殺したいほど憎いのに、好きになりそう


「美のスキルをマックスって、どういうことだよ?」

 俺の問いに女神はクスクスと笑い始めた。
 他人事のように笑いやがって……。

『簡単な話ですよ。あなたには”究極の美”を与えたということです』
「は? 全然、説明になってないぞ?」
『いいですか? あなたが転生した水巻 藍という肉体もいつかは劣化するわけです。大食いなあなたがこのまま食べ続ければ、肥満体型の残念な美少女になるわけです。しかし、私の与えた能力が美少女を保つわけですね』
「た、保つってなにを……?」
『全てです。あなたは今後、他人と比べて老けにくい肉体であり、体重が増えることも痩せることもない。見た目が美少女であり続けるわけです』
「あ! だからチュロスをアホみたいに食べても太らないのは、そのチート能力ってことか!?」
『そうです。だっていくら美少女でも太ったら、見向きもされない存在になるじゃないですか。さすがにそれはかわいそうなので、チート能力を与えておきました』

 女神から教えてもらった俺の身体の秘密。
 確かに転生して数ヶ月経ったのに、全然体重は太らなかった。
 おかしいなとは思っていたけど、女神の仕業だったとは……。

『それでは引き続き、この並行世界をお楽しみください!』

 そう言うと鏡から光が消え失せ、女神がいなくなってしまう。
 そして、止まっていた時が動き始める。
 俺はずっと裸で女神と話していたので、すっかり湯冷めしていまい、くしゃみが出る。

「はっくしゅん!」

 その音に気がついたお姉ちゃんが脱衣所に入って来た。

「あんた、すっ裸で一体なにをやってたの? なんか鏡と話してなかった?」
「えっと……イメージトレーニング的なことをやってて」
「藍、悪いことを言わないから、早く病院で頭の中を検査してもらった方が良いよ」
「……」
 
  ※

 まさか転生しても、この世界でクソ女神に再会するとは思いもしなかったな……。
 でも、俺にもチート能力が備わっていたとは。
 美少女を保つ……ってことは、この肉体は老けにくいてことだよな?
 それはそれで、かわいそうな存在じゃないのか。

 自室にある大きなピンク色のドレッサーに映る自分の姿を見て、あることに気がつく。
 この前、鬼塚と遊園地でジェットコースターに乗った時、藍ちゃんの大きな胸が暴れまくってかなり痛かった。
 優子ちゃんが言っていたように、このダサいファーストブラを買い直すべきじゃないのかな?
 待てよ……下着なんかに金を払うより、お姉ちゃんから借りたらいいんじゃないのか。

 そう思った俺は自室から出て、隣りにある部屋の扉をノックしてみる。
 中かから「どうぞ~」と言われたので、さっそくお姉ちゃんに「ブラジャーを貸して!」と頼むと、眉間に皺を寄せて睨めつけてきた。

「あんたさぁ……私にケンカ売ってるの?」
「へ?」
「私と藍じゃ、サイズが違いすぎるって言ってんの」
「でも、ブラジャーも服とかと同じで、SMLのスリーサイズぐらいなんでしょ?」
「バッカじゃないの! あんた、それでも女? ハンバーガーじゃないんだから……。大体、あんたみたいなデカ乳が私のサイズに合うわけないでしょ!」

 そう言うとお姉ちゃんは、思いきり俺の左胸を握って揉みつぶす。

「いたた……お姉ちゃん! やめて、”クーパー靭帯(じんたい)”が切れちゃうって……」