第三章「メン・イン・ブラック──不可思議な行動に取り憑かれた人たち」






      1

 仕事をしながら、選手入場のライブ中継を横目(よこめ)でちらちらと眺めていると、ふいにスマートフォンにメッセージが着信した。
 差出人は、以前取材をさせてもらった大学生・土井(どい)勇斗(ゆうと)くんからだ。
 それはこんな内容だった。

〈お久しぶりです その後UFO関連で新展開ありましたか? 最近僕はバイトを始めたんですが バイト先の先輩がUFOを目撃してたことが発覚しまして しかも阿刀川先生が目撃したヤツにそっくりみたいなんです!〉
〈すごくないですか? 残念ながら正確な日時は覚えてないみたいなんですけど これは絶対に先生に教えたほうがいいと思ってご連絡させていただきました〉

 すごくないですか?の部分から勇斗くんの興奮が伝わってくるようだった。
 一読後(どうしよう……)と私は思った。
 新連載は既に始まっている。今は作品世界にどっぷりと()まっているので、思考に不純物を混ぜ込みたくないのだ。かといって、ひと回りも年下の大学生がわざわざメッセージを送ってくれたのに無碍(むげ)にするのも気が引けた。
 私は本心を見透かされないように注意深く、具体的な形や目撃した場所やシチュエーションについての質問を送信した。すると、勇斗くんは着信を待機していたかのように即座に返事をくれた。
 それによると、「バイト先の先輩」が不思議な物体を目撃したのは二〇二〇年七月下旬。場所は豊島(としま)区にある立教大学キャンパスとのことだった。
 彼女(先輩は女性らしい)は立教大学の学生で、当時早朝のジョギングを日課にしていた。アパートは小竹向原(こたけむかいばら)にあるのだが、小竹向原〜(かなめ)町〜立教大学キャンパスまでの道が距離的にちょうどよく、毎朝のようにアパートを出て大学の裏門まで行っては折り返す、といったトレーニングを続けていたようだ。
 ある朝、彼女が走りながら大学の建物に何気なく目を向けたところ、上空に何かが浮かんでいるのに気づいた。それは言葉で説明できないカタチをしていた。

〈だから絵に描いてもらったんです そしたら螺旋?みたいなシュールな幾何学図形で……以前にメールで教えてもらった先生の体験談を連想しました〉

 もしかしたら。二つの目撃報告は同じ物体を見た可能性がある……のかもしれない。一回目が二月の石神井(しゃくじい)川上空に出現し、二回目が七月後半の立教大学キャンパス付近に出現したのかもしれない。
 勇斗くんはそんなふうに考えたようだ。

〈阿刀川先生! もし良ければいちどウチの先輩に会ってみませんか? 先輩も興味があるらしくて先生の話を聞きたがっているんです お仕事忙しいとは思いますが気が向いたらでいいのでお時間いただけるとうれしいです!〉

      2

 翌日の午後。私は電車に揺られて池袋(いけぶくろ)に向かっていた。勇斗くんおよび「先輩」が通う立教大学で待ち合わせをして話を聞くためである。
 UFOに対するモチベーションは低下していたのに、なぜ話を聞く気になったのか自分でも不思議だった。自己分析すると、きっと私は「UFOが誤認であってほしくない、本物であってほしい」という(おも)いが強すぎたのだろう。だから懐疑主義者の皆川氏と話をして気持ちが()えてしまったのだろうし、新しい情報を得ることで、ちょっとした逆襲をしてやりたいと無意識に考えていたのだ。
 そんな子供じみた()()いのせいで、私はこの後とんでもなく厄介な事件に巻き込まれてしまうのだが。

