている電車に乗り込んでいく。
駅員さんの[えー各駅停車〇〇行き出発します]というアナウンスが聞こえ、そろそろ帰るか。とベンチを立とうとする。
その瞬間一人の声が耳に響く。
「〇〇君、電車、乗らないんですか?」
下の名前で呼ばれることなんて親以外なく、驚いて肩を振るわせる。その方向を見れば、〇〇 〇〇がいた。
「〇〇…さん」
「〇〇でいいです!お友達と喋ってる感じでいいです!むしろそれでお願いします!それで、電車乗らないんですか?」
結構グイグイとくる。少し困惑するも、そうだなと思い返答する。
「いや、乗る…よ。ちょっとぼーっとしてて」
「じゃあ行きましょう!ほら!」
初対面なのかぎこちない〇〇の返答をものともせずにすぐにまた返し、〇〇は手を引こうとしたが、その瞬間扉が閉まってしまう。
「あっ」
彼女の声がするのと同時に電車は出発してしまった。ちょっとした沈黙の後〇〇は口を開く
「行っちゃいましたね…」
いや、待て待てそもそも声をかけたからだろと冷静になる。ただそれをそのまま伝えるのは良くないと思ったため、少し考えるが、特に言葉が出てこない。ほぼ初対面なのに、ここまでグイグイくる人は〇〇以来だ。だけど〇〇は同性だったため良かったが、今回は異性。どうしていいかわからなかった。
「そうだね…てかなんでこんな距離が近いの」
「いや、ぼーっとしてたので嫌なことでもあったのかと思いまして…」
「いや、特にないよ。ほんとにただぼーっとしててただけ。後別に…そっちも友達と話すような感じでいいよ。名前の呼び方も…好きにして」
言いたいことを付け足して伝える。そうすると、〇〇はちょっと笑い、嬉しそうにしていた
「じゃ、改めてよろしくね!〇〇君!」
「よろしく…〇〇」
彼女はとても明るく元気だったが、比例するように元気にとは僕は行かなかった。全然異性とほぼ初対面の状態でタメで喋ることが少ないため、ぎこちなくもなってしまう。だがそれは〇〇にはお見通しだ、とでもいうかのように
ーーなんか元気ないな〜
と独り言をこぼすのだった。
2分後、電車が来て、二人で乗り込んだ。
流石に人といるため、小説を書くわけには行かないので、特に何もせず席に座る。
「こっからどんくらいかかるの〜?」
「30分…くらい?」
「あ、同じじゃん!」
はしゃぐ。〇〇は人と喋るのが好きなんだろうなんだろう。
人となはすこと自体はそこまでないが、不思議と話に釣られて魚のように乗っていく。
僕は人と話している時、少し暗くなってしまっているかもしれない。昔から。でも〇〇と喋る時は暗くなっていない気がする。
それはきっと彼女の喋りが上手いのだろう。
「最寄りは何駅?」
「〇〇駅」
こういうと、彼女は え!っとちょっと大きな声をあげる
「声が大きいよ」
「あ、ごめん…あ、それで最寄りが〇〇駅なんだって?なるほどね〜」
と、〇〇はニヤリと笑う。
「いつも何時に出るの?」
「7時50分かな」
わかった!と〇〇はいう。何かされるのだろうか、と思うがまさかこんな関わり始めからイタズラなんてことはないだろう。
電車は、淡々と時間の中を掻い潜っていく。こうして話していると時間は早くすぐに過ぎてしまう。
「じゃあ私今日用事あってここで降りるから!」
元気よく言い、また明日ねと降りて行った。
「また明日…ね」
また明日だなんて言葉僕が使うことあるんだ、と少し思う。
別に使わないわけではないが、特段使うことはなく、使うとしてもただただなんとなく言われたから言い返すことが多かった。
外では雨が降ってきている。まるで何かを隠すかのように。
だが、僕は何も気づくことなく、最寄り駅についてから折りたたみ傘をさして歩き出す。
僕は何も気づかなかったが、きっと今日は、何かが変わったのだろう。
うっすらと白くかかる雲に、青い空。けれども自分の後ろから見える空は、灰色が全体を覆っている。
鳥がたくさん飛んでいくのを見て、「今日は雨だなぁ」と独り言をこぼす。
僕はいつも通り小説を書く。
(雨ってなんでこんな憂鬱になっちゃうんだろう)
(外が暗いからじゃない?外が暗いからそれに比例するかのように気分も暗くなる、とか)
(確かに!頭がいいね!)
