”コル●ス先生”に叩かれて、相変わらず左の頬は熱を帯びている。
腫れがなかなか引かず、廊下を歩く度に他のクラスメイトから視線が集まるので面倒だ。
まったく藍ちゃんぐらいの美少女でも殴られるとは、とんだ並行世界だな。
数学の授業でハゲ教師が俺の顔を見て心配してくれるのかと思ったら。
「おい、お前。水巻だったよな? 最近また成績が落ちてるから、放課後に職員室へ来い」
と言われて、居残りが確定してしまった。
放課後になり、優子ちゃんを先に帰らせて俺は職員室に向かう。
また何時間も居残りするのかな?
勘弁してほしいよ……。
~3時間後~
冬休み終わりで先生の熱も入っているから、思った以上に指導が長かった。
指導と言ってもハゲ教師はデスクの上で生徒たちが提出したノートを添削しながら、隣りに座る俺へ小テストを出すだけ。
書き終えると「ここ間違えてるぞ、やり直しだな」と笑う。
ちょっとした嫌がらせなのか?
そんなことを繰り返していると、あっという間に夕方の6時を超えてしまう。気がつけば窓の向こう側は暗くなっていた。
「今日はこれぐらいにしよう。水巻、また明日な」
「は、はい……」
また明日ってことは、しばらく続けるのこれ? 先生も残業しているから無理しなくていいよ。
俺はハゲ教師に頭を下げて、職員室から出て行く。
渡り廊下を抜けて、山側の校舎に入り左へ曲がろうとした瞬間だった。
目の前にジャージ姿の幽霊……じゃなかったコル●ス先生が現れたのは。
相変わらず、目つきが怖い。きっと指導している女子バスケ部の練習が終わったのだろう。
「あ、先生。さ、さようなら」
「……」
俺が別れの挨拶をしても、無言でこちらを睨みつけるだけ。
こ、怖すぎる!
また難くせをつけて、殴ってくるつもりかな? 早く逃げよっと!
そう思った瞬間、俺はその場から走り去る。
下駄箱に逃げ込んで、上靴からスニーカーへ履き替えようとした瞬間。
後ろから足音が聞こえてきた。
間違いない。コル●ス先生が追いかけてきたんだ。早く外へ逃げよう……だが、もう遅かった。
なぜなら、先生の大きな右手が俺の肩を掴んでいたから。
「おい……お前!」
恐怖から縮み上がった俺は、恐る恐る後ろを振り返る。
「あ、あの……私、何もしてないです」
「何を言っているんだ? これ、お前の生徒手帳だろ?」
そう言ってコル●ス先生は何かを差し出す。
真島中学校の生徒手帳だ。俺は受け取って中身を確認すると、間違いなく藍ちゃんのものだった。
どうやら俺が急いで帰ろうとしたため、落としたらしい。
「ありがとうございます……」
「気にするな。それより、お前。生徒手帳は胸元のポケットに入れろ!」
「は、はい」
いきなり怒鳴られたので、驚いた俺は急いで生徒手帳をセーラー服の胸ポケットに入れてみせる。
「よし。ところでお前は1年7組の水巻だったな?」
「そうですけど……」
げっ!? もうクラスと名前を覚えられたよ。
これから、体育の授業の度に殴られるのかな……。
「お前、1年の割にけっこう大きいな? いくつだ?」
話の流れから俺は胸のサイズだと思い込み、先日計ったバストサイズを先生に伝える。
「えっと、Hの65です」
「バカ野郎! 胸じゃない! お前の身長のことだ!」
「あ、すみません……身長なら165センチですよ」
「やはりな……」
俺が答えるとコル●ス先生はその場で、顎に手を当てて考え込む。
静まり返った下駄箱に、俺と教師が二人で見つめ合うから気まずい。
「水巻、お前は今なんの部活に入ってる?」
「え? 私は帰宅部ですよ」
「ほう……なら、更に好都合だな」
「なにがです?」
「お前さえ良ければ、女子バスケ部に入らないか? 身長165センチもある女子はなかなかいない。私が鍛えたらお前はうちの部のエースになれるだろうし、全国にも行けるだろう」
嫌だ嫌だ! この先生に鍛えられたら、鼓膜は破られるし生理も根性論でコントロールするんだろ?
転生してまで、そんな地獄を味わいたくない。
俺はコル●ス先生に「ぜんそく持ちなのでバスケというより、運動全般が苦手だ」と説明したら。
「お前、その身長なのにぜんそくだったのか!? もったいない! じゃあ、ぜんそくが治ったら、ぜひ女子バスケ部に来てくれ!」
と熱く語られたが、前世でも治らない病気なので安心して暮らせそう。