 二〇二一年の夏は猛暑続きで、電車で池袋に降り立った時間にはおそらくその()の最高気温をマークしていた。東武(とうぶ)百貨店地下から西口へ出ると、駅前広場のタイルからムワッと熱気が立ちのぼっており、息が苦しいほどだった。
 閑散(かんさん)とした立教通りを日蔭を選びつつ辿(たど)っていくと、大学正門に若い男女の姿が見えてきた。どちらも日傘を指していて、炎天下の中で陽炎のように立っている。大学は休暇中なのか他に学生の姿は見当たらず、あの二人が勇斗くんたちなのだろうかと私は駆け寄って、
「勇斗くん?」
 と声をかけた。
 すると日傘を指した男子が振り返って「あ。先生!」とパッと顔を輝かせたので、やっぱりそうだったと安心した。
「早かったんだね。ごめんね、ここ暑かったでしょう」
 炎天下の路上は(ねっ)したフライパンの上に立っているみたいだった。どこかの店を待ち合わせ場所に指定すればよかったと後悔しながら言うと、
「いえ僕らも来たばかりですから」と相手はこたえはあくまでも(さわ)やかだ。「それよりもお忙しいのに、わざわざ大学までご足労いただいてすみませんでした」
「ううん問題ないよ。とりあえず暑いからさっそくどこか店に入ろうよ。お店の選択はそっちに任せるから──」
 私は喋りながら相手の顔を見た。ところがその時、突如として言葉にならない違和感におそわれ、何かがおかしいと思った。頭のなかに「?」マークが浮かび、急速に膨れていく。もう一度相手の顔を見て、「?」は「!」に変化した。
 なんということだろう──日傘を指した男子は、勇斗くんではなかったのだ。
 待ち合わせ場所にいた男女の二人組だし、背格好(かっこう)が似ていたから勘違いしてしまったようだ。やってしまった、と思った。
 しかも会話が成立したことから察するに、相手も私を別の誰かと間違えているらしい。きっとマスクがいけないのだ。顔が半分隠れているものだから、この奇跡的なマッチングが生じてしまったのだ。
 私はとりあえずマスクを外して謝罪した。
「……あははごめんなさい。まちがえました。人違いだったみたいです」
 すると相手はきょとんとして「どうしたんですか阿刀川先生?」と言うではないか。
 阿刀川先生と名前を呼ばれたことで、私はあれれ、と思い「……えっ。あの、私のことを知ってるの? もしかして土井勇斗くんの関係者?」
「やだなぁ。勇斗は僕ですよ」と男子はマスクを外した。「先生、忘れちゃったんですか。ちょっと悲しいです」
 私は自分の笑顔が強張っていくのを感じた。
 靴底を通してアスファルトの熱が伝わってくるほどの暑さだというのに、じわじわと背筋につめたいものが()(あが)ってきた。
「……誰?」思わず口走ってしまった。「ごめん。何が起きてるのか分からないんだけど、あなた土井勇斗くんじゃないよね? 私が知っている人と顔とか雰囲気が全然違うんだけど」
「えぇえ……そんなこと言われても。僕、勇斗ですけど……?」
「……あの。どうかしたんですか」と、ここで連れの女子が割り込んできた。それまで傍観していたが、私たちが揉めはじめたので不安になったのだろう。
「よくわからないんですけど、彼は土井勇斗くんですよ?」
 と連れの彼女ははっきりと言った。
 意味が分からなかった。
 そんなはずがないのだ。あきる野のファミレスで、勇斗くんはドリンクを飲むためにマスクを何度も外していたから顔を知っている。眼の前にいる日傘男子は、明らかに別人だ。いくら私でも間違うはずがないのだ。
「身分を証明できるものを何か持っている?」と私は尋ねた。
 すると男子は「ええ。あります」と学生証を取り出した。
 見せてもらう。学生証には姓名と顔写真が記載されているのだが、信じられないことに名前欄には「土井勇斗」と記されていた。偽造された物とは到底思えなかった。二人が口を揃えて言うように、彼は本当に土井勇斗らしいのだ。
 呆然としていると、不毛な会話劇を見せられていた女子が、(しび)れを切らしたかのような口調で言った。「ねえねえ。とりあえず話の続きは場所を移してからにしない? ここ暑いしさ……」
「そうですね。じゃあ適当に店に入りましょうか」
 男子も同じくうんざりしたように同意した。
 私は状況についていけず、クラクラしながら無言で立っていた。
 まるで映画「ボディ・スナッチャー」のようだった。ある日、正体不明の何者かが人間とこっそり入れ替わり、それに気づいた人が次のターゲットに選ばれて、ひとりまたひとりとニセモノが増えていくのだ。あきらかに別人になっているのに、ニセモノたちは結託して、この人は本物ですよと断言する……。
 現実にそんな怪物がいるはずないと思うが、気がかりなのは、本物の勇斗くんのことだった。もし別人と入れ替わっているのだとしたら、本物はどこへ行ってしまったのだろう?
 談笑しながら日傘をくるりくるりと回して遊んでいる二人の男女が不気味に見えてきた。暑さで頭をやられて朦朧(もうろう)としているせいもあるのだが、このまま二人についていったら、もう帰ってこれない気がした。
「あ。あのさ、わるいんだけど……」
 私は体調不良を口実(こうじつ)にして「今日は帰る」と申し出ようとした。
 ところがその時。
「ちょっと待って」と突如(とつじょ)男子がすっとんきょうな声を出したのだ。
「ねえちょっと。あれなんだろう?」
「えっ何。どうしたの?」
 びっくりしている女子の肩を、彼はいきなり(つか)んで、
「見てくださいよ! 空、空! あそこに何か飛んでいませんか!」
 と叫びながら、斜め前方を指さした。南の方角、立教大学の建物が連なっている方角を。
 雲ひとつなく晴れ渡った空はまぶしくて、私は顔の前で手(びさし)しなくてはならなかった。指示された方角に視線を遣る。赤煉瓦造りのモリス館と、巨大な杉の木がまず目に入る。その奥にある校舎の上空に、キラキラ光るものが飛んでいた。
「UFO! UFO! あれってUFOじゃないですか!」
「えーっ。本当だ! 何だろうあれ?」と女子が大声を張り上げた。
 二人は騒ぎながら、スマートフォンで撮影を始めた。
 私もスマートフォンを出し、震える手で空に浮かぶ謎の物体に向けてレンズを向けた。それの形状は銀色もしくは白で、アルファベットのCの文字に見えた。風船などではない証拠に、ゆっくりと横に旋回(せんかい)運動をしている。
 動きは最初こそゆっくりだったが、急に不規則な上昇や下降、湾曲するような飛行をするようになり、スマホ画面に(とら)え続けるのが難しくなった。
 と、建物の陰に消えてしまい、姿を現さなくなった。時間にして二分か三分くらいだろうか。撮影した動画を確認してみると、小さな点ではあるが、未確認飛行物体の不規則な動きがちゃんと撮れていた。
(UFOの撮影に成功してしまった……)
 内心ドキドキした。
 私だけでなく、隣の二人は異様な興奮に()かれていて、その場から一歩も動けない様子だった。

