「ちょ、ちょっと待ってくれ……あんたは神様なんだろ? あんな死に方をしたから転生させて、人生のやり直しをさせてくれるんじゃないのか?」
「はい。本来ならば、水巻さんのいうような異世界へ転生させ、チート能力を与えられるのですが……このご時世ですので」
「はぁ~!?」

 目の前に現れた、女神様から話を詳しく聞くと。
 近年の異世界ブームにより、謎の事故死が急増したため、異世界へ転生させまくったら……。
 異世界は転生者で溢れかえっており、これ以上転生すると。あちらの世界が崩壊してしまう恐れがあるそうだ。

 申し訳なさそうな顔で俺を見つめる女神様。

「で、でも水巻さんには、是非とも人生のやり直しをして欲しいと思っております」

 その言葉に俺は安心する。

「じゃあ、何か代案があるんだな?」
「はい。あなたは死ぬ間際、この世で最も憎いはずの男。鬼塚 良平の息子を救ってくださいました……なんという清き心」

 と涙ぐむ女神。

 いや……あれは鬼塚の息子と知ってたら、助けてないけどな。

「ですから、あなたにはパラレルワールドの世界で生きなおして欲しいのです」
「ぱ、パラレルワールド?」

 聞きなれぬ言葉に思わず、動揺してしまう。
 一体、どんな世界なんだ?

「いわゆる平行世界。水巻さんが生きていた現実世界に限りなく近い、もう一つの地球です」
「はぁ……」
「自由な異世界とは違い、現実世界とほぼ同じ世界ですので。チートなどの能力は与えられませんが」
「え? なにもくれないの!?」
「いえ、その代わりと言ってはなんですが。美人の女性に転生させてあげます」
「……」

 つまり女体化するってこと?
 ま、まあ美人なら人生はイージーモードかもな。

「あ、でも水巻さんって今。おいくつですか?」
「え? 今年で37歳だけど……」

 俺がそう答えると、苦い顔をする女神。

「うわっ……せっかく美人に転生しても37歳じゃ、もうオバサンですね」

 いちいちムカつく、女神さまだな。こいつ。
 じゃあ自分は何歳なんだよ?

「じゃあ、どうすんだよ?」
「こうしましょう。特典として、時を巻き戻してあげます」
「え? 一体どういう意味……」

 そう言いかけた瞬間、女神が指を鳴らして見せる。
 すると、目の前が真っ暗になり、何も見えなくなってしまった。

  ※

「きなさい……”(あい)”。早く起きなさい! あなた今日も休む気? そろそろ学校へ行かないと」
「んん? あい? 誰、それ?」
「寝ぼけてないで早く顔を洗って、一階に降りて来なさい!」

 そう言って、俺の肩に優しく触れるのは……。
 女の格好をした。と、父さん!?

「いいわね! お友達の”優子(ゆうこ)ちゃん”も迎えに来てくれているんだから!」
「え? 優子?」
「まだ寝ぼけているの! ちゃんとしなさい。もうお母さんは一階に降りて、朝ごはんの用意をしておくからね」
「はぁ……」
 
 話し方がめっちゃオネェぽいな、父さん。
 ん? この世界ってまさか……ウソだよな。