殺したいほど憎いのに、好きになりそう


 久しぶりの中学校だと言うのに、初日から生理が始まるとはついてないな。
 ダルくてもう家に帰りたくなってきた。
 しかし、隣りを歩く優子ちゃんは終始笑顔でお喋りが止まらない。

「やっと藍ちゃんの生理が始まって嬉しいなぁ~! 次に始まった時もすぐに教えてね! 周期を合わせるから!」
「あの……どうやって合わせるの? 不可能でしょ」
「愛だよっ! その人への愛が大きければ、不可能な事なんて何もないんだよっ!」
 
 絶対無理だと思う。

 ~数時間後~
 
 俺が生理中だということもあってか、お友達の優子ちゃんが全力でサポートしてくれた。過剰なほどに。
 だから、隣りの席にいた鬼塚と接近することも許されなかった。
 鬼塚の方はこの前のスペースワールドの話をしたかったみたいだが……。

 3、4時限目の授業は体育らしい。
 ただし男子と女子は同じグラウンドで授業をするが、教師が別々になるらしい。
 やはり中学生となると、男女は別行動しないとダメみたいだ。
 平成初期とは言え、ある程度配慮はあったんだな……。

 男子生徒側はパンチパーマにサングラス姿の中年教師。
 最初、見かけたときはヤクザかと思った。
 一方で女子生徒は3クラス合同で授業することとなり、今年初めて見る教師だ。

「あ~ 今年からまた女子生徒の体育を担当とするになった! よろしく頼む」

 俺はセーラー服のまま、冷たいグラウンドの上で体操座りをしている。
 もちろん、スカートは砂で汚れるが命令なので逆らえない。
 友達の優子ちゃんもセーラー服で座ってるし、他にも何人か女子生徒がセーラー服で体操座りをしていた。
 他の女子生徒は、みんな白い体操服にブルマ姿だ。

 理由は全員、体調不良で見学扱いになっているから。
 生徒手帳に「生理のため」と書いて、目の前に立つ先生へ見せようと思ったのだが……。
 俺はあることに気がついて、身体が固まってしまう。

 この先生、本当に女なのか?
 髪型がベリーショートていうか、スポーツ刈りだし。身体は華奢だけど、背が高い。
 なにより、その顔つきだ。常に眉間に皺を寄せて、生徒たちを睨んでいる。
 生まれつき毛が少ないのか、眉毛もほとんどない。

 この顔を例えるなら、夜叉(やしゃ)……いや、あのマンガキャラにそっくりだ!
 ”黒い剣士”の黄金時代編に出てくる”コル●ス”じゃん!
 
「こ、コル●スだ……」

 俺の隣りに座っていた優子ちゃんが聞き返す。

「え? なんて言ったの?」
「あの人はコル●スでしょ? ”(しょく)”で死んだ男じゃん!?」
「ちょっと藍ちゃん……先生に聞こえるよ? それにあの先生は男じゃなくて女の先生」
「いや、どこからどう見ても男でコル●スでしょ?」
「何を言ってるの? 女性じゃなきゃ、お産できないでしょ? この前まで産休で休んでたじゃん」
「マジで? あの先生、本当に女の人なの?」

 目の前に立っている教師が女だと信じられず、大きな声で優子ちゃんに何度も質問していると、いきなりコル●ス先生が怒鳴り声を上げる。

「こらぁ! お前、なんで私語をしているんだ!?」

 その野太い声に恐怖した俺は背筋を伸ばす。気がつけば、コル●ス先生は俺のスニーカーに自身の靴をくっつけていた。
 恐る恐る、空を見上げてみるとコル●ス先生の顔が邪魔して、何も見えなかった。

「おい、お前。一年の何組だ? 名前は?」
「えっと……7組の水巻 藍です……」

 そう呟いた瞬間、コル●ス先生は「歯を食いしばれ」と言うので俺が反応に困っていたら……。
 パンッ! という音がグラウンドに鳴り響く。気がつくと、俺の首は左にいる優子ちゃんの方へ曲がっていた。
 目の前にいる優子ちゃんは「うわぁ……」と痛そうな顔で俺を見つめている。
 痛みは後からやってきた。前世で父さんにも叩かれたことないのに……。

「いいかっ! 私の授業では絶対に私語は許さない! あと、お前。どうせ生理で見学になりたいんだろ!?」
「……」
 
 恐怖から言葉が出ない。
 こんな理不尽な暴力は初めての経験だからだ。
 
 「いい機会だから、女子生徒は全員聞いておけ! 生理で見学、休むことなんて本来不要だ! 私の考えた特訓方法をお前たちも行えば、生理痛を必ず乗り越えることができるだろう!」
「はぁ?」

 元男でもある俺も思わず、ため息を出してしまった。

「私は本校の女子バスケ部の顧問をしているがな。特訓のおかげで全員生理を自在にコントロールできるようになった!」

 この先生。なんか、変な宗教に入ってないか……?
 その後もコル●ス先生が話す特訓方法とは、基本的に根性論であり、特訓方法というものなんてことない事。
 睡眠、食事、運動などであり、ナプキンも不要というものであった。
 じゃあ、どうやって生活すんだよ?