      3

 その日はそのまま解散することになった。
 勇斗くんを(かた)る男子は「ちゃんと話し合いましょう」としつこく引き止めてきたが、誘いを振り切るようにして帰宅することにした。
 駅のホームで電車待ちをしながら、私はすかさずSNSアプリを起動して、宮地(みやじ)くんのアカウントにメッセージを送った。長文になってしまったが、さきほど見たものをすべて伝えた。
 宮地くんからの返事はこうだった。
〈阿刀川さんと会うって話は聞いてました でも待ち合わせ場所に来たんならソイツが勇斗本人なんじゃないんですか?知りませんけど〉
〈でも顔が別人だったの!〉私は反論した。〈マスクも外してもらって確かめたから間違いない。あれは勇斗くんじゃなかったよ!〉
〈そんなこと言われてもじゃあ誰なんだって話になるでしょ 勘違いってことはないですか? 俺も他人の顔覚えるの苦手で ひさしぶりに会うとコイツこんな顔だっけってなりますよ そもそも阿刀川さんアイツと一度しか会ってないですし〉
 確かにそれはそうだ。
 でも(別人だった……)という思いが捨てきれなかった。
 ふと、あきる野で取材した時にボイスレコーダーで記録していたことを思い出し、あの時の音声データが証拠にならないだろうか?とメッセージで送ると、
〈わかりました そこまで言うならまたあの時のメンバーで集まりましょう その時にボイレコ持ってきてもらって聞き比べしましょうよ〉
〈ありがとう。でもごめん、しばらく仕事が忙しくて時間とれないと思う〉
〈そうですか じゃあ今度時間が取れそうな時ですね それより勇斗からさっき連絡きたんですけどUFOみたんですか? 先生と会うことは知ってたけどまさかそんなことになるなんて思わなかったな〉
〈うん。まぁ飛んでたのは確かだよ〉 
〈スマホで撮影したみたいだし動画の良いネタになりそうです 開設はもうすぐですので良ければみてくださいね チャンネル名はオカルテットです〉
 わかったありがとうとメッセージを送り、スマートフォンの電源を落とした。
 考え事をしながら、ホームにやって来た電車に乗り込んだ。
 以前何かの本で読んだことがあるのだが、脳障害の一種に相貌失認(そうぼうしつにん)というものがあるそうだ。先天的な場合もあるが、後天的には脳腫瘍や血管障害が原因で、人間の顔を見ても表情や人物を識別(しきべつ)できなくなるのである。
 もしかしたら私の脳に異常があるのではないか……。
 電車の揺れのせいか吐き気がしていた。気持ち悪さは電車を降りてからも収まることがなく、胸の中に居座っていた。
 帰宅後感染対策のためにシャワーを浴びたが、気分は落ち着くどころか胃に鉛の塊でも仕込まれたかのような重苦しさに変化した。
 しばらくして私は思い切ってある人物とコンタクトをとることにした。

      4

「本当に申し訳ありません。お休みなのに突然連絡したりして」
「構いませんよ。どうせオリンピックのニュース観ているだけでしたから」
 ノートパソコンの画面の中。起動したオンライン会議アプリのウィンドウに映された皆川雄一氏は、七分袖の作務衣(さむえ)という涼しげな姿だった。ネットに繋いでいる場所は前回と同じく自宅らしく、背景の小物に見覚えがあった。
「では。さっそくですが相談というのをうかがいましょうか。不可解な現象に遭遇したということでしたが?」
 と皆川さんは首をかしげた。
 私は恐縮しながらうなずき、
「はい。ちょっと意見を聞かせてほしいんです」
 と言って、今日の午後に体験した出来事を語り始めた。
 皆川さんは話が終わるまで黙って聞いていた。
 話が終わると、しばらく考えてから、
「相貌失認……ですか。不安でしたらやはり病院に行くのがいちばんだと思います。ただ、専門家じゃないのであまり適当なことは言えないんですが、今は僕の顔を見分けられているんですよねぇ?」
「……はい。それは大丈夫です」
「だったら違うんやないかなぁ、という気はしますけど。相貌失認というのは人間の顔から情報が読み取れなくなる障害だと聞いたことがあります。相手が笑っているのか泣いているのか分からなかったり、性別や老若の区別がつかなくなったり」
「さすがにそこまでじゃないですね」
「気休めやないですけど、阿刀川さんは大病を(わずら)って、御自身の身体に対して不安を感じやすくなってるのでは? なので相貌失認を疑ってしまったけど、僕は今回の件は、もっとシンプルに考えたほうがいいと思うんです」
「といいますと?」
「本当に別人だったんでしょう、土井勇斗くんは」
 皆川さんはあっさりと言った。
「で、でも。学生証も見せてもらったし、一緒にいた女の子も土井勇斗に間違いないと断言したんですよ?」
「でもそれなのに阿刀川さんは別人だと思ったわけですよね? だったら考えられる可能性は絞られてくるじゃないですか」
 そうなのだろうか。私にはよくわからなかった。
 一体どんな可能性があるのだろうか、と考えていると、皆川さんは「……ところで」と言った。
「例のボイスレコーダーのデータって……送ってもらうことは可能でしょうか。もしかしたら今回の件のヒントが眠っているかもと思いまして」
「データですか。かまいませんけど、三時間近くありますよ?」
「全部送ってください、聴いてみたいんです。……あ、そうそう、阿刀川さんは今日は何時頃にお休みです? 三時間後にまたビデオ会議ってできますかねぇ?」
「この後は仕事を進めようかと……って本当に全部聴くおつもりなんですか?」
 私が言うと、皆川さんは「聴きます」と真面目な顔でうなずいた。
 ではデータをよろしくです、と接続が切れてしまった。

 それから三時間後。
 私はキッチンでふだんより濃い目のコーヒーを()れて仕事部屋に戻ってきた。
 時計を見ると深夜一時だった。
 草木も眠る丑三(うしみ)つ時……には多少早いが、こんな真夜中にオカルトめいた不思議な事件について語り合うというのは、ミステリー小説の一場面に迷い込んだような気がして自然とドキドキとした。
 約束の時間からやや遅れて、皆川さんはオンライン会議の画面にあらわれた。
「どうもおまたせしました。ごめんなさい、眠気ざましに風呂に入っていたらつい考え事を始めてしまって、遅れてしまいました」
「いえいえ。私事にお付き合い頂き、こちらこそすみません」
「データ、ありがとうございました。興味深かったです」
「そうですか。で、何かわかりました?」
 私は前のめりになって訊ねる。
「まああくまで仮説ですけど、個人的見解はあります」
 皆川さんはそう前置きして、メモ帳を手にした。
 背広のポケットに入りそうな、アドレス帳くらいのサイズのメモ帳だ。ボイスレコーダーのデータを聴きながら覚え書きをしたのだろう。
「まず今日……いやもう昨日か、待ち合わせ場所にやって来たという青年ですが、顔写真つき学生証という信頼できる物証がある以上、本人に間違いないでしょう。その人物こそが土井勇斗なのだと思います」
「はい。まあそれはそうですね……」
 私は同意した。
 さすがにあんな精巧な身分証を一般人が偽造できたとは思えない。
 だが、たしか三時間前、皆川さんは〝別人だった〟と発言していたはずだが……。
「じゃあなぜ顔が違ったんですか?」
「そこですよね。昨日阿刀川さんが会ったのが土井勇斗本人なのだとしたら、考えられるのは、もうこれしかないと思うんです」皆川さんは神妙な顔で言った。「五月の連休に、あきる野で会った人物がニセモノだったんです。あっちが土井勇斗ではなかった。だけど初対面で土井勇斗を名乗られたら、阿刀川さんにはわからないし、信じるしかないですよね?」
 なるほど……とはならなかった。
 理屈は正しいのだが、その推理には大きな問題点がある。
「待ってください。たしかに一対一で会ったのならあり得そうな話です。ですが、あの時は他に二人いたんですよ? 彼らは小学生の頃からの友人なんです。勝手に他人の名まえを名乗ったら、すぐにバレるんじゃないですか?」
「それなら簡単ですよ。宮地くん、安達くんもグルだったんです。三人で阿刀川さんを(だま)していたんですよ」
 そんなバカな。
 私は反論しようと論理の穴を探した。だが頭のなかがぐるぐると廻り始め、思考をうまく組み立てられなかった。
 ……最初から三人は私を騙そうとしていた? あきる野で会ったのは、宮地くん、安達くん、正体不明の誰かの三人で、昨日の午後に立教大学の正門で会った人こそが、本物の土井勇斗だった……。それが真相なのだろうか?
「でも、待ってください。昨日会った男の子なんですが、私のことを知っていましたし、初対面という雰囲気じゃなかったですよ?」
「当然本物の勇斗くんもグルです。彼らは四人組だったんじゃないかなと思うんです。じつはボイスレコーダーを聴いていて引っかかったことがありまして」
 と、皆川さんは無造作(むぞうさ)に髪をなでまわした。
 手元のメモ帳に視線を落として、
戸吹(とぶき)スポーツ公園ですか、テニスコートもある本格的な運動公園みたいですねぇ。調べてみたら、テニスコートの使用料は二時間借りて1500円でした。割り勘するとひとりあたり500円ですけど、これ小学六年生にとっては出費だと思いませんか。しかも三人で借りるって、コスパ悪くないですか。僕が彼らやったら、あとひとり誘います。それやったら頭割りの料金が多少安くなりますし、ダブルスで試合もできますから」
「うーん。まあ、三人でテニスってのはやりにくそうですけど……」
「ですよね。二人が試合しているあいだ、ひとりは見ているだけになっちゃいますから。それから他にも気になったことがあるんです」
 皆川さんは続けた。
「宮地くんと安達くんが同い(どし)で、勇斗くんが二つ下ということでしたが、僕の経験では、小学生の頃は、年下の子と遊ぶことってあまりなかったように思うんですよねぇ。基本的には同級生とばかり遊んでました。今の若い子は違うんかなぁ?と思いますけど、最初に引っかかったのが、彼らの関係性でした。そういう視点でボイスレコーダーを聴いていたら、あることに気づいたんです」
 それは、名前の呼び方だという。
 私は気にも留めなかったのに、一体何に引っかかったのか。
 皆川さんは話を続ける。
「宮地くんや安達くんはお互いを苗字で呼ぶのに、勇斗くんだけは下の名前なんですよね。ボイスレコーダーを聴く限りでは、宮地くんと安達くんの下の名前わからなかったです」
「それはまあ……勇斗くんだけ年下だから……」
「うん。僕もそう思います。でも勇斗くんだけ下の名前呼びは、他にも理由があると思うんです。ほら、よくあるでしょ。同じ組織内にたとえば鈴木さんが複数いたりすると、区別するために下の名前を使うことが。べつに親しいわけでもないのに、鈴木さんだけ下の名前で呼ぶことになっちゃいますよね」
「つまり、土井が、二人いたということですか……?」
「はい。可能性としてはこうです。最初に友達だったのは、宮地くん、安達くん、土井くんの三人だった。三人組で遊ぶうちに、土井くんの弟も混ざりたいといって遊びについてくるようになった。そして土井弟だけを区別するために下の名前で呼ぶようになった……」
 なるほど。ここまで聞いてようやく私も理屈を理解できるようになった。
 整理するとこうだ。
 五月、あきる野のファミレスで会ったのは宮地、安達、土井(兄)だった。彼らは何かの理由で私を(だま)すつもりで土井(兄)を、弟の勇斗であるように見せかけた。初対面である私は疑うことなくそれを信じてしまう。
 そして昨日、私を呼び出したのは、土井(弟)である勇斗くん。
 当然私は別人であることに気づいてパニックになる。
 なぜそんな手間(ひま)のかかる小細工をしたのか。
 実は心当たりならある。
 皆川さんの話を聞くうちに、そのことに気づいてしまった。
「もしかしたら。ユーチューブのネタにしようとしたのかも……」と私。
「ユーチューブ、ですか」
「ええ。彼らはオカルト系のチャンネルを開設すると言っていました。そのチャンネルのためにドッキリでも仕掛けたんじゃないでしょうか……」
 土井兄と土井弟が同一人物を演じながら入れ替わって、それに阿刀川恵は気づくことができるでしょうか、とかそういう企画だ。おそらく。
 そんなバカバカしいことを本気でやるか?と問われたら、大人である私ならリスクを考慮して即座に却下(きゃっか)するだろう。だが相手は大学生だ。コロナ禍でいろんな楽しみを奪われて、ストレスも溜まっていることだろう。若いエネルギーを持て余していることだろう。そんな彼らのところへ、UFOの話が聞きたいなどといってオバサンがやって来たら、イタズラのひとつも仕組んでみるかもしれない。
「今、思い出したんです」と私は言った。「宮地くんが言うには、彼らのチャンネルはオカルテットという名にするそうです」
 オカルテット。
 おそらくオカルトとカルテットを組み合わせた造語だろう。
 そしてカルテットとは「四重奏」という意味である。
「……きっと宮地くんはヒントを出したつもりだったのでしょうね」
 皆川さんはため息まじりに言った。

      5

〈……本当にごめんなさい 非常識なことをしたと今では反省しています 阿刀川さんを不愉快な気持ちにさせてしまって 自分たちの内輪のノリに巻き込んでしまって どう償えばいいのかわからないけど 心から謝罪します〉
 後日。SNSのダイレクトメッセージで宮地くんを問い詰めたら、こんな謝罪文が返ってきた。やはりユーチューブの動画ネタにするつもりだったらしい。
 彼はいろんなことを白状した。
 人間がいかに(だま)されやすい生き物であるかの実験だったこと。あきる野で会ったのは、土井勇斗の兄である健斗(けんと)だったこと。そして弟の勇斗も、となりのボックス席にいて、私たちの会話を盗み聞いていたこと。
 バイト先の先輩という女子も嘘の存在だった。あの女子は宮地くんの彼女で、芝居に協力しただけである。UFOも見ていない。それらしい目撃談をでっち上げただけだった。そして立教大学正門で会った日、会話をこっそり録音していたらしい。
 段取りとしてはこうだ。
 呼び出されてのこのこやって来た私にニセモノを会わせる。別人であることに気づいてパニックになったところで近くの喫茶店につれていく。その店では宮地くんたちが待ち構えており、私が来たところでネタバラシをする……。
 脱力するとは、このことだろうか。宮地くんの告白文を読んだ私は、へなへなとその場にしゃがみこみそうになった。メッセージを受け取ったのが外出先だったのでグッとこらえたが、もし他人の目がなければ(ひざ)から崩れ落ちていただろう。
〈……でも信じてください UFOは僕らの仕業じゃないです そんなのは打ち合わせになかったんです〉
 あの日。立教大学上空に未確認飛行物体があらわれたのは、彼らにとっても想定外の事件だったらしい。そのせいで「喫茶店につれていってネタバラシをする」という段取りがうやむやになってしまったのだ。
 そういう意味で、あのUFOは私にとっては救世主だったといえそうだ。
 バカバカしくなった私は彼らの謝罪を受け入れたが、今後はもう関わることもないと宣言して、連絡を断つことにした。
 そして迎えた二〇二一年八月三日。七月に開幕した東京オリンピックは佳境を過ぎ、新型コロナウィルス感染拡大のせいで、世間ではふたたび自粛ムードが戻りつつあった。私は週に数回の外出以外、ほとんど家に()もりきりの生活をしていた。
 八月三日のその日は食材の買い出しの日で、暑さのやわらいだ午後五時頃にマンションを出て、店にぶらぶらと歩いていった。スーパーで買い物を済ませ、いつもなら運動不足解消のために遠回りコースで帰宅するのだが、この日はまっすぐマンションに帰ることにした。
 というのは、じつはスマートフォンを持ってくるのを忘れたのだ。
 誰かと約束があるわけではないし、何かの連絡があっても折り返せばいいだけなのだが、スマートフォンを持たずに外にいるというのは、なんとなく不安になるものだ。
 いつもより早い帰宅。
 あとでまた外に出てちょっとだけ散歩しようなどと考えながら、自分の住む階に向かった。私の部屋は共用廊下のいちばん奥にある。玄関のドアが見えてくるにしたがって、違和感がおそってきた。
 ドアに異常があるのだ。
 私は足を早めた。自分の部屋の前に立つ。ドアの(わく)は金属のフレームなのだが、それがいびつに(ゆが)んでいた。ちょうど鍵穴の真横あたりで、鍵のボルトがねじ曲がって露出していた。ドアの表面には痛々しいひっかき傷もあった。
 唖然としてしまった。
 強盗、空き巣、などの単語がつぎつぎに浮かんでは消える。
 警察に連絡しなければならない。
 ふと気づくと、床にエコバッグが落ちている。手の力が()けて、落としてしまったのだ。(ショックを受けた人間って本当に物を落とすんだ……)と頭の片隅で考え、職業病のせいで(この呆然とする感覚をせっかくだし覚えておこう……)などと思ったりした。
 そして気づいた。通報したくともスマートフォンを持っていないことに。
 まったくどうしてこういう時に、こういう間抜けな事態が発生するのか。
 家を出る時に、なぜ持ち物を確認しなかったのか。
 後悔してももう遅い。
 私にできる選択肢はふたつ、一度この場を離れて、誰かに助けてもらう。あるいは、どうにかしてスマートフォンを手に入れて、助けを呼ぶ。
 そっと耳をそばだてると、音はしなかった。破壊されたドアに顔を()せ、神経を聴覚に集中してみたが、やはり室内に人間の気配はなかった。