そうして妄想を膨らませていると、電車は学校の最寄駅に着いた。
「おーい〇〇」
駅に着いて歩けば、去年、そして今年も同じクラスの〇〇〇〇が、蝉のように話しかけてくる。まだ夏じゃないのに。
「今日どっかいこーぜー!この前さぁ〜〜」
と、脈絡もなくどんどん話を続ける。これがいわゆるコミュ力というものなのかと痛感させられる。
「そういえば、今日転校生が来るらしいぞ〜さらに女子」
転校生?と僕はその言葉に反応してしまう。
「お、お前さっきまでめちゃくちゃ相槌だけだったのに食いついてくるじゃないか!もしかして興味あんのか!お前も男子だなぁ」
少し腹が立つ。日常的にこういった話を
「でも転校生って始業式とかにくるのが普通じゃない?」
「まぁなー確かに始業式からちょっとだけ経ってくるってなかなかないよな」
そうして話して教室まで行くと、〇〇の友達が〇〇のことを呼ぶ。
「じゃ、俺あっちいくから!また後で」
いつもいるグループに行ってしまった。大体席で小説を書いたり、読んだりしている僕は特にグループといったものに入っていないため、結局一人だ。友達の前では顔を''作れる''が、一人になるとどうしても暗くなってしまう。
中でも長くいるはずの母親の前でも、結局顔を作ってしまうから、もう仕方がないんだと思う。
先生の座れ朝のホームルーム始めるぞという声で、動物園みたいな教室はシンっと静まり返る。
「転校生って、誰だろうな、どんなやつだと思う?」
「うーん。分からないなぁ」
「朝は食いついてきてたのにな。面白くないなぁ」
怪訝そうな顔で〇〇は戻る。
誰がきたって変わらないんだって、思っていた。そう思っていたのに、その転校生を見た瞬間僕は目を大きく開いてしまった。
転校生として入ってきたその子は、昨日公園で見た後ろ姿が彼女にとても酷似していた。
確証はなく、後ろ姿だけでわかるものかと言えばそうだが、ただあの印象に残るショートヘア、綺麗な容姿。わからないこともない。
「転校してきた、〇〇〇〇です。よろしくお願いします」
お辞儀をし、高く可愛らしい、綺麗な声で発する。
その瞬間僕は確信した。公園で話した彼女だと。
先生のじゃあ席〇〇の隣なという声で、視線が一気に集まる
いいな〜という目やなんであいつが?といった冷たい視線など、さまざまな視線がこっちに刺さり、温度がはっきりとしない。
〇〇は、席につくと「よろしくお願いします」と話しかけてくる
それに僕はオウム返しをする。
少し彼女の顔が少しニコッとした気がした。
ホームルームが終わり、クラスの人がいつものグループに分かれる。
「改めてよろしくお願いします!」
彼女は話しかけてくる。とても明るい。
「よろしくお願いします。」
「あ、私の名前は…」
「さっきの自己紹介で聞いたよ。〇〇〇〇さん」
「あ、はい!君はー。」
彼女が言おうとした瞬間、授業開始のチャイムがなり挨拶が始まる。なんともタイミングが悪い。
けれどもきっとそんな初対面で喋ることに拘ることはないんだろう、とも思った。
*
授業が全て終わり、終わりのホームルームが終わることにより、転校生の周りをクラスの人たちが囲み、きゃーわーとたくさんの鳥が鳴くように会話が積まれていく。
ブロックゲームのように、会話が積まれては消え、また別の会話が積まれていく。
それに淡々と笑顔を見せ消していく様はプロプレイヤーのよう。
「お前ら何話してんだ!ずりーぞ!!」
と、前から〇〇が割り込んでくる。〇〇も会話に乗っかることで、さらにスピードが増す。
僕は身支度をし、学校を出て駅に向かう。
帰る前に、〇〇に「今日家でやることがあって…遊びに行けないごめん!」と断りを入れたためきっと朝の返答はこれで大丈夫だと思いたい。
「はぁ〜」と、ため息が出る。なんとなく目の前にある椅子に座り込む。何かとぼーっとして駅に止まる電車を見つめる。
転校生なんて、大体どこかに飲まれてグループに所属する。隣だから話すことはあるんだろうなと、一人駅のベンチで考える。それを、奥を通過する電車に言葉を乗せていってもらう。僕もあんな感じにどこかに行かせてくれないかとも考えるが、それはうまく行かない。
なんでこんなことを考えているんだと少し疑問が浮かぶ。
少し時間が経つと、掃除が終わったであろう生徒が止まっている電車に乗り込んでいく。
駅員さんの[えー各駅停車〇〇行き出発します]というアナウンスが聞こえ、そろそろ帰るか。とベンチを立とうとする。
その瞬間一人の声が耳に響く。
「〇〇君、電車、乗らないんですか?」
下の名前で呼ばれることなんて親以外なく、驚いて肩を振るわせる。その方向を見れば、〇〇 〇〇がいた。
「〇〇…さん」
「〇〇でいいです!お友達と喋ってる感じでいいです!むしろそれでお願いします!それで、電車乗らないんですか?」
結構グイグイとくる。少し困惑するも、そうだなと思い返答する。
「いや、乗る…よ。ちょっとぼーっとしてて」
「じゃあ行きましょう!ほら!」
初対面なのかぎこちない〇〇の返答をものともせずにすぐにまた返し、〇〇は手を引こうとしたが、その瞬間扉が閉まってしまう。
「あっ」
彼女の声がするのと同時に電車は出発してしまった。ちょっとした沈黙の後〇〇は口を開く
「行っちゃいましたね…」
いや、待て待てそもそも声をかけたからだろと冷静になる。ただそれをそのまま伝えるのは良くないと思ったため、少し考えるが、特に言葉が出てこない。ほぼ初対面なのに、ここまでグイグイくる人は〇〇以来だ。だけど〇〇は同性だったため良かったが、今回は異性。どうしていいかわからなかった。
「そうだね…てかなんでこんな距離が近いの」
「いや、ぼーっとしてたので嫌なことでもあったのかと思いまして…」
「いや、特にないよ。ほんとにただぼーっとしててただけ。後別に…そっちも友達と話すような感じでいいよ。名前の呼び方も…好きにして」
言いたいことを付け足して伝える。そうすると、〇〇はちょっと笑い、嬉しそうにしていた
「じゃ、改めてよろしくね!〇〇君!」
「よろしく…〇〇」
彼女はとても明るく元気だったが、比例するように元気にとは僕は行かなかった。全然異性とほぼ初対面の状態でタメで喋ることが少ないため、ぎこちなくもなってしまう。だがそれは〇〇にはお見通しだ、とでもいうかのように
ーーなんか元気ないな〜
と独り言をこぼすのだった。
2分後、電車が来て、二人で乗り込んだ。
流石に人といるため、小説を書くわけには行かないので、特に何もせず席に座る。
「こっからどんくらいかかるの〜?」
「30分…くらい?」
「あ、同じじゃん!」
はしゃぐ。〇〇は人と喋るのが好きなんだろうなんだろう。
人となはすこと自体はそこまでないが、不思議と話に釣られて魚のように乗っていく。
僕は人と話している時、少し暗くなってしまっているかもしれない。昔から。でも〇〇と喋る時は暗くなっていない気がする。
それはきっと彼女の喋りが上手いのだろう。
「最寄りは何駅?」
「〇〇駅」
こういうと、彼女は え!っとちょっと大きな声をあげる
「声が大きいよ」
「あ、ごめん…あ、それで最寄りが〇〇駅なんだって?なるほどね〜」
と、〇〇はニヤリと笑う。
「いつも何時に出るの?」
「7時50分かな」
わかった!と〇〇はいう。何かされるのだろうか、と思うがまさかこんな関わり始めからイタズラなんてことはないだろう。
電車は、淡々と時間の中を掻い潜っていく。こうして話していると時間は早くすぐに過ぎてしまう。
「じゃあ私今日用事あってここで降りるから!」
元気よく言い、また明日ねと降りて行った。
「また明日…ね」
また明日だなんて言葉僕が使うことあるんだ、と少し思う。
別に使わないわけではないが、特段使うことはなく、使うとしてもただただなんとなく言われたから言い返すことが多かった。
外では雨が降ってきている。まるで何かを隠すかのように。
だが、僕は何も気づくことなく、最寄り駅についてから折りたたみ傘をさして歩き出す。
僕は何も気づかなかったが、きっと今日は、何かが変わったのだろう。
