殺したいほど憎いのに、好きになりそう


 真島中学校の上に、大きなバスが8台ほど並んでいた。
 重たいボストンバッグを肩にかけて、バスに乗る。
 どうやらバスガイドさんはいないようだ。担任のミルク先生がガイド代わりらしい。
 つまんないなぁ……。

 バスに揺られること、約3時間。
 大分県の九重山のキャンプ村に着いた。
 重たいボストンバッグを肩にかけて、とりあえず各グループに振り分けられたテントへと向かう。
 
 既にテントは組み立ててあり、俺たちは持って来たボストンバッグを中に入れて待機しろとのこと。
 今回のグループだが、なぜか優子ちゃんが入っている。
 理由を聞いたら、ミルク先生に無理を言って俺のグループに入れてもらったのだとか。

「藍ちゃん、今晩は私の寝袋の中でくっついて寝ようね!」
「え? それは嫌だな……暑そうだし」
「暑くないよ~! 山の中だから、きっと冷えるよ」
「そうかな……」

 そんなことを話していたら、キャンプ場のスピーカーから”コル●ス”先生の低い声が聞こえて来た。

「あー あー、テステス。今から中央広場まで全員集合すること!」

 かったるいなぁと思いながら、優子ちゃんと広場まで歩いていると、もう他のクラスは集まっていた。
 拡声器を手に持ったコル●ス先生が俺たちを睨んでいた。

「遅い! 遅すぎる! 先生が集合と言ったら、一分以内に集まれ! やり直し!」

 コル●ス先生が納得するまで、このやり取りを三回もやらされた。
 このやり直しの方がよっぽど時間をロスしていると思うけどな……。

  ※

 先生からキャンプ場における過ごし方や注意などを聞いたあと、お昼ご飯を食べることになった。
 まだ到着して間もないので、今回はキャンプ場の食堂が昼食を出してくれるそうだ。
 今日のお昼ご飯はなんと、九州民からすると珍しいジンギスカン。

 鉄鍋の上で羊の肉や野菜を混ぜ、焼きながら白米で食べる。

「う~ん、香りがたまらん! 美味そう! いっただっきま~す!」

 そう言って、白米を大量についだ茶わんを片手に、熱々の肉を頬張る。

「めっちゃ、うめぇ!」

 あまりの美味さに、喋り方が前世に戻ってしまった。
 しかし、周りに座っている女子たちが静かだ。
 優子ちゃんも固まっていて、ジンギスカンに手をつけてない。

「どうしたの? なんで食べないの?」
「え……なんか、この独特の臭みが受けつけなくて」

 と苦い顔をしている。
 優子ちゃんがそう言うと、近くにいた女子たちは「私も」「無理かな」と連呼する。
 もったいない!

「みんな食べないなら、私が全部食べちゃうよ?」
「いいよ、藍ちゃんが食べて……」
「本当? じゃあ、いっぱい食べちゃおっと!」

 俺がひとりで5人分のジンギスカンを食べ終えた頃、隣りの女子たちが声をかけてきた。

「あの、水巻さん……もうジンギスカン入らないよね? 私たちもこの臭みが無理で……」

 と申し訳なさそうに頼んでくるので、俺は「え? まだ全然入るよ」と答えた。

「本当!? じゃあ食べてくれる?」
「いいよ。美味しいから、まだまだイケるけど」

 その噂を聞きつけた他の女子たちが「私たちのジンギスカンも食べられる?」と聞いて来たので、「全部持って来て」と答えた。
 30人以上のジンギスカンを食べたと思う。
 その姿を見ていた男子たちが俺を指差して、爆笑していた。

「水巻ってさ、マジで牛だよな! 胸もデカいけど、あんなに食ったら腹もデカくなるぜ!」
「ははは、将来デブのおばさん決定だな!」

 まったく、何も知らないのだね。男子諸君は……。
 この藍ちゃんというボディーは、チート能力により数時間後にはお腹がぺったんこになるし、劣化もしない美少女なのだよ。