 泥棒は、盗むだけ盗んで立ち去ったあとなのだろうか。
 こうなってくると被害状況が気になってきた。お金はまだいい。通帳やカード、電化製品や衣類、そのあたりも盗まれても取り返しがつく。でもパソコンだけは、その中身のハードディスクだけは、失われたら取り返しがつかない。焦りがいよいよ抑えきれなくなってきた。泥棒よ金なら持っていけ、でもパソコンにだけは手をつけてくれるなよ、と念じつつ、私はドアを開けて室内に入っていった。
 意外なことに……室内は荒らされていなかった。
 ドキドキしながら()き足で進んでいき、仕事場にしている洋間のドアをそっと開く。もう気分はすっかりホラー映画の主人公だ。
 デスクの上に……ノートパソコンはあった! それに充電ケーブルを()したままのスマートフォンも。
 私は飛びつくようにスマートフォンを拾い上げた。すぐさま警察に通報する。自分でも笑えるほど指がふるえていて、何度も番号を間違えた。ただ110と押すだけなのに。やっと電話をかけるとオペレーターが応対に出た。状況を説明しなければならないのだが、自分の声が緊迫感にかけていて、イタズラ電話と思われないかと気が気じゃなかった。すぐに警察官を派遣(はけん)するとオペレーターは言った。もし不安ならこのまま通話を続けてもいいと言ってくれたが、それは大丈夫と断った。
 電話を切った後、静まりかえった仕事部屋で私はしばし魂のぬけたような状態になった。緊張のせいで過剰(かじょう)に力を込めていたために、一度気を緩めると今度は緩みすぎてしまったのだ。
 でももう安心だ。五分も()たずに最寄りの交番から警察官が駆けつけてくれるだろう。私はそれを待っていればいいのだ。
 それにしても──泥棒はなぜ何も盗んでいかなかったのか。
 私はぼんやりと室内を見回した。
 ふとデスクの上に、見慣れない紙袋が置いてあることに気がついた。
 それは某有名コーヒーチェーン店の紙袋であり、この店は注文の仕方が独特なので、あまり積極的に利用したことがなかった。だから、こんなものが家にあるはずがない。なぜこんなものがここにあるのか。
 私は「ヒィイ」だか「ヒャァア」だか忘れたが、奇声を発してよろめいた。
 何者かが侵入したという証拠をまざまざと見せつけられてしまったのだ。
 しかも紙袋の中身がちらりと見えていて、それはどうやら市販の食品のようだ。
 勇気を振り(しぼ)って、もう一度紙袋を覗いてみる。
 やはり食品だ。それもレトルトの、保存がきくタイプの。カレーのパウチ。おかゆのパウチ。経口補水液のペットボトル。ゼリータイプの栄養飲料などなど。
 私はもう一度「うぇえええ」と声を()らした。
 何なのだろうかこれは。ラインナップだけ見れば保存食の差し入れのようだが、友人知人から貰うならともかく、何者とも知れぬ侵入者が気遣いや優しさのようなものを匂わせてくるのは、とにかくもう気持ちわるいとしか言いようがない。
 私はキモチワルイキモチワルイ!と声を限りに叫んでしまった。
 もうとてもじゃないが、こんな部屋にはいられない。
 マンションの玄関で警察官を待つことにして、仕事部屋を出ると、リビングを通り抜けた。バスルームやトイレのドアが並んだ廊下を足早に通り過ぎようとした時、ふとどこかから「ゴトッ」という物音が聴こえた。
 それは誰かが壁に身体をぶつけた音のようだった……。
 あるいは何か硬いものが床に落ちた音のようでもあった……。
 音は、トイレから聴こえた……気がした。
 まるで誰かがこの中にいるみたいな音だった。
 私は、まさかと思いながら、ドアノブを(つか)み、ゆっくりと慎重に開いた。
 人生で、これほど大胆だったことはない。
 だけど、こんなところにいるはずがない、と思ったのだ。
 だってそうだろう。いるはずがないのだ。こんなところに。
 トイレのドアは外開きで、十センチほど開くと、隙間から体温よりわずかに高い温度の空気がふわりと流れでてきた。隙間(すきま)に片目をあてるようにして、中を見た。
 男性がひとり、便座に腰掛けていた。
 ロダンの考える人の彫像のようなポーズで、無機物に変化してしまったかのようにぴくりとも動かなかった。ドアの隙間から覗く私に気づいた風もなく、まるで最初からマンションの備品として存在していたかのように、ただただ座っていた。
 私は開いたドアの隙間を、開いた時とまったく同じ慎重さでゆっくりと閉じた。

      6

 トイレで「考える人」になっていた不審者は、土井健斗(けんと)であった。
 あきる野で会った、気(よわ)そうな兄の方である。
 彼は駆けつけた警察官によって現行犯逮捕され、勾留(こうりゅう)されることになった。彼のしたことは冗談では済まされない。前科のつく歴然とした犯罪行為だ。罪状は、金品を盗んだりしたわけではないので、住居侵入罪および器物破損(きぶつはそん)罪となる。
 一週間経った八月一〇日。私は都内にある喫茶店に出向くことになった。
 相手方の弁護士と面会し、示談の話し合いをするためである。
 店に入ると見知らぬ中年の男女も同席していて、弁護士によれば土井健斗の両親とのことだった。彼らは私の顔を見るなり深々と頭を下げて、息子がどうしてあんなことをしたのかわからない、と泣きながら言った。
 実際、そのとおりだろうと思う。わけのわからない事件だ。
 彼の行動は意味不明な部分が多い。リスクを犯して不法侵入して、物を盗むわけでもなく、ただトイレの便座に腰かけていたのだから。何がしたかったのだろうと検察でなくても首をひねるというものだ。勾留後の供述(きょうじゅつ)もあやふやらしく、動機は不明のままだった。
 ただ、供述によっていくつか判明したこともあった。
 たとえば、土井健斗がどうやって私の住んでいる家をつきとめたのだろうと不思議だったのだが、弁護士はその疑問にこたえてくれた。
「七月二十三日に大学正門前に呼び出した際に、あなたを尾行したらしいのです。それで家を知ったのです」。
 立教大学の正門前でUFOを撮影したあの時、すぐ近くに土井健斗もいた。身を隠して様子をうかがい、帰宅する私をこっそり()けた。マンションの場所を把握すると、本当にそこに住んでいるのか、何度か確認に訪れたようだ。
 部屋番号については、過去のSNSの投稿から特定したらしい。
「こうした手口によって個人情報を取得するケースは増えているんです」と弁護士は言った。「画像から読み取れる情報は、われわれが思っている以上ですから」
 私はライフログのつもりで身辺の写真や目についたものの写真をネットにアップしていたが、ストーカーからしてみれば(あたい)千金のお宝だったことだろう。ベランダから撮った写真もあったと思う。土井健斗はその写真からわが家が角部屋であることや、建物の見える範囲から階数を割り出したのだ。
 デスクの上に放置されていた紙袋の謎もとけた。
 あれはマンションのオートロックを突破するために使ったらしい。
 彼はあの日、レトルト食品の詰まった紙袋を(たずさ)えてマンション入口で張り込み、通りかかった住人を呼び止めてこう言ったのだ。
〈大学の友人がコロナに感染したらしいのだが、中に入れなくて困っている。何度電話をかけても寝ているのか出てくれない。せめて物資をドアの前に置いていきたいので、オートロックを通らせてもらえないだろうか?〉
 呼び止められた住人はあっさりと通してくれたそうだ。 
 いくらハードウェアのセキュリティを確保しても、ソーシャルハッキングによって崩されてしまう典型例だと思う。
 だが、私はその住人のことを責められない。
 土井健斗の見た目は、真面目な大学生そのものなのだ。炎天下、友人のための補給物資を持ってマンションに入れずに困っている男の子を見たら、私だってかわいそうになって通してしまうかもしれない。新型コロナウィルスという共通の敵も、同情にひと役買ったことだろう。
 まんまとオートロックを突破した土井健斗は、バールを使ってドアフレームを破壊し、室内に侵入した。その後の彼の行動は……よくわかっていない。本人もほとんどおぼえていないらしい。なぜトイレにいたのかもわからない。
 こうして犯行の手口を書き連ねてみると、かなり計画的な気がする。
 知り合いの漫画家からは、示談交渉に応じないほうがいい、と忠告されていた。へたに甘やかすと、悪質なストーカーになりかねないと言うのだ。もしストーカー化した場合、過去に刑事裁判を受けていれば警察の対応も変わってくるらしい。
 だが私は、土井健斗はストーカー化しないだろうと予想していた。
 彼がなぜあんなことをしてしまったのかと誰もが不思議がっていたが、きっと本当に動機などないのだろう。
 なぜかやってしまった。そういうことなのだ。
 不起訴処分を()う嘆願書にサインをした後、弁護士は一通の手紙を取り出して、私に見せた。「じつは健斗くんから阿刀川さんに渡してほしいと頼まれて、手紙を預かっているのですが。どうしましょうか。受け取りますか?」
 是非もなかった。
 私は受け取ることにした。
 帰宅後、さっそく封を開けて中身を読んでみた。
 手紙には、長々と謝罪と後悔の言葉が書き連ねてあったが、全体の印象は不安と混乱だった。やはり彼自身なぜこんなことをしてしまったのか、わからないようだ。
 その中で、特に私の目にとまった一文があった。

〈先生。秋川駅前でミステリーサークルの写真を見てもらったときに、僕はちょっとだけ嘘をつきました。といっても大したことのない嘘なのですが。うちのおじいちゃんの水田をめちゃくちゃにした犯人、おじいちゃんの知人と言いましたよね。本当はおじいちゃんの弟なんです。今は絶縁状態ですが、おじいちゃんの弟がやったことも、動機不明のままです。もしかしたら何かが遺伝しているのかもしれません。僕が今回してしまったことも、なぜそうしたのか僕自身に説明がつかないんです